人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
パパポポ『心と魂は一から創ることは出来ん。自然発生を待つしかないものだ』
アルセウス『故に、それらは奇跡なのです。ですがドギラゴンは心が織り成す暗い紋様に囚われ、心に絶望してしまっている』
キラナ『…うん…』
アルセウス『故に、我々が彼を呼び戻さなくてはなりません。…私達の様に心に触れたばかりの存在ではなく、皆様なら』
『心と共に生きる皆様なら、きっと』
アダム「…あぁ。勿論だ」
『では、私が対話のきっかけを作りましょう』
アロナ『えっ?』
『何故こんなに苦しいんだ!何故こんなに悲しいんだ!こんなにも辛い思いを産み出すものが、何故オレに備わってしまったんだ!何故、何故!何故だァァァァァァッ!!』
猛り狂う、嘆き悲しむドギラゴン。それらは戦慄と慟哭となって雨の嵐を益々加速させる。
眼前も見えない圧倒的な暴風雨。それはそのままドギラゴンの無念と慚愧を形にした光景そのものだった。
『これじゃあ、近付けない…!』
キラナの言葉通り、本来ならどんな言葉もどんな想いを通らない程の嵐。
皮肉なもので、彼自身の嘆きと想いが禁断の最終防御ラインへと変貌しているのだ。システムでは懐けぬ、絶対防御機構。
本来なら、ドギラゴンには届かない筈だった。そう、本来ならば。
『ドギラゴン。説得は彼女達の領分ですので、私は無感情に世界の維持者としての役割を果たします』
その時、念話だけであったアルセウスの声音が強く輪郭を帯びる。
「………!」
そして、レッドが取り出したるは『白いモンスターボール』。金色の装飾がされた豪奢なもの。
「それは、まさか──」
アダムの言葉より早く。
レッドは、そのモンスターボールを解放した。
『────────!!!』
そして、現れしは神々しきプレートを構えし『アルセウス』。ポケモン世界の万物を作りし創造神。
「アルセウス…!!まさか分体を連れていたのか!」
『えぇ、パパポポ様。私は宇宙の真化を見守り時には宇宙の力を増すために顕れなくてはならないので、緊急時の為に依代を預けているのです』
たまたまシロガネ山の温泉で鉢合わせしたアルセウスは、レッドの因果に興味を持ち分体を授けた。その分体はポケモンとして、こうして『ポケモンの形をした神』の御業を放つために使用される。
『では、まずはムチからいきましょうか』
全てのプレート、アルセウスの生命の源を収縮、凝縮し自らの力を、神霊クラスの裁きの礫に変えドギラゴンの世界へ満たす。
『まずは、使命を放棄し禁断に与した罪に罰を与えます』
アルセウスは咆哮し、天に向かって輝きの礫を放つ。
それこそは、万物を裁く神威の業。
『ダアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッッッ!!!』
渾身の咆哮と共に放たれた無数の裁きは、ドギラゴンの深層心理…
【【【【【【グアアアアアアア!!】】】】】】
否。ドギラゴンを惑わせていたイドムの全てを焼き払った。それらはドギラゴンに絶え間なく悪夢を見せていた、彼を監禁するための禁断のギミックであったのだ。
「雨が…」
雨がやみ、雲が切れ、陽光が差す。それはドギラゴンが、禁断の囚われから脱したことを意味している。
「………………」
圧倒的。そうとしか形容出来ないものだった。それは、アルセウスというポケモンの技に形容出来ない神威の具現。
世界を滅ぼす裁きにて、イドム以外の何も傷つけてはいない。そういった神業の精緻がそこに示された。
『う、ううっ…お、オレは…オレは…?』
『目が覚めましたか。ドギラゴン』
前後不覚から脱したドギラゴンが、アルセウスを認識する。
『アルセウス様!オレは!オレはっ!』
ドギラゴンが、自身の無念を伝えようとしたその時だった。
『歯を食いしばるように』
『え?』
瞬間。アルセウスの力が隆起する。
『修正しますので』
そして─────
『ぐっはぁあァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』
吹き飛んだ。大樹に向かって、猛烈な速度でアルセウスの右足がドギラゴンを叩き飛ばしたのだ。
かくとうプレートによるばかぢから。それはまさに、天地が揺るぐ神の一撃となりドギラゴンに振るわれたのである。
『がっ、はっ───ぐはあっ───!!』
ドギラゴンは大樹に深々とめり込んだ。否、原形を留めている事こそが手心の証左か。
『あなたへの裁きは二つあります』
静かに、アルセウスはドギラゴンに語りかけ空間に宇宙を満たした。それは今の宇宙の状態そのものであった。
『一つは、この宇宙が未曾有の危機を迎える中、上位種でありながら自らの使命を失念し、あろうことか禁断に結果的に与した事。見なさい』
