人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
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カーマ『はーい。という訳で久しぶり何年ぶりかのなぜなにインド〜。今回はブラフマー編。イマイチ…いえ、妥当に人気のない創造神さんのお話です。アシスタントは私、皆様の愛の女神カーマでお送りします。衣装はカピバラ(どうぶつ)です』
ブラフマー『可愛いな。ところでカーマって女神だったっけ…?』
カーマ『ここでは女神なんです。という訳で行きますよ〜』
ブラフマー『そ、そうなんだ…じゃあ、よろしくね』
アキレウス(なんか始まったぞ)
ヘラクレス(ケイローン塾を思い出すな…)
ブラフマー。創造神ブラフマー、維持神ヴィシュヌ、破壊神シヴァから成る『トリムルティ』とされる内の一角。
全然人気がありません。不人気です。
『も、もうちょっとあるでしょカーマ。ほら、創造神だから皆に凄い祝福を与える優しい神だとかそういう…』
人間は魔族と戦うとかアスラとバチボコにしばき合うとかそういうエンタメに溢れた素敵な低俗神話が大好きなんです。
それに信仰の中で『苦行こそが目的、ゴールにあるものは大して重要じゃない』という考えが浸透していった結果、ゴールにいる崇高で深淵なるえらーいブラフマー様は『割とどうでもいい』という扱いになってしまいました。
最高神はシヴァ派か、ヴィシュヌ派か。2大派閥が台頭している中…
ブラフマー様はありません。ありがたいですね〜。尊すぎて雲の上ですね〜。
『戦隊モノで指揮官や博士が主役より人気が出るはずが無かったんだ…!』
まぁ私からしてみれば皆違って皆嫌なんですけどね。という訳で、ブラフマー様の大体の概要行ってみましょー
概要
インド神話がヴェーダ=バラモンに至る中で生まれた際、後に仏教的な概念をも取り入れて発展…ヒンドゥーに転じる中でも根底に流れ続けていた共通の概念にして、究極の目的たる古奥義
『ウパニシャッド』の思想である梵我一如…つまり、同置の成就。
その梵=ブラフマン=宇宙真理を男神として人格化した神性。それがここにいる、岸波白野さんに取り憑いたブラフマーさんです。
『皆、よろしくね』
三位一体では創造を司りますが、信仰上の比率を大体ヴィシュヌとシヴァに奪われている事もあってか…
後にはその創造神話すらも二神に上書きされてしまっていますけど。
『酷い!華がないのは解るけど!』
三大主神の中では例外的にヒンドゥー以前のヴェーダ=バラモンの頃より尊崇されていますが、実際には名ばかりの最高神(笑)で、教義的にも最も神格が高いのに民衆、修行僧からの人気は低い。
とっても低いです。ブラフマー主神信仰寺院、インドに殆どありません
さっき言った俗的な神話の方が人々に好まれている為、せっかくの深奥で複雑な設定がさっぱりと活かされていないのも理由ですね〜
仏教では梵天です
やっぱり宇宙の創造神ではあるが、仏教では創造神すらも循環する世界の一部に過ぎない創造神というカルマ業を背負った迷い続ける(創造神にしかなれない)存在……と見なされます。
というわけでカルマの本質を見抜くと同時に輪廻(サンサーラ)から脱け出す方法を見出した釈尊の下を訪れて、自ら頭を垂れ、その思想を万物に説き広めるように懇願した「梵天勧請」の説話で知られますねー。
『尊いものには自然と頭を下げるんだ』
“梵”とは元々は祭祀の際に唱えられていた讃歌や呪文を指していましたが、後に神話や英雄譚の解読から“それ”を生み出した物を探る哲学的考察へと思想が移る中、人に神々の名や属性を齎したと考えられた宇宙的な感応、神的イメージの源泉とされる様にりました。
対立する“我=アートマン=輪廻を越えて引き継がれる本性”とは、世界が繰り返されても変わらない根源的な生命の源とも呼ぶべき概念であり=“梵我一如”とは輪廻からの脱却の為に宇宙の真理を感得する為の行法=“梵”と“我”は本質を等しくする物であると悟り、業から逃れ“輪廻から抜ける事を目的とする行為”を指します。
……つまりブラフマーとは、その行法の最終的な受け手となる神性なのですね。
宇宙真理の人格化である事から、宇宙の創造者にしてヴェーダをも生み出した最高神とされ、更に古代から語られていた宇宙を創造したとされる原人伝説もまたブラフマー神話に収斂していきました。
なに言ってるかわかりました?
