人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
超常存在No.1バトル…
宇宙にて一つとなったクトゥルフの意志を取り戻し、共に超常存在No.1となったゴジュウウルフ、ゴジュウドラゴン。遠野吠に藤丸龍華。
長らく行方が知れなかったクトゥルフの意識を救出し、万事は解決に向かう…
と、その筈であったのだが。この場所において、リッカ…いや、吠にとっては『ついで』でしか無かった。
そこから始まったのは、本当の指輪争奪決勝戦。どちらかが、どちらかに全ての指輪を渡すことになる最後の戦い。
『アオオオオオンッ!!』
《おおああああああっ!!》
二人は超常存在No.1バトルが決着を迎えた際、即座に戦いを再会した。昼頃から夕方、夕方から日が沈む逢魔が刻…
そして、宵の明星が輝き出す夜に至るまで、徹底的に戦い続けた。
『テガソード・No.1!!』
『ワイルドパワーアップ!!』
互いに全身全霊を賭して戦い、互いに全身全霊を懸けてぶつかり合い、その決着は夜に至るまで一切譲らず、膠着を極めた。
『…………………』
デカレッド、無慙が静かに見守る中…その戦いは、佳境を迎える。
『はぁ、はぁ…はぁ……』
《───……》
手にした指輪に、手にした力に明確な優劣は無かった。ミラアンセスも、テガソードも宇宙の善の側面における重要存在。故に、決定的な決着は齎されなかった。
それを分けたとするならば、それは決定的な『変身者』の差。
リッカは始まりの人類より生まれ、サーヴァントにおける天性の肉体の変化スキルに値する『始まりの肉体』を持つ。
肉体、感覚に値するスキルをEXスキルで有するウルトラ上位版の保有に加え、彼女は始まりの娘、魔法使いでもある。
極論、彼女一人で人類が滅びようと存続は可能なほどに人間とはスペックが隔絶している。
戦隊といえど…生身の人間でしかない遠野吠にとっては。
否。全ての人間にとっては。
『────…あー…くそっ…』
持久戦や決戦において、有利を取れるような存在ではなく。
『腹、減った……』
その極限の戦いにおいて、人間としての限界が来るのは明白であったのだ。
「くそっ……ここまでかよ」
変身すら解け、大の字に砂浜に仰向けになる吠。リッカは静かに歩み寄り、変身を静かに解く。
「ううん。これは…引き分けだよ」
「あん?」
「私は、もう叶えたい願いは叶ったから」
大の字になった吠の隣に、リッカは静かに座る。戦いを終えた二人の頬を、風が静かに撫でる。
「なんだよ、お前の願いって」
頬からしてみれば、リッカの願いが、指輪に願われたようには思えなかった。不思議そうに尋ねる吠に、リッカは語る。
「クトゥーラ、って娘がいるんだ。お父さんと離れ離れになっちゃって、塞ぎ込んでいた娘。その娘のお父さんを…魂を。ちゃんと助け出す事ができた」
それだけで。それだけで、自分にとってこのハワイにおいて願いは叶ったと。
「私はいつだって、自分の為に誰かを幸せにしたい。その願いを、吠が叶えてくれた。クトゥーラの笑顔を取り戻したいって願いを」
ありがとう、吠。リッカは屈託なく、吠に感謝と願いを告げた。
「…んだよ、意味わかんねぇ」
真っ直ぐお礼を言われて、素直になりきれない吠は独り言ちる。
「ふふ、わかんないか」
「あぁ。まるっきりわかんねぇな。そいつは、誰かの願いを叶える為のもんじゃねぇか」
吠は、リッカに問いかける。
「お前自身の願いはどうなんだよ」
「えっ?」
「誰かじゃねぇ。世界じゃねぇ。お前自身の願いは…どうなんだよ」
吠が起き上がり、静かに淀みない言葉と視線で、問いかける。
