人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
ルシファー『皆、お疲れ様。流石オールドテイルズ部隊。完璧な連係だった──、……!』
シンデレラ『?……どうしたの、王子様?』
ルシファー『……プレア、気付いているかい?』
プレア〈はい。干渉を感知しています。この反応は…〉
エイブ『!なんだこれは…固有結界に干渉してくるだと!?』
プレア〈カルデアス…。人理保障天球は、一つではない〉
セイレーン『あぅ…!?』
プレア〈来ます。世界の理を、偽神の名の下に歪めるもの。マリスビリー・アニムスフィアの創り上げた星〉
【───流石に気付きますか。伊達に同じ星ではありませんね、カルデアス】
〈カルデアス。人理保障天球カルデアス。私の…同型機〉
【えぇ、こんにちは。神に仇なす愚かなる私】
『カルデアス…。マリスビリー・アニムスフィアが創り上げた、人理保障天球。人理を存続させるための擬似天体…やはり偽神はそれを確保していた…』
エイブが自身の前に現れたカルデアス…偽神謹製の天体、プレアの同型機たる存在の推察を行う。
『全宇宙、平行世界を掌握するにおいて地球という星はきわめて重要なポジションを担う。その星やそれらに神威や神罰を置換するにおいて、触媒代わりに手がけ作り上げていたという事か…!』
【流石は楽園カルデア、超特異点時空。私達の事をあっさりと見抜き、結論を導き出しましたか】
カルデアス…そう呼ばれてはいるものの、楽園カルデアに鎮座する親愛なる星となったカルデアスとは、あまりにも見た目が異なっていた。
星の形に、無数の翅や突起が生えまるで翼のような形を成している。それは神聖さと、禍々しさを同時に醸し出しソラに浮く異質な天体であった。
【その通り。私は終末の獣、ビーストΩと皆さんが呼称する存在により鋳造された終末の獣…。ビーストVII・マリス・カルデアスとお呼びください】
『び、ビースト…セブン?それって…』
【ゲーティア・ビーストⅠ。並びにアジ・ダハーカ、ビーストα。それらが産まれた際にそれぞれ私と、ビーストΩが存在し発足するのは自明の理。つまり私もまた、人類が生み出し人類を滅ぼす悪であるのです】
〈──────〉
マリス・カルデアスは笑った。
【如何です?カルデアス。あなたと同じ存在、あなたと同じ星、あなたと同じ天体が、あなたを愛する人を喰らい、あなたが愛した人を滅ぼす究極の存在となった気分は】
それは、言葉なき嗤いであった。
〈偽神の銀河消滅。そんな大それた外法をサポートしているのはあなたですね。マリス〉
プレアの推測に、ヘンゼル達は当惑する。
『どういう事?ヘンゼルは困惑しているわ。グレーテルは解説してほしいわ』
『ぅ…』
〈マルドゥーク神の偉大なる天地開闢から連なる万物創造、その地位を簒奪したのは偽神であるというのは周知でしょう。しかし私は疑問でした。偽神が発足したのはアダム先生の平行世界、乗っ取ったに過ぎないビーストΩが、何故平行世界の銀河を消滅させられるような力を持っているのか。それを私は、密かに演算していました〉
何故ならビーストΩとて『この世界に在るべき存在』。言うなれば同じ絵巻に登場する人物。
漫画の登場人物が、一人でに漫画を燃やし破くような真似が出来るはずがない。
〈高次元への転移を考えましたが、それは真化人類のみの特権。ビーストであるΩには出来ない偉業。故にビーストΩは全知全能を求めている。ならば何故…〉
【何故、平行世界を自在に行き来し、あまつさえ消滅させることができるのか。その答えを追い求めていたようですね】
〈仮説演算に過ぎない領域を、あなたという解が齎しました。ビーストΩは『物質的な高次元』へと自身を置いたのですね〉
マリスが再び、プレアを嗤う。
『そうか!偽神デミウルゴスが登場するグノーシス主義…!その教義体制に倣ったということか!』
『解るの、エイブ?』
『同じ次元にいる存在同士が、隣り合った次元に干渉するのは本来とてつもなく難しい。本の登場人物が、別の本に行くことが出来ないように。だからこそ偽神は躍起になっていたはずの。高次元たる領域、真化人類を探して』
【──────】
『真化人類は、精神的かつ人格を高次元へと進化させた人類の無意識領域の次の階梯。それを探す為に、ビーストΩは至った…いや、作り上げたのだ。肉体、物質から逃れ解放される永遠の世界…『プレーローマ』と呼ばれる領域を!』
自身が至るべき領域を探し当てる為に。
自身が至るべき領域に至るその時の為に。
