人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
【ほほう、宇宙における厄災、根源的なる破滅を齎すものを退けたか】
マリス【…!】
【何も理解しておらぬようだな。アレが宇宙に、遍く世に齎す果てがなんたるか。アレが齎す『天国』の前ならば、我等が齎し宇宙が赴く終末は慈悲!!】
マリス【宇宙の、滅びる意志…】
【故にこそ!アレに連なる貴様もまた!この裁きにより消えるは天意と知れ!!】
アプスー【…!!】
【その杜撰なる究極の神の紛い物と共に──塵と滅せよ!!】
【世界を塗り替えたとて、頼りなき画用紙に塗料を塗りたくったと同じ事!貴様らごと、脆弱な空間を引き裂いてくれるわ!!】
偽神と共に現れし、禁断の意志。アプスー、マリス、並びに偽神の勢力を赦さぬと裁きの破壊を齎さんと猛り狂う。
空間そのものをへし折り砕かんとする圧倒的な勢力、攻撃を前に晒されるマリスを、懸命にアプスーの腕が護っていた。
【───────!!】
この響き渡る声は、禁断であり宇宙の意志の顕現であるのかもしれない。宇宙の滅びようとする意志が、禁断と同調して言葉を紡いでいるのか。
はたまた、禁断は宇宙、偽神とも異なる意識を有しているのか。何もかもが未明の中、分かることは明確にマリスを排除しようとしている一点のみ。
それを、アプスーは懸命に阻んでいる。偽神の端末である以上、アプスーが自意識を有するならば決して相容れないはずだと言うに。
【アプスー…あなたは、何故…】
先の神の醜態は目の当たりにしていたところだ。神を殺す神話…たった一つの人類の究極の一と、新人類の原型。それらが揃った世界は偽神を打倒し得る。
ただ、それが揃う可能性は果たしていくつあるだろうか?模倣の段階で多大なる代償を払うこと、人類が旧型として席を譲ること。
どちらも到達できない領域だ。人類が人類である限り、神たるあの存在は決して打倒できない。
とは言えど、今籠絡の可能性を示された以上はアプスーが大人しく従う理由もない。あり得ないが、自意識が生まれたと言うならば。
ならば何故懸命に護るというのか?アプスーの装甲は、マリスに傷一つ付けさせない。しかし、空洞なる神である以上…破壊される可能性はある。
自身を…複製した涜神の星を、何故。
〈難しい理屈はありませんよ、マリス〉
その時、庇う手が2倍に増える。
“我々は寛容でね。更生の余地ありなら目をかけたくもなるのさ”
それは白き腕。先程アプスーを熾烈に害していた腕。
〈あなたが製作者、産みの親なのです。ならばマスターを護るのは至極当然でしょう〉
【私が…?】
“マルドゥーク神は力と同じくらい愛深く、それでいて聡明な神だ。模倣が真に迫るなら、親愛くらい懐くだろうさ”
アプスーは何も応えない。この極限の中、ただマリスを護っている。
それが何よりの、雄弁な答えだった。
【何者かと思えば。忌まわしい真化の人類共の走狗とはな】
〈真化人類を知っているのですか?〉
【知らぬわけが無かろう!滅びゆく意志、その台頭を自らの存在を懸け宇宙に合一し阻みゆく忌々しき者ども…!あまつさえ、この世界に希望と言う名の異物を撒き散らす敵対者ども!】
憎々しげに、禁断の意志は吐き捨てる。
【滅び、衰退は世界の摂理。それを人の意志如きが阻み永らえさせようという傲り高ぶりを極めた高次の愚物!それが貴様らの呼ぶ真化に至った人間どもの正体だ!】
〈成る程…。あなたにとって敵であるなら、生きとし生ける私達には絶対なる味方。良いことを聞きました〉
【貴様…!!】
プレアの挑発を機に、世界の圧力が増す。それは星と神程のスケールなくば、即座に潰される程の絶対圧量。
【図に乗るなよ、矮小な天体如きが!我が端末、一端風情にこうまで脅かされる貴様ら風情が烏滸がましいと知れ!!】
〈偽神の方は、極まった独善でありますが…こちらの方は、肥大化した自意識がもたらす邪悪、といったところでしょうか。成る程、バランスが取れています〉
“言ってる場合かい?今君、相当しんどいだろ”
猫が言うように、宇宙全てが悪意をもって圧殺してくるかのようなプレッシャーにプレアは晒される。それは、コンテナが四方からゆっくり潰れ迫るようなもの。
〈いいえ、まだ行けます。人間は、追い詰められてからが本番と言いますし〉
銀腕、アプスーですら少しずつ装甲の歪曲が始まっている。端末、末端の意志ですらこれほどの力を有する。偽神も、禁断も、今此処においては蜥蜴の尻尾に等しい規模。それでも尚、対処に多大なる労力を強いられる。
宇宙に巣食う、根源的に討ち果たすべき障害はこれほどまでに強大かつ圧倒的だ。
〈それでも…最後に勝つのは、私達です〉
プレアはそれでも尚、勝利の確信を捨てはしない。
〈友情、努力、勝利を備え、良質な睡眠と美味しいご飯を毎日食べている楽園の皆さんが、負けるはずはありませんから〉
【プレア…】
【ワハハハハハハハハハ!!骨の髄まで下劣で低俗な人間の思想に染まったか、伽藍堂の星よ!】
いよいよ以て、ブラックホール生成が見え始める領域まで禁断の意志の圧縮が極まる。
【笑止!!我が真理、我が真意の前には全てが無力!!】
アプスー、銀腕の原子崩壊が少しずつ始まっていく。
【生命の輝きなど、摂理の前には無為なる瞬きであると思い知れ────!!】
その全てが崩壊せんとした───
その時であった。
«随分と大口を叩くものよ。これ程までに容易く腕が入る程であるわ»
【ぬぅう!?】
瞬間、無数の【腕】が、声の響く空間の向こうへと伸びていく。
【こ、これは…!?よもや貴様、まだ生きていたというのか…!!】
«いいや、肉体はとうに滅んでいる。いや、滅びねばならなかった。神殺しのバクテラス…偽神や貴様が畏れる【究極の一】を手掛けるためにな»
«シールドトリガー・デーモン・ハンド…!これはまた懐かしい!»
