人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
プレア〈何を、いきなりそんな分かりきった事を〉
マリス【集う可能性、集う因果律。我が神たる者も、迂闊に手を出せず、唯一あの神に手を掛ける資格を有する程。あなた方はやがて、全ての宇宙の可能性を掴み挑むのでしょう】
プレア〈ですから何をそんな…────〉
〈!!〉
マリス【お気付きになったようですね。【何故銀河ごと知性体を滅ぼしているのかを】】
プレア〈貴方は…!〉
マリス【では、次は手段をお見せしましょう】
【GAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!】
プレア〈────!〉
マリス【真化人類が遺せし、究極にして最大最高のオーパーツ、英雄機神マルドゥーク。あれほどの存在は一から作ることは不可能です。少なくとも、完全再現には太陽が死滅する程の時間が要る】
【なら、ただ複製すればいい。内部構造が分からなくとも、理念が無くとも、ただ性能をコピーすれば、それは単純に【全宇宙の最新鋭機】です】
〈貴方という人は…!〉
【それは、最悪の厄災神。それは神の威光たる究極の姿。私が禁断の力と宇宙の滅亡の力を再現し作り上げた、全てを滅ぼす滅亡機神】
【GAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーーッ!!!!】
【名を、ドキンダム・アプスー。銀河を消滅させし、私の会心の傑作です】
『マルドゥーク…!?いや、違う…複製したのか、カルデアスで…!』
次元を引き裂け現れし、黒き英雄機神マルドゥーク…。
否、その外見と性能だけを複製、コピーしたもの。真化の領域に至らない、シンプルな性能の再現品。それをマリス・カルデアスはコピーしたのだ。カルデアスの性能、中身を伴わぬコピーとして。
【真化人類が遺した遺産、それは単純な器としてでも全てを凌駕する性能を持っています。そして、カルデアスにおける性能はご存知の通り。銀河を消滅させる程度の複製を作る程度の事、容易いものです】
『罰当たりな事を…メタトロンやサンダルフォンじゃ飽き足らず、マルドゥーク神まで欲しがるとはね…』
【中身は再現出来ませんでしたが、天使二人を使い潰したサンプルを使い、中身には禁断の力を使用しています。つまり、このアプスーは言うなれば【宇宙滅亡の権化】】
【GAAAAAAAAーーーーーーーーーッ!!!!】
【止められますか?悪魔に堕ち、翅を半分も失った今の惨めな貴方に】
アプスーが吠え、ルシファーに狙いを定める。
『シンデレラ!!防御体制を!皆を庇うんだ!』
『ッ──────!』
『プレア!固有結界を解除するんだ、早く!!』
ルシファーの指示に、プレアとシンデレラは素早く従う。
『何故です、固有結界を解除すれば…!』
【惜しいですね。意図に気付きましたか】
マリスの言葉と同時に…
【目の前で、カルデアを壊して差し上げたものを】
アプスーは腕しか顕現していない。
しかし、そこから無数の砲門を開き、全てを破壊し滅ぼす光を撃ち放った。それは、固有結界を容易く砕きうる殲滅の一撃。
『『明星光輝す楽園の喪失』─────!!』
ルシファーが全身全霊でそれを迎撃する。それらはアプスーの攻撃を、完全に相殺し得る必殺のもの。
しかし──それはあくまで、相殺し得るものでしかない。
【固有結界、美しいものを護るためにわざわざ不利になる事を選び選択する】
『!!』
瞬間、ルシファーを二つの巨大な掌が挟み込んでいた。
【憐れですね、明けの明星。永遠の引き立て役に堕した者というのは】
そして、空間そのものと見紛う程の巨大な掌が──
『王子様!!』
ルシファーを、圧殺せんと叩きつけられた。
『ガラスの靴、フルコンタクト────!!』
最愛の者を傷付けられたシンデレラが、激昂を顕にアプスーに狙いを定める。
【ニケですか。そういえばいましたね。滅ぼした世界のいくつかにそんな存在が】
『王子様を、放して…!!』
【困りました。人間大の虫けらを殲滅するのはアプスーの役割ではなく天使や尖兵の役割です。ですので…】
瞬間、アプスーの腕から人間大の人影が躍り出る。
『!?』
瞬間、シンデレラのガラスの靴に、猛然と『拳』が叩きつけられた。
『あ、っく──────!!』
そのあまりの衝撃に、受け止めたユニットの衝撃ごとフィードバックを受け肺から息を吐き出すシンデレラ。
『馬鹿な…!そんな馬鹿な…!!』
エイブが絶叫する。シンデレラを殴りつけた、黒き軍服に白き手袋を付けた、ショートヘアの女性を見て。
『リリーバイスだと…!!』
リリーバイス。ゴッデス部隊のリーダー。
素手のみで、数千メートルあるラプチャーを跳ね上げたとされる、始まりのニケにして到達点。
