人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
(バカンスを楽しむという名目で有給休暇消化をしにきたけれど、適当に宿を借りて楽しませてもらっても大丈夫…よね?)
エレシュキガル『ロコモコ食べたいのだわ…ん?』
『ヒロインXX』
エレシュキガル『うわっ…あんまり休暇に関わりたくないのから着信が来たのだわ…』
(……まぁ、イタズラとかはしないタイプだし…一応…)
『もしも』
XX『ロンゴミニアドの階梯解除を要請します!!』
『はぁ!?』
『ノーデンスおじい様は、生きとし生けるもの達を愛し戦っておりました。それは即ち宇宙の生きる意志の味方。故に私も光溢れる世界とその生命を護ります』
邪神狩りのナイア、水着モード。棺桶と上着のレザージャケットを脱ぎ構え、無数にあふれ出る深淵のヒトガタへと交戦を開始する。
『即ち…、月の夜に、鏖殺開始でございます!』
女豹のような肢体を靭やかに、荒々しく躍動させ敵陣へと飛び込むナイア。
【肉の身を捨てよ…】【無と、一つに…】【我らこそ、真理なり…】
ナイアはレザージャケットを脱ぎ、片手へと巻き付け装備する。
するとなんと、ジャケットが漆黒の槍…否、ドリルとなり無数の深淵の眷属たちを貫き裁断し、貫通し蹴散らしていく。
【【【【滅び、それは平等…】】】】
瞬く間にナイアを取り囲む眷属たちが、一斉に消滅する力を束ねた光線を彼女に叩き込む。
『!』
瞬間、ジャケットはナイアの腕から外れ解けたかと思うと鮮やかなまでに滑らかな形態変化を披露する。
それは新体操のリボン、クロスめいた軟体形状の布となり、抜群の軟体駆動を見せるナイアのタクトの様に縦横無尽にはためき、全てを防ぎ無力化する。
『ふっ!』
無力化したと同時に、ナイアはジャケットを肩に羽織る形で跳躍し月夜の空へと飛ぶ。
瞬間、ジャケットは飛翔するナイアの翼、羽へと形態変化を行い無数の魔法陣を展開し、地上へと紅きエネルギー弾を瞬く間に斉射する。
【【【【【【【オオオオオオオオオオオオオオ─────!!!】】】】】】】
無数の乱射に巻き込まれ、絶叫する眷属たち。しかしそれらは穿たれながら収束し、瞬時に海の巨人の様相を取る。
『────!』
ジャケットを翼から戻し、マントのように自らの肉体を翳すナイア。
するとそれらは鎧のようにナイアの肉体を纏い、同時に回転し全てを穿つ螺旋状の回転弾頭へと姿を変える。
『はあっ!!』
そのまま超速回転を加え、巨大化した眷属に向けて突撃を敢行。
【オ────────】
迎撃。しかし遅すぎた。形を成した中核に深々と突き刺さりしナイアは、自らの光を『解放』する。
『消え失せなさい。光ある世界の全てから!』
それは自らの動力源、『輝くトラペゾヘドロン』。それらは宇宙における神の光、真なる輝き。最大展開にてそれを、ゼロ距離から解き放つナイア。
【【【【【【【オオオオオオオオオオオオオオオオ────────!!!】】】】】】】
トラペゾヘドロンは、邪神ニャルラトホテプが『宇宙の生きる力』を収めた対自身たる切札。それらは反作用として、宇宙の深淵に絶大な特効を持つ。
故に、禁断の化身ならぬ闇の発露などには絶大なアドバンテージを有するのだ。
『お父さんが作ってくださったストレージ・コート・ジャケット…ご機嫌です』
ナイアが纏うコート、或いはジャケットはニャルラトホテプが手掛けた夏用礼装。
競泳水着、ビキニ水着、それらに加えたニャルラトホテプ自身の権能を有する万能物質コートは、繊維に物質形状に至るまで自由自在かつ水着の添え物として邪魔をしない。
夏における、娘への贈り物。妻やマイノグーラにデザインを頼んだ逸品であった。
『こちらは合流までに数を減らさねば!』
そしてそれを駆り、ナイアは駆ける。
『ノーデンス御祖父様の戦い、今ならば私も…!』
先んじてクトゥーラの指揮をリッカに頼み、自身は遊撃を担当している。
ならばこそ、自身にできることを。
夏の狩人。月夜に駆ける邪神の娘はハワイにおいて尚も健在であった。
…そして、颯爽たる彼女とは異なる、もう一人の邪神の娘もまた奮闘する。
『はぁあぁぁあぁぁぁぁ!!』
気迫と共に、クトゥーラが銀の刃を眷属たちへと叩きつける。
【全ては無為…】【全ては無価値…】【全ては虚構…】
『ううっ…!』
眷属たちに果敢に挑むが、彼女の能力の真髄は精神の平静と均衡を保つ鎮静の歌声。
