人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
マシュ「御家族とは一旦お別れでしょうか?」
リッカ「うん!一旦皆と回ってきなさいって!」
カーマ「そういう事なら、私は一つオススメスポットを探してきましたよ」
グドーシ「ほう、それはいったい?」
カーマ「ズバリ!ワイキキブティックです!」
一同「「「「ワイキキブティック……?」」」」
「あら、このブティックに目を付けるだなんて流石は私のライバル兼親友ねリッカ!ここは女とたまに男の戦場…ワイキキブティックにようこそとお出迎えしてあげるわ!」
「こんにちはー!」
カーマがチョイスした繁華街エリアの一角。一つの領地を使い構えられている衣服店即ちブティックエリア。そこに待っていたのはなんと女王メイヴとクー・フーリンの息子、今は祖父ルーにより女体化している娘状態のコンラであった。
「メイヴ!それにコンちゃん!」
「ハワイで主戦場以外で見えるのは幸なのかしら、不幸なのかしら?それはともかく出会ったのならば笑顔の挨拶は当然よね?グッドルッキングブレイブがいないのは残念だけれど、特別にとびきりのプライスレスよ!」
「そちらの女王の戯言は聞き流してください!コンラはババ様とそっくりな店主様から代理を任されておりレジ担当、そして警護を兼任するケルトの仕立て屋です!」
「ケルトの、って…」
「あっ!ケルトと聞いてビミョーな反応をしましたね!それです!」
ヒョコッと、六歳児のコンラが立ち上がり意気軒昂に語り出す。
「ババ様曰く『ケルトの認識に強い誤解が見られる。コンラよ、お前は一つ服の仕立てでも手伝い、ケルトとは血腥い野蛮な文化という認識を払拭してこい』と仰せつかりました!」
「だからわざわざ店番してるわけ?」
「はい!基本的にこちらの全てはコンラがデザインを考え、コンラがルーンで仕立て形にし、メイヴが小売価格を考え出店しています。これは席を外したババ様そっくりの方が『少し頼めるか…?』と仰っていたやり方そのままのものです!」
つまり、全てがオーダーメイド品という破格の品揃え。それをこなしていたというスカサハ似の存在とは一体何者であるのか。
「楽園カルデアでは見ないタイプよね?スカサハそっくりとは言うけど、あの野蛮な女王がこんな仕立てなんてしようとしないだろうし。アナタ達は心当たりあるかしら?」
「師匠そっくりな人がいたら忘れられるわけないから、未召喚のサーヴァントなんじゃないかな!」
「まぁそれもそうよね。見てくれだけは中々の美貌してるし…まぁそれはいいわ、今は此処にいるアナタ達のターンよ!」
なんだかんだでコンラと共にブティックを切り盛りしていた面倒見の良いメイヴはリッカ達に宣言する。
「丁度来たことだし!存分にハワイでの着せ替えを楽しんでいきなさい!普段着ないもの、見かけない服を着るだけでも結構味な体験になるものよ!」
「おおっ!では皆さん早速やってみましょう!私、着せ替えは夏草でしか出来ないものと思っていました!」
マシュのやる気を皮切りに、一同がブティックにて服を手に取り物色…否、ショッピングを始める。
「着たいもの、欲しいものがあったらコンラにお申し付けください!ルーンで即座に着替えたり、梱包したりしちゃいますよー!」
「具体的には…はい!こうよ!」
メイヴの合図に合わせ、コンラが自前の杖を振るって空中にルーンを描く。
するとメイヴが水着から、オルガマリーが着ていたような避暑地セレブテイストの服装へと瞬時に変わる。瞠目を起こすリッカ達にメイヴは得意げだ。
「着せ替えや服屋にあるあるな『たくさん着たいのはあるけれど、いちいち着替えるのは煩わしい』といった悩みを解決できるのがケルトのルーン!正直私もそれはアリなのかと思ったが、やってみたら可愛いのよ!絵面が!」
「ちょちょいと杖を振り、皆様をあっという間に着替えさせる!これはまさに絵本で読んだ魔法使いの在り方!コンラ、実はこういう可憐な職業にも憧れがあったので楽しいです!」
