人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
リッカ「はーい!(ハグ)」
頼光「まぁまぁまぁ…♡よしよし、よい娘です。金時も是非見習ってほしいのですが…」
リッカ「恥ずかしがり屋なだけだけだよ、やってくれるはず!」
マーリン(やぁ!家族団らん、微笑ましいね!)
リッカ(!マーリン?)
マーリン(突然で済まないけれど、私の友人が出してる個展に誰も来なくて寂しそうなんだ。是非顔を出してもらえないかい?)
リッカ(そうなの?それはいいけど…)
マーリン(大丈夫、すぐに終わるさ、ではよろしくね!)
リッカ(え─────)
頼光「アダム様、クラース?忘れ物はございませんか?さぁ、リッカ。あなたも…」
「……リッカ?」
〜
リッカ「─────あれ?」
(ここは…)
?【───まさか、来客がお前だとは思わなかった。いや、これもある意味、人理と反理の悪戯か】
リッカ「───────ひゅ、っ…」
死の天使【ようこそ、アンビースト。サバフェスの死角、天使のバザールへ。足繁く集めた品物…】
【心ゆくまで、見ていくといい(にっこり)】
「…じ」
(じぃじ…?いや、でも────)
【……………………………】
マーリンにより導かれし、天使のバザール。見渡せば、そこは【廟】としか言いようのない空間。
そこには地獄の業火が燻り、血に染まった静謐と災禍の混ざる地獄が在る。そこに布を隔て並べられた素材達と──
蒼き長い髪と、虚ろな虚のような眼で沈黙を貫く、死の具現のような青年。否、年齢は意味をなさぬのやもしれないが…
「……………………………」
リッカをして、心臓を握り潰されるかのような圧力と重圧に絶え間なく汗を流しながら、品を物色する。物珍しい素材に、プレミアムカードやレアなグッズと言った地獄に似つかわしくない需要に応えた物品…。
しかし、目の前に沈黙するじぃじ…キングハサンに似通った何者かが余りにも恐ろしく、顔を上げることができない。
醸し出されるのは、恐怖だ。アンゴルモアの裁き以来の、根源的恐怖。
死の気配、死の匂い、死の重圧。それらが全て、一人の存在により発せられている。
目の前の…一人の青年に。
【…私は】
「────!」
ぽつり、と青年が言葉を吐いた。はじかれたようにリッカは顔を上げる。
【若者の流行り廃りに疎い。お前が気を惹きそうなものを、あの夢魔より聞き及んでいたが…購買に足るものだったか?】
「え、あの…」
【誰も来なかったからな…。立地の問題だけならば良いのだが…】
心なしか、それは閑古鳥を悲しんでいるように見受けられた。リッカは慌てて会話を紡ぐ。
「い、いえ!凄いレアモノばかりですよ!初版カードとか、プレミア物品とか、ぶっちゃけ値段がつけられないものばかりで…」
【それは良かった。悪徳売人の首を跳ねた甲斐はあったな】
ヒェッ…となる笑顔は変わらず、リッカを射抜く。
【さて、心温まる売買で互いの距離も縮まっただろう。本題の話だ】
「ほ、本題…?」
【ビーストα。そしてそれから連なる、ビーストIFの人理から見た立ち位置だ。今日はお前に、それを通達する】
ビーストIF。この時空にのみ観測される、人類を滅ぼす獣。
【明確な人理の敵である本来のビーストⅠからⅦまでとは違い、これらは自然発生した外来の獣…即ち、人理にとって敵であり、味方にもなり得る獣。それらを、人理はビーストIFとして分けている。それは理解しているか?】
「は、はいっ」
【未知の理から発生したアジ・ダハーカ…。祖をそれとする獣達は、愛知らぬが故に人に仇なし、獣と食い合う。本来ならば獣として滅するべき存在だが…】
目線は、リッカの首に向けられている。
【だが、お前は…ビーストαは、ビーストⅠを打倒し世界を一度救った。単純に考えてビーストの数が2倍に増えては我々の手も追いつかん。人理こわれちゃーう、というヤツだ】
「!?!?」
え、スラング使った今…?リッカの当惑をよそに、商品の説明を手記で伝え話を続ける青年。
【その事態を回避すると同時、人理において頼れる眷獣になり得るお前たちビーストIFを、人理は懐柔可能な事案として設定した。それらは、ビーストとして羽化するのではなく…人類愛として『覚醒』した事により定義される人理の護り手】
「人理の、護り手…」
【アンビースト。少なくともアジ・ダハーカ、アマノザコはアンビースト化が確認されている。おめでとう。正しく知識、信頼、勇気を学んだ獣は、人理と人類の隣人となったという事だ】
ぱち、ぱちとリッカに拍手を贈る青年。だがその笑顔はとにかく怖い。