「お前自身が、お前自身の為に叶えたい願いはあるかって聞いたんだ。お前が、お前の為に願うもんだ」
「わ、私か…私かぁ…」
吠に真っ直ぐに問い詰められ、リッカはしどろもどろになる。
願いがないと言えば、半分嘘で半分本当だ。
半分嘘とは、もう既に叶っているから。
半分本当とは、もう既に叶えているから。
だから、これ以上は必要ないと考えていなかった。
それを、吠は見透かしたのだ。お前は、お前自身の願いはなんだと。
「えっと…私の願いは…」
リッカは、吠の問うような視線に誤魔化さず答えることを決意する。
「私は…私を受け入れてくれた世界の為に、戦いたい。ずっとずっと、皆の幸せな生活を、日々を護るために戦いたい。ずっと皆のために、生きていきたい。それが…」
「…」
「生まれてきてくれて、ありがとうと言ってくれた皆に贈る…私なりの願いなんだ」
自分は本来、世界に滅ぼされる側でしか無かった。
そんな自分を祝福し、受け入れ、皆が認めてくれた。
なら、自分が望む以上の事はない。世界のため、そこに生きるための皆の為に戦おう。
それが、リッカの変わらない願い。
「ダメだそりゃ」
「ダメぇ!?」
それを、吠は一刀両断バッサリと切り捨てる。
「そいつは自分の望みかもしれねぇが…ちげぇ。願いとはなんか違ぇんだよ」
「違う…?」
「腹いっぱい食いてぇ。ぐっすり眠りてぇ。色んなところにいきてぇ。そういうもんだろ。願いっていうのは」
デカい必要はねぇ。ちっぽけで構わねぇ。
「願いってのは、自分に向けて願うもんなんだよ。そこは間違えるんじゃねぇ」
そういうのが、大事なんだ。
吠は問うていた。当たり前な欲望から生まれる…
当たり前の、小さな願いを。
「自分に向けて…」
「ねぇんだったら、今から見つけろよ」
そう言って吠は、自らの指から指輪を外す。
「ほら、持ってきな」
「!」
その手に収まるは、ゴジュウウルフのリング。それは即ち…。
「気に食わねぇ奴が2代目の神様だけどよ。きっと叶えてくれんぜ。そいつで叶えな。お前の、お前だけの願いを」
「吠……」
「いつかとは逆になったな。だがよ…負けたってのに、悪くねぇ気分だ」
清々しげに、吠は星が瞬き始めた空を見上げる。
「願いが叶わなかったからじゃねぇ。こいつはきっと…託したからだ」
そう。願いは叶えるだけじゃない。
かつて自分が、そうされたように。
「見つけろよ。お前がお前自身に願う願いってやつを」
立ち上がり、リッカに手を差し伸べる。
「────ありがとう、吠。あなたは…」
「………」
「私の中での、戦隊レッドNo.1だよ!」
その称号に、No.1の称号に。
「……じゃあな」
心から満足したと言うように、リッカに背を向け歩き出す。
「吠…!」
【行かせてやれ】
その背中に声をかけようとした時、無慙がリッカに声をかける。
「でも…」
【やつは…今から、モロコシとフランクフルトを食べ尽くすそうだ】
ずっこけるリッカ。どうやら吠は吠でハワイをエンジョイするようだ。
【決着はついた。受け取れ、龍華】
そして無慙もまた、リッカにデカレッド戦隊リングを託す。
「無慙さんも…いいんですか?」
【俺の願いは一つだ】
邪悪の根絶。善良の守護。
【それは、自分の手で成し遂げる】
そして、デカレッド戦隊リングもまたリッカの手に渡り…。
『揃ったようだな。願いを叶える指輪が』
「!熊手さん!」
1周目にて、共に戦ったゴッドネス熊手。その人が、指輪争奪戦の決着を告げる。
『藤丸龍華。並びにミラアンセスわ、お前たちが最後の生き残りだ』
高々と、指を掲げ。
『つまり───』
厳かに、指をさす。
『お前が、No.1だ!』
最終勝者の、選定を。
指輪を集めた。最終勝者を。
FINAL WINNER
藤丸 龍華