人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
アダム「ユメ。私を信じ防御を解いてくれ」
ユメ「ええっ!?」
アダム「大丈夫だ。全て、一瞬で終わらせる」
「君の負担を、私が減らそう。かつてホシノが、していたように」
ユメ「!」
「───はいっ!」
アダム「──力を持った子供を、大人が恐れるなどあってはならない」
「力が生徒を歪ませないために…私は生徒の誰よりも強くなくてはならないのだ」
(感想メッセージは今日以降返信します)
「君達が、彼女達の影だと言うのならば丁度いい。彼女達に教えるべき事を…先生として予習させてもらおう」
セトの神秘、その欠片を取り込んだアダム。嵐と雷撃を迸らせながら地下生活者の残していった影を見つめる。
もう接続された意識は切っている。ならばあれらは、破壊を撒き散らす悪夢の残滓に過ぎない。
生徒の姿をとるものを倒さねばならないことに、一抹の心の波立ちを隠し。アダムは構えた。
【【【───!!】】】
それぞれアダムの戦意を感じ取り、影たちは行動に映る。
ネルは自らの機動力を活かす高速三次元戦闘。ヒナは絶対的火力による制圧。ツルギはその頑強さを活かした白兵戦。
「教導の時間だ、最強の生徒達の影よ!」
その言葉を合図に、アダムは戦闘を開始する。
「わぁ…──ぁ…!」
そこから見たユメの景色は、想像を絶するもの。
いずれ皆がなり、いずれ皆が名乗ることになる…
『大人』の本領、本懐であった。
【!!】
まず、ネルが摩天楼を縦横無尽に駆け回る姿を見せる。それは人力における二次元の存在の人間を無理矢理三次元に引き当てる超絶的な身体能力の為せる業。
一般生徒、はたまた軍事部隊とて彼女に弾丸は愚か傷一つ付ける事は叶わないだろう。
────しかし。
「才覚とセンス、そして凶暴な疾走する本能。流石は数理の世界におけるダブルオー(00)だ」
それはあくまでずば抜けた自前の『才能』『センス』に依存する極限の『我流』。
ありえない、それこそ小数点以下の確率であるが。
【!!】
「千束もそうだったが──自らのみの才覚では、陥る穴は数多いものだ」
『それに追従、対処できるもの』が現れた場合。『我流』は『稚拙』へと堕する。
ネルの影が驚く間もなく、『雷速』の疾さで駆け抜けたアダムが影の顔面部を確とアイアンクローの領分で握り締める。
【!!】
凄まじい、それこそ加減を抜きにすれば頭蓋を卵のように握り潰す力と絶妙な力加減で締め上げるアダム。
セトの雷の力を、全て自身の肉体活性に活用。文字通りの光速を実現したアダムは、『ネルの接地が無くなる跳躍、浮遊している瞬間』を狙い、掴み取ったのだ。
「君の戦法。それは『空中に投げ出されれば何もできなくなること』だ」
【!!】
顔面をむんずと掴み取られたネルの影は、苦し紛れに銃を乱射する事しかできない。
重力下において身を浮遊させたものは、物理法則に囚われるのみ。
それは個の強さをねじ伏せる星の理。科学でしか、抗える術はない。
「君はミレニアムの科学、力をもっと信頼するといい。エンジニアの臨戦武装といったものを君がつけたならば──」
そのままアダムはぐるりと一回転し、影を遥か空へと放り投げる。
第一宇宙速度もかくやの速度で投げられた影は成す術なく。
「君に敵は、いないだろう」
アダムの拳圧を、雷と嵐の力で超電磁砲の要領で撃ち放つ。
【!!!!!】
ネルの影は、迫りくる迅雷に抵抗一つできず…霧散する塵となり、消え去った。
「……!」
生徒への教導、それに類する暴力に胸を痛める暇もなく。背後から無数の弾幕が撃ち放たれる。
「ヒナだな。次は君だ」
【────】
無感情に、世界を削り取るような弾幕を撃ち放つヒナにぐっと力を込める。
「ネルに伝えた科学とは、こういう事だ」
自身の背中に、セトの神秘を解放。天然のジェットブーストとして自らを制動、自由落下を無理矢理無力化する。
「ヒナ。弾幕制圧は面の掌握において最適解の一つだ」
【───────!】
「だが『面をすり抜ける線には弱い』」
影に意志があれば、それは驚愕に染まったであろう。本来ならば絶死であるはずの弾幕の最中──
アダムは『隙間を抜い真正面から突っ込んできた』のだから。
「本当の意味で面を塗りつぶす弾幕斉射は不可能だ」
そして一気に距離を潰され、影の間近にアダムは降り立つ。
「どのような弾幕機体であれ、自衛の為の近接戦闘と無縁になれん」
【!!】
素早く巨大な銃火器を向けんとするが、その巨大さ故に間に合わない。
接近戦においては、ハンドガンすらナイフの制圧に後れを取る。
であるならば。面制圧を主題とした大経口マシンガンが『徒手空拳』に近接戦闘に勝る道理はなく。
「君に必要な要素は近接訓練だ。いつか──」
