人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
リッカ「うん、大丈夫!ちょっと地獄のバザール覗いてただけ!」
アダム「地獄…!?とにかく、具合が悪いときはすぐに私に伝えるんだぞ。いくら君と言えどな」
リッカ「はーい!」
クラース『ラーメン…サイミンと言うローカルソウルフードですか』
アダム「むっ!詳しいな、興味があるか?ラーメンとは魂のフード…実質完全食な食べ物だ。最高にして最高だぞ!」
リッカ「ラーメンになると人が変わるなぁ、父さん…。生まれたてだもんね、クラースは!いっぱい楽しもうね!」
クラース『…はい』
アダム「いざ実食!ハワイのグルメだ!」
〜シュレディンガーのサイミン屋
店主「いらっしゃい。シュレディンガーのサイミン屋へようこそ」
アダム「おぉ、人がラーメンを作るのか。新しいな」
店主「いや、それは普通じゃないかな…?それはともかく、お客様だ。マルクト、案内を」
マルクト『はい、店長』
アダム「君は…」
マルクト『いらっしゃいませ、アダム先生』
『…ご案内、いたします』
『よくノコノコやってきましたね、アダム先生。ハワイにやってきたこのラーメン、サイミンの美味しさに度肝を抜かれてしまうがいいです』
『ひぃん…しっかり応対できるでしょうか、心配です…』
『お待たせ!アイスティーしか飲み物出来なかったけどいいかな?』
ハワイのラーメン、サイミンを扱うという店シュレディンガー。そこに足を運んだアダム、リッカ、クラースを饗しに現れたのは色白の三人娘に一際色が白い四姉妹。ヘイローを有する4人は、アダムから見て見かけない生徒と認識する。
「君達はキヴォトスの生徒か?見たところ面識がないが…どこの学園に?私のことも知っているようだが…」
『それは…その…』
一際背の高い生徒がやや返答に詰まると、肉球エプロンを付けたマスク、イヤーカフ、アイマスクを付けた三人娘が代わりに応答する。
『私達は特待生といったところです。あなたのような生徒会預かりの木っ端役人にはお呼びのつかないエリートなんですよエリート!』
アイマスクを付けた生意気な生徒がそう胸を張り。
『ひぃん…は、はぐれものともいいます…木っ端なのは私達もですし…』
マスクを付けた気弱な生徒が背を丸め。
『いいよ、こいよ!私達と仲良くなれるかどうかはこれからの先生次第だよ!見とけよ見とけよ〜!』
(これ指摘したら淫夢厨ってバレるな…)
ネットスラングを多用しリッカに沈黙を選ばせた俗な生徒が笑う。
『こら。お客様にして先生にそんなお口を聞いてはなりませんよ』
そして最後に、長身の長女らしき生徒が三人をたしなめる。
『申し訳ありません、お客様。私達の事に興味を持っていただけるのはありがたいですが、それはまたいずれ』
「フッ。未来の縁、というものか。なら今はこの出会いを結んでくれた…麺に感謝しながらいただくとしよう」
決まった…。そうキメ顔を見せるアダムに、それぞれ反応が漏れる。
『こんな残念な人が『全ての先を生きるもの』なんですか…?』
『ふふっ…親しみやすい感じがします…』
『台詞が粋スギィ!!』
(これ指摘したら淫夢厨ってバレるな…)
『ふふふ、えぇ。私達も先生と交友できる日を心待ちにしております。では…』
三姉妹、そして四姉妹は口を揃える。
『『『『先生!御注文をいただけますか?』』』』
『──………』
その言葉と現状を見受けた、シッテムの自販機は…
『うわわ!ポカリが出てきました!アタリというやつですか!?』
一本当たっていた。
〜
「うっひゃー!!あな屋コラボのカレーラーメン…じゃないや!カレーサイミン!?美味し〜!!」
そうして振る舞われた、シュレディンガーのラーメン…サイミン各種。
なんとシュレディンガー店は各種トップ店舗とコラボを行なっており、それぞれあな屋のカレーサイミン、ルゥのモロコシ味噌サイミンがメニューとして展開されていた。
コラボメニューでありながら、その旨味は完璧に再現されており、創世の頃の甘々なカレーから黄泉平坂の別れの辛さまで多種多様な辛味を選択できる仕様となっており、その辛さはリッカに舌鼓を打たせるハイクオリティ。
『…………………モロコシ…』
ルゥの手がけたモロコシと、味噌ラーメンのハイブリッド。アステカでは神の肉と呼ばれるそれと和の味付け。そして濃厚な味噌とモチモチの麺が織りなすG級のサイミンというかラーメンに、クラースは戸惑いながらも啜っていく。
