人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
『夏のバカンス、お前の姿は見えないんだけど何をしてるの?とお思いの方もいらっしゃるでしょう、そうでしょう!』
『私は一人、マスターたるリッカ先輩の元を離れ…!』
『友達を作っていました!!』
『いえ、友達でなく──』
忘れもしません、これは二日目の出来事。自主的にリッカさんのコミュニケーション能力をリスペクトし、自分も手にしようと一人私は頑張ることにしました!
そして私は一人ハワイを徘徊するなすびとなり、ハワイを練り歩き…友達を作ろうと一人画策し歩いていたのです。
「友達はいねがぁ〜…友達はいねがぁ〜!」
そうして可憐なハワイに実る一輪のなすびとなっていた私に…なんと声をかけてくれた人がいたのです!
「え、何そのノリ…?アンタ、キリエライト…よね?」
「はい!私はマシュ・キリエライト!またの名を、先輩のオンリーワンサーヴァントです!」
「………………マジか〜」
その方は不思議な方でした。カルデアに契約されたサーヴァント…ではありません。見かけない姿です。
この暑いのにパーカーを着て、白い肌で緑の瞳。温度を感じていないのでしょうか?生物としてまずいのでしょうか?
「あ〜…。一応自己紹介。アテシ、リリスっての。知ってる?」
「リリスさん!?あなたが!?」
なんとびっくり!彼女はリリスさんと言う、メソポタミアの木っ端悪霊だったと言うのです!
聖書の誇り高き女性権威と名前と霊基がモロ被りなんて、恥というものを知らないのでしょうか!
「っへぇ〜、言ってくれんじゃん。砂浜でいっちょ殴り合うか?あぁん?」
……あれ?
「いえ!それは時間と体力の無駄なのでやめましょう!その代わり…」
「その代わり?」
「ハワイを一緒に、巡ってあげない事もありませんよ!?」
あれ、おかしいですね…?
「何よ、その上から目線…いや、でも、まぁ。うーん…」
私、こんなふうに人を上から指摘するような存在でしたでしょうか?
リッカ先輩なら、もっとナチュラルに懐にギャラクティカマグナムするような気が…
「…い〜よ。なんかアンタはちょっとアレ。イカれててマシっぽいし」
「マシュっぽいし!?私はキリエライトですが!?」
「マ・シ!脳みそ筋肉か!まぁいいわ。ハワイにボッチの哀れなキリエライトに付いてってあげる。感謝しろよ〜?」
「感謝?それはこっちの台詞ですが!?」
なんだか、何故でしょう?
この人を見ていると…
何か、胸がざらつくような…そんな感じがするのです…。
〜
その後、リリスさんと私は様々なハワイの名所を巡りました。
射撃場で銃を一緒に撃ったり…
「キリエライト、あぶなーい!」
「ッ!?どこを狙ってるんですかリリスさん!?」
「ごめーん、キリエライトは囮に最適な──うぇえっ!?」
「キリエライト・キャノン!!死ねーーーーーーーーーッッッッ!!!」
「うぼぁーーーーーーーーーーー!!?」
一緒にモロコシを食べたり…
「うわ、モロコシうっま。なんでこんなに美味いわけ?神か?」
「わかりませんか?このモロコシは…ルゥさんが焼いているんです!」
「ルゥ…???」
『特製チーズもかけてみてぇ』
「「うまーい!!」」
『でしょぉ〜?』
ビーチフラッグをしたり…
「キリエライト、おっさきぃ〜!」
「なっ!?」
「どんくさいのよ、バーカ!フラッグはもらっちゃ──」
「それぇっ!!!」
「ガッ──────!?おま、盾投げっ…」
「おや、まだ喋れましたか!頭蓋骨ごと霊核を砕くつもりでしたが残念です!」
「キリエライトォ…!上等じゃんオラァ!!タマ取ったらぁァ!!」
様々な時間を、この不思議なリリスさんと過ごしました。
初めの方はぎこちなく、お互いに遠慮しがちだった(?)ですが、後半からはとても…
とても…仲良く、過ごせました!
「オシャレしな、キリエライト。マスターの添え物が貧相じゃやってられないじゃん?」
「いえいえ!アダム先生の添え物にすらなれなかった人類最初の負けヒロインに比べたら百倍マシです!」
「ほーん?よっしゃアレだな?サーヴァントレスリングの幕開けだな?」
「望むところです!アロガントなスパークを見せてやります!」
仲良く…
仲良く、過ごせていました!
きっと仲良くです!
きっと…
きっと、そうだった筈です!
