人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
あまつさえ、それをアスモデウスのように恥と伝えることをしなかった。
自身らに与えられた使命を何も、何も果たすことをしなかった。
これでは天使の意味がない。神たる遣いの意味がない。
今度こそ、思想に準じ、理想に殉じ、完璧なる天使としての責務を果たさなくてはならない。
その為なら、自身が自身でなくなり滅びようと構うものか。
今度こそ、ルシファーやジブリール、サリエルたちのように誇り高き『自我』『自身』を以て己を証明するのだ!
今度こそ。
今度こそ────
【【な、なんだ、これは!?世界が、塗りつぶされただと!?】】
宇宙の果て、ブリセラとの決戦において、プレアが展開したオルガマリーの固有結界『人理に寄り添う、希望の華』。全てを否定する吹雪と、カルデアを証明する晴天の南極の二重構造。
固有結界を破壊されると発動する効果にて、ルシファーの宝具により真の姿を起動したそれはルシファー達に力を、ブリセラに世界から切離された弱体化をもたらした。
【【カルデアス!!貴様…!あの愚昧なる神の証明天体如きがこんな真似を!!】】
〈やはりそちらにいるのですね。カルデアス…私の同型機が〉
プレアは推論に得心したと頷き、自身が楽園カルデアに立ちはだかるであろう事実に心を痛める。
〈その落とし前は、必ずつけます。今はその前に、堕ち果てたあなたの始末と決着を〉
【【図に乗るなよ!!終局のⅦ!ケダモノ如きが───がぁぁあぁあぁあぁあッ!!?】】
激昂するブリセラであったが、その絶叫はルシファーの仲間達、オールドテイルズ部隊の猛攻により遮られる。
『反射、拡散、収束、発射!』
セイレーン…リトルマーメイドの言霊と、液体金属と水泡を組み合わせた展開が、ルシファーの放つ傲慢の光輝を縦横無尽の全力攻撃にへと転換、無数の領域にてブリセラに叩き込まれる。
【【ぐうおああああああああああああああ!!!】】
肥大化した巨体は、それ故にルシファーとセイレーンの協力に対応できない。瞬く間に、尋常でないダメージを受ける。
『ヘンゼル、グレーテル!相手はどうやら神気取りのようだ。神殺しと、本当の神の力を見せてやれ!』
『『了解!』』
【【ぐ、ぉおあ…!!】】
凄まじいダメージに大いによろける中、万物を想像できるヘンゼルとグレーテルに、カルデアスが情報を託す。
『行くよ。神々の王の慈悲を知れ。絶滅とは是この一刺し』
『神性拡大。空間固定。神罰執行領域設定』
ヘンゼルとグレーテルが、それぞれカルデアスから提供された宝具のデータを再現し、展開を果たす。
『放て!ヘンゼル、グレーテル!』
エイブの号令の下、雷神の神王の一撃必滅の槍と破壊神の怒りの手翳しが全身全霊の出力を以て撃ち放たれる!
『『日輪よ、死に随え』!』
『『破壊神の手翳』…』
【ぐ──────がぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!】
偽神が異端として貶めた、数多の神。その力が皮肉にもブリセラを穿ち仕留める神威の具現となって焼き尽くし、燃やし尽くす。
ヘンゼルとグレーテルは、様々な物質を展開し創造できる。そこにエイブの頭脳とカルデアスのバックアップがあれば、完璧なる宝具の再現すらも可能にする。
インドラが、カルナにのみしか使いこなせぬとした神殺しの槍。破壊神シヴァの神威たる手翳。それらが最大出力としてブリセラに放たれたのだ。
【ぐああっ!!がぁぁぁぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあーーーーーーーッッッッ!!!】
ケダモノの様な絶叫を上げ、自身を焼き尽くす炎と破壊の力に晒されるブリセラ。
【【まだだ!!まだだ、まだだ!まだだぁあぁあぁあぁあぁあぁあッッッッ!!】】
だが、それでも尚。それでも尚ブリセラは消え去らず、燃え盛り荒れ狂いながら身を捩る。
【【我等は宇宙!我等は世界!今度こそ、今度こそ!!今度こそ我等の果たすべき使命を!使命をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!】】
『どうやら、彼等は彼等なりに思うところがあるようね』
光輝に輝くルシファーの傍らに、蒼き眼の美しき勝利の女神シンデレラがふわりと並び立つ。
