人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
リッカの手から繰り出される、ナインライブスネメア獅子波動。
ナイア『ジャックポット…それ即ち大当たりです!』
無数に撃ち放たれる、必殺のヒドラガトリングガン。必滅の毒を撃ち放つナインライブスヒュドラ毒蛇掃射。
【グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッ!!!】
断末魔を挙げ、巨人が堕ちる。
大英雄と人の力。必然の結末であった。
リッカ『よし!!』
見れば、空が白み始めている。夜明けも間もなくの証だ。
ナイア『クトゥーラ…一皮剥けたのですね』
勝利を確信し、登り始める朝日を待つ。
ハデス【──────!!】
しかし。
【馬鹿な、この気配は…!!】
ケルベロス【【【キューン……】】】
崩れ行くイドム・ティターンから、それは出ずる。
ペルセポネー『あり得ますの、そんな事が…!?』
ティターンの存在していた空間が、圧縮自壊し。
リッカ『!?』
無色の太祖竜『─────グギャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!』
空間を引き裂き。
ソレは、現れた。
ハデス【───テュフォン…!!】
『ギシャアァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!』
先の巨人の存在崩壊より、ハワイより現れし『ソレ』。竜のようでありながら、それはゼウス達異星機構艦隊のフォルムを有する機械神の意匠を有するもの。
『テュポーン、お父様…!?』
ナイアの知る、スペーステュポーンを機械にしたかのような意匠故、すぐに得心に至る。
テュフォン、或いはテュポーン。ギリシャ神話における最悪にして最大の怪物王。
ギリシャ神話全ての怪物の祖であり、大神ゼウスすら討ち果たした最悪にして最凶の厄災。台風の語源たる滅亡そのもの。
かつての神々が震えおののき、逃げ出すことしか叶わなかった窮極の【現象】。ギリシャに破滅を齎すドゥームズデイ・クロック。
在ってはならない存在が、此処に姿を現す。
『ゴギャアァアァァァァァァァァァァァァァッッッ────────!!!』
その咆哮は、ハワイの全てを震撼させ戦慄を撒き散らす。ニャルラトホテプが狂気とバッドエンドを撒き散らすならば…。
こちらは、デッドエンドを齎す怪物だ。
『我が父に煮え湯とトラウマを齎せし噂の太祖竜か。個人的にはグッジョブと言っておきたいが…』
『─────!!』
無色の太祖竜が、ハエの如く浮かぶ二人に狙いを定めた。
その威容は、機械的な三つ首竜。両腕がロケット状の推進機能を有した機神の様相を持つ者。それはアジダハーカやミラアンセスともまた違う、しかし一つの竜種の頂点。
『ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
三つ首が、リッカ達に臨界までエネルギーを溜めた一撃を放たんと口を開ける。それらはそれぞれが、ゼウスの雷霆に達する程の一撃。
『ナイちゃん!』
『リッちゃん様!!』
リッカが素早く『蒼天囲う小宇宙』の準備を、ナイアが即座にトラペゾヘドロンの展開を試みる。
しかし。
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
そのエネルギーチャージは、余りにも速く。
抵抗より速く──
一斉に、三つ首から放たれた。
『『────────』』
戦慄、走馬灯など見る由も無く。
二人は、その威容に包まれ──。
「────やれやれ、ここがハワイで本当に良かったです!」
その太祖竜の破滅は。
『戦艦の残骸が大きい顔してるの、可愛いけど…めっ、だよぉ』
ハワイの名を冠する女神と、正真正銘の『始祖』たる現象により阻まれた。
『ルゥちゃん様!!それと…!』
『ペレ、様…?』
そこに在りしは、白き祖龍ルゥ・アンセスとハワイの女神ペレ。
火山から生まれる大地のエネルギーと、数十分に薄めた雷槌によりテュフォンの威力を相殺したのだ。
「はい!ハワイガイドペレです!そして凄まじい気配がしたのでルゥ様にお伺いし御力をお借り致しました!」
『アレは確か、ゼウス君達と戦って滅びた筈のティターン艦隊の残骸…?なぜゆえこんなところにあるのかなぁ』
『グゥウウゥウゥウゥウゥァァァァァァ…!!』
睨み合う、始祖の龍と太祖竜。本来ルゥは生物同士の諍いには可能な限り干渉をしない。
しかし幸いだったのが、ゼウス達ギリシャ神話の中枢は、『外宇宙から地球に漂着した異星艦隊群』という事実による『外来的侵略生物』という裁定が下る事実。
つまり、ギリシャ神話の全てはルゥ…ミラアンセスからしてみれば駆逐、絶滅対象になり得る存在なのだ。それは気兼ねなく自身が対処していいという意味であり、故に介入が可能となった。