あんまりわかりませんよね?
不人気な理由はそれが理由です。
何故ならブラフマーは『真理を求める輪廻、宇宙的真理そのもの』
要するにゴールなんです。全てを破壊するクソ真面目なシヴァや、のんきな癖にやるときは絶対にやるヴィシュヌに比べて全く可愛げがないんですよ、この神。
『皆苦行すればするほど偉い、なんて考えたもので、苦行の果てにあるものを見なくなったんだ。必然的にそこにあるブラフマーも…』
どうでもよくなっちゃったんです。憐れですね〜。惨めですね〜。
最高神が下半神な最高神とどっちがマシなんでしょう。はいそこのヘラクレスさん。
〜
ヘラクレス『涙する人が少ないのならそれに越したことはないのでゼウスよりはマシでは』
ゼウス『息子ェ…』
〜
【梵天】
仏教では、ブラフマーは梵天と漢訳されました。
前述の様に苦行の虚しさを悟り、瞑想の果てに業の本質を見抜いて輪廻からの脱却の方法を見出した釈迦に帰依し、万物の創造者でありながら仏の弟子となったんです。
『グドーシ君はオレの師匠だよ』
アキレウス『ヤバすぎだろリッカの旦那』
でしょう?でしょう?
ヘラクレス『誰が旦那かは諸説ある』
は?ありませんが?
…仏教が実践思想から普遍的宗教(大乗仏教)へと姿を変えていく中で、釈尊が今生で悟りを開く以前から、過去生にて悟りの段階を一つ一つ積んで来たとする過去仏の思想が定着すると、梵天はその過去生をも含めた仏法の守護者であったとも考えられていました
繰り返しますが、仏教とバラモンは根本的には共通した思想を持つが立場から相容れる事はありません。
よって、成道者(仏陀)となったグドーシさんにバラモンの最高神である梵天が従うと云う構図は、仏教の優位と正当性を主張する上でも当然の帰結だったのです。
この説話を踏まえて、梵天は天部の最高神として仏教に於いて重要な地位を獲得する事になりました。
同じく神々の王たる帝釈天(インドラ)と共に、釈迦如来や菩薩の脇侍として付けられ、天然自然の輪廻からの脱却を実現した仏法の守護者とされたのです
ヒンドゥーにおける没落コンビですね〜
『アシスタントが…アシスタントが惨い刺し方をしてくる…!』
密教が伝来すると、十二天では上方の守護者とされました。
これはヒンドゥーでの設定を反映した物ですね。
姿は基本的には四面四臂で、ヴェーダ聖典や水壺を携えた姿をしています
長く白い髭をトレードマークとするおじいさんの姿とされますが、図像によっては若く美しい男神の姿でも描かれ鵞鳥に乗っています。
生まれてすぐに四方を見渡すべく四頭が生じたとされますが五頭だったのにシヴァに切り落とされてしまったと云うdis神話もあります。
仏教では中国を経由した姿である唐衣を纏い、手に巻物を持った姿が伝えられていましたが、密教ではインド由来の四面四臂で鵞鳥に乗る、ヒンドゥー本来の異形の姿も伝えられていますね。
真言は
■ノウマク サマンダボダナン ハラジャハタエイ ソワカ(大咒)
■オン ボラカンマネイ ソワカ(小咒)
が、一般的なものですね。
『あ、ありがとうカーマ…とてもわかりやすい解説だったよ…』
そうですか、それは良かったです。
本当はあなたなんてどうでも良いんですが、愛する部員の皆様のために頑張りますね。
逸話(というか世界規模のありがた迷惑)
このブラフマー、ゼウスとは別の意味で節操なしです。
何せ苦行をしている人なら例え魔族であろうが魔王だろうがすぐに祝福をホイホイ与えてしまうんです。
