人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
アダム「キヴォトスの生徒達から誰かを招く事も出来るが…誰かを選ぶということは、誰かを選ばないと言うことだ」
パパポポ『では私のマリアを…待て、ルシファー達は来れないのか?』
アダム「あぁ。どうやら集合無意識に大魔王や魔王が触れれば人間が皆眷属化する恐れがあるらしい。今回は留守番だそうだ」
パパポポ『影響力も善し悪しか…』
アロナ『それなら先生!いっそアロナがビビッとチョイスで選んでみましょうか!』
アダム「うむ。アロナの直感を信じ…む?」
〜
────い────せん──い──!
〜
アダム「…アロナ、私を呼んだか?」
アロナ『へっ?アロナは今先生とお話し…』
〜
せんせ───きこえ──ます──!?
〜
アダム「やはり…。誰だ?私を呼ぶ、君は──ぐっ!?」
オシリスの天空竜『ギシャアァアァァァァァァッッッ!!』
アダム「オシリス!?くっ───!!」
パパポポ『アダム!?』
アロナ『アダム先生〜〜〜〜っ!?』
『────ひぃぃん!起きて、起きてください!起きてくださいアダム先生〜〜〜〜〜!!』
「むぐ………」
アダムが最初に感じたもの。それは息もできぬほどの圧倒的な豊穣であった。
何者かが自分を、自分の頭を抱き寄せて泣いている。その圧倒的な豊満さ、豊穣さは女神もかくやの柔らかさと弾力。
(リリス…いやそれにしては張りが強い。ノノミか?いや似てはいるが違う。この初めて味わう呑み込まれるかのような圧倒的なボリュームは勝るとも劣らぬ…)
即座に覚醒した思考を巡らせていると、目が覚めた事に気付いた『少女』が涙を目に浮かべ押し付けていた身体を離す。
『あぁ、よかったぁ…!せっかくオシリスさんの力をお借りしてお話できたと思ったら、アダム先生目を覚まさなくて…もしかして、大変な目にあってしまったのかと…ひぃん…』
「─────!!」
目に映った『生徒』を認識し、アダムは目を見開く。
浅緑の長い髪。
包容力に溢れた究極のボディ。
おおらかで、善性に満ち溢れた雰囲気に表情。
それは、かつて小鳥遊ホシノに聞き及んでいた『先輩』。
「ユメ……まさか君は、梔子ユメか──!?」
梔子ユメ。
かつてアビドスの生徒会長として、テクスチャを纏わぬ嵐の神セトからアビドスを護り抜いた英雄。
相討ち、命を落とした筈の生徒。
出会える筈のない生徒。
それが、なんの奇跡か因果か。
アダムという先生の、目の前に存在している…。
『はい!アダム先生、はじめまして!私はユメ!梔子ユメと申します!セトとの戦いで死んだ…けど死んでないような生きてるような微妙な存在で、身体から抜け出した神秘で、アダム先生とお話させていただいております!』
ぴしり、と敬礼する梔子ユメを名乗る生徒。その存在は、ホシノから聞き及んでいた。
何故もっと早くキヴォトスに来てくれなかった。
私達を助けてくれなかった。
アダム先生なら絶対に、絶対に助けられたはずなのに。
そんなホシノの『本音』と【苦悩】から、アダムの限界を突きつけるたった一人の生徒。
絶対に、変えられない過去。
それが今、何の因果かこうして目の前に──
『アダム先生〜〜〜〜〜〜〜〜!』
「むっ…!」
そんな感情を、丸ごと包むように。
上体だけを起こしたアダムの顔は、3桁を超えようかというユメの『豊穣』にすっぽりと包みこまれた。
「────────」
アダムは、思い出していた。
遥か過去…
かつての妻、リリスの温もりを──
〜
『ひぃん…先走ってしまいました…一つずつ、説明しますね』
何の因果か、絶対なる始祖龍ミラアンセスと同じダメージボイスを上げるユメなる生徒は、アダムに来歴を説明する。
『私はアビドスで、セトという神を相討ちで退けました。そこで私は力を使い果たし、死んでしまった…筈でした』
「筈…?」
『実は私、肉体から抜けた魂と神秘なんです!生命活動は止まっても、何故か私の魂は生きていて!でも私の肉体には戻れないままずっとずっと彷徨っていたんです!ひぃん…どうやっても、身体に戻れなくてぇ…』
アダムは即座に思い至る。先に覚醒した、オシリスの天空竜。
オシリス、かつては豊穣であり、今は冥界の神である存在。
「恐らくそれは、君が有するアビドス最大の神秘『オシリス』の神格の効果だろう。オシリスは死に、そして復活する大いなるエジプトの王。君は、それを宿している故こうして傍にあるのだ」
『そ、そんなに凄い神様が私に!?そんなこと、あるのかなぁ…?う、ううん!そうじゃなきゃ説明できないもん、今の状況…!』
「君の復活が成されないのも、セトとの因果やもしれん。かつてオシリスはセトに八つ裂きにされ、イシスにより復活した。その際男根が魚に食われ、不完全な復活となってしまった。君の不完全さはそれに由来するのだろう」
