人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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ヴィシュヌ『先に話した依代の名前は『馬神弾』。世界を救う、救い続けるものとして私が波長ピッタリで、お願いして遺伝子情報を借り受けました』

『今回はちゃんと彼にも待っている人がいる、という事も含め一人の娘の独白を聞き及んでみることにしました』

『そう、要するに…』

『本編のその『先』の出来事。ラーマやシータのように奇跡の再会を果たした者達のアフターです。良いですよね、二次救済』

『……ちょっと本編の離別の呪い強すぎません?インドラですらどうにもできないんです?』


とある独白〜世界を救う者を支える者〜

『……ありがとうございました。いいバトルでした』

 

 

『ッ!?馬神ダァァァァァァァァァァァァン!!』

 

 

『弾っ!ダメぇっ!……弾…!いやあああああああああああああああああっ!!』

 

 

 

「っ!?」

 

ガバッ、と勢いよく飛び起きる。ふと目が覚めると、そこはベッドの上だった。

 

…シャングリラ・カルデア。「楽園カルデア」と呼ばれるその場所の一角にある、現代日本の上流家庭を思わせる造りの部屋。しかし、室内には特殊な装置やコンピューター等がいくつか存在している。とあるエジプトのファラオが手がけてくださったものだ。

 

(…やだ、すごい汗)

 

触れてみると、額も、パジャマの背もぐっしょり濡れている。心臓の鼓動もバクバクとうるさい。若干痛いぐらいに。その理由は当然…。

 

(…なんで今更見たんだろ。あの時の夢…)

 

そう。さっきまで見ていた夢は、27世紀の世界での最後の戦い…世界を救うための作戦「オペレーション・ゾディアック」の中での出来事。そして、その時に…。

 

…すると。

 

「まゐ」

 

「っ!弾…」

 

声がかかり、そこでようやく私…紫乃宮まゐは、その声の主…ダブルベッドの上に乗ってこちらを見る、馬神弾の存在に気付く。一緒に戦ってきた仲間であり…最愛の人。楽園カルデアでは同居人でもあるから、彼がここにいることは何もおかしくないのだが…。

 

「…ずっと見てて…ううん、呼びかけてくれてたんだ」

 

「うなされていたからな。…大丈夫か?」

 

「…うん、大丈夫。大したことじゃないから。ありがとう、弾」

 

嘘だ。大したことない、なんてわけがない。あの時のことは今でも、大きなトラウマだ。

 

だけどそれを話してしまったら、弾に余計な気を遣わせてしまう。それに、今こうして、また一緒にいられているのだから、今更引きずるべきことでもない。

 

だから、私は笑ってそう答えた。弾が私を気遣ってくれたのが嬉しかったから、というのもあるが。

 

「…そうか」

 

弾もこれ以上の追及はしなかった。もしかして、全部察しているのだろうか。

 

私は着替えとタオルを取りつつ、弾に言う。

 

「ちょっと、シャワー浴びてくるね。汗びっしょりになっちゃったから」

 

「ああ」

 

 

 

「…………」

 

シャワーを浴びながら、私はふと、昔のことを思い出していた。

 

 

『バトスピやろうぜ?』

 

『…ヴィオレ魔ゐ!』

 

『ああ、その名前もう過去だから。今の私は紫乃宮まゐ、本名に戻ったの』

 

 

『もっと…もっと強い奴とバトルしたいんだ。もっと熱いバトルを…体中沸騰するような凄いバトルだ』

 

『じゃあ行く?あなたのバトルを、皆が求めている場所があるの』

 

 

…グラン・ロロと地球の命運をかけた、異界王との戦い…その後の混乱の最中で別れて以来の、馬神弾との再会。彼を未来に誘った日。あの時から全てが始まった、というのは言い過ぎかもしれないけど、少なくとも、あの行動によって、運命は大きく動き出した…のだと思う。

 

(…あの時のあなたは、ただただ熱いバトルに飢えてたっけ)

 

世界に負けて、憎しみに走らないように逃げて、バトルスピリッツにのめり込んでいた彼。かつての熱さは、なりを潜めていたかに見えた。

 

…だが、本質は変わっていなかった。27世紀での、弾のライバルにして友・月光のバローネとのバトルの時の言葉が、今も私の胸に残っている。

 

 

『…最初はお前と同じで、俺もこのバトルフィールドで戦うだけで満足だった。でも今は違う!…皆が困ってるって知ってしまったんだ。苦しんでる人がいるのに、知らん顔なんてできない!』

 

 

地球リセット、人間と魔族の争い。弾はそれを知って、また誰かの為に戦う熱さを取り戻した。「人間も魔族も、救える者は全て救う」という理想を掲げて。

 

…そして、いつからだっただろうか。そんな弾のことを、好きになっていったのは。いや、もしかしたら最初から…彼を未来に連れてくる役目を買って出たあの時から、既にその気持ちはあったのかもしれない。そしてその気持ちは、どんどん大きくなっていった。

 

