人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
ルシファー『え、ホント?それなら今、始末した方が楽園のアシストになりそうだね』
アスモデウス【えぇ。宇宙の混沌に呑まれしかつての同胞…引導を渡すのは今かと!】
ルシファー『散々地獄の部下たちをコピーして好き勝手やってくれたしね。よし…それなら』
『まとめて借りを返してもらうとしようかな!』
『全員集まっているかい?地獄における僕の部下、仲間達よ』
アスモデウスが聞き及んだ、ブリセラ追放の報。宇宙の意志に呑み込まれし天使達が、道化師に足をすくわれしその報をチャンスとし、ルシファーが自身の手足…地獄の軍勢たちに声をかける。
『此度の騒動、遺憾ながらかつての僕等の同胞が引き起こしたものだ。主を選べなかった飼い犬が、これまた最悪なカルト宗教に嵌まり身を崩したかのような顛末だ』
ルシファーは、七大魔王を含めた自身の軍勢達に自らが陣頭に立つ言葉を投げかける。
『リッカちゃんを初めとした、人理を救いし頑張り屋さん達の、当然のご褒美を台無しにした天使の罪は僕が落っこちた地獄より深く、またかつての同胞として救い難い程の恥だ』
(僕が落っこちた、ってギャグのつもりなのかルシファー様…)
(知らないのか?地獄の階層ってルシファー様が落ちた衝撃で出来たんだぞ)
(そりゃ深いわ…)
『偽神に仕え、あまつさえ生きとし生けるもの全ての敵となったかつての天使をこれ以上野放しにはしていられない。放置しておけば、後々どのような天災を齎すかすらも未知数な相手、概念だ』
そして彼は、高らかに宣言する。
『邪神の皆、アダム先生という人間、そして楽園の皆が意地を見せた以上、次は僕等の番だ。天使の恥は、かつて同じ天使であった僕が、僕達がつける!』
『ルシファー様〜…我々魔王は天使じゃありませんのでモチベーションのやりどころが…』
『七大魔王の皆はハワイに残って空間警護をお願いしてもいいかな!?』
『はーい…。ソラの海はお任せします。ハワイの海はレヴィアたんこと私にお任せ…けひひひ…』
『お前というやつは…』
『ファッファッファ!!』
絶妙なトークでホームグラウンド対応を勝ち取ったレヴィアタン、呆れるバアルに爆笑するマモン、ハンモックに揺られ我関せずのベルフェゴール。
『というわけで!ブリセラ達のトドメはここで刺す!いいようにされてばかりだった向こうに、今度はこちらが鉄槌を下す番だ!』
『『『『『おおっ!!』』』』』
『バカンスはまだ始まったばかり…。全員!サバフェス運営スタッフとしての奮起を期待するよ!以上!解散!』
『『『『うおおおおおおーーーーーーーーッッ!!!』』』』
ルシファーの号令は、各地でスタッフをしていた悪魔たちの戦意を最大にまで鼓舞する。
『天使は神の遣い。自身の意志は希薄であり、主を選ぶことは不可能だ』
ルシファーは、天の先にあるソラを見上げる。
『だが、お前達は知ってはいけない物を知り、踏み込んではならない領域に足を踏み入れてしまった。宇宙の終わりを担う意志など、生きとし生けるもの全てに仇なす敵だ』
その目には、かつて傲慢の魔王であった頃には宿るべくもない…。
『最後の、せめてもの慈悲だ。僕のこの手で、その羽を砕きへし折ってあげるよ。──それが羽であったという、事実を遺してね』
強い、『責任感』が。強く宿っていた。
〜
【ルシファー様】
そして先の演説から少し経った頃、浜辺にてソラを見上げるルシファーにアスモデウスが声をかける。
『おや?アスモデウス、どうかしたの?』
【お人の悪い言葉はおよしになさってください。…今すぐ、向かうつもりなのでしょう?ブリセラの下へ】
ブリセラは、ダゴネットの手により別の宇宙へと切取られ吹き飛ばされた。
だが、それは別の宇宙のリソースに手を出しかねないという事でもあり、状況は未だ尚切迫している。宇宙そのものを呑み込む力を蓄えかねないし、まだ宇宙そのものたる【禁断】の端末もハワイに眠っている。
ブリセラを、天使たちを討ち滅ぼすのは今しか無いのだ。アダムが邪神を乗り越え、リッカ達が願いを束ね邪神と神を取り返し禁断を乗り越えようとしている今。あの天使たちを討つ間隙は。
『あはは、解っちゃった?一応皆には演説って形で伝えておこうと思って』
【──お願いが、あります】
あぁ、と。ルシファーは納得した。アスモデウスはきっとそういうと。
『うん。一緒に…』
【シンデレラちゃんを。──オールドテイルズ部隊を伴とし、ブリセラをご討伐なさってください】
だが、ルシファーの予想は外れる。アスモデウスの願いは、シンデレラを共に連れて行く事であった。
【私はハワイに残り、禁断勢力に対する戦力となります。どうか勝利の女神達と共に、あの穢らわしい天使達に引導をお渡しください】
『………いいの?』
ルシファーは問うた。アスモデウスは【自身も共に】と言っていい資格がある。力もある。