『だんこん…?』
「男性器。ペ◯スだ」
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?〜〜〜〜〜〜//////』
保健体育と歴史の要領でユメに授業するアダムと、耐性なしで頬に両手を当て真っ赤になった顔をフリフリするユメ。シュールな個人授業が其処にあった。
『こ、こほんこほん!けほん!おっほん!』
「いかん、風邪か?」
『こ、これは気を取り直す咳払いです!…アダム先生。このハワイにいるドギラゴンさんの夢を護るために戦うおつもりですね?』
ユメは切り込む。アダムの戦う動機に。
『私は身体から抜け出ている時、宇宙の色んな場所とか、デジタルワールドとか、色んな場所をふらふらしていました。カルデアにある身体と魂が繋がっているから、帰りつつも。その際、アダム先生の御活躍も見てきました』
アダムの、先生としての奮闘。それをユメは、冥府の隔てから見ていたという。
『私…アダム先生の御力になりたいんです。ドギラゴンさんの夢を守る戦い、私も連れて行っていただけませんか?』
「──────」
ユメからの、共闘の願い。それを聞き、アダムは瞠目する。
『私、もう向こうの世界の誰とも触れ合えないんです。身体は向こうにあるけれど、もう死んでしまっているから』
死者は蘇らない。
死者の復活を許せば、いくつもの後続が続き、死者で世界は溢れる。
だから、死んだものは絶対に生き返らない。
『でも、アダム先生は冥界に来てくれて、オシリスさんの力を手にしてくれました。だからこうして、神秘を通じて話し合えています』
ユメが、アダムに抱き縋る。
『お願いします。アダム先生…私の、私も…私も、アダム先生の『生徒』にしてくれませんか…?』
「ユメ…」
『私、ホシノちゃんとも、可愛い後輩とも、誰とも話せません。死んだ人間は、喋れないんです。今の私は、死んでいるかもあやふやだけど、それでも…』
ユメの身体は、震えていた。
『夜が、長いんです…眠れなくて、寂しくて、悲しくて…誰とも触れ合えなくて、とても寒くて、心細くて…』
死にながら生きる。なんと、残酷な地獄であろうか。
『足を引っ張ったりしません!一生懸命頑張ります!だから、だからお願いします!私をアダム先生の生徒にしてください!』
「───……」
『ホシノちゃんみたいにいかなくても、一生懸命頑張ります…だから、だからもう…』
その苦しみと哀しみには、覚えがあった。
『もう……独りの夜は、いやなんです…』
無限の放浪。
答えなき彷徨。
終わりなき旅。
自身は王ゆえ、耐えられた。
始まりの人故、朽ちなかった。
だが、それをうら若き少女が。
まだ幼き子供が享受するには、あまりにも残酷にすぎるではないか。
「ユメ」
アダムは、震える『生徒』を優しく抱きしめる。
「君の長き夜は、今終わる」
そして───
『ぁ、んむっ───』
生命の息吹を注ぐように。
優しく、ユメの唇と自らの唇を重ねた。
『んっ、ん───んっ…』
何度か身体を強張らせた後は、まるでそうするのが本能かのようにアダムの背に手を回す。
目を閉じ、優しく重なった唇。
どれほどそうしていたのだろうか。やがて、唇は離れる。
「私が君の、夜明けになろう。君の復学を、君の復活を私が先生として支援する。全霊でだ」
『アダム、先生…』
初の接吻に夢心地なユメの手を、優しく握る。
「まずは共に戦おう。そして後、君の復活を執り行うことを約束する。キヴォトスで、全身全霊でだ」
『ぁ──あ、でもその!私、よく考えれば死んじゃっているんで…』
「まだ希望はある。君の神秘に、全てを掛けよう」
『ゆ、許されるんでしょうか…生き返りとか、復活だなんて…!』
「私が許す。生徒の青春に不可能はない」
『も、もし私が蘇って…セトが復活したりしたら、またアビドスが…』
アダムのユメを握る手に、力がこもり。
「ならば神とも、戦うまでだ」
『〜〜〜〜〜〜…ひ、ひぃん……』
アダムは誓いを、ユメに立てる。
「…ホシノの時間は、止まったままだ」
『!』
「迎えに行こう。未だ羽ばたけぬ天空の鳥を、共に」
『───はい。アダム先生…』
やがて、意識は狭間より戻る。
〜
──ありがとうございます。
──待っていますね、夢の中で──
〜
その言葉と共に──
アダムの意識は、天へと戻った。
アダム「!!」
パパポポ『大丈夫かアダム…魂が抜けていたぞ』
アロナ『熱中症ですか!?アダム先生なのに!?』
アダム「────いや」
「誓いと契りを、交わしていた」
パパポポ『何…?』
アロナ『チーズのお話ですか!?』
アダム「──カレーパンの集合無意識接続のおかげか」
けして変えられない過去が、無限に広がる『今』へとやってきた。
「この恩、必ずや返すぞ。──ドギラゴン…!」
過去の哀しみを未来の笑顔に繋げるため。
アダムは力強く、立ち上がった。