人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
お前は罪人である。
穢らわしきその身が、我等が高次の次元に至るには試練を迎えねばならぬ。
全てを侵し、奪い取るがよい。
さもなくば。
我以外を信じ崇めたお前の同胞は。
救いなき地獄にて、永劫の業火に焼き尽くされるだろう──。
「フッ……!!イヤッ、イヤッ!!」
レッドメガゾーンが、決着を付けんと迫った時。無数の友と、小さいやつらが立ち塞がる。
それはあまりにも脆弱で、レッドゾーンに及ぶべくもない存在。それでも尚、彼らはボルシャックらを庇い立ち塞がった。
【やめてください、だと?巻き添えで死にたいのか?】
禁断の侵略者、レッドゾーンは静かに語りかける。そう、戦いになど及ぶべくもない。即座に加速した瞬間、吹き飛ぶ程度の存在でしかない。
現に、ちいかわは涙を浮かべハチワレは震えている。うさぎは静かに腕を組んでいるが、あまりにもそのスケールは隔絶している。
戦いどころか、鏖殺にしかならない。彼に、虐殺の気概は存在していない。
「死にたく、無いです…!」
「フゥン…」
「でもッ、皆が滅びるのも、凄くイヤなんですッ!」
ハチワレが、レッドゾーンに叫んだ。
「美味しいものも、素敵なものも…もっともっと、見ていたくてッ。これからも、毎日を…生きていたいからッ」
「フッ…フッ…!」
「だからッ…!滅びたく、無いんですッ!」
ハチワレの、ちいかわとうさぎのたどたどしい言葉が空間へと響く。
【……!】
その姿を、レッドゾーンは瞠目し見据えた。そう、そこには絶望が備わっていなかったからだ。
自身よりも遥かに上回る存在に、それでもと奮い立ち立ち向かう。
それこそは、この宇宙において真理にして世界を支える力。
それこそを、宇宙は力として束ね続いてきたのだという確信。
それこそを、この矮小な生命は体現しているのだ。
【……………ッ…】
「ェ…」
その時、ちいかわ達は見る。レッドゾーン…機械の紅き身体を持つ、強力極まるクリーチャーが。
その瞳が、動揺に揺れている事を。
その姿が、自身の存在の意義に揺らいでいることを。
「あ、あのッ…大丈夫、ですか?」
「ゥラ、ヤハ」
そして、敵でありながらその動揺を労るハチワレの優しさと、とうさぎの余裕もまたレッドゾーンの心をかき乱す。
【…オレは……】
オレは、一体何をやっているのか。
宇宙における大いなる滅亡の意志。それは全てに等しく滅亡と終焉を与える。
それに抗うことは出来ない。宇宙が新生するために必要なパターン、サイクルであり、抗う事などはじめから不可能だ。
災厄に、生命あるものが抗う事など叶わない。ただ平伏するか、ただ嘆き受け入れるかの差しかないのだ。
自身もそうだと、そうするしかなかったと受け入れていた。
現に、火の文明におけるクリーチャーすらも禁断の力の前に屈する他なかった。
それが何よりも、抵抗の無意味さを示している。
無意味なのだ。生命あるものの抵抗など。
【……オレは…!】
それは。
ただの『逃げ』なのではないか?
現に今、目の前の存在が勇気を奮い立たせている。
挑む相手の力量も測れぬ愚か者と嗤う事は容易いだろう。
自らが挑んでいる相手の力を知らぬ愚昧と嘲る事は容易いだろう。
だが、それこそが世界を、未来を切り拓く最初のきっかけにして真理だったのではないか?
それを自身は、侵略者でありながら知ったのではないか?
此処ではない場所で、自身は確かに『これら』と触れ合った。
『勇気』『優しさ』。そういったものを、侵略に抗う生命達を通じて知った筈ではないか?
そしてそれを知りながら、自身は結局禁断の…宇宙の滅びを迎える意志に諾々と従っている。
自身より遥かに脆弱な生命が、抗うことを選択しているというのに。
それは、そのまま。
【オレは…っ!!】
それはそのまま、自身の選択の脆弱さを、愚かさを糾弾しているのではないか?
