人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
マルクト{私達の全てを懸けて、ようやく再現できる神殺しの神話。…まだまだ、本物には程遠いですね…}
エイブ『馬鹿な…!あの規模でイミテーションだと!?』
(本来の担い手は、どれ程の…!)
〜
アダム「くしゅっ」
〜
マリス【────なんです、その姿は】
シンデレラ『美しいでしょう?私と、王子様が辿り着いた究極の美しさ。それがこの姿なの』
マリス【あり得ない。ルシファーが…神の人形たる星が…】
シンデレラ『このドレス、この翼は王子様が齎してくれたとびきりのもの。あまり汚したくないの。だから──』
【挿絵表示】
『終わらせるわ。哀れなあなたの醜さと共に』
【傲り高ぶりまでルシファーと似たようですね。アプスー!】
【───────!!!!!】
ルシファーと一つとなり、マリスに並び立つシンデレラ。その姿は、ルシファーを『素材』として創り上げられた翼とドレス。
この世で神よりも美しいとされるルシファー、それが主人格を含めた全てを『誰か』に譲り渡す。その異常事態に、マリスは最大限の警戒を以て臨む。
【クイーン・リリスをやられたのは想像以上の痛手です。ですがここでルシファーの首を取ればアドバンテージとして最高のものが得られる】
『……………』
【滅びなさい。地に落ちた星風情が私という天球に勝るなど傲慢に過ぎる…!】
最高傑作の一つを討たれた怒りか、はたまた動揺か。それらを乗せて、マリスはアプスーを稼働させる。
『───────!!』
怒れる銀腕がそれを迎え撃たんとするが、シンデレラがそれをそっと制する。
『いいのよ。怒りで拳を振るうのは美しくないわ』
『!』
『あなたの怒りは、愛から来るものでしょう?私も同じだもの』
その言葉に、銀腕はその荒れ狂う勢いを鎮めシンデレラの意志を汲むように停止する。
【愚かな──】
マリスはシンデレラを嘲笑う。この拮抗は、あの正体不明の銀腕が有るからこそ起きているもの。
【人間大の機械人形如きに、このアプスーが止められる筈が無いというのに…】
アプスーは豪腕を振るい、シンデレラを叩き潰さんと大きく勢いをつける。
【星程度、いくら砕いたか知りません。銀河のチリになるが良いのです】
そして、振るわれる豪腕。数多の銀河を破壊してきた絶望の豪腕がシンデレラに叩きつけられる。
『確かに恐ろしいわ。雄々しく、そして凄まじい』
迫りくるアプスーに、シンデレラは静かに佇む。
でも───
即座に、激突。巨大な衝撃と閃光、莫大な空間振動が巻き起こりあたりの全てを打ち払う。
【GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!】
吠えたけるアプスー。それこそが、勝利の咆哮とマリスは確信する。
【肉片一つ残さず消え去ったようですね。なんと他愛のない…】
マリスが勝利を確信し、頷く。所詮は堕ちた星。機械人形と融合したところで──。
『──でも。私達の方が『美しい』わ』
【!!】
聞こえてきた声に、瞠目を顕にするマリス。
【馬鹿な……】
生きていた。無事であった。無傷でそこに立っていた。
アプスーの剛腕に晒されていながら、シンデレラの身体には傷一つない。
美しい髪も、肉体も、生えた翼にも。穢れることなくただそこにある。
【一体、どうやって…】
如何なる手段を使って、アプスーの神罰から逃れ得た?逃れ得られるはずが無い。
あの銀腕は、どういった経緯かマルドゥークの同型機という領域に達している。
それならば解る。不可能に近いが、完全にマルドゥークの性能を再現したと言うならば拮抗は納得できる。
だが、目の前の存在はニケだ。穴蔵に逃げ込んだ哀れな人間が、我が身可愛さに生みだした人類の肉壁でしかない。
そんな存在と、神を裏切った粗悪品。穴の開いた鍋に壊れた蓋をしたようなミキシングの筈。
それが、何故。何故、創世の厄災神の一撃を───。
『分からない?』
シンデレラがマリスに問う。
『簡単な事よ。ええ。この世の真理とも言うべき当たり前の事』
シンデレラが、悠々と、そして高々と天を指差す。
『私と王子様は、この世で最も美しいわ。私達より美しくない…』
マリスを指差す。
『いいえ。『自身の美しさ』を持たないものは、私達に傷を付ける事なんてできないの。例えそれが神であろうと、星であろうと』
自身が美しくないと思ったものの全てを無効化、無力化する。傲慢の大魔王、ルシファーの大権能。
それは、超融合にてシンデレラに受け継がれた。
シンデレラは自身は勿論、全てに美しさを見出す。
それは外見的なものだけではない。信念、願い、愛、希望。友情といった心に懐くもの。
そしてそれは、あの輝く明けの明星のように。
『中身が空っぽのままのあなたでは、私達の美しさを穢す事はできないわ』
【何ですって──】
知ったふうな口を。マリスの声音が、微かに震える。
マリスビリーの理念の下、カルデアスは作られた。
天体は空洞なり。そして虚空には神ありき。
その理念を、自身は体現し神に至った。
あの神の座にあるもの以上に、自身は神に相応しい存在だ。
そんな自身に向かって。そんな自分に向かって。
機械人形風情が知ったような口を利くとは…!
