人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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女の子『ねーインドラ様ー。アルジュナもう向こう行っちゃったよ?』

男の子【レストランで先んじて料金を払い、マガヴァーン(分け隔てなく与える者)の威光を見せる、という計画ではなかったのですか?】

インドラ「黙れ、解っている。解っているが…」

『【?】』

『ヴァジュラ。そこは素直になれない親心…いいえ、パパ心といったところですよ』

インドラ「!」

【この気風、威光は…】
『ヴィシュヌ様だー!』

ヴィシュヌ『えっ?威光出てます?オフだから威光カットしていたつもりなのになぁ』

インドラ「…まさかこの様な場所で、ヴィシュヌたる貴様に出会おうとはな」

ヴィシュヌ『お互い様でしょう?ランサーなのにアサシンみたいに隠れている神と書いてオレと読む系の神々の王様。まぁ立ち話でもなんですし…』

『モロコシでもどうです?』


神々の王、父を知らず

「やけにガルーダ…貴様の鳥を見掛けると思い、警戒し隠れていたのだ。断じてガルーダを恐れていた訳では無い」

 

「あぁ、成る程。アムリタの件でボッコボコにされてましたもんね、私のガルーダに。私のガルーダに」

 

【2回言いました】

『マウント取ってきたぞこの意地悪維持神ー』

 

ヴィシュヌ。インド神話にて最高峰の格を持つ世界を維持する最高神。楽園カルデアにて、同じく世界を救い駆け抜ける赤髪の青年の遺伝子を借り受け、顔は青年の幼少ながら、金髪銀眼少年にカスタムした姿を取る彼が見いだしたのは、神々の王と名乗りしインドラたる神格。

 

インドラもまた、インド神話において最高峰の格を有する者でありヴリトラ…悪の龍を殺し空を解放する偉大なるもの。干魃に喘ぐ人々を救いし空と嵐、雷の神が今、自らの神格を分けたヴァジュラと共にモロコシ屋であれこれしていたのを見うけ…

 

四人は海を一望するベンチに座っていた。

 

「あと、私とガルーダは対等なので主従とかじゃないですからね。そこは言っておきます。ちゃんと『ヴィシュヌの親友ガルーダ』と認識してくださいね」

 

「フン。神はあの鳥頭など見るのも嫌だがな。トラウ…気分が悪くなる」

 

ガルーダ。ヴィシュヌの眷獣たる彼の強さはシヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーを除く全ての神を単独で叩きのめした程に凄まじい。当然ながら、このインドラもそれはもうボッコボコにされたのだ。

 

『我は母の自由と尊厳の為に戦っている。備わっていた神の力に溺れる貴様らとは決意と動機の格が違うのだ』

 

とはガルーダ本人の談。そしてアムリタを奪還したところをヴィシュヌに会い

 

『アムリタなんてあげますから、背中にこれから乗せてくれませんか?』

 

と対等になったのが馴れ初め。ゆえにヴィシュヌは、ガルーダを親友と思っている。ガルーダ側は個人的にヴィシュヌの自由かつ奔放、寛容な人格に敬意を払っているための謙譲、尊敬を有すが故に仕える立場の言動を取っているが。

 

「ヴィシュヌ解っちゃいますよ。神々の王らしからぬ小賢しいコソコソさはガルーダから逃げているだけじゃないでしょ」

 

「……貴様の格に免じて、戯言を聞き及んでやる」

 

「アルジュナ。最愛の息子にどうパパっぽい事してあげるか思いつかないんでしょ?」

 

吹き出すヴァジュラ。それをインドラは否定も肯定もしなかった。

 

「…………」

 

「まぁ無理もありませんよね。母にはほかの神々からの嫉妬を恐れられ捨てられ、父には敵意と殺意を向けられ、その果てに父と確執の果てに殺めたあなた…真っ当な愛し方なんて教わってませんもんね」

 

 

『リグ・ヴェーダ』によれば、千日の間、あるいは千ヶ月または数年の間、インドラは母親の胎内に宿っていた。生まれるとすぐに他の神々からの嫉妬を恐れた母に捨てられ、神々には見放され、更に父から敵意を向けられていた。なお、この父をトヴァシュトリだとする説がある。

 

インドラはトヴァシュトリ神の元で育てられたとも、父を殺したとも言われている。インドラはトヴァシュトリの家にあった百頭の牝牛に匹敵する価値の分のソーマを飲んでしまい、トヴァシュトリの怒りを買ってしまう(そして父を殺してしまう)その後一人旅に出て、ヴィシュヌからの友情を得るまで世界を放浪した。

 

インドラがヴリトラ退治に挑んだのは父殺しの後の孤独だった時で、友人となったヴィシュヌがインドラを支援した経緯がある。

 

『デリカシー無いぞヴィシュヌ様ー』

【実に無礼講な物言いです】

 

「人には気遣いますが、神にデリカシーなんていらないでしょう?言えば、アルジュナに稽古をつけたのも大半はシヴァだったとか」

 

「〜…………」

 

語らないが、とても顔に出ている。彼をもってしてもヴィシュヌは一蹴できるような存在ではない。ガルーダも呼ばれれば勝ち目は無いに等しい。

 