〜
「はー。中々楽しかった。やるじゃん、キリエライト。まさかアンタといて楽しくなるとか思わなかったし」
「は、はい!私もです!リリスさんを名乗る不審者と過ごすのは楽しめました!」
そして、夕方。ハワイを一通りリリスさんと巡った私は、お別れの時間を迎えたのです。
「私は今日、お友達を作ろうと思いハワイにやってきました。そしてなし崩し的にリリスさんと出会い、やむを得ず楽しい日々を過ごしましたが…」
「褒めてんのか喧嘩売ってんのかどっちかにしなー?」
「なんだかリリスさんと出会ってから、とても胸がゾワゾワするんです。何故でしょう?なんなのでしょう?この気持ちは…」
この気持ち、知らないようで知っている気がします。
前に、この気持ちを…感じたことが、あるような…
「…あー、成る程ね。マシにはなった、マシになってる」
「マシュになってるですか?」
「黙りな!?違うよ。アンタはちゃーんと成長してる。でも、居心地がよすぎてソレがよく解ってないだけ。いい?ソレのザラザラ、教えてあげる。胸につかえたような、変な気持ち」
そしてリリスさんは、私に大切な事を教えてくれました。
「そいつは、嫌悪感。生理的に無理なヤツに懷く人間の感情だよ。良かった。アンタはちゃんと、人間として目を覚ましているんだね」
「嫌悪…感…?」
そんな。
初対面の人を、ただ嫌いになるだなんて。
「取り繕うな」
「!」
「キリエライト。それは普通の事なんだよ。一目惚れってあるじゃん。その逆もある。一目見て、コイツはきらいだって事もある。人間なら、普通の事なんだよ」
人間なら…普通。
普通の事…。
「……何せ、アテシも同じ気持ちだからさ。初対面で、アンタは無理だって思ったもん。生理的に、アンタは無理だって」
「そうだった、んですか…」
「いや解るようなもんじゃん?まぁ、フォローってわけでもないけど、サ…」
リリスさんは言いました。
「ここのアンタはマシだよ、キリエライト。人を嫌える。殴られたら殴り返せる。嫌いなものを、嫌いと思える」
「リリスさん…」
「ソレは人間として普通な事なんだよ、キリエライト。好きな奴がいれば、嫌いな奴もいる。人間なら、ソレは当たり前。だからさ。アンタはアテシが生理的に無理。それを変えることなんてしなくていいさね」
フィーリングが合わないなら、それは仕方ないことだと。
「むしろ偉いぞ、キリエライト。人間もどきじゃなくて、もう人間になってるんだ。そういう醜さもちゃんと懐けるの、いい傾向じゃん。そこんとこは…」
「……」
「ちょっとくらい、はなまるくれてやってもいいよ?友達になってやるくらいのサービス、してやらんでもないかなって」
「嫌です…」
「あっそ!!正直になったのはいいけどその分ストレートにムカつくわアンタ!いいわ、次会ったらボッコボコにすっからな!!」
覚えとけマジで!!そう怒りながら、私はリリスさんと別れの時を迎えます。
「───あ。これだけは言っとくよ、キリエライト」
「?辞世の句ですか?」
「あんで死ぬ前提なんだよクソナスビ!いい?アンタはそうでもないけど…」
リリスさんは告げました。
「無垢は罪だから。アンタが本気でリッカとサーヴァントやりたいなら…汚れもけがれも、ちゃんと一緒に背負いなよ」
「!」
「アンタなら出来るかもね。…なんか、変にのびのび育ってるからさ」
大切な、核の言葉を。
「リリスさん!」
「ぁん?」
だから、私は言うのです。
「───ありがとうございます。貴方は、私が生理的に無理な人第一号です!」
「───ハッ。上等じゃん。特異点でもし会ったら…」
その時、私達は交わしたのです。
「殺してやんよ、キリエライト」
「はい!ブッ潰してやります!」
友達…
いいえ。
相容れない敵との、約束を。
マシュ「あ!リリスさん!」
リリス「なんじゃい、まだあんのば」
マシュ「はぐれサーヴァントのくせに、馴れ馴れしく私のマスターを呼び捨てにしないでください!」
リリス「────────死ねッ!!」
マシュ「生きますッ!あなたと違って、リッカさんと一緒に!」
オルガマリー「あ、マシュ!」
マシュ「はぁ、はぁ…」
オルガマリー「…どうしたの?」
マシュ「所長。私…」
「───イヤな女、だったみたいです」
オルガマリー「はぁ…?」
それが、一夏の一時の思い出。