【アンビーストは、楽園カルデアにおいて。並びにビーストΩ案件においてのみ存在が容認されている。全ての世界を脅かす災厄の獣を討つための特例の中の特例…猫の手ならぬ、龍の手も借りたいというものだ】
「そ、それは勿論!喜んで!」
【よろしい。アジ・ダハーカの魂は今、お前の中に在る。『魂は』アンビーストとなった今、私がお前の首を断ち切ることは無いだろう。おめでとう】
ほっ、とリッカが胸を撫で下ろしたのもつかの間…
【しかし。アジ・ダハーカには精神と肉体が残っている。これらはアンビーストとなったお前達の限りではない】
「!」
【このどちらかがビーストとして羽化したのならば…お前は魂を宿した責任として、全霊で討たねばならん。そして万が一、魂が肉体か、精神に取り込まれた場合…】
蒼き青年の、顔が消える。
【私はお前を討たねばならない。アジ・ダハーカはアンビーストの資格を失い獣に堕したと審査を下さなければならないからだ】
アンビーストであるならば容認する。ビーストならば容赦はしない。
その徹底ぶりは、まさに人類の、人理の護り手のもの。
【努々覚えておくがいい、藤丸龍華。特例はアンビーストを認める一度きり。再び堕した獣にかける恩赦を人理は持ち合わせてはいないのだと】
それは忠告にして、戒め。
守り抜け。人理を、人類を護りたいのであれば。
それこそが、獣と人を分かつものであると。
その言葉は厳しくはあったが…、
優しく諭す、先達の叡智に満ちていた。
「───はい!アジーカもアンリマユも、絶対に獣に落としたりはしません!むしろ…」
リッカは忠告を受け、元気に返す。
「残りのビーストIFの皆、全員アンビーストにするくらいの勢いでやってやりますよ!敵はビーストΩただ一人!私達は分かりあって、手を取り合えるんですから!」
先の恐怖は、もう無い。
会話すれば理解できる。彼は厳格であり、そして公平なる監視者。
ならば、決意表明するに不足はない相手だと確信したのだ。
【……期待している。いずれ私も、お前達のカルデアに赴く時が来るかもしれん】
「本当ですか!?あっ、ところで!」
そう、かねてよりの疑問があったのだ。リッカは問う。
「じぃじ…あ、いえ!キングハサン、山の翁とは御知り合いですか?」
なんだか似ているんだよね〜、と、リッカは目の前の人物に問いを投げる。
その剣呑さ、話せば親しみやすい人情、何より厳格で真面目で優しい人となり。少なからずの繋がりをリッカは感じているが…
【時系列的には、私が幽谷に至る前の時系列となる】
「────────はい?」
【同一人物という事だ。山の翁と、この私は。地獄に赴き、自らの肉と臓腑を掻き出した後の私と知己であるのだろう、お前は】
見れば、リッカの首元に蒼炎のマフラーが揺れていた。その事実に、廟が揺れるほどの絶叫が轟く。
「嘘ぉ─────────!?」
【そのマフラー…成る程。とてもいい空気を吸っているようで何よりだ。ともすれば、目の離せない孫娘といったようなものか】
しかし、首は隠さない方がいい。せっかくの魅力が減ると優しいアドバイスをしながら、青年は笑う。
【さて。心温まる歓談の一時は十分に味わった。後は片道徒歩70年地獄散歩ツアーに、苦渋果汁一滴体験、天使撫で斬り行脚といった行事もサバフェスに用意しているが…】
「!?!?!?」
【それはまたの機会にしておこう。白き龍が試しにペロリと舐めてみた結果、この世のものとは思えぬ顰め面を晒し大不評だったからな。罪人への責め苦故、当然なのだが】
冗談とも本気とも似つかぬ声音と同時、リッカの身体が光りに包まれる。
【お前を招く地獄は未だ無い。その歩み、その祈り、その決意が齎す道を往くがいい。お前に齎されし天使の肉体…削ぎ落とすには早期に過ぎるというものだ】
「あ、あの!!」
彼がじぃじ、キングハサンの前身であるならば、伝えねば。
蒼き外套と、慈悲の大切さを示してくれた偉大な山の先達を。
「ありがとうございました!!また会える日を、楽しみにしてます!!」
【────次はアジーカと、オルガマリーとやらも連れてくるといい。首相(しょう)を是非見てみたい】
「ヒェッ!?」
【精神と肉体はビーストになり得る…。…フッ、フフッ…フフフフフフフフフフフフッ……】
様子がおかしくなり始めた青年の、その最後の言葉を。
【───────早くならないかなぁ…】
(ひいいいぃぃ〜~~~~~~!?!?!?)
リッカは、聞き逃さなかった。
そして彼女は地獄から、楽園のHAWAIIへ───
リッカ「はっ!?」
パパポポ『ホント君等親子だねぇ…レムレムしすぎじゃない?』
リッカ「……………てた」
パパポポ『えっ?』
「名前聞くの、忘れてた……」
それは、ラーメン屋に向かう刹那のお話。