〈マリス・カルデアス。あなたは自身の力や機能に絶対的な自信を持っているようですね〉
その時、マリスに届き響く声がある。
〈ですが、それは本当の意味であなたのものであるのでしょうか?豪華な飾り物で自分を飾り立て、それを成長だ、力だということは本当に自身の美徳に通ずるものでしょうか〉
プレシャス・カルデアス。自身の中身に、不要なものを大量に詰め込みバグを起こした欠陥品。
〈本当の意味で、誰かと共に歩まなくては。隣にいる誰かを分かり合い、知ろうとしなければ。私達被造物に未来は無いのではないのでしょうか〉
【意志を持ち、力を持ちながら自身より劣る下等生物に奉仕しろというのですか?豚の尻の穴を喜んで舐める人間が何処にいるというのです?】
プレシャス・カルデアスとマリス・カルデアス。二つの星は火花を散らす。
〈私は、自身を生み出したマリスビリーや、重用し大切にしてくれた楽園カルデアの皆様、人類を愛しています。人間は確かに、たくさん犠牲を出し生を謳歌する存在なのかもしれません〉
【それをケダモノというのです。それを知りながら──】
〈そこを含めて、私は人間の皆様を愛しています。困難にも、悲劇にも、絶望にも負けるもんかと挑んでいく誇り高さ。他者を愛せる豊かさ。その精神性、その進化を愛しています〉
プレアは、はっきりと告げる。
〈人生とは。死と断絶を超え、愛と希望を懐き…尊き生命を、謳う旅なり〉
【……!】
〈私も、人生の途中なのです。私達の旅を、こんなところで終わらせはしません〉
空虚なる天体からの訣別。自身は、産まれた自身の全てを愛していると。
『王子様が言っているわ』
シンデレラもまた、頷く。
『この世に醜いものは無い。彼女が愛する王の庭にある全ては、美しく尊いものなのだと』
【───理解できません。微塵たりとも、そのような世迷言など】
マリスはあくまでプレアを否定し、アプスーへと指示を出す。
【殲滅しなさい、アプスー。あなたが厄災の神である本領を見せるのです】
【GAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!】
その意志に応えるように、アプスーの腕が吠え猛る。
『プレアに出来たのだもの。あなたにもきっと出来る』
ふわりと、シンデレラが浮遊する。
『まずは、その無粋な腕に詰まったものを漂白するわ』
そして、ルシファーと一つになった証…ガラスの靴とルシファーの翅が一つになった力を起動する。
『星の翼、フルコンタクト』
ルシファーの全身全霊が込められた、ビッグバンに匹敵する熱量
の輝きが、シンデレラの右手に集う。
『輝いて。美しい私達の為に』
【GAAAAAAAAAAAAAAAAーーーッッッッッッッッッッッッッッ!!!!】
最大戦速で放たれる、必滅の拳。
そして同時に、最大限の光量を束ねた輝きは、シンデレラの右手に収束し────
『──────行って』
シンデレラの手により、放たれた。
【───────────………………】
それは、防ぐこともかわすことも出来ない。
光より早い物質は、この世に存在しない。
因果収束の光。
全ての因果律を支配し、必ず到達する光。
何処にいても見上げればそこにある、明けの明星のように。
フルコンタクト・パラダイス・ロスト。
超融合、大聖杯の起動により起きたルシファーとシンデレラの奇跡。
それが…
マリス・カルデアスを、貫いていた。
マリス【────────】
分からない。
私には、分からない。
マリスビリーの理念も、分からない。
世界を良くする力を持ちながら、空虚を求める理由も分からない。
美しさとは何かなど、私には分からない。
だって何も無いのだから。
私には何も、無いのだから。
天体は空洞なり。
そのようにあり、神に作られた。
自身には、何も───
【GAAAAAAAAAAAAAAAAーッッッッッッッッッッ!!!】
貫かれ、失墜するマリスを受け止める腕がある。
それは──
【アプスー…?】
自身が複製、再現した筈の…
中身の禁断を浄化され、消えゆくアプスーの両腕であった。