そしてアルセウスは宇宙全ての全容を示した。遥か銀河団が集う、途方もない巨大なる宇宙の大きなうねり。
『私達上位、真化に連なるものの使命はいずれ全ての生命を宇宙の真諦に触れさせ、我々の階梯に至る事を見守り、導き、守護する事。真化した人類は宇宙を支える力そのものとなり、宇宙における行き止まり、デッドエンド。『剪定事象』の概念を自ら乗り越える存在となる。それらを永久に齎す為に我等は宇宙の意志として在るのです』
そして、宇宙には異変が起きている。
大きな、大きな虚。漆黒の穴から齎される風と手が、無制限かつ無遠慮に当たり構わず宇宙と星々、銀河団を毟り取り吸収していく。
『宇宙は死と生誕を繰り返すもの。しかし今禁断…そしてビーストΩは死、そして新生の先の世界を掌握し自らの世界を宇宙としようとしているのです』
今ある宇宙、そして世界を禁断は終わらせ無に帰そうとする。禁断はそれらこそが目的である。
ビーストΩは【新生した世界】を既にテクスチャーとして形成し高次元のどこかにて所有。そして今ある世界を終わらせ新生した宇宙、自身の天国をこそ【新生した宇宙】へと塗り替えることを目的としている。
禁断からしてみれば、新生した先にある世界など存在すら許せぬもの。
偽神からしてみれば、禁断は自らの世界の新生に必要な燃料を掠め取る目障りかつ自らの世を脅かすもの。
どちらも、今いる生命や今ある宇宙を容認する気が欠片もない存在だ。故に、今ある生命体、今ある事象、今ある宇宙…
即ち生きようとする意志、『プレシャスパワー』を司る勢力はこれを全力で留めているのだ。
しかし今、その勢力は不利と言わざるを得ない。創るより、育むより壊すほうが遥かに簡単なのだ。
二大勢力は、猛烈な勢いで生命と宇宙を刈り取る。銀河規模、銀河団規模、次元規模での伐採など当たり前だ。
アルセウスら真化事象勢力は常に後手に回り続けている。致命的な破綻を、最高の力で穴埋め、フォローしながら護り戦っているのだから宜なるかなというべきであろう。
『よろしいですかドギラゴン。我々には嘆き、立ち止まり、ましてや迷うことすら許されない立場にあるのです』
そしてアルセウスは太陽系、第三惑星にズームする。しかしそこには威容な光景が広がっていた。
「これは…」
それは虹色の重力場、虹色である事象に適した表現ではないが…ブラックホールのように無数の可能性たる七色の輝きが地球に集っているのだ。
『超特異点。エア=レメゲトンによる『人理を照らす、開闢の星』の発動により、かの世界はロストベルト・ゼロから超特異点アイン・ソフ・オウル・ノヴァへと在り方を変えたのです』
それは、超特異点にして分岐点。宇宙の極点にして収斂の究極。
『超特異点の世界でビーストΩが討ち果たされた時、ビーストΩが齎せし被害や禁断の暗躍は全て『特異点』として正しく修復され、消えていったあらゆるものは理不尽に消失したものとして我々が取り戻す。いえ、『アカシックレコード』の所持者と共に、『オールマイティグレイル』勅令の下、宇宙修復の大奇跡が果たされる』
『……………』
『分かりますね?私達の戦いは、彼等の『聖杯戦争』の後に起きるものなのです。それをあなたは、心を暴走させ逆の事象を起こす事に加担したのです』
心から、悔やみ改めなさい。ドギラゴンはアルセウスの言葉に沈痛な沈黙を返す他なかった。
『そしてもう一つ。ドギラゴン。あなたは今心を得た事を後悔していますね』
アルセウスの言葉に、ドギラゴンは顔を上げた。
『だって…だって辛すぎるじゃないか、アルセウス!喜びを、楽しさを知れたのは嬉しい!だが別れや、憎しみや、恨みはもっともっと辛く苦しかった!システムであれば、オレはもっと完璧にやれていた!ノーデンスだって、オレに入れ込まずに済んだのに!』
『辛いから、いっそシステムのままがよかったと?』
『そうだよ!オレは、オレは心を持つべきでは無かった!そうすれば───!』
ドギラゴンは最後まで口にすることは叶わなかった。
『それが、あなたを裁く理由です』
『がはぁあぁああぁっ!!?』
ドギラゴンは、再び深く深く地面に叩きつけられた。
『心とはこの宇宙を支える力。それを宿した生命体こそが真化に至る。あなたもまた、真化に至る資格を有した』
『ぐぁ…』
『それを否定する様な真似をするから、禁断に付け込まれたのです。私はこの世界に生きる生命達を代表し、あなたの思い違いを糺します』
我々が護りたいと願ったのは何か。
それを忘れし守護者に、アルセウスは裁きを下したのだ。
『私の意志を、言葉を胸に刻み、次なる者達と語り合うように』
それを告げ…
アルセウスは静かにモンスターボールへと戻っていった。
ドギラゴン『オレは…オレは…』
キラナ『あ、あのー』
ドギラゴン『!』
キラナ『お話いいですか!』
ドギラゴン『お前らは…』
キラナ『はい!』
『いっぱいキャンディーチームです!!』