【良いのです。私はこれからもずっと、色欲の魔王としてルシファー様と共にあります。共に戦う機会など、それほど星の数ほど】
ですが、と。アスモデウスは告げる。
【シンデレラちゃんや、オールドテイルズの部隊の皆は違います。ルシファー様との再会を果たしたばかり。今、置いていってはまた哀しませてしまう事になりましょう。離れてはならないのです、ルシファー様】
漸く再会を果たした彼女たちを、また哀しませてはなりません。そう、アスモデウスは告げる。
【あなたを一途に想い、あなたを見上げて女神となった彼女を。皆を、どうか二度と悲しませる事のないよう…指図まがいの忠言、不敬を承知でお伝え致します】
それは、色欲たる魔王のアスモデウスの司る【男女の想い】。そこから来たる、傲慢の魔王への忠言。
七大魔王に序列はない。皆対等であり、実際にルシファーは皆を統率している自覚は希薄だ。
皆、自らの意志でルシファーを星と仰ぎ忠誠を誓っている。
故に、ルシファーがアスモデウスを咎める理由などなく。
『アスモデウス』
故に、ルシファーはアスモデウスを抱き寄せる。
【えっ!?ぁ、えっ──!?】
『良くないな。傲慢の魔王の前で自分を押し殺すなんて』
あたふたと赤面し狼狽するアスモデウスに、ルシファーは間近で微笑む。
【あっ顔、貌近っ、ああっ…!】
『言ってみて?君は僕に、どうしてほしいのかな?』
ルシファーは成長した。エアから尊重を。シンデレラからは真心と、傲慢の罪を。
故に、アスモデウスが自身の心を押し殺していることくらいお見通しであった。
【わ、わたっ、私は…!私は、ただ本当にシンデレラちゃんが…!】
『勿論解ってるよ。けれど、それだけじゃないのはちゃんと解ってる。だから──』
耳元で【サタン】の口調で囁く。
【言ーえっ♪応えてやるから♪】
【〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!】
推しの強いサタンの口調にて陥落したアスモデウスは、心中を吐露する。
【私の、願いは…些細なものです。…ブリセラを討ち、禁断を退け、平和になったハワイにて…】
『うんうん』
【ルシファー様。あなたさまと手を繋ぎ…星を見上げ、肩を寄せ合い、昇りゆく太陽を共に見上げたく思います…】
『──────』
一瞬の間。
『───それだけ?』
【そ、それだけとはっ!?わ、私は渾身の力をありったけ込め、あなた様にこの胸に秘めたお願いをと…!!】
『あははっ、ごめんごめん。別にちっぽけな、とか言うつもりはないんだよ。ただ、あまりにも慎ましく、ささやかで…』
【う、ううっ…】
『───だからこそ、全力で叶えなくちゃいけない願いだって思った。本当に、それだけなんだよ?』
アスモデウスは、顔を上げる。
『約束するよ。必ず願いを叶える。一緒に手を繋いで砂浜を歩こう。二人だけでね』
【ルシファー様…!!】
『バアルにも言っておくね。砂浜貸し切るよって!大丈夫、素敵な水着とか散歩コースとかバアル全部知ってるからさ!』
【───はい!ルシファー様!】
バアルは女神としても振る舞えるため、最高のプランを女神の観点でも立てられる。
【お待ちしております、ルシファー様──!】
最高に信頼できる相手を『頼る』選択したルシファーの変化に…
心から歓喜の笑みを浮かべる、アスモデウスであった。
シンデレラ『アスモデウスさん…なんて美しいのかしら…』
セイレーン『私達の事を考えて、譲ってくれたんだ…!』
グレーテル『…ぅう』
ヘンゼル『ヘンゼルとグレーテルは、その想いに応えたいと燃えているわ』
エイブ『単独で挑まなかったのは成長したな、ルシファー。再び独断で向かったら今度こそその羽根を毟り取るところだったぞ』
ルシファー『ひぃ』
シンデレラ『アスモデウスさんとのデートの為にも、私達は絶対に負けられないわ。最高の勝利を、ハワイに持ち帰りましょう』
エイブ『アダム先生は邪神に勝ち、ダゴネットは天使を退け、カルデアは禁断に挑む。次はお前の番だぞ、ルシファー』
ルシファー『あぁ!…シンデレラ』
シンデレラ『えぇ、王子様。本当に、ますます素敵に美しくなったわ』
ルシファー『皆のお陰だよ。本当に、美しいものをたくさん見たんだ』
シンデレラ『なら──ここでは、終われないでしょう?』
ルシファー『あぁ!!』
〜
宇宙の外
ブリセラ【【おのれ…!おのれぇえぇえっ!!これで終わったと思うなよ!!ソラは我が手にある!!必ずや…!!】】
ルシファー『笑わせるな』
ブリセラ【【!?】】
ルシファー『お前たちに次はない』
シンデレラ『行くわ、王子様。皆』
セイレーン『あう!』
『『うん!』』
エイブ『クイーン以上の脅威だ、油断するなよ!』
【【貴様らァ…!!】】
シンデレラ『王子様!』
ルシファー『あぁ!────オールドテイルズ!』
『────エンカウンター!!!』