人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
やったあああああああ!!最推しなので嬉しいいいい!!
という訳で本編です。
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エイブ「事情は解った。宇宙に思念統合された存在に、まだ意志があるのであればそれを思念、波動としてキャッチできるように管制塔をいじらせてもらった」
オルガマリー「い、いつの間に…?い、いえ、それ自体は素晴らしいのだけれど…」
エイブ「私は肉体労働は得意ではないのでな。こういった裏方で励まずしてどうする」
シンデレラ『美しいでしょう?後はこの管制塔に、意志と思念を受け止められればきっと…』
ハスター【かかっ。それなら心配はいらないぞい】
オルガマリー「!」
ハスター【うちの孫がやってくれたでな。その風は、ほれ──】
ナイア「!」
クトゥーラ「…!」
【届くべきところに、届いているわい──】
その時、ハワイに風が吹いた。優しく、柔らかく、暖かく。包み込むような風であった。
「この、風は…」
まず、吹いた相手はナイア。邪神の娘たる彼女に、彼女が知ったる声音の風が届く。
『お!おお!?お前さん!お前さんもしやニャルの娘かの!?見える、見えるぞい!どういう訳じゃこりゃあ!?』
「お爺さま…!?ノーデンスお爺さまなのですか!?」
その声。かつて自身を邪神の娘と知りながらも優しく道を示してくれた、頼れる好々爺であったその声。
ノーデンスの呼びかけに顔を上げるナイア。
『おっほー!やっぱりナイアであったか!ちょっと見ぬまに、とっても立派に育ったのう!健やかに光の中に在るようで何よりじゃわい!』
ノーデンスの声は、風に乗りナイアに届く。
しかしナイアに、その姿は見受けられなかった。まるで天から降るような声。しかし、姿はなく。
「どこにいらっしゃるのですか!?お姿を、お姿をお見せになってください!私は…!」
その声を頼りに声を上げるが、返す音はただ、風のみ。
『あー…すまぬのう、ナイアや。今のワシはちょーっと忙しくてのぅ。厚意に甘えた声しか出せぬのじゃ。すまぬのう!』
「お忙しい…」
そう。それは宇宙と同一化し、均衡を守り抜くために必要な儀式。本来ならば自意識など保てようもないものだが、如何なる奇跡にてこの会話は叶っている。
であるなるば、と。ノーデンスは言葉を投げた。かつて、邪神の光としての姿を見た娘へと。
『ナイアよ。今からわしのする話はちょーっと難しいかもしれんが…ちゃんと聞いておられるかのぅ?』
「も、勿論です!もう右も左もわからない子供ではないのですからね!」
『そうかそうか、それならばよい!今から多分、お主らはなんやかんやあって宇宙の意志と、それに呑まれた大馬鹿者どもと戦う事になるんじゃろう。実際問題、ワシもそういうつもりでやってきたわけじゃからのぅ』
ノーデンスは語り始める。宇宙におけるサイクルにして、大いなる宇宙の有り様を。
『宇宙が滅びゆく意志なんぞと聞くと、何やら非常に物騒に聞こえるかもしれんがのぅ。それは決して、討ち果たすべき敵であるというわけでもないんじゃよ、これが』
「なんと…?」
ノーデンスは語る。宇宙と合一したことにより見えた所感と想いを。
『宇宙も大いなる生命の一つなんじゃよ。生まれ、育ち、萎み、死んでいく。生命としてのサイクルを有する一つの生命体。わしは最近、改めてそいつを強く確信したんじゃ。お主らの今戦わんとする、宇宙の意志。そいつもまた、決して邪悪なものというわけでもないという事を伝えておきたかったんじゃ』
そう告げるノーデンスに、不可解げにナイアは問う。
「滅びる意志。滅びようとする意志。それが邪悪では…悪ではないと?」
『そりゃあ、そこに生きる者達にはえらいことじゃがのぅ。それでもその先には、新たなる誕生がある。新たなる輪廻がある。完全に滅び去るのではなく、後に続く生命の循環のバランスは保たれる。それは、過ちでは無いのじゃ』
やっぱり難しいかの?ノーデンスは、その声はからからと笑った。
『夜の闇と同じじゃよ。暗くしないとよく眠れんじゃろう?宇宙に生命が生まれ続ければ、それは飽和して全てを押し潰してしまう。それこそ、真に全てが消えて死に絶える滅びそのものじゃ。そうならないためにも、宇宙の死に向かう意志というものは不可欠であるのじゃよ』