無数の腕が、禁断の空間、その奥へ伸びていく。それは、禁断の末端を逆探知するかのように。
«我等の世界は滅び去った。それは我等の世界が異聞帯…否。全ての文明がやがて『真化』を齎す可能性を有していたが故に、貴様と偽神の思惑を受けた為だ»
その時、魔法陣が描かれる。
«無様なものよ。己に至る異分子を潰して回り、覇者を気取るとは。しかし、我等が滅びの先に火は灯った»
そう、それを齎せしは、猫が持つ2枚の«翅»。
“ルシファー君、ドライなのかフレンドリーなんだか”
天使を動かす鋳型は、小聖杯規模の効能を有する。
この空間が、認識による宇宙であるならば。
その翅は、因果を手繰り寄せる『マナ』になり得る!
«我等は滅べど、意志は潰えず。真化も禁断も偽神も我には関わりのない事であれ、我は我の意志に従い貴様に弓引こうぞ»
そこから、厳かに現れる威容。それこそはかつて偽神と禁断の介入により滅びた異聞帯の悪魔神。
【迷い出たか!悪魔神バロム……!!!】
ボルシャック達との最終戦争にて滅んだ、悪魔神バロム。
それが、天使の翅の行使により禁断の敵対者として現れたのだ。
【悪魔神、バロム…!】
〈もうボルシャック・バクテラスを御存知なのですね。御力をお貸しいただけるのでしょうか?〉
«敵の敵は味方。そういう事よ。偽神と禁断が全ての宇宙の敵ならば、必然的に宇宙の全てがそなたらの味方だ»
バロムが印を結び、四方に自らの闇を満たす。
それらは周囲の圧力から皆を解放し、そして必然的にバロムが禁断に劣らぬ力を有することの証左。
あの世界は、愚かしさにて滅びたのではなく。
虹に至る可能性を危惧され、滅ぼされたのだとするに相応しい実力であった。
【おのれぇえ…!!死に損ないが図に乗りおって…!!】
«所詮貴様は末端の意志。偽神と同じくこの場の勝敗に意味などない»
【滅びよ!!宇宙に掛かる虹など非ず──!!!】
«だが──一矢報いてやらねば、あの場で死した我等も浮かばれぬのでな»
瞬間。
【ぬぐああっ───────!!!?】
禁断の意志を、『聖なる光』が撃ち抜いた。
〈これは…!〉
“シールドトリガー…”
闇とは異なる、確かな色彩。
“────ホーリー・スパーク…!”
バロムは、印を結び。
翅をコストとし、魔法陣を敷いていた。
輝ける声«そうとも!我等滅びようとも、今を生きる全ての為に何度でも蘇り、この力を振るう!!»
禁断の意志【まさか──まさか貴様までもが!!】
白猫“楽園カルデア、即ち『超特異点』。歴史の解れ、異常を指す魔術的用語とは意味を事なくする、即ち『どのような奇跡も起き放題』たる全宇宙の希望の収束点”
輝ける声«禁断よ!お前が宇宙の意志の眷属なのか、はたまたそれを制した巨悪なるかは今は論ずまい!今はただ!希望を護るために我はあろう!!»
バロムが敷いた魔法陣より、輝ける王が現れる。
聖霊王アルカディアス«跪き!裁きを待て!!最早その邪悪な意志は届かぬ!!»
小聖杯の役割を果たした翼を手に、かつて業火に消えた聖霊王が悪魔神と共に並び立つ!
【バロム…アルカディアス…!!貴様らァ…!!】
白猫“一つ、言わせてもらうとするならね”
“消すと増えるんだぜ。希望と動画はね”