「そういう事ですよ、皆さん。どうです?先んじてここを見つけた私の慧眼は中々のものでしょう?」
「一着十万円の正装から五千円のスーツ、数万円のコスプレまで平均仕立て時間5秒でお届け!メイヴ監修ルーン着替え術を存分に堪能していくといいわ!」
「おぉー!!それじゃあいっぱい来ちゃおっかなー!」
「はい!こちらでは、私達5人で着替えましょう!」
そうしてケルトのルーンに支えられたブティックにて、リッカ達は時間を忘れて着替えを行った。
可愛いもの、美しいもの、背伸びした高貴なもの。まるでゲームの着せ替えのように多彩で自在な一時は、グドーシを除く女性陣を沸き立たせるには十分な刺激となった。
「こういう場合、男性とはえてして静かに見守るものでござるな」
袈裟とかありますかな?ケサとはなんですか?とコンラと心温まるやりとりの中、夕方遅くまでその一時は続く。
「リッカ、あなたがまさかブティックに足を踏み入れる日が来るなんて。私は感動しているのよ?」
そんな折、メイヴはリッカの隣にて彼女に語りかける。
「メイヴちゃん?」
「戦いに次ぐ戦い。そんな血腥い日常にあって、アナタは決して自身の事を蔑ろにすること無く磨き続けた。戦闘力の話じゃないわ。女子力よ」
「!」
女子力。彼女は自己肯定や自己主張とは無縁であり幸福なども知らなかった為、自身を着飾り高めると言った概念を把握できていなかった。
生きていくにおいてお洒落や娯楽は不要。世界を救うために自身はどんな無茶をする。歪んだ経験が生んだ、卑屈や向こう見ずを極めた無茶の数々。
そんなリッカも、変わっていった。自身を蔑ろにせず、お洒落や女の子らしい振る舞い、趣味や創作に挑み少しずつそれらを見つけていった。
今回も、自身が服を選び自身を着飾るといった様相は、彼女自身に美しくなってみたいと思わなければ発想しなかった筈だ。男性に混じり日が沈むまで浜辺で遊び倒す以外の選択を彼女はとれるようになった。
「立派で魅力的になったわね、リッカ。いつものアナタのライバルではなく、あなたを認める一人の女として祝福を贈るわ」
「メイヴちゃん…!」
「今のアナタは、何処に出しても恥ずかしくない一人前の女の子よ!そう!この私と直々に雌雄を決するに相応しい程のね!」
「うんっ!………え?雌雄?」
なんだかそこはかとなく不穏な響きを聞き返すも、彼女は興奮した語り口を続ける。
「アメリカでは遅れを取ったけど、今回はそうはいかないわ!私もとびきりの身体、とびきりの水着、とびきりの写角を用意して待ち構えてあげる!この夏の一等星はどちらか、決めるときよ!」
「あの、メイヴ?どゆこと?」
「皆まで言わずともいいわ。私達はただ美しさで語るの!言わばこのブティックは最大のライバルに送る大量のソルト…!存分に着飾り、高まりなさい!私はあなたの輝きを超えて!あの空に輝くわ!」
ガシッと力強い握手とウィンクを送り、メイヴはコンラの下へと走っていく。
「興が乗ったわ!さぁコンラ、このまま連続10連お着替えといくわよ!ついてきなさい!」
「えー、お客様はともかくメイヴになんでそんなことしなくちゃいけないんですかー?」
「クーちゃんみたいな生意気な事言わないの!後でお菓子奢ってあげるから!」
「わはーい!馬子にも衣装タイムの始まりでーす!」
「その諺、使い方絶対間違えてると思うんだけど!?」
「………?」
あのメイヴの闘争心を受けて、リッカは思う。
「メイヴと戦う予定は無いんだけどなぁ…?」
サバフェスにおいてリッカは今回サークルとしては不参加である。あくまで一般枠として楽しむ予定だ。
「でもやる気に水を差しちゃ悪いし、本気のメイヴなら一番間違いなしだから…トロフィー授与には立候補しようかな!」
綺麗なんだろうなぁ、メイヴの水着姿や晴れ舞台。
そう思いながら、テンションの高いメイヴの後ろ姿をにこやかに見やるリッカであった。
リッカ「あ、そういえば…」
(じゃんぬは今回、スイーツじゃんぬとして参加はしないのかな……?)