人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
アダム達は既に悪夢へと突入していた。ドギラゴンに巣食う悪夢を、その原因を解き放つため。
しかし──
夢の最中において、万事が好調に動く道理もなく。
アダムの前に、新たな試練が起こらんとしていた。
「────……っ」
アダムは、光の射さぬ暗黒の空間で目を覚ます。そこには何もなく、虚無だが広まっている。
「ここは…ドギラゴンの悪夢に突入したと言う事か?」
全員と共に、ドギラゴンを解放する為の作戦を開始した直後。夢の中である以上、尋常な現象ではないと覚悟はしていた。
(シッテムの箱、アロナも父もいないか…)
見れば持ち物は、ゼッツライドウォッチしか手にしていない。どうやら没収されたか、別時空に自身だけ隔離されたか…。
【──ヒ、ヒヒッ。ようこそ、ようこそアダム先生。最大にして、最高の人類、我が攻略対象…】
「…!」
思案するアダムの前に、声が響き渡る。そして暗がりより、声の主が姿を現す。
「お前は…」
それは、異形と形容すべき面容。黒塗りの面に、瞳が時計の文字盤となったいくつもの目。18とローマ字で刻まれている不気味な顔。
【はじめまして、アダム先生。小生は、そう…地下生活者とでも】
「……………黒服の知己か?」
感じる雰囲気に、通ずるものを感じアダムは問う。陰鬱な地下生活者と名乗る男と、堂々としたアダムは向き合う。
【あ、アレらはゲマトリアには値しない。奴らにゲマトリアを名乗る資格はない】
「───……」
【しょ、小生こそが。小生こそがゲマトリア。小生こそがあなたと言う先生に、相応しい。そう…】
地下生活者は、静かに震えながら指をさす。
【私こそが、アダム先生。あなたを攻略するのです。他の誰もが憧れる、崇高。あなたを、私が。完膚なきまでに】
「………………」
アダムは沈黙を貫く。
見抜いていたのだ。この男の有する言動、その内に秘める狂気と激情を。
【ご存知ですかな、アダム先生。人間はいつか死ぬ。それは不変の真理。それはあなたと言う人間にも当てはまる。当てはまらなくてはならない】
「……………」
【あなたという至高の存在。あなたと言う至高の人間に、私の、し、真理を当てはめる。つまり…】
「私を殺したいということか」
【し、しし、然り!然りですアダム先生!!】
途端に、震えるように堰を切って地下生活者が叫び出す。
【貴方の生命を、貴方の尊厳を踏み躙り、破壊しっ!その全てを無に還した時ッ、我が崇高は、我が命題は成るッ!!神すら超えた、真理へと進化する!飛翔するのだ!!】
「……………」
【その為には貴方が必要だ、アダム先生!神の木偶人形ながら神すらも殺した究極のキャラクター、究極のラスボス!!貴方こそ、貴方の生命こそ──】
地下生活者は、全ての目でアダムを見据える。
【我が生贄に相応しいのです。最高の、プラチナトロフィーとして輝くのですよ。アダム先生…!】
「……これほど嬉しくない告白も初めてだな」
一息付いて、アダムは地下生活者に問う。
「レオニダス一世の、敵国の王に伝えた言葉を知っているか?」
【な、何…?】
「『来たりて取れ』。私の命が欲しくば、その手で取ってみろ」
彼は一分も揺らがず、地下生活者の宣戦布告を受け止める。
「ただし──。私も自身の為に、貴様を排除する為に決めた」
【………】
「貴様の真理とやら…死と、それに通ずる苦しみを求めるものだろう。そしてその為に、他者を平気で害するタイプだ」
そう。一方的に狩られる程アダムは殊勝ではない。
「ゲームプレイヤーを自称するのなら、攻略対象として…ゲームの舞台に引きずり落としてやろう」
神であろうと、光溢れる世界に害するなら駆逐するまで。
