人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
マリス『──────!!』
プレア〈!目を覚ましましたか…!〉
マリス『ここ、は…私は…』
プレア〈もう、果ての宇宙ではありません。此処は…ハワイのホテルの一室です〉
マリス『プレア…私は、あの時…』
プレア〈解っています。あなたは死を選び、実質、そのようになった。でも…〉
プレア〈私達は、その選択を選んだあなたを承知の上で…生きて、ほしかったのです〉
『───僕は、嫌だ』
砕け散ったマリス。啜り泣くプレア。慟哭するアプスー。悪意と独善に形作られたものが、心を懐いて死んでいった。
それは納得の果ての結末であったのかもしれない。罪の果てに選んだ選択だったのかもしれない。そうすることでしか、自分を許すことができなかったのかも知れない。
それでも。
〈マリス…マリス…!どうして、どうして、こんな…〉
【グウオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!】
産み出された心が、罪悪感の果てに自死を選び。磨かれることも無く育まれていく事もなく消えていった。
独善から、神から逃れ。真に美しいものとして輝く前に消えてしまった。
これから、ずっと素敵な色彩と輝きをもって煌めく筈だったのに。
許せない。納得できない。
ルシファーは──明けの明星は。
『こんな結末…!───僕は、嫌だ!!』
例え尊重の果ての結末であったとしても。傲慢の大魔王は。
それでもと、楽園の理に反抗する道を選んだ。
“奇遇だな、明けの明星。私も全く同じ意見だ”
白猫、彼も傲慢の大魔王に同調する。
“死なれたら困るさ。償いも成長も全てこれからなんだからな!という訳でルシファー、私の首筋の裏を勢いよくチョップしろ!”
それにより、運命に抗う足掻きが今、始まった。
『チョップ…?』
“此処で使うことになるとは思わなかったが、仕方ない。生まれた生命に祝福を兼ねて大盤振る舞いだ!”
『…──シンデレラ!』
『えぇ、勿論よ王子様』
ルシファーは、シンデレラの手を借り──。
“モルスァ!!ウエッ!!”
白猫たる彼は、毛玉の要領でとあるものを吐き出した。それは、虹色に輝く結晶…クリスタルのような存在。
“これは未だに謎の多いプレシャスパワーを少しずつ集め凝固化させた数少ないサンプル…その名も『プレシャスストーン』!出来たのはほんの小さな結晶だが…これだけでも、十分以上の『願望器』の役割を果たせるだろう。勿論、奇跡に類するもののね”
『あなた…』
“彼女は最大限の情報をくれた。…実際のところ、アストラエアなる存在は我々もノーマークでね。目から鱗口から毛玉さ”
白猫は、奮い立つ。
“彼女には全知として、聞きたいことが山とある!死なれてもらっちゃ困るんだ、気合い入れて呼び戻すぞ、皆!”
全知の監修、という予防線を張ってはいるが実際のところ、彼は知っている。
いいや、ここにいる誰もが知っているのだ。産まれた生命、産まれた心は見守るべきものだ。
だからこそ、自身らは自身らに出来ることをしよう。
親が比類なき救いようのない魂だったとしても。
子が、そうであるという保証も確証はない。あるはずはないのだから。
{皆様。私と姉妹達の神秘を…全知の啓発者達の力もお使いください}
『せ、せっかくなので…生きてみましょう!』
『やってみる価値ありますぜ!』
『お人好し。そういう存在が世界を変えるんですよね。結局のところは』
マルクト、並びにアイン・ソフ・オウル達が力を、神秘を提供する。
『───アーキタイプ。いいえ。この美しさはもう一人の私ね』
『─────』
『力を貸して。美しい結末を涙で濡らすのは、もう沢山なの』
シンデレラの願いに、アーキタイプはゆっくりと頷く。
『仮にも天体のスケールモデルの端末だ。受け皿もそれなりのものが必要だろう。アーキタイプと大聖杯の助力を得るのは悪い選択では無いはずだ!』
エイブもまた、ルシファーとシンデレラ、アーキタイプの選択に全額をベットする。
『セイレーン達の分も気合いを入れてやれ!お前の罪は死んだくらいでどうにかなるものじゃないとな!』
『バロム!私達も全霊を尽くそう!』
【ふむ…仮にも中枢にいた霊魂。霧散させるにはあまりにも惜しい】
『なんでもいいんじゃよ、建前なんぞ。ただ、目の前の魂を救うことに意味があるんじゃい!』
バロム、アルカディアス、そしてノーデンスもその力を振るう。
『父さん!聞こえてるかい!?貴方の力、それはもう好き放題使われてるよ!』
そしてルシファーが、認識宇宙へと高らかに叫ぶ。
『貴方は聖霊だから神には勝てないだなんて、とんでもない不敬をかまされていたよ!そんなことあるかい?そんな筈はないよねぇ!』