【その通り。星間国家殲滅用兵器、【クイーン・リリス】。私の力をもってすれば、複製はたやすいものです】
『『停止』───!』
セイレーンが言霊を使い、クイーンの動きを停止させる。
『シンデレラ、今の、うちに…!』
『マリスだったかしら。あなたは…絶対にやってはいけないことをしたわ…!』
限界を越えた怒りに身を振るわせ、シンデレラは全力を解放する。
『よくも楽園の守り神様を…よくも私達の勝利の女神を…!!』
マルドゥーク。カルデアにおける絶対的な最強の存在。
リリーバイス。ゴッデス部隊の、人類の希望。
それらを、こんな稚拙な複製で弄び。
何よりも。
『よくも私の、王子様を────!!!』
最愛の人を害した怒りに染まり、シンデレラは力を解放する。
【!】
クイーンは、シンデレラの怒りに満ちた一撃の危機を感じ。
『あ、がっ…!げほっ──!!』
『『セイレーン!!』』
セイレーンが纏わせていた水泡を力尽くで振り払い、セイレーンの喉に甚大なダメージを与え無理矢理停止を解除。
シンデレラの一撃に、防御体勢を取るが───
【おっと。クイーンを壊されては困ります】
マリスの一存により、クイーンはシンデレラの一撃から離脱させられる。
『逃がすと思うの…!?』
【………】
『!?』
クイーンはシンデレラより、殴りつけた右腕の拳がぐちゃぐちゃになっている様子をじっと見つめていた。
【!】
そして躊躇うことなく、左手の手刀で右手を切り落とす。
『な、にを…』
『───!』
そこには、何もなかった。機器も、骨格も、何もない。
ただ、空洞だけがあった。
〈カルデアス、マリスビリーの理念…天体は空洞なり。内側は不要、外見だけがあればいい…〉
プレアが呻くように呟く。
〈それにより、再現しているのですね。滅ぼした世界のテクノロジーを。そこにどんな想いが、願いが宿っているか知ろうともせずに〉
【えぇ、その通り。あなた方も私達の決戦に備え、色々やっているでしょう?あの神は自身の絶対性を微塵も疑っていないのが長所であり、厄介なところ。ですので私がカバーしているのです】
世界を滅ぼし、テクノロジーや世界を取り込み、組み込んで複製し再現する。
【今のところ、この二つが私の最高傑作。あなた達との戦いに備えた切札…。お披露目としてはうってつけでしょう】
〈…………〉
【中身がない人形にカルデアは負けない。そう言いたげですね、プレシャス・カルデアス】
マリスは、嘲笑うように告げる。
【中身は詰め込みました。宇宙の滅亡、禁断の力たるものを。故にこうして、規格外のハイエンドを鋳造出来たのですから】
クイーンの手から、ドス黒い闇が溢れ出て腕を包み込む。
するとたちまち修復が果たされ、満足げにクイーンが拳の握り具合を確かめる。
【ドキンダム・アプスーとクイーン・リリスにより、銀河消滅の工程は極めて円滑となっています。楽園カルデアが財を溜め込む何百倍ものスピードで、私達は進化と強化を続けている。あなた方との決戦の準備が整うまで、半年程でしょうか】
〈つまり、12月か1月…〉
【えぇ。あなた方のいる世界はどうにもなりませんが、あなた達以外の世界はそれこそどうにでも。すぐにでも見せられるでしょうから、お聞きしておきましょうか】
マリスは悪意に満ちた笑みを浮かべる。
【全てが呑み込まれた黒と、全てが漂白された白。皆様が夢見る星の大海への旅立ちが見る景色はどちらがお好みでしょうか?】
【GAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーッッッッ!!!】
禁断の厄災神が叫び、シンデレラすら退ける力を持ったクイーン・リリスを従え、マリス・カルデアスは高らかに謳う。
【プレシャス・カルデアス。御堪能いただけましたでしょうか。皆様の旅路に必要不可欠な、完全無欠の旅路への最後の1ページ…】
【──────】
瞬間、アプスーが再び光線を討ち放ち、クイーンがシンデレラたちへと踊りかかる。
『くあっ!!』
『ああっ───!!』
ヘンゼル、グレーテルの片腕を手刀で切り離すクイーン。
『かっ────あっ…く…』
喉に深い損傷を負い、行動不能なセイレーン。
『この──────!!』
【!】
アプスーの砲撃を捌きながら、クイーンと拮抗し抑え込むシンデレラ。
『ああっ─────!!』
迎撃に回した二基、半分の二基では抑え込めずクイーンにユニットごと殴り飛ばされるシンデレラ。
【絶望という、ピリオドを】
【GAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーッッッッ!!!】
暗き宇宙の果てにて…
厄災神の咆哮が、轟き木霊し続けた。
シンデレラ『王子様…』
『おう、じ…様……………』
『───────────』