人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
リッカ「おぉ!ホントに!?」
ナイア『はい!夏の間、鍛えに鍛えたセクシーパワー、お見せいたします!』
深淵竜【ゴオオアアアアアアアアア!!】
ナイア『我流───『ハンティング・ウィケッド・ウィーヴ』!!』
リッカ「セクシーポーズ!?」
【!?】
アラストル【ハハハハハァ!!】
イフリート【オォオオォオオォオ!!】
リッカ「悪魔召喚!?」
ナイア『さぁ、アバンチュールのお時間です!』
『我が名はアルケイデス。ヘラクレスという忌々しい戒名を名乗る前の人間の名を掲げしキャスターだ。見知るに君は、ナイアと同じ邪神の娘だな?』
リッカとナイアが、黒き竜と戦うさなかの後方。クトゥーラは自らの頭に響く言葉に耳を傾け静かに瞠目していた。
『へ、ヘラクレス…!英雄の中の英雄…!そのような方が、私に如何な要目でしょうか…!?』
クトゥーラの性格は、帝王学で形作られたものを取り払えば穏やかで気弱なもの。当然ながらヘラクレスという最大級の英雄から話されて平然とはしていられない。
『うむ。用向きは単刀直入が良かろう。火急であろうことは目に見えている故な』
そしてアルケイデスは、クトゥーラへと語りかける。
『アルケイデスである今ならば言えよう。戦いとは武力だけではない。後方、中座、前衛。どれにおいても役割があり成すべき事がある。それを違えてはならぬのだ、娘よ』
『!』
それは先のリッカも告げたアドバイス。剣を振るう以外に成すべき事は存在しているのだと。
『聞けばそなたは前のループにて、皆を歌で鎮静させていたという。それは立派な功績ではないか。何を恥じ、気後れする必要があろうか?』
そう。邪神ニャルラトホテプが顕現してしまった最悪の事態にて、クトゥーラは自らの神性、クトゥルフの呼び声にて皆の精神を護った。
その懸命な姿と声は奇跡を成し遂げ、逆転に繋がった。それは紛れもなく、クトゥーラのみが出来た奇跡だ。
『──でも。でも私は…』
覇者としても。クトゥルフの後継としても覇を示したいと。
そして何より…
『ナイア様のような…完璧な邪神の娘となりたいのです…!』
美貌、戦闘力、人格。それら全てを兼ね備えた存在。
自身が常に憧れている自身が、歩いているかのような。そんな凄まじい存在。
自身が震え上がったニャルラトホテプと同格のクトゥグアを討ち果たせし、ニャルラトホテプの娘が一人。
今もまた、最前線で華麗なまでに戦っている。
『私も、私もあのように…!父の期待に完璧に応えられる娘として…!』
逸る理由はそれだった。ナイアを知れば知るほど、自身の至らなさを思い知る。
注がれた愛はきっと同じ。ならば自身が出来ない事には落ち度は自分にある。
私も、私もあの親子のように。あの親子たちのようにと。
『ほう、完璧な娘と申したか』
それを聞いたアルケイデスは、心眼(偽)、第六感起因のスキルををクトゥーラに授ける。
『果たしてそれは真偽をとらえているかな?』
〜
『ダンテ様から借り受けた魔具を顕現させ悪魔を仕向ける…!新たなる活用法です!』
自信ありげにセクシーポーズを取りながら、召喚した悪魔たちで竜を打ち据えていくナイア。召喚された悪魔たちは強力であり、巨大かつ不定形な竜を着実に追い詰め、傷つけていく。
「おおっ、凄い!何よりナイちゃんのセクシーポーズが凄い!!」
そう。ナイアは誰もがうらやむナイスバディな美女でありながら、ハニートラップ方面はまるで才能が無かった。油の切れた人形やブリキ人形、昔のソフビといった散々な評価を下されてきたノットセクシーなナイア。
そんな彼女が、セクシーポーズを果敢に戦闘に組み込み戦っている。それだけで、それだけでなんという進歩にして活躍であろうか。
【グオオオオオオオオオオオオ!!】
見れば竜も、雷と炎に絶えず焼かれ対処が追いついていない。それを逃す手はないと、リッカもナイアを援護する。
「いける、いけるよ!今のナイちゃんなら宇宙にだって負けない!阿修羅すら凌駕する存在だよ!」
勝利を確信し、リッカは叫ぶ。
「この戦い!私達の────」
しかし、次の瞬間。
「はおっっっっっっっっっっっっっっっ!?」
ばきり、あるいはごきり、またはぐしゃりと。
「へ…?」
おおよそ人間の人体から鳴ってはならない爆音と快音を打ち鳴らし、ナイアの行動の全てが完全に停止した。
「えっ!?ちょ、えっ!?ナイちゃん!?」
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜……!!』
ナイアはリッカの方を観ることしかできない。その動きも、先程とは打って変わって実に機械的だ。