…それと同時に膨らんでいったのは、無力感だった。自分達を、そして弾を取り巻く黒い噂や心無い声、そして姿の見えない陰謀。そんな中で弾が、皆が必死に戦っているのに、何もできないでいる自分がもどかしくて仕方がなかった。

 

 

…だから私は、弾や仲間達のもとを去り、魔族であるバローネと行動を共にした。

 

「自分にできること」を探して、魔族の避難誘導を手伝ったり、魔族内での混乱をバトルで鎮めて彼らの協力を取り付けたりして、自分なりに世界の為に戦っていった。

 

(自分から出ていったのに、一人で泣いてたっけなぁ、私)

 

…そんな中で、私は知ってしまった。

 

───馬神弾は、西暦2010年8月30日を最後に、消息を絶っている。

 

それはすなわち、私が弾を未来に連れてきたその日以来、弾は現代に戻っていないということ。

 

…つまりは、弾は未来に残ったか、もしくは未来で命を落としたのだと。

 

それを知った私は、世界を救うための最後の戦い…十二宮Xレアの力で、南極にある「神々の砲台」を起動し、それを使って地球のコアを撃ち抜くことによる地球リセット回避作戦…「オペレーション・ゾディアック」に赴こうとする弾を止めるべく、戦いを挑んだ。

 

この作戦で、弾が死んでしまう…そんな気がしたから。

 

 

…だけど、それを知っても、弾は変わらなかった。進むことをやめなかった。私なんかじゃ止められなかった。

 

…そして、敗北の一歩手前まで追い詰められたところで、ついに私は言った。言ってしまった。

 

 

『弾っ!……あなたのことが好きなの…愛してる!!』

 

『っ!』

 

『あなたを最後の戦いに…引き金を引かせに行かせたくない…だから私に負けてよ!』

 

『…俺は最後まで勝ち続ける。まゐ、お前なら分かるだろ?』

 

『そんなの分かりたくない!私は、あなたを喪うために未来に連れてきたんじゃないっ!』

 

 

…まあ、結局そのまま負けたわけだが。でも、あんな形での告白でも、弾は応えてくれた。

 

 

『まゐ、俺はこの時代に来て、生きる力を取り戻せた。……お前が俺を救ったんだ。ありがとう』

 

 

『…お前がいなくなって、これでも結構ダメージだったんだぞ?帰ってこいよ。俺にはお前が必要だ』

 

 

(…正直、すっごく嬉しかったなぁ)

 

だけど、そんな時間も長くは続かなかった。

 

 

『帰ってきたら、何がしたい?』

 

『そうだな……あっ』

 

『なに?』

 

『……カレーが食べたいな』

 

『じゃあ、私作るから、食べてね』

 

『ああ』

 

『そうだ。アンとファンもいるから、いっぱい作んなきゃ……』

 

 

……そんな約束も果たされることはなく、弾は神々の砲台の光に消えた。世界を救うため、砲台の「引き金」になった。

 

そう、さっき見た夢はこの時の光景だった。

 

…ずっと一緒にいたかったのに、それは叶わぬ夢になってしまった。

 

 

……その後のことは、あまり覚えていない。はっきり覚えているのは、作戦が終わった後のことから。

 

未来で出会った仲間達とも、未来に残るって言ったクラッキーとも別れて、すずりんや剣ちゃんと一緒に現代に帰って。それから……髪を切った。

 

あの時の私は、弾がいつか帰ってくるのを待っていたんだと思う。

 

だけど、待てど暮らせど、弾は現れなくって。その間にも、剣ちゃんもすずりんも…私自身も、自分にできることを探し始めて。

 

 

……そしていつからか、私は弾を待たなくなった。帰ってきてほしいと思うより、もうゆっくり休んでほしい…もう戦わないでほしいと思うようになった。

 

フィクサーから命を狙われながらも、私は難民保護や、戦争を望まない魔族との協力の為に奔り続けた。あの日々を、そこで得た全てを生きる力にして、自分にできることをやり続けていった。

 

そんな中、十二宮Xレアを悪用して魔族殲滅を謳う、「人類至上戦線カーディナル・サイン」が現れて、私もその構成員・ターナの接触を受けた。

 

私を捕らえた彼女と言葉を交わす中…私は、弾の声を聞いた。いや、声を聞いただけじゃない。知らないどこかで戦っている弾と、しかし確かに「逢った」のだ。

 

 

『…遅いよ、弾。カレー、残ってないよ』

 

『分かってる。…俺が選んだ道だ』

 

 

…最初に出てきたのはそんな言葉だった。待たなくなったくせに、結局未練たらたらだったんじゃない…と、今になって思う。

 

弾が私達の世界に「帰ってきた」あの時、仲間達のデッキに出現していたカード「激突王のキセキ」。その存在を確かめるために自分のデッキを見ることすら躊躇われてしまったのも、あの時のことがまだ心の傷になっていたからだと、今なら思う。

 

 

『まゐ……俺が戦い続けるのは…一人じゃない、そう、思えるから。……まゐ、ありがとう』

 

『っ……ありがとう、弾…』

 

 

…そんな短い会話だったけど、私達にはきっとそれだけで充分だった。

 

