人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
アンセス『───────……!』
最大の太祖竜、そして祖龍がぶつかり合わんとする、一日目の夜明け前、最も深き夜の闇にて…
リッカ『アルケイデス!お願い!!』
アルケイデスの天空、ミラアンセスの雷槌、そしてテュフォンの雷霆が響き渡らんとした──
その時。
黒猫【にゃーーおん】
黒猫の、一鳴きが響き渡り。
アンセス『ふぁ?』
テュフォン『!!』
空間、つまり空に。
──鮮烈なる、亀裂が走った。
『んん?なんだろ、あれ…』
ハワイにおける一日目の決戦、混沌と概念が激しくぶつかり合っていたハワイの夜に、突如常識の崩壊が訪れる。
それは、黒猫の一鳴きがきっかけであった。どことも知れぬ黒猫の、不思議にも響き渡るその声音がハワイに響き渡った時、それは起きた。
───天が、ひび割れ、砕けていく。それは、宇宙の別から来るかのような現象であった。
『ふぁ…?』
テュフォンの排除に懐疑的かつ、雷槌の使用に細心の注意を払っていたアンセスは一際早く臨界間近の雷槌の発射を取りやめる。
【ナーオ。にゃーーおん。にゃー】
不気味なまでに響き渡る、黒猫の鳴き声。本来のスケールならば、聞こえることなどあり得ない。
『こ、これは…?』
「ネッコの鳴き声なんてどこから!?じゃんぬが言ってた黒猫がニャンと鳴くサバトってこれ!?」
リッカとナイアも、困惑を抑えられぬまま割れていく天、猫の鳴き声を聞き及んでいく。
『──あの天空より、何かが来るぞ』
そして、その変化にアルケイデスは思い至った。
『これはヘラ…否、それ以上の『女神』か…!?』
「ヘラ様以上の──」
リッカがそう、聞き及んだ瞬間だった。
『────────────!!!!』
天空が砕け、それは現れる。
『あれは────』
ゼウスらが目にしたもの、それは『銀腕』であった。
「えっ!?あれ!?」
リッカは、それを瞬時に見分け導き出す。あのフォルム、細部は違えどバビロニアの降臨にて魂を焼かれた今、忘れるはずもない。
「マルドゥークニキ…!?いや、違う!」
その細部、細身の腕は類似こそあれど異なるものと把握を行う。
それは、規格を同じくするも別型、或いは類似型。
天空を突き破り、引き裂いたその腕こそはマルドゥークに近しいものと理解したのと同時に、輝く銀腕は動いていた。
『むぐぐ!?むぐー』
一瞬チャージを中断していたルゥを、敵対勢力としてはみなさなかったのか。その腕はルゥの口を塞ぐ形で雷槌の発射を制する。
雷槌の威力はゼウスの雷霆、主力艦の主砲や伝承の雷を遥かに凌駕する粛清権能。万が一にも出す事を制止したが故の行いか。
『むー』
アンセスとしても、いくら繊細にコントロールすると言えど万が一の影響あらば聖杯の破壊や特異点の重力崩壊は容易く起きる。それ故、制止され止まることは吝かでなく、その銀腕の行為の意図を汲み沈黙する。
『────』
祖龍の賢明さを讃えるかのように、銀腕の片腕は安らかにアンセスを…ルゥを撫でるかのように動きを沈静化させる。
『ゴギャアァアァァァァァァァァァァッッッ!!!』
しかし対するテュフォン・ブランクの最大展開の攻撃は止まる様子を見せない。それにより、拮抗する相手がいなくなったことによりその攻撃は最大限の効果を発揮することになる…
『案ずるな、天空は既に──』
アルケイデスが展開していた天空の防護。それを行う前に、状況は変転していた。
『────────!!』
謎の黒猫の鳴き声に応えるかの様に現れた、天の銀腕。尚もチャージし、荒れ狂うテュフォン・ブランクに向けて───
『ゴギャアァアァァァァァァァァァァッッッ!!!?』
渾身の、片腕による殴打を見舞わせたのだ。それは荒れ狂い、猛り狂う程に激しき銀色の鉄拳。抉り上げるようなアッパーカットであった。
『なんと……』
心眼で事の次第を見ていたアルケイデスは瞠目する。その銀腕の、細身でありながら圧倒的な腕力や齎される力の規模には大いに覚えがあったからだ。
それは、リッカも思い至ったように。ギルガメッシュの宝物庫の最奥に眠る英雄神にして、楽園カルデア最強最大の守護神。
『マルドゥーク、その類似型が存在していようとは……』
戦慄と共に、しかしテュフォン・ブランクはその行動を完遂せんとする。
『グゴ……ガアアアアァァァッッッ!!!』
込められたエネルギーを、阻まれた態勢をねじ伏せ撃ち放たんとする。戦慄するべき神威の主砲を、断固とした破壊衝動で完遂せんとしたのだ。
『ガアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!』
臨界を超え、撃ち放たれる必滅の雷霆。謎の銀腕に殴り飛ばされながらも、それはアルケイデスの天空に向けて放たれる。
その必殺の一撃は、正しくアルケイデスが用意した天空を貫いた。本来ならばテクスチャを完全粉砕する一撃を、リッカらが用意した天空は減衰せしめてみせたのだ。
──しかし。
『グゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』
殴り飛ばされながらも発射し、天空に阻まれながらも太祖竜は渾身を振り絞った。
それによりテクスチャの崩壊が阻まれ減衰した一撃が、なんと天空を貫通しハワイの空間そのものに突き刺さらんとしていたのだ。
『死なば諸共とは、愚かな…』
アルケイデスが嘆くが、それを阻まんとする事は容易ではない。巨大な山脈が如き天空を貫き貫通し、夜明け前のハワイを吹き飛ばすに値する一撃が放たれたのだ。
「あーダメダメいけませーーーーーん!!ハワイがァーー!!ハワイそのものがァァー!!」
ペレの祈りが間に合うか間に合わないか、それによりハワイの天空が吹き飛び消失するか否かの、その時。
『【グオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッ!!】』
天空を引き裂く咆哮と共に、リッカやナイアはさらなる非現実的な行動を目の当たりとする。
『リッカ様!ご覧ください!あれを!』
「あれって──!?」
ナイアが指差す方向を見やるリッカは瞠目を表さずにはいられなかった。
なんと、そこには赤紫と、青白のカラーリングの『テュフォン』としか呼べない形態のメカドラゴンが飛翔していたからだ。テュフォン程の存在が大量に存在するなど、ギリシャでの決戦以外ではあり得ない事態だろう。
『あれ?あの娘達、確か…』
アンセスが確認するまでも無く、突如現れた2機の『【太祖竜】』は、同じ様に雷霆を、主砲を極限までチャージする。
「【ゴギャアァアァァァァァァァァァッッッッッッッッッ!!】」
まるで姉妹のように放たれたそれは、テュフォン・ブランクの放った雷霆を相殺するかのように全く同じ軌道にて撃ち放たれた。
『あぁっ…!』
「ナイちゃん!!」
世界が消滅するかのような激しい閃光、衝撃。咄嗟にリッカがナイアを庇うも、世界を破壊し尽くす太祖竜の主砲の激突という終末的事態に、あらゆる推測と推察は困難となる。
(こうなったらアジーカとアンリ、初華に頼んで私が全部なんとかするしか…!!)
誰が味方で、誰が敵で、何をどうすれば平定となり収まるのか。それすら見えぬ混沌の只中で、リッカは自身の全霊を切る決断を下さんとする。
その時だった。
「!?」
銀腕がリッカとナイアを優しく包み込むかのように現れ寄り添い。
【テュフォン!!我等が冥界一家から目を離すなど言語道断ですわ!我が夫ハデスは、ゼウスの様に迂闊ではなくてよ!!】
【【【アオオオオオオオオオオオオオオオオン!!】】】
冥府の女神として成長、自立を果たした霊基たるペルセポネーがケルベロス、ハデスと共に跳躍し。
【我が弟の受けた痛痒、細やかながら返礼とする──!】
若き冥王、かつてティタノマキアにて敵対者を破断、両断せしめた側面たるセイバーのハデスがテュフォン・ブランクに一刀を捧ぐ。
『グオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』
危機を感じ取ったテュフォン・ブランクが、自らの全ての砲門から雷霆を放たんと悪足掻きを行い。
『ペレもどきよ!さっさと夜明けを迎えさせぬか!』
『えっ誰ですか!?なんですかいきなり!?』
『この声は──まさか、ノーデンス様!?』
『むぉお!?これは善き再会じゃ!懐かしいのぉ─────!』
裂けた天空より、ナイアの知る声が響き渡り。
【なーお。にゃー…】
『…………』
黒猫と共に、事態を静観する謎のサーヴァントの姿があり。
『ええいままよ!!ハワイの夜明けよ、なんとかなれーーーーーーーーーーーッッッッ!!』
『アルケイデス魔術として発動、ステュムパリュデスの怪鳥!!肉壁となれ!!』
無数の怪鳥が、放たれる超絶エネルギーの防壁となり──
「ハワイのバカンスって、こんなにも刺激的なんだね─────!!」
リッカの言葉を最後に……
全てが、朝焼けに呑まれていき──
───2週目のハワイにおける。
長い夜の、一日目が終わった。