「弾切れとカロリーを気にする必要はない。トロワ・バートンもそう言っていたイチオシのフード、それがラーメンだ。サイミンとはいえ、本質に変わりはないものだ」
恐る恐る啜るクラース、豪快にスープを飲み干しおかわりを所望するリッカを微笑ましく見つめながら、アダムは満足げに頷く。
「いずれキヴォトスに展開する柴犬らーめんも振る舞おう。私がこちらに来て味わった至宝にして至極の一つだ。クラースもきっと気に入る」
『これが、食事…生命活動に不可欠なもの、ですか』
「勿論、生命活動には必須なものだが…人は心にも食事で活力を得るものだ」
『心にも…』
「あまりにも、早すぎる親離れだったろう」
ぽん、と。アダムはクラースの頭を撫でる。
「必ず母と再会させる。だから今は、出会った時に伝える沢山の楽しい思い出を作るんだ。クラース」
『楽しい思い出…』
「あぁ。きっとリリスも喜んでくれる。私の知るリリスとはそういう女性で、その魂はきっとそういう女性だと信じているからな」
サイミンの刺激と、アダムから齎される父性にクラースは静かに頷き、納得する。
『…はい。母が私に何故願いを託したのか…解った気がします』
「私は愛されるのと同じくらい、愛する事を忘れない男だ。君がリリスの形見だというなら、尚更な」
「アダム先生!私はジブリールの忘れ形見だけど愛してもらえますか!」
「勿論だ。過ちを犯したアダムとイヴの分も目一杯な」
「わーい!クラースも、素敵な親に恵まれて良かったね!」
『はい。あなたと同じ様に』
(ふふ…やはりラーメンとは偉大だ。麺に絡みつくスープのように、人の縁を美味く昇華してくれる)
ラーメンとは無限の可能性なのだ。EDENに必要なものは極限の科学や発展ではなく屋台だったのかもしれない…。
『もてなす筈が、いいものを見せてもらったな。暖かい家族の団欒はどんな次元でもいいものだね』
頭に猫耳型のくぼみがあるタオルを巻き、服は黒で白い腰エプロンをつけている、瞳は紅く白いしっぽの生えた獣人の店主が、アダムのラーメン、サイミンを持ってきながら笑う。
『おまたせ。特殊メニュー『観測サイミン』だ。どんな味がするかは…お楽しみだよ、アダム先生』
「ありがとう。本来なら初来訪の際には手堅く醤油ラーメンだと思っていたが…」
特殊メニューとしては黙っていられない。アダムのチャレンジ精神に店主は笑う。
『きっと気に入ってもらえるよ。マルクト』
『はい。ではアダム先生、お楽しみください』
お皿にラーメンをよそり、アダムの口にそっとラーメンを近付ける
『あーん…』
「素晴らしいサービスだ。美味さが百倍に跳ね上がる」
堂々とマルクトの一口を受けた際、蓋を閉じられたサイミンが三姉妹の手により開かれる。
『来い!激辛来い!』
『ひぃん…どういう原理なんでしょうか…』
『じゃけんいろんな味をいただきましょうねー!』
ぱかり、と開いたサイミン、しかし運ばれたサイミンの味に目を見開く。
「全く違う味だと…!?」
『驚いたかい?シュレディンガーの名は伊達じゃない。蓋を開くまで、どんなラーメンかは分からない。シュレディンガーのサイミン、召し上がってくれ』
そのサイミンは衝撃的なものであるが、同時に奇特なものでもある。
(内部は観測されるまで確定していない…。シュレディンガーの猫の理論を実際の物理現象に転用するだと…?)
『激辛来い!激辛来い!!(パカパカパカパカ)』
『ひぃん…だめですよ、蓋で遊んじゃ…』
(この店主…何者だ…?)
『アダム先生』
店主が、アダムに一つ言葉を授ける。
『明日は雨と風が激しくなるかもしれない。備えるといいかもね』
「雨と、嵐…」
『今日の夢では頑張り給え。ハワイはまだまだ波乱だよ。このサイミンが、その助けになってくれるといいんだが』
『アダム先生、あーん』
「おかわりィ゙!!(5杯目)」
『もぐもぐ…』
愉快な食事の時間にして、謎の残るラーメン、サイミン屋。
(…柴大将にも、授けてほしい技術だな…)
その交々はともかく、またキヴォトスに持ち帰りたい技術概念が増えたアダム先生であった。
キヴォトス
ホシノ「ん〜?」
『アダム』
ホシノ「おんやぁ〜?♪」
『君の時間は動き出す』
「……!」
『必ず、約束しよう』
「………アダム先生…」
「──ひょっとして…アダム先生ならできちゃうのかな。出来なくて当たり前のこと」
(…ユメ先輩。あなたは…どう思いますか?)