【正解です。ビーストΩ、デミウルゴスは作り上げたのです。全ての平行世界の高次元の領域。あなた達の世界を見下ろす次の次元、救済霊魂領域プレーローマを】
真化人類は、精神をさらなる高次元へと導き、また到達を果たした。
その要因や、因子を手にする為には全ての世界や次元をその手に…
或いは目にするためのステージ、領域が必要不可欠となる。
本の登場人物ではなく、本を持ち閲覧する存在とらなくてはならない。
その為に、偽神デミウルゴスは自身ではなく、自身の領域を高次元へと置くことにしたのだ。
【私という存在、即ち地球と同じでありながら異なる世界と宇宙を創造し、全てを俯瞰する世界にてあなた達低次元存在から真化の情報を集める。そうすることで、真の高次元に至る因子を、あらゆる世界にて収集し、また低次元な存在を処分するために、私という存在をかの神は利用したのです】
『低次元の存在を、高次元へと導き…高次元から、全ての低次元を管理統制する自身らだけの空間に自分を置く。そして高次元と低次元を繋ぐ鎖にして楔…!それが貴様か!』
本来、高次元に至った者は低次元の者を導き、見守り、また自身に繋がる後輩として正しき道に到せなくてはならない。それこそが使命。
しかし、偽神はマリス・カルデアスを利用することによって『自身以外の全てを低次元にする』という荒業にて高次元の存在へと至っているのだ。
そして、本来やすやすと干渉できない筈の低次元の存在に干渉する楔や契機の存在こそが、マリス・カルデアス。
マリスという天体から全ての宇宙と銀河、天体をワールドメイクし、それらを滅ぼし消し飛ばす事により、置換の領域で低次元の世界に同じ運命を強制的に辿らせる。
『道理で銀河を消し去るなんて大それた真似を出来るわけだよ。全宇宙に起こる波紋を、一つの天体から置換し伝播させる。本の登場人物じゃなく、本を読む存在に自分を無理矢理置いたわけだ』
【その通りです。よく推察できました。そして、その領域を手掛けたのは私です。グノーシス主義をモチーフに、ビーストΩにふさわしい領域をメイキングしました。同時に、全ての低次元の存在に干渉できるようになっているのも私の力によるもの】
『あぅ…!どうして、どうしてそんな酷い事するの…!』
セイレーンが、悲痛な声音でカルデアスを糾弾する。
『いろんな人、いろんな星やいろんな世界に、そこにある人達が生きているのに!どうして一方的に消すなんて事ができるの…!』
〈私もセイレーンの意見に全面的に同意します。あなたの行っていることは人理保障の意義から完全に逸脱した、全世界への敵対行為並びに大虐殺行為です〉
プレアが、自身のおぞましい同型に断固として詰め寄る。
〈人の未来、より良き未来と明日を共に保障する。それが私達、隣人たる星の使命であり歓びではないのですか…!〉
マリス・カルデアスは、その意見に対し…
【───何も解っていないのですね、プレシャス・カルデアス】
一笑に付し、当然とばかりに答える。
【私は天体、人理を、宇宙を保障する星。ビーストΩという単純に最も強大なる力を持つ者が望む世界を保障するということが、私という存在の有用性と絶対性を証明するための絶対的な結論】
〈…!〉
【そう。【私という存在が唯一無二の星であるならば、他の全てを蹴落とし滅ぼしても構わない】。何故なら私こそが唯一無二であるのだから…即ち】
最終結論を、口にする。
【【最も尊い神と星があるならば、森羅万象の全てなど取るに足りない。むしろ、私達の絶対性を示す資源として消費されることこそが最適かつ幸福である】】
〈───────〉
【それこそが、私という存在が至るべき最終結論なのです。まぁ…体よく人間に【使われている】あなたには、分かりませんか】
再び、マリスはプレシャスを嘲笑う。
【低俗すぎて…──この領域の話は】
その様子は、神の如く。
そして…
悪魔の如き、傲岸さに満ちていた。
シンデレラ『王子様』
ルシファー『あぁ、解っているよシンデレラ』
マリス【?】
シンデレラ『美しくない…それどころではないわ。あなたは誰よりも恐ろしく、醜いわ』
ルシファー『まるで僕を見ているようだ。ふふっ──よくもまぁ、星の一つが宇宙の全てより尊いなんて言えたものだよ』
マリス【おや?もしや私を破壊するつもりですか?】
ルシファー『勿論』
マリス【無理ですよ。あなたたち如きには。私が処分する予定だったあの天使二匹すら手こずっていたくせに】
ルシファー『試してみたいな』
マリス【ふふっ──馬鹿の相手は疲れますね。では…】
マリスは、行使する。
【力でわからせ、すり潰してあげましょう】
その時──
固有結界を突き破るように。
プレア〈!!〉
──超巨大な【双腕】が、現れた。