 

その後、私は剣ちゃんとすずりんに助け出されて、弾はカーディナル・サインの首魁レオス・ギデオンに勝って、私達はまたそれぞれの戦いに向けて歩き出した。

 

 

…そんな日々の中で、それは唐突に訪れた。

 

 

[紫乃宮まゐ様

 

突然のお手紙、失礼いたします。私は、「楽園カルデア」という組織を支援する者でございます。

此の度は貴女様に、我らが楽園へのご招待を致したいと思い、筆を執らせていただきました。是非、一度ご来訪いただけますでしょうか。もしよろしければ、一つの拠点としてここ楽園に留まっていただければ幸いに存じます。

…この後、いつの日か、貴女様のお力が必要となる戦いが起きると思われます。その場にて、我らが友・藤丸龍華やその仲間達と共に戦っていただけると、私としても幸いでございます。

それでは貴女様と、「貴女様の大切な方」に、楽園にてお会いできる日を、楽しみにお待ち申し上げております]

 

 

どこからともなく、私宛てに届いた手紙。楽園カルデアとは何か、藤丸龍華とは誰のことなのか…分からないことだらけだったが…。

 

 

『…行こう』

 

 

決めるのに、そう時間はかからなかった。私が何の役に立つかは分からないけれど、私の力が必要になるのなら…行かないといけない。そう思った。

 

…そしてきっと、もう1つ理由はあったんだと思う。

 

(…やっぱり、また逢いたかったんだろうなぁ)

 

「貴女様の大切な方」が弾のことであるということは、すぐに直感した。そして、その楽園カルデアという場所に行けば、弾にまた逢えるだろうということも。

 

 

…そして、私は招きに応じて楽園カルデアに来て…弾を見つけた。その姿を見た途端、色々とこみ上げてくるものがあった。

 

とある王様とバトスピをしていた弾は、とても楽しそうで…驚いたけど、なんだか嬉しくなった。

 

結局その後、弾はその王様…オーマジオウさんに色々連れ回されてたし、私は、「御機嫌王」とも呼ばれているウルクの英雄王・ギルガメッシュ王に呼び出されてたから、その時はまともに再会の言葉も交わせなかったけど。

 

だけど、不安には思わなかった。…失った時をこれから埋めていける、そんな気がしていたから。

 

 

ギルガメッシュ王と、その傍らにあるエア姫は、私に援助の話をくださった。愉悦を求めるお二人のことだから、ただ善意だけの援助ではないのだろう。成功した時の笑顔も、失敗した時の涙も、もしかしたらそれぞれ彼らの愉悦になるのかもしれない。

 

あるいは、「やってみせろ」という思いもあったのかもしれない。私達が歩む道がどれほど困難な道のりか、彼らが分からないはずもない。そんな道を私達がどう歩んで、どんなものを残すのか、見たいのかもしれない。

 

…そこまで分かった上で、それでもその支援はとても嬉しかった。彼らのその想いも、背中を押してくれるもののように感じられた。

 

…そして何より、ここには弾もいる。一緒に過ごせる時間がある。叶わなかった筈の願いが今叶っている。

 

それらの全てが、私に限りない勇気をくれる。

 

 

 

「終わったか、まゐ」

 

「うん」

 

シャワーを浴び終え、着替えて出てきた私に、弾が声をかけてくる。彼は私の机の上にあった楽園カルデアのオペレーター業務や食堂業務などに関する学習資料を眺めていたらしく、それを机に戻して私に視線をくれる。

 

じっと待っててくれたのかなぁ、なんて思うと、なんだかまた愛おしくなった。

 

 

……色んな国、色んな時代、色んな世界から、多くの人々が、それこそ人間であるか否かを問わず集い、支え合って、笑顔で過ごしている。この素晴らしい場所のような未来を目指して、私は歩き続けよう。

 

それが何年後、何十年後…あるいは何百年後になろうとも、そんな未来が来ると信じて、その為にできることをしよう。私の人生の全てを使って、精一杯のものを残そう。

 

それだけじゃない。この楽園カルデアに招かれたからには、ここで私達を受け入れてくれた皆のためにも、私達ができることをしよう。そう決めた。

 

 

そして……その道を歩く勇気を持つためにも、これからの人生、今度こそずっと一緒にいられたらいいな、と思う。それぞれの戦いがあるから、片時も離れずとはいかなかったとしても…身と心を休める時ぐらいは、共に。

 

あと何年、何十年生きられるかは分からないけれど…。

 

「……これからも傍にいさせてね、弾」

 

私がそう言うと、弾は微笑んで答えてくれた。

 

「ああ。もちろんだ」




ヴィシュヌ『おや、見れば見るほどそっくりですね』

『せっかくなのであの子に、我がラクシュミーの依り代をお願いしてみましょうか』

『まぁそれはともかく。次話の投稿は5分後ですよー。アナザーガタックさん、プロット感謝でございます』

『ではまた。大切な人への想いは必ず言葉にしましょう。ヴィシュヌとの、約束ですよ』
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