そんなものが今何の役に立つのかと、猛々しく教育の下磨き上げた剣術にて戦闘を繰り広げるが、眷属たちは忌々しくも神の祝福、或いは輝けるものの祝福なき攻撃では退ける事叶わない。
【肉を捨て、我等と一つに】【虚構を捨てよ】【生を捨て、次なる次元へ…】
『戯言を…!』
今此処には信頼する道化師はいない。
ならば、マスターにサーヴァントとして貢献しなくてはならない。
そう気迫を込めるが、邪神の力を宿さなかった父の愛は、彼女に一騎当千の成果を与えない。
『くうっ!』
弾き飛ばされ、体勢を崩すクトゥーラ。
【【【死ね……】】】
反撃が、死として迫りくる。
『しまっ…!』
被弾、直撃を覚悟するクトゥーラ。
─────しかし。
【【【【【【グオオオオオオオオオオオオ!?】】】】】】
『月そのもの』から、月から振り注ぐ光が無数の矢となってクトゥーラを取り囲む眷属たちを貫いた。
『えっ…!?』
そしてなんと『逆巻く波濤の波』がまるで意志持つ龍の様にうねり、眷属たちを巻き込み地上の水の竜巻となりて呑み込んでしまう。
【【【【【【グガアアアアアアアアアアアアアア!!!】】】】】】
さらに瞬間、紫電の一閃が縦横無尽に輝き、水の竜巻ごと眷属たちを斬り刻み即座に無力化してしまう。
一瞬の戦闘…否『神罰』であった。
「大丈夫!?クトゥーラちゃん、無理はよくないよ!」
すると彼女らとチームを組んだリッカが、尻もちをついたクトゥーラを助け起こしに近づき手を差し出した。
『ま、マスター…今のは…』
クトゥーラは見逃さなかった。一瞬リッカの手に握られし得物、そして宙を舞う矛を。
「私の国には、八百万の神様がついてるからね!」
ウィンクするリッカは、改めてクトゥーラに向き直る。
「見たところ白兵戦に熟練してるって感じじゃないね?私が前衛やろっか?」
【オオオオオオオオオオ!ガッ────】
死角から襲ってきた眷属をノールック汚染魔力ガンドで無力化し、天沼矛で串刺しにするリッカがそうクトゥーラに問う。
『い、いえ!このままやらせてください…!』
クトゥーラの本懐はサポートだ。全ての精神を平静に保つ歌声を彼女は有している。
『傷つき、血を流さなくては同志や同胞、ゆくゆくは覇者となる身の面目が立ちません!私は、父や母が託してくださった期待になんとしても…!』
彼女は深く愛された。母に心から生誕を望まれ、また父から心の底から親愛を注がれた。
だから自身は、誰もが認めし覇者へと至る。皆を癒す…否。死地に送る冷血な支配者でなく、共に戦うものでありたい。
『必ずや、私は期待に応えてみせます!ですからどうか私にご機会を…ひゃぁ!?』
瞬間、リッカがクトゥーラのほっぺをひっぱる。きめ細やかなもちほっぺが、むにょんと伸びる。
「─────ふふっ、あははっ!」
『ふぁ、ふぁにをなふぁるのでふ!?』
お戯れを、と抗議するクトゥーラにリッカは笑顔を向ける。
「ごめんごめん!でも、肩の力を抜いてほしくてさ」
『えっ…?』
「血を流して、傷つかなきゃ戦ってないなんて事はあり得ないよ。あなたは今間違いなく戦っているし、立派に高貴なる者の役目を果たしてる。私が保証するよ」
クトゥーラの肩をポンポンと叩き、ウィンクするリッカ。
『そ、それは…何故…?』
クトゥーラの言葉に応えるのは、リッカではなく。
【グガアアアアアアオオオオオオオオオ!!】
ハワイをつんざく、巨大なる竜影の咆哮。
「おおっ、いきなりとんでもない大物が来たね!」
各地のエリアには戦っている仲間達がいる。戦線は維持されるが故に夜明けまで援軍の期待は薄い。
『こ、これは……』
三人で勝てる相手ではない。撤退しなくては。
『く、クトゥーラはクトゥルフの娘!お、恐れなどありません…!』
そう鼓舞しながら、脚は震えるクトゥーラを背中に庇うリッカ。
「怖くていいんだよ、クトゥーラ」
『!』
「任せて!ナイちゃん、いる!?」
リッカの号令に素早く傍らに立つナイア。
『ジークフリート様程竜退治は得意ではありませんが、共同作業といきましょう!』
「クトゥーラ。戦い方は一つじゃないよ!」
そう告げ──
ナイアとリッカは、深淵の竜へと飛びかかる。
クトゥーラ『な、何故…どうして…?』
(あなたは何故、そんなにも──)
?『──愛弟子を遠見してみれば、導きがいのある娘を見つけたか』
『!?だ、誰です!?』
アルケイデス『我が名はアルケイデス。邪神のたおやかな娘よ。我が導きに耳を傾けてはみないか』
『ある、けいです…?』