「だからこそ、このサバフェスでは父っぽいとこを見せたい。親子をしてあげたい。だけどどうするべきか二の足を踏んでいる…そんなところでしょうか」

 

「…自らの格に感謝するのだな。他者であるならば例え神であろうと神罰ものだぞ」

 

「それは感謝。生憎私は誰もが言いにくい事を言ってあげたくなるお節介焼きなので言ってしまいますがね」

 

ヴィシュヌはむしゃりとモロコシにかじり告げる。

 

「いいじゃないですか。自然体で。ありのままでアルジュナ君に接してあげれば」

 

「何を馬鹿な。神は神々の王だぞ?一般的な家族の如き振る舞いなど…」

 

「家族の、親子の間に必要ですか?それ」

 

「───……」

 

ヴィシュヌの言葉はとても鋭い。普段の奔放さは、世界に揺られる自然体から来ている。

 

アドバイスをするとなれば、彼に遠慮や遠回しな言葉遊びは無くなるのだ。維持神ならではの形態とも言える。

 

「あなたが粉をかけようとしていた藤丸龍華ですが、あの子は当たり前の愛、親の無償の愛すら奪われ、踏み躙られて与えられませんでした。魂で繋がった家族が出来ましたが、それでも血の繋がりの絆は、彼女が赤ちゃんを産むまであり得ません」

 

「…………」

 

「そんな彼女を見ておいて、見栄や体面を気にして実子から距離を取るというのはヴィシュヌ感心しませんね。いっそ刃や輪を持ち、ガルーダ二人がかりで私があなたをボコりますから今からピンチにでもなります?」

 

「!」

 

「『ソッチのほうが魅力的』でしょ?あなた」

 

ヴィシュヌの言は柔らかく、淡々としている。

 

だが、そこには恐ろしいまでの真に迫る響きがあった。彼的に、『与えられなかった者を知っているので、知りながら蔑ろにする者は許さない』という感慨の発露。

 

三神の中で、最も人の心に寄り添うのがヴィシュヌだ。世界を救う理由も『私が世界好きなので』という神格としての趣味である程の。

 

故に、割とリッカの境遇を知った後は家族に一家言あったりするのである。

 

「……やめておけ。祭事がタダではすまなくなるぞ」

 

「ですよね。ですからはい」

 

そう言って、インドラにヴィシュヌはモロコシパックを渡す。

 

「『息災かアルジュナよ。美味しいモロコシがあるのだが一緒にどうだ?』とでも言えば良いのですよ、細かく考えず、アルジュナ君を誘えばいいのです。親子なんて、ホントはそんなに気楽なものでしょう」

 

「ヴィシュヌ…。しかしだな、神は…」

 

「スケールが気になるなら『今から全て神が奢ってやろう!』とでも言ってあげなさい。息子に見せたいのはそりゃあ偉大なる背中かもしれませんが…」

 

ヴィシュヌはのんびりと空を見やる。

 

「居間で寝転がってイビキをかいてる姿も、割と息子の目には愛嬌として印象に残るものですよ」

 

「…残って良いものではなかろう、そこは」

 

「いいじゃないですか。弱みを見せられない家族なんて跡目争いか財産争奪戦をするような地獄ですよ?」

 

ヴィシュヌはインドラの友でもある。

 

だから、アレコレ世話を焼き助言するのもまた必然と言えよう。

 

「さて、腹も膨れましたし私はまたアトラクション堪能に行きますかね」

 

『楽しんでるなぁこの神様』

【ストイック極まるシヴァ様、システムチックなブラフマー様とは対照的ですね】

 

「そりゃあそうでしょう。苦行なんか見たくない、苦しむ人間なんか見たくない。そんなところで気が合ったから、私とインドラは親友やってるんですからね」

 

「親友とは言い過ぎではないか?というか少なくとも自分で言うな自分で」

 

「じゃあ言ってくれます?親友のヴィシュヌ、また会う日までって」

 

「誰が言うか!」

 

「でしょうね。だから私が言うんです。『言わなきゃ何も伝わらない』のですから」

 

「…!」

 

「それではまた。ヴァジュラくんちゃんたちもお元気で〜。アルジュナ君と進展しなかったらガルーダ案件ですよ〜」

 

風のように歩いていったヴィシュヌを見て…。

 

「…全く、くだらん気遣いをするものだ…」

 

インドラは何か、思いを固めるのであった。




リッカ「じゃあアルジュナ!また後でねー!」

アルジュナ「えぇ。マスター、佳き一時を」


インドラ「……………」

「おい」

アルジュナ「はい?……!」

インドラ「………………」

アルジュナ「……父上?」

インドラ「………………」

アルジュナ「………………」

インドラ「……………アルジュナ」

アルジュナ「はい」

インドラ「………モロコシ、食うか?」
アルジュナ「は、はい。あぁ、あのルゥ殿の」

「あぁ。極上だぞ」
「では、いただきましょう」

……その後。

1時間ほど、二人はモロコシを無言で食べ続け。


ガルーダ(もっと話題を広げないのか…)

心配で見に来たガルーダに突っ込まれていた。
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