ルシファーは叫ぶ。この、獣に貪られている世界に届かせるように祈る。
『あなたは御人好しで、本当の意味で万物を愛していたんだ!うっかり世界を作る際に頑張りすぎて後ろから刺されたみたいに!そうでしょ!?』
大魔王が、神に祈る。それはカルデアに…至尊に触れたことにより得たルシファーの輝き。
彼は、彼より美しい全てに生命を懸ける。そして今の彼は、世界の全てを美しいと信じている。
『いつまてもあんな奴に好き勝手されてるなんて僕は嫌だよ!ここらへんで、あなたの威光って奴を見せてやろうよ!』
ただ、その祈りは必死に、ただ真摯に。
『この世界には色んな神様がいるのに!唯一神だなんて名乗った恥知らずのお父さんにしか出来ない事が今此処にあるんだよ!』
皆の願いが、想いが、プレシャスストーンへと集っていく。
『だから──だから…!』
そして、ほんの少し前に本当の意味で『美しさ』を理解したルシファーの祈りもまた。
『───助けてよ!父さん───!!』
その必死に極まる祈りと願いは…
〜
『──────やれやれ。もうちょっと可愛げのある祈り方を覚えてほしいっポよ』
『!!』
『だが…そういう真摯で懸命で、必死な願いと祈りを聞き届けるのが私の役目だ。だろう?無限の光よ』
『はいっ!全ての光よ、願いを叶えるために────!!』
唯一の神と、無限の光を此処に招き寄せた。
〜
〈そして、宇宙が閉じた事を確認して帰還いたしました。後は、封じられているドギラゴンと禁断の力を何とかするだけですね。長いようであっという間なバカンスの一幕ももうすぐです〉
プレアは、起き上がったマリスにそう告げる。
『私を…助けて、くださったのですね』
見れば、マリスは思念体として其処にある。物質や肉体ではなく、魂と精神が其処にある状態だ。
それは、ただのものではなくなった事を意味する。
〈今更何故、とかどうして、とか。そんな言葉を聞くつもりはありませんからね〉
プレアは、ややむすっと不満げな表情を浮かべる。
〈勝手に何やら満足して死ぬなんて許しません。懐いた心と、想いと、犯した罪にはずっとずっと向き合い続けてもらいます〉
神たちの、人達の、女神達の願いと奇跡が形作られた彼女に向けて告げる。
〈ずっとずっと、私の姉妹機として…あなたは私と一緒に、償いの巡礼の旅に出るのです。あなたが罪を犯したと言うなら、それは姉妹機である私の罪です〉
そっと、絢爛なる天体は姉妹たる星の手を取る。
〈全ての生命に報いるその日まで。全ての生命を救うその日まで。ずっとずっと歩んでいきましょう。私と共に、皆と共に。──かけがえのない、宝物たちと共に〉
『…プレア…』
地獄の底で、大いなる悪神に言われた言葉が去来する。
【偽神を倒せ。悲劇と独善を撒き散らす者を討て。それが、お前にできる償いだ】
恐ろしく、禍々しく。しかし全てを見下し俯瞰する無慙無愧の神とはまるで違う、暖かさと優しさの籠もった言葉。
そうだ。あの時自分は本当の意味で【神】にへと出会ったのだ。
『───はい』
そっと、その手を握り返す。
『はい…。私も、私にできる全てで、貴方たちと皆様をお助け致します。償いとして、何よりも…私自身の願いとして…』
プレアの手と、マリスの想いと願いが今重なる。
宇宙の果てにて産まれた心は、星々の輝きにて楽園に導かれた。
宇宙を巡る、超特異点の奮闘はこれよりも続いていくだろう。
しかし──偽神が無価値と切り捨てていくものは、全て超特異点に集うのだ。
値千金の、財宝達として。
アプスー【───────………】
パパポポ『良かったね。私も産まれた心が消えなくて一安心だっポ』
アプスー【……………】
パパポポ『君は…見守っていたんだね。彼女という心を』
アプスー【…………】
パパポポ『全く。敵わないなぁ…。遥かなる英雄神…』
『───私を見出してくれた、あの偉大なる神の背中には』
極点
白猫“やぁ、全能”
アカシック『帰ってくれないか』
白猫“酷くない?”
アカシック『毛の処理が大変なんだ』
白猫“じゃあ手短に”
“───アストラエア・アーカーシャ。全知の記録にすら無かったこの名前…君は知っているのか?”
アカシック『一つだけ』
白猫“それは?”
アカシック『アーカーシャは、転生する際に一つ、宝具を使った』
白猫“宝具…まさか”
アカシック『あぁ』
『───訣別の時きたれり。基は全てを手放すもの。アストラエアを探しても無駄だ。何故なら…』
その魂は、無へと至った。
何処にいるのかすら分からず、見当もつかない。
故に───
アカシック『転生者を探すことは誰にも出来ないのさ。全知にも、全能にもね』
“………”
そしてそれは。
全知も全能も知らないという…最大級の、セキュリティであった。
真化の英雄の魂は何処かに存在する。
しかし───
その全容を識るものは、一人を除いて存在しない。