「互いに同じものを見る。それが、フェアネスなゲームと言うものだろう」
地下生活者は、アダムの言葉を受け───。
【───粋がりやがって、このクソがよぉ!!】
「…………」
【お、おっと失礼。ヒヒ…良いでしょう。その挑戦、お受けしましょうとも…!フェアネス、そう、フェアネスね。ヒヒ】
激昂した後、即座に冷静を取り繕う地下生活者。
【では、始めましょうかアダム先生。私は禁断の意志を通じて、このハワイ限定であなたの意志に介入しています】
「…」
【私はまだ拘束されておりますが、こ、これくらいは出来るのですよ。あなたを攻略する手駒、シミュレーション…時間は無限にあるのですから…!】
そしてそこから、地下生活者はかき消え、アダムの目の前に人型の影が現れる。それは、一つではない。
「────!」
その影の形は、悪意と嘲笑に満ちた邪悪なもの。
【………──】
両手に銃を構えたコードナンバー00、美甘ネル。
【……………】
小柄の身体に雄々しい巨大な銃を掲げる風紀委員長、空崎ヒナ。
【………】
ゆらりと不気味に揺らめく、正義実行委員会最高戦力、剣先ツルギ。
ミレニアム、ゲヘナ、トリニティ。それぞれの最高戦力。虚ろな目をした最愛の生徒達が、アダムの前に現れる。
【ど、どうですかな?よく出来ているでしょう。貴方の最愛の生徒、とびきりの三つの駒…その再現でございます】
「────────……………………貴様」
アダムの拳が、強く握られた。
【ど、どうしますかアダム先生?あなたの力は素晴らしい。あなたの力は凄まじい。生徒がいくら強かろうが、神秘を構えようが、あなたに及ぶはずもない】
自分の姿を見せることなく、地下生活者はアダムを嘲笑う。
【え、遠慮なく壊すがよろしい。ヒヒ、これは夢。所詮悪夢のようなもの、なのですから。ヒヒ、ヒヒヒヒ…!】
【【【────!】】】
静かに、三人の生徒…その形をした幻影が銃を構える。
【さぁ見せてくださいアダム先生!あなたは生徒を…】
目の前に現れた生徒達は、幻影と言えど手加減できる相手ではない。
文字通り、最強戦力の三角達なのだから。
【自分の生命を狙う生徒を、その拳で破壊できますかなァ!?】
「──────…………」
地下生活者が高らかに宣言したその時、周囲は摩天楼…ビルの街並みへと変化する。
【遠慮なく、遠慮なくそれらを壊すとよろしい!所詮夢、所詮悪夢!所詮は幻想!!】
「……………」
【神を殺したように、彼女らの細い首を掴み縊り殺すが良いでしょう!!初めて何かを【殺した】あなたには、それが相応しい!!】
ゆっくりと、三人の生徒達がアダムに歩み寄り…。
【さぁ!!愛しい生徒を───その手で殺せェ!!アダム・カドモン!!】
【【【──────!!】】】
【それが!!小生が贈る最高の【悪夢】だァ!!イヒヒヒヒヒ────!!】
その銃口を…
孤立無援の、アダムへと向け。
───開戦の合図として、撃ち放った。
地下生活者【イヒヒヒ、そうだアダム先生。その野蛮な拳を生徒に振るうがいい。所詮そやつらは幻想…】
〜
ネル(なっ…どうなってんだ!?なんで、なんでアダム先生に銃向けてんだよ!?)
(くそっ、身体が勝手に…!!止まれ、止まれってんだよ!!)
〜
ヒナ(どういうこと…!?)
(いや、やめて…だめ、逃げて、アダム先生…!!)
〜
ツルギ(カァアァアァァァッ!!!くそ、くそ、くそぉっ!!)
(やめて…!アダム先生は、敵じゃないのに…!!)
〜
地下生活者【くれてやるといい。お前の手で…!】
【【己を殴り殺す】先生という悪夢を…!イヒヒヒ、イヒヒヒヒヒィッ…!!】
アダム「地下生活者と言ったな」
地下生活者【ヒッ…?】
アダム「予告しよう」
「───貴様は、必ず私がこの手で殺す」