鈍器のように振るわれたマシンガンを、アダムは空手の回し受けの要領で防御、弾き飛ばし。
「君に護身術を、手解きにいくよ」
影の襟を掴み───
【───────!!!】
絢爛見事な『大外刈』。柔道において一瞬で一本を取る超大技で、影を瞬時に無力化せしめた。
硬いアスファルトに受け身の余地なく、アダムの膂力で叩き付けられれば。幻想種の竜すらも背骨が叩き折れるだろう。
かはっ、と肺の息を全て押し出され、ぱたりと力なく倒れ消えていくヒナの影の頬をそっと撫で哀悼し、立ち上がる。
【!!!!!】
残心の隙を待っていた。そう言わんばかりに突撃を敢行する最後に残りしツルギの影。
「──自らの頑強、堅牢さを誇る強襲、遊撃の弱点」
だが、アダムは背後に嵐の壁を展開。ツルギの影ごと、弾丸と制圧を押し留める。
【!!……!!!】
猛烈な嵐に、無理矢理行軍を阻まれ停止した───
瞬間が、決着。
「それは、初手にて『許容範囲以上の攻撃を受けること』だ」
トン、と。
鎖骨の中心に、そっと4本の指が添えられた。
「自らの耐久を過信してはいけない」
その瞬間。4本の指を引き絞るように握り込み───。
「無茶にも、繋がってしまうからな」
アダムが放つ、渾身のワン・インチ・パンチ。ツルギの影を突き抜け、ツルギの背後のビル群、アスファルト、それら全てを粉々に破壊し粉砕する超絶威力の寸隙殴打。
ツルギの影は、断末魔や余韻すら残さずに消滅した。
「前衛で皆の血路を拓くばかりでなく、皆が拓いた道を進み戦うのもいいものだぞ、ツルギ」
嵐のように巻き起こった破壊のあと、アダムはそっと埃を払う。
(セトの神秘…欠片ですら恐ろしい力だ)
アダムが取り込んだ、嵐と雷のほんの一欠片。それですら、自身にこれほどの力を齎す。
(ユメはこれほどの嵐から、アビドスを護り抜いたのだな…)
今は、リッカの力で豊かな自然が戻っているアビドス。
その地を守るために、今こそユメのような守護者が必要だ。
「待たせたな、ユメ。終わっ───」
頭を振り、成すべき事に尽力しようと顔を上げたその時。
「うわぁぁあ〜〜〜〜〜ん!アダム先生〜〜〜〜〜〜!!」
「───────」
常人なら首が折れる質量と、何処までも顔が沈み込む柔らかさ。
相反する属性を持つ物体に眼前を塞がれ、アダムは閉口する。
「凄いです、凄いです〜!これが、素敵な大人の力なんですねぇ〜!」
「────……………」
懐かしいな…。酸欠でEDENに魂の帰還を果たそうとしているアダムに気づき、慌ててユメは身体を離す。
「あっ!ご、ごめんなさい!私ったら感動しちゃって…!でもでも、本当に凄かったんです〜!私、私…!」
みしり、と首の辺りから嫌な音がした事から目を背けるように、間違いなくこの場で最もダメージを与えてきたユメにアダムは告げる。
「君の頑張りが、私に火を付けてくれた」
そしてそっと、ユメの頭に手を乗せる。
「あ…」
「今まで、本当によく頑張ってくれた。ありがとう、ユメ」
本当に、よく頑張ってくれた。
ありがとう。
それは、最後にいつ聞いたかも解らない労りの言葉。
「あ、…………ぅ……っ」
「アビドスは様変わりしている。ホシノも、後輩たちも、アビドス自身も。それを必ず、共に見に行こう」
夢から覚めて、一緒に。
その、暖かい言葉を受け…。ユメの中で何かが決壊した。
「─────ふぇえぇえええ〜〜〜〜〜〜ん!!」
「!?」
何処にそんなパワーがあるのか。アダムを押し倒し押し潰すように抱擁しユメが大泣きする。
「私、私…!ありがとうございますぅう〜〜〜〜〜!!アダム先生!大好きですぅう〜〜〜〜〜〜!!」
「────────」
首をミシミシと締め上げられ、目の前にはリリスを思わせる圧倒的弾力装甲。
やがてそれはアダムの意識と生命を刈り取る死の抱擁となる。
(成る程、これが私の死か───)
「あ、アダム先生!?アダム先生〜〜〜〜〜〜!?」
アダムは、自らに迫る…
確かな予感に、目を閉じた。
セリカ【カァアァアッ、ァァァァァァァァァァァァ─────!!】
バキバキと、獣のように前傾四脚の体勢になったセリカの姿が変化する。
人間の骨格から翼が生え、爪が鋭く伸び、牙が生え、眼光の鋭さを待つ。
身体中から銃口が現れ、疾走と殺戮と復讐…それのみに特化した形態へと変化する。
地下生活者【ひっ、ひ、ヒィィィイィイ…!?】
自身の至らない力を、何十、何百、何千の自己改造にて補強し強化し、進化させた疾走殲滅形態。
マッハに類する速度で疾走し、全身の銃口から放たれる制圧と衝撃波で全てを滅する反転形態。
カイザーPMCの技術を全て喰らい、自己を強化した果てに色彩に見出された、屍山血河の産物。
セリカ【ナァアァァァ────────オォオーーーーッ!!!】
血河のセクメト。
それが…この時空における。
『幸福なる自分』の世界を護るために、顕現した。