『もしかして、ティターンの残骸が人間の皆のテュポーン神話と合体して一つの神格になった感じなのかなぁ…』
リッカ達を庇いながら、ルゥはテュフォンの在り方を考察する。
かつてテュフォンは、ゼウスの雷霆すらコピーし彼の足の健を切り幽閉する活躍すら見せた。
それは僅かながらでも、神体における権能が残っていたが故の成果であるのか。
『グゥウウゥウゥァァァァァァァァァァァァァァァ!!!オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!』
テュフォンが絶叫する。それは、ミラアンセスを認識した瞬間、警戒と敵対のレベルを引き上げたかのような反応であった。
「なんだかあのメカ竜怒ってませんか!?ルゥ様何か致しました!?」
『んー…私をカオスと誤認でもしてるのかなぁ。私、一応星団母艦から地球を保護するのも使命の一環だし』
テュフォンの出力が、これ以上無いほどに跳ね上がる。それは、まさにゼウスの雷霆に通ずるレベルの大出力。
『グゥウウゥァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!』
不倶戴天の存在を抹消せんが如く、ミラアンセスに向けてテュフォンの全身全霊がフルチャージされていく。
『丁度いいや。囮になろーっと』
ばさり、と天空へ飛翔し、ミラアンセスがテュフォンと向かい合う。
『ルゥ様!いけません!!』
「ナイちゃん!?」
しかし、その対峙を制したのはナイアであった。
『あの太祖竜、ともすればテュポーン様と同じ『進化』をする個体かもしれません!ゼウス様の雷霆に加え…!』
【万が一、アンセス様の雷槌まで習得されればハワイが消し飛ぶ案件になるやもしれんか…!】
そこに念話を飛ばせしは、ニャルラトホテプ。管理者としてもこれは緊急事態であった。
【中途半端はなりません、アンセス様。拮抗すら赦さぬ【雷槌】の開帳を申請します】
『えぇっ。それはハワイが…』
【故の最大展開です。貴方様の雷槌ならば『ハワイが消滅した』という因果現象すら抹消できるでしょう】
テュフォンのみを抹消するのでは足りない。
拮抗してしまってはハワイが保たない。
ならば、神と龍の権能にて『テュフォンが現れた』という事実そのものをテュフォンを完全消滅させる雷槌にて実行する。
『むぅ…私の雷霆は、ルゥちゃんの雷槌をモチーフに鍛冶屋に作らせたもの。オリジナルの彼女のパワーなら可能だけど…』
その事態に向け、更に現れし天空神が念話を齎す。
『あ、クソ親父』
『息子よお口が悪いぞ〜。いや、今はそんなことを言ってる場合ではないぞアルケイデス』
真名を空気を読んで呼ぶハワイの天空神、ゼウスが神妙に推察する。
『神話と因果により、私はテュフォンに『負けている』。神話の因果関係をサーヴァントとして覆すのは容易ではない。私の雷霆では最悪の事態にしかならんだろう』
『ならば、かの祖龍に任す他無いのか?』
「いえ!私がハワイのガイドとして、夜明けを迎えた瞬間にテクスチャをなんとかして二日目にしてみせます!そうすれば、夜の被害や損害は引き継がれません!」
自信ありげにペレが叫び、リッカが捕捉する。
「アルケイデス!アトラスの天空を盾にするのはできそう!?令呪も三画切るから!」
『それならば可能だ。だが、質量の面であらゆる事象が未知数だぞ。覚悟せねばならん』
もし、雷槌と雷霆の拮抗により天空が砕かれれば、全てのハワイの崩壊に繋がる。
「ペレ様にパスできればいいんだよ!夜明けはもうすぐだから!!」
見れば、日が顔を出し始めている。朝は間もなくやってくる。
『グゥウウゥウゥウゥァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』
怨敵カオスとアンセスを誤認し、最大出力を放たんとするテュフォン・ブランク。
【アンセス様。ハワイ管理者の一角として奉ります。雷槌を此処に。テュフォンの雷霆の完全なる相殺を】
『うん、いいよぉ。…あのテュフォン、消していいのか解らないけど…しょーがない!』
ルゥが全身全霊の雷槌を放たんがため、胸と眼光を真紅に染める。
「間に合いますように間に合いますように間に合いますように…!!」
懸命に祈るハワイのガイドペレ。
「令呪三画!アルケイデス、アトラスの天空を!!」
『うむ、受け取れ!!』
ハワイの一日目、最大の分水嶺。
2週目における長い夜が、終わろうとしていた。
ハデス【いけない…!万が一があれば皆のバカンスが…!ペルセポネー!神体を使う!】
ペルセポネー『よくってよあなた!この身をカルデアに生きとし生けるもの全てに捧げますわ!!』
ハデス【姿隠し──テュフォンに聞き及ぶを願うしか無い…!】
その時。
黒猫【にゃーん】
ハデス【!?】
ハデスの前を…
黒猫が、横切った。
(感想メッセージは明日以降返信します)