『す、すみません…リッちゃん様…わ、私のセクシータイムは…一日のうち数十分しかできないということを失念しておりました…!』
先程、血路を切り拓く為に単身突撃を行っていた際も含め、ナイアの魔法のような奇跡…
その反動が、今此処に備わってしまった。
「大丈夫!?なんか丸太がへし折れるみたいなとんでもない音したよ!?人体的に大丈夫!?」
そして、必然の如き懸命な成果はもう一つ成果を見せてしまう。
【グオオオオオオアアアアアア!!】
反撃に転じた竜、先程呼び出していた悪魔達の消失。
「いけない!!」
慌ててリッカがナイアを庇い、形勢は一気に不利へと傾く。
「申し訳、ありません…!私は、はしゃぎすぎてしまいました…!」
ナイアを、竜の圧倒的スケールから保護しながらリッカは笑う。
「これくらい大丈夫!困った時は、お互い様だからね!」
その様子を、クトゥーラは確かに捉えていた。
「な、ナイア様…!リッカ様!」
『見ただろう。完璧な存在とはそうはいない。自らの自負と責任はよいものだが、時に視野をも狭める要因ともなる』
それを戒めとするように、アルケイデスは語りかける。
「戦いとは、殺戮するばかりを指すのではない。自らが出来ること、成しうる事を見つけ全うすることもまた、戦いなのだ」
アルケイデスは静かに語り、指し示す。
「ナイアたる娘とて、完璧などあり得ない。彼女もまた君と同じ。成長しており、かつまだまだ未熟な存在なのだ」
スタン状態となったナイアを懸命に守るリッカ。それを見て、アルケイデスは問う。
「今、彼女達を救えるのだとしたら。君が振るうべき力とは一体何だろうか?」
『───!』
アルケイデスの問い、言葉。
それに応えるよりも先に。
クトゥーラは、大きく息を吸い込んでいた。
【グオオオオオオオオオオオオ!!】
そして荒れ狂う、影の竜。ナイアとの間に割って間に割って入るリッカを苛烈に打ち据える。
「リッカ様、ダメです…!あなた様だけでも、撤退を…!」
セクシータイムの反動で動けぬナイアが、懸命にリッカに撤退の意を飛ばす。
「こっちは大丈夫!態勢を──」
【グオオオオオオオオオオ!!】
「!!」
強力なる一撃にて葬り去らんと、竜が大きく振り被ったその時であった。
【!!】
戦場に、たおやかで優しい『歌』。旋律が響き渡った。
「これは…!」
【グオオオオオオ、ガアアアアアアア…!!】
その歌を聞いて、悶え苦しみ出す竜。
「クトゥーラ様…!」
「クトゥーラちゃん!?」
リッカとナイアが同時に合点がいった通り。その歌は、クトゥーラが披露していたものであった。
(戦いとは、覇者が君臨するもの。そう教わってきました。ですが…)
クトゥーラは武器ではなく声を張り上げ、仲間たちを鼓舞する。
(力や意志とは、武力だけにあるものではない!私の父から授かりし力には、こういった形もある…!)
それは、ナイアに無意識に感じていた気後れやコンプレックスの消失。
オンリーワン、それでよいと悟ったが故の自身の方向性の開拓。
(リッカ様、ナイア様!どうかご無事であってくださいませ…!)
かつて邪神の発狂から皆を救いし歌の旋律。
それがまた、此処に解き放たれたのだった。
『よし、素晴らしい切り替えだ。ならばこちらも、その決断を寿がねば』
そしてアルケイデスはそっと、錫杖を振るう。
『我が試練と栄光、微力ながら力としよう!さぁ受け取れ、娘達よ!』
そして、キャスターとなったヘラクレス…即ちアルケイデスの魔術。
その一端が、解き放たれようとしていた。
【【【アオオオオオオオオオオオオオオオオオオーンッ!!】】】
リッカ「ッ!?」
ナイア「あれは…ケルベロス…!?」
?【素敵なお歌が聞こえましたの。ケルベロスが聞き惚れてしまうほどの素晴らしき旋律…思わず出てきてしまいましたわ!】
リッカ「あなたは…!」
ペルセポネー【おほほほほ!スペースウォーズ以来でしょうか!?冥府の女神ペルセポネー並びにケルベロス!お力をお貸し致しますわ!】
【【【アオンッ!!】】】
竜【……!!】
そして、さらに。
?【大丈夫かい?若いからといって油断は良くない。ぎっくり腰は癖になってしまうよ】
優しく、厳かにナイアの腰を治療する影。
リッカ「あなたまで!?」
そこにいた者…それは。
ハデス【ほら、せっかくのバカンスだし。ゼウス達も楽しくやってるだろうから…召喚にかこつけて、ね】
ペルセポネー【素敵なお歌に誘われ!冥界一家集結ですわ!!】
ケルベロス【【【アオンッ!!】】】
アルケイデス『冥界のケルベロス借り。我が栄光の一端を、此処に!』
クトゥーラの歌が結びつき…
ここに、冥府の王達が顕現したのであった。