「では、私達は…生きる生命はそれに身を委ねよと…?」
『そうではないそうではない!その意志に悪意を持たせ、生命に向ける邪悪なるものを討つのじゃナイアよ。宇宙の意志は巨大故、直接的に生命を滅ぼそうとはせん。そうしようとするならば必ずや、そこには悪意ある意志の介入が存在するのじゃ』
「邪悪なる、意志…」
『その大本の一角を見つけ、討ち取ってやろうかと思ったんじゃがのぅ。割と強くて後れを取ったわい!いやぁ不覚不覚!ファファファ!』
ノーデンスは豪快に笑うも、その神妙さは失わずにナイアに託す。
『故に、ナイアや。そなたと家族、仲間達と伝え共有し、共に懐いてくれると嬉しいんじゃ。倒すため、奪うため、殺す為に戦うのではない。生きるため、繋ぐため、守るため、導く為に戦うのじゃと』
「ノーデンス様…?」
『ふふ、色々と知っとるよ。そなたの世界が、誰かの思惑から生まれた…本来幹となるではない世界であるということものぅ。本来ならば、切り落とされなくてはならない枝であろうことも』
ナイアに問う声は、生誕の理由を変えることが出来ない寂しさを孕んだもので。
『だがのう。その枝葉はなんの因果か奇跡か、はたまた冗談か。外から来た人に拾われ、丁寧に映され育てられ、いつの間にやら立派なもう一つの大木になっとった。枝葉や幹の中の木目ではなく、その枝葉を善いと思った者がそれを成したのじゃよ』
風は吹く。ノーデンスの言葉を、風に乗せて。
『そなたらが空想の世界を蹴落とすのではなく。時には尊重し、時には涙と共に看取る戦いを続けておれば、いつかきっと自身の番が回ってきたその時。そなたらは『生きて善い』と見つめた誰かに言われるじゃろう。何故ならそれは、尊び寄り添い、死に際を見届けた者へと齎される『赦免』であり『福音』なのじゃから』
「ノーデンス様…」
『宇宙の意志とも通ずるものじゃ。戦いを選んだ、選ばざるを得なかった者は同じ様に。選ぶしか無かった等と、言い訳は聞いてくれん。世界の理とは、それしか選ばせぬ癖に対価は要求するものなのじゃ。理不尽にものぅ』
宇宙と合一した神は、静かに語る。
『だが、幸いにもお前さんらは幸福な戦いをしておる。『対価と犠牲を要求する、『世界』という理そのものにじゃ』
その戦いは、限りなく苛烈で。それでいて限りない可能性を秘めたものだと彼は語る。
『その戦いでは、どうか奪うのではなく、分かり合い、尊び合い、話し合い、許し合う結末を求めてほしい。仕方なかった、という言葉を世界は聞かん。何処までも幼稚で、何処までも愚かで、しかし何処までも誇らしく、喜ばしい結末の為に戦ってほしい。宇宙の意志、滅びの宇宙においてもそうじゃよ』
ノーデンスの声が、遠くなっていく。
『あり得ざる絵巻であるならば、本物と違えどさりとて本物のように輝けばよい。この宇宙との戦いも、きっとそういうものだとワシは思っておる』
「ノーデンス様…!?」
『よいか、ナイア。倒すべき敵はいるかもしれん。戦うべき者はいるかもしれん。しかし『倒していい敵』というものはおらぬのじゃ。邪悪と戦う中で、自分達こそが正しいなどと、独りよがりの善にならぬようにのぅ』
それは、風が消えていくと共に。
『滅びゆく意志もまた然り。片方を消してはならんというのが厄介じゃが…!きっとそなたなら、皆ならばできようぞ!そう信じたからこそ!あやつら真化人類もこの世界を見定めたのじゃ!』
「どちらへ…!?また会えますか!?会えますよね!?」
『無論じゃ!まずは宇宙の負の意志を退けなくては始まらんぞい、ナイアよ!』
最後に、ノーデンスは笑う。
『完全無欠のはっぴぃえんど!その為には、宇宙の側面如きに負けている暇はなかろうて!ワシも宇宙から観ておるぞい!』
「ノーデンス様…!」
『頑張るんじゃぞナイア!あのいけすかない混沌冷笑野郎に宜しくのぅ!ファファファ!はっはっはっ────!!』
…宇宙を存続させるため、意識を喪い兼ねない程の苦痛を超えながら、ノーデンスは言葉を託した。
「───お爺さま…」
そこにあるのは…
好々爺の遺した、残響のみであった。
クトゥルフ『クトゥーラ…クトゥーラ…!』
クトゥーラ『!お、お父様!?』
クトゥルフ『無事だったか…』
クトゥーラ『お父様!私は…私は…』
クトゥルフ『この…』
クトゥーラ『!?』
クトゥルフ『馬鹿者めがー!(ぬちゃりビンタ)』
クトゥーラ『あう─────!?』