しかも厄介なことに、その祝福がどれもこれも厄介なものばかり。
抜粋しますね〜。
〜羅刹王ラーヴァナ〜
ラーヴァナ【なんとしてもラクシャーサ一族の再興を!我が悲願、我が苦行を見届け給え!!】
ラーヴァナは無数にある自身の頭を切り落とし、火に焚べるというドン引きものの苦行をしていました。頭がおかしいですね。火に焚べてますけど。
そしてラーヴァナの祈りはブラフマーに届いてしまいました。
ブラフマー『よく頑張ったね。何かご褒美いるかな?』
ラーヴァナ【神に負けぬ肉体をよこせ!!】
よこした結果神々はラーヴァナにボコボコにされてしまいヴィシュヌがなんとかしました。
ヴィシュヌ『はいはい、ラーマになってなんとかしますよ』
〜水牛魔王マヒシャ
ブラフマー『君真面目だね。何か欲しいものあるかな?』
【男に負けない力をください】
苦行好きの真面目な性格で、ブラフマーに懸命に祈った結果、
創造神に声が届きどんな男(神含む)にも負けないという圧倒的なアドバンテージを誇る祝福…
チートコードを受けることになりました。
神話で語られるブラフマー関連の祝福がやけに強大なのは、受ける側のアスラが異常に厳しい苦行を行ってポイントを貯めているのもありますが…
何よりも当のブラフマーを信仰している者の比率が少なく、結果的に顧客を離さないためにポイント還元サービスがよくなってるからだとされてますねー。
ちなみにこの神話でインドラはボッコボコにされます。惨めですね〜神々の王。
という訳で、エロいことにしか使わなかった女神を突破口にしようとした神々は戦闘女神、ドゥルガーをここで生み出します。
三叉戟(シヴァ)
チャクラム(ヴィシュヌ)
法螺貝(ヴァルナ)
槍(アグニ)
弓と矢(ヴァーユ)
雷と鈴(インドラ)
死の杖(ヤマ)
羂索(ヴァルナ)
数珠(生類の主)
水瓶(ブラフマー)
全ての毛穴から溢れ出る光線(スーリヤ)
剣と盾(死神)
衣と装飾品、乳海斧と様々な武器と鎧(ヴィシュヴァカルマン)
蓮華の花輪(海)
ドゥンや宝石(ヒマヴァット)
酒杯(クベーラ)
蛇族の首飾り(ナーガ)
というフル武装で暴れまわる戦闘女神です。
パールヴァティーの本性ですねー(笑)
〜ヒラニヤカシプ
かつて、アスラの起こした洪水によって大地が水に沈みかけたことがありました。
これに対し、光明神ヴィシュヌは第3の権現アヴァターラ・巨大猪ヴァラーハを遣わせて大地の引き揚げに向かい、その首謀者であった前述の魔王ヒラニヤークシャを討ち取りました。
ヴィシュヌ『お気になさらず。ライフワークですので』
兄弟の死に際して、怒りに燃えるヒラニヤカシプは、ヴィシュヌ打倒の苦行を開始しました。
マンダラ山の洞窟に籠り、遂には骨以外の肉体を蟻に食われるまで蟻塚に立ち続けるという常識外れの苦行を敢行。
頭おかしいんですかね。
曾祖父であるブラフマーに届き、肉体を再生してもらうと共に、自らが望む改造コードを受けることになりました。
その祝福とは…
『神にもアスラにも、人にも獣にも、昼にも夜にも、家の中でも外でも、地上でも天上でも、そしてどんな武器にも殺されない』
という、無茶な代物でありましたが…
苦行の対価としてヒラニヤカシプの願いは叶えられ、これによって、ただでさえ強大な魔王はインドラのヴァジュラ(雷霆)さえ受け付けない存在となったのです。
無様ですね〜神々の王。
この力を使い魔王は三界の支配に乗り出し、インドラの宮殿を乗っ取ると、民には神々への礼拝を禁じて己を讃えさせました。(真言:オーム・ヒラニヤーナ・ナマハ)