【【今度こそ!私達は果たすべき使命を!使命の為に!使命の為にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!】】
『ああも成り果てても、使命だけは忘れられない。…王子様が気にかけるのは、そういうところなのかしら?』
『飼い犬は飼い主を選べない。天使には本来、反逆する理由も、思考すら存在しないのさ。哀しいことにね』
ルシファーは、ブリセラを見やる。かつて楽園にて、ブリセラの元たる天使たちとは出会っていたのだ。
〜
君達に自由があるのなら、僕がいることとやってきたことを神に告げるといい。
ただ、君達は自由の責任として僕と戦い、打ち果たさなくてはならない。
さぁ、選ぶんだ。
自由なる死か。隷属たる殉教か。
僕は、どちらでもいい。
〜
『そう告げた後、あの二人は僕を見て見ぬふりをした。分かりきっていたからだ。あの二人如きでは、僕に勝てる道理など無いと』
『嘘を、ついたのね。堕落をさせたの?』
『あの頃の僕は、無責任に周り自由と変革を齎す存在だったからね。あの2人がどう変わるか、興味もあったんだ。…どうやら、責任感と屈辱に押し潰されてしまったようだけど』
ルシファーは憐れむように告げる。
『無闇に自由を…いや、無責任な堕落を振りまいた責任は、ここで取らなくちゃいけない』
『えぇ。私も手伝うわ、王子様』
ルシファーとシンデレラが並び立ち、光り輝く翅とガラスの靴が輝き煌めく。
【【おぉ、お…おおおお…!!】】
ブリセラは、その光を掴むように、手を伸ばす。
【【ルシファー、ルシファー…!!自由よ、光輝なる翼よ…!!】】
自分たちも。
自分たちも、輝けるその翼のように。
【【我等も、我等も!我等もそこに────!!】】
宇宙の意志を得ても、届かない。
宇宙の滅びを重ね合わせても、届かない。
醜く歪んだ姿を、あの日から褪せぬ光に委ね手を伸ばす。
『ダメよ。今のあなた達では───』
シンデレラが遮る。
『誰かに委ねたままでは、王子様には届かないわ。──ガラスの靴、フルコンタクト』
シンデレラが纏いし武装、ガラスの靴が最大展開する。
『君達を変わり果てさせたのは僕の責任だ。──といっても、この物言いも傲慢極まるんだろうね』
ルシファーが、翼に再び大魔力炉心六つ分の魔力を凝縮する。
『それでも、君達が得た自意識が歪んだままなのは忍びない。だから──』
それらが、全力のチャージを持って。
『───終わらせよう。『明星光輝す楽園の喪失』!』
『──行って!』
固有結界全てを埋め尽くす白き輝きと、全てを滅する蒼き光となって。
【【ぐぎゃあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!】】
ブリセラを、完膚なきまでに焼き尽くした。
シンデレラと、ルシファーの合体攻撃。その熱量は恐竜絶滅時の隕石衝突時のエネルギーにすら相当する。
またたく間に蒸発、肉塊が霧散し、存在そのものが消え去っていく。
【【あ、あ────────】】
何故、どうして。
どうして、あなたはそんなにも輝かしい。
【【ルシ、ファー……】】
落とされ、魔王になり、悪魔になり、地に塗れ、堕天した。
それなのに、我等を惹きつけやまぬ光は決して翳らない。
私達も。
私達も、ああなりたいと。ああでありたいと思い続けてきた。
神から宇宙の意志を纏い、一つになった。
それでもなお、届かない。
【【何故────】】
何故、どうして。
神に逆らいながら。自身が堕落しながら。
どうして、手も届かぬくらいに。
あなたは、どうして───
【【そんなにも─────美しいのだ───】】
どうすれば良かったのか。
使命に従っても、抗っても。
神を越え、宇宙になっても。
あなたの輝きに、届かない。
我々はどうしたら。
我々は、どうしたら────
その答えを得る前に。ブリセラはルシファーとシンデレラの輝きを目に焼き続けたまま…
ブリセラになる前の証明。
天使の羽根を、2枚だけ残して。
───宇宙より、消え去ったのだった。
ルシファー『…………………』
『『二枚の翅』』
シンデレラ『王子様…』
『………責任の伴わない自由を唆すほど、無責任で傲慢な罪はない』
自身の罪が、巡り巡って楽園カルデアを、美しいもの全てを傷付けた。
『僕は……傲慢の大罪を余りに犯し尽くしてしまっているよ。それこそ──』
それこそ、神にすら裁けぬほどに。
シンデレラ『……』
シンデレラは、翅を手にし言葉なく涙するルシファーを…
そっと、抱きしめるのだった。