レッドゾーンは、頭を抑え苦しみだす。
【オレは…一体、何をやっている…ッ…!】
それは、自身の行っている行為への困惑と混乱。
自身が選択している行動と、自身が行っている行為。
【より大きな勢力に屈する侵略は、それはただの尖兵の進軍に過ぎないのではないか?】という自身の存在へのロジックエラー。
そして何よりも。
何よりも、自身を信じた者達への──。
【ぐ、おおおおおおおおおおッ…!!】
その混乱と困惑、疑問と疑惑はレッドメガゾーンを苦しませ、惑わせ、悶えさせる。
ボルシャックらでは強すぎた。それらも飲み込まれるものにすぎないと、レッドメガゾーンを諦観させた。
だが、ファイアーバード達やちいかわ達、小さき者が宇宙に挑む姿は鏡となって、自身の醜態を映す事となった。
それは、彼という存在と彼…侵略という存在。そしてそれらを信じた者たち全てへの冒涜であり。
生き恥という、耐え難き自身の矜持への瑕疵に他ならなかった。
「あ、あのッ…!大丈夫ですか!?」
「エッ、エッ…!ワ…!」
その困惑に、混乱に、ちいかわ達は驚き戸惑う。
そして、その混乱はさらなる混沌と恐怖を呼び寄せる。
【【【【【全ては無意味…全ては無価値……】】】】】
「ワーッ!?」
先程、レッドゾーンが吹き飛ばした筈の宇宙の意志の眷属、イドム。
それらは更に湧き出、ちいかわ達ら生命の勢力を消し去らんとする。更に、膨大な数が現れた。
「ウララララララ!!」
うさぎが懸命に武器を振るい、イドムらを威嚇する。そしてちいかわもハチワレも、抵抗をやめない。
「ヤーッ!ヤーッ!!」
「負けない!滅びたり、しないッ!」
そしてファイアーバード達もまた、懸命に禁断に挑む。
【ぐう、おおおおおッ!!】
絶好のチャンスであった。ちいかわらや、ボルシャックらに引導を渡す絶好の機会。
レッドゾーンは動いた。
「ワッ!?」
そして、その紅蓮の軌跡は穿つ。
【【【【【無へと…還る……】】】】】
それは先のように、イドムたちを焼き払う紅蓮の一撃。
再び、レッドゾーンはちいかわ達を護ったのだ。
「エッ…!」
「やっぱり…!」
ハチワレは、確信を持って告げる。
「あなたッ、悪い人じゃ無いですよねッ!」
「エッ!?」
「プルャ」
うさぎは頷く。
2度も、生命を助けてくれた。それは最早疑いようがない。
彼は禁断に付いてはいるが、天使の様に汚染されてはいない。
何か仕方ない、やむを得ない事情と意味があるのだと確信したのだ。
「何か、困っている事ッ!ありますかッ!」
【ッ…!!】
「力にッ、なれますかッ!?」
ハチワレの訴えが、レッドゾーンを打ちつける。
【ぐ、おおおおっ…!!】
頭痛は、自己存在の否定と混乱は益々と大きくなる。
【オレは…オレは!禁断の尖兵、レッドゾーン…!!】
「大丈夫、ですか!?力を合わせてッ……」
【絆や友情など、無為に滅ぶものに過ぎんのだッ…!!】
レッドメガゾーンは、迷いを振り払うように叫ぶ。
【故に、オレが滅ぼさなくてはならんのだッ!!全てを無に還すのではなく…!!】
「わ、ワッ…!」
【終わりのその先へ!!至らせるために────!!】
レッドメガゾーンが、頭を抑えながらも再びマナを迸らせる。
それは、ボルバルザークを沈めた際の再現。最速の攻撃。
「ワーーーッ!!」
その攻撃が届けば、今度こそ助かる道は無い。
今度こそ命運尽きたと、涙ながらにちいかわが絶叫する。
【オレの手で!終わりへと導いてやる────!!】
「ヤダーーーーーッ!!」
その渾身の一撃がちいかわ達に振り下ろされんとした時。
【ッッッ──────!!?】
その瞬間──
禁断の空間に、大いなる…
プレシャスで、プレミアムな輝きが満ち溢れた。
ボルバルザーク『お前達!お前達!!』
ボルシャック『ぁ…!?なんだよ、聞こえてるぜ…!』
ボルバルザーク『どうやら禁断や侵略とやら、一筋縄ではいかぬどころか次元が違うらしい…祖龍の雷槌程ではないが、いい一撃を食らったわ!』
バザガジール『まさか御身がそれほどの…』
ボルバルザーク『ぐはは、言い訳はすまい!ならば、我等も一つ限界を超えねばなるまい!』
ボルメテウス『何をするつもりだ…?』
ボルバルザーク『無論、決まっている!!』
『真化するぞ!お前達!!我々なら成し遂げられよう!!』
『『『はぁ!?』』』
ボルバルザーク『祖龍から聞いていたのだ。真化とは即ち分かり合い、共に歩む事!』
『世界が滅びながらも共にあった我々が、出来ぬはずが無かろう!!』
ボルシャック『───────』
ボルバルザーク『負けた以上、奴には王としては挑まん』
『野にくだり!挑戦するまでよ!!』
ボルシャック『───基本的に、お前には振り回されてばかりだがよ』
バザガジール『えぇ』
ボルメテウス『うむ』
ボルシャック『今回ばかりは、大賛成だぜ!!』
ボルバルザーク『ぐははははははァ!!ならば見せてやろう!!』
『世界に轟く!プレミアムにして王の力を!!』