……しかし、よりにもよって魔王の息子プラフラーダは熱狂的なヴィシュヌ信者であり、更にはヴィシュヌを讃える説話を喧伝しまくりました。
プラ「 ご存じないのですか!? 宇宙はヴィシュヌさんが昼寝してる最中に生まれて死ぬ程度のもんなのです! ブラフマーなんかヴィシュヌさんのへそのゴマが孕んで生まれた程度の存在です。世界はヴィシュヌさんのものだー!(早口)」
ヴィシュヌ『照れますね。それほどでもありますけど』
王子であるプラフラーダの言葉ということもあってか、ダイティヤ族の若者達にも熱狂的なヴィシュヌ信仰が広がっていきます。
これを不味いと思った魔王は息子の暗殺を計画しますが、何故だか不思議な運が働いて王子は生き残ってしまいました
遂に我慢ならなくなった魔王は王子の直接の説得に乗り出すのですが、ヴィシュヌ信仰に侵されている王子は全く話を聞きません。
ヴィシュヌが全次元、全空間に遍在している全能の存在であるとかいう、量子論とか噛ってる人が反応しそうな屁理屈を捏ねる王子に対して、いい加減にイライラが募った魔王はこんなことを言いました。
ヒラ【お前の言うことが本当ならこの柱の中にもヴィシュヌは居るのか!?】
プラ「もちろん居ます!」
この返答についにキレたヒラニヤカシプが、【お前のような嘘つきは首をはねてやる!!】と柱を叩くと、熱狂的信者の為に秘かにサプライズ出待ちをしていたヴィシュヌが、神でも人でもない第4のアヴァターラ人獅子ナラシンハとなって飛び出しました
ナラシンハ『こんにちは。インド式ライオン丸です』
プラ「あ、あれは! ヴィシュヌさんの48の魔神殺しの一つ『ナラシンハ』だぁあ!!」
盛り上がる王子とは対照的に…
居並ぶ魔王配下のダイティヤ族とダーナヴァ族は、金色に輝く眼、眩いたてがみ、恐ろしい歯、剃刀のような舌、山の洞窟の如き裂けた口と鼻の孔を持ち、顎は割れ、その身体は天まで届き、太く短い首と広い胸、細い腰を持ち、月光のように白い毛で全身が覆われ、四方に伸びる数多の腕には鋭い爪を持つ恐ろしい人獅子の姿に怯えて逃げ出しました。
魔王は、自ら武器を取って人獅子に向かうものの……。
①【地上や空中では倒せぬ!】
ヴィシュヌ『そうですか。そのどちらでもないシャイニングウィザードで殺しますね』
②【武器など通じぬ!】
ヴィシュヌ『では武器じゃなくて鋭い爪で殺します』
③【昼や夜じゃだめなのだ!】
ヴィシュヌ『じゃあ夕方に貴方を没します』
④【家の中や外じゃ殺せぬのだ!!】
ヴィシュヌ『玄関はどっちですか?私はどちらでもないと思います』
……と、絶妙のタイミングと屁理屈を駆使して「いつ殺るの? 今でしょ!!」とばかりに腹を割いて始末したのだった。
ヴィシュヌ『一休さんも私のアヴァターラだった気がしますね』
なおほんの一例です。
ね?傍迷惑でしょ?
ブラフマー『あ、あ、ありがとう…すごくよくわかる説明だったよ…』
カーマ『実際なんでこんな迷惑なことを』
ブラフマー『シンプルなことだよ』
『苦労した分だけ、報われてほしかったんだ』
カーマ『ありがとうございました〜。皆さんを愛しています』
『スルー!?…だから、その』
ヘラクレス『?』
ブラフマー『時空を超えて、神話を超えて。この超特異点限定で…』
ブラフマー『君に、祝福を渡しに来たんだ。ヘラクレス。人類史で最も苦悩し、苦行を制覇した者よ』
ヘラクレス『……………』
複雑な名誉だ…。
ヘラクレスは、ぼんやりと感じたという。