人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
アルセウス『そのことですか?勿論です。スマートフォンと私の分体が揃えば帰れますよ』
パパポポ『分体はどうやって?』
アルセウス『全てのポケモンを集めればよいのです。人間のバイタリティなら余裕でしょう』
パパポポ『説明はした?』
アルセウス『初対面で全てのポケモンに出会え、と』
パパポポ『それが説明…?』
アルセウス『はい。分体を渡した時に帰れますよと』
パパポポ『ツンツン!!』
アルセウス『あいたたた。何をなさるのです』
パパポポ『神としてアフターケアが足りんのだ、バカモノ』
『そうでしたか?……そうでしたかも…』
『ごめんなさい』
パパポポ『ちゃんと最後まで関わるのだ。アンセスのように』
アルセウス『成る程』
『ちゃんと、お手本がおりましたね』
『私はキラナって言います。こっちはレッドさん、アダム先生、アロナちゃんに、パパポポ様!皆、ドギラゴンさんに会いたくてやってきました!』
『パパポポ…パパポポ…?』
『獣に殺された神の三位一体の聖霊に身を窶しているが本人だ、ドギラゴン』
アルセウスの制裁により、冷静さを取り戻したドギラゴン。そこに、キラナ達がそっと歩み寄る。
『まずは、えっと、うーんと…!えっと…えっと…』
キラナはドギラゴンに元気よく挨拶を行い、会話の糸口を切り出さんと口火を切ろうとしたが…上手く言葉を紡げずにいた。
『キラナちゃん、どうしちゃったんでしょうか…!?』
「リッカで慣れ親しんではいるが、本来ならば初対面の相手と話絆を結ぶのは大変な事なのだ、アロナ。どう話すか、どう語るか。何を伝えるべきか…それを上手く伝える事は、簡単ではない」
「……………………………」
『覚えがありすぎる、とレッドは言っていますね』
だが、キラナの言葉はアフラ・マズダの加護により一切の虚飾なく、誤解なく伝わる。そしてそれは祝福にも呪いにもなる。
相互理解とは良きことばかりではない。相手を知ることにより、不倶戴天の溝が更に深まることも往々にしてあるのだ。
『あの!ドギラゴンさん!!』
そしてキラナが、言葉を選ぶ。
『私達の為に戦ってくださって!ありがとうございました!!』
『──────は?』
それは、感謝の言葉。
そして、ドギラゴンが驚嘆を浮かべた理由。
それは、そこに全く『悪意』が無いことにあった。
『お前…いや、君。どういう事だ?どうしてそうなんだ?』
『えっ?』
『どうしてそんな、一片の曇りなく『善』を果たせる…?』
ドギラゴンはノーデンスから学んでいた。心は七色の虹のようなものだと。
しかしキラナの紡ぐ言葉、感じる想いは善だ。
善しか感じない。一切交わらない、魚が住み着かない程の清らかな水辺が如くに。
その不可思議に、ドギラゴンは問わざるを得なかったのだ。
『詳しいお話はいっぱいします!だから…』
パパポポがキラナの意志を、善神の誼で汲み取り願いを果たす。
『皆で、美味しいものを食べよー!!』
そこに現れたのは、ピクニック用品。
皆で行う、ピクニック対話が始まるのであった。
〜
『ノーデンスの爺さんが生きてるだって!?』
ドギラゴンは何よりまず、相棒の生還に驚嘆の声を上げた。
本来、宇宙と合一化してしまえば必ず自意識や存在は霧散し消えてしまう。海に角砂糖を溶かすも同義だからだ。ウルトラマンや神クラスでなくば出来ない領域。実際にノーデンスも帰還するつもりは無かっただろう。
それが、生きている。再びまた会えるという。
『良かった…本当に、本当に良かった…』
それは、涙。
『お、おかしいな。おかしいじゃないか…オレは今嬉しい、嬉しい筈だ!なのに…』
なのに何故、涙が出てきてしまうのか。それは心が齎す、感情の揺らぎに対する戸惑い。
『嬉しいときにも、涙が出るんだよ。私ね、いっぱいいっぱい嬉しくて泣いたことあるから…解るんだ』
『嬉し泣き…君が…?』
『うん。私はね、誰にも会えなくて、誰とも会っちゃいけない生き方を決められてたの。何も染まらず、何にも穢れず善であれって。ほら!』
ぬぎぬぎと、キラナは上着を脱ぐ。セーヴァーと選んだ可愛らしいフリルのブラジャーを付けたままの上半身を、くるりと回し背中を見せる。
『!!』
ドギラゴンが見たそこには、彼女の身体に刻まれた偏執的なまでの呪文が浮かび上がっていた。精緻で、緻密で、精密で鋭利な針で一文一文を丁寧に丁寧に刻まれた人工言語。
我々の善を証明するものであれ。我々の安寧を保証するものであれ。我等に罪なし。我等は善なり、我等は正なり、我等は由なり、我等は輝ける魂なり。
一人の魂と人生を剥奪し、彼女の皮膚と肉を丁寧に丁寧に引き裂いて刻んだ、絶対善の証明。
彼女の人生は、この世すべての善を証明するためだけにあった。
『お前、こんな…これは…!!』
一同に人の業を突きつけられ、沈痛な空気が流れる。
『キラナちゃん!?い、痛く…痛くないんですか…!?』
『痛くない筈が無かろう。ただ、痛がる自由すらかつては与えられていなかったが故、その痛みが当たり前だったに過ぎん』
『……酷い事をするものです。星のように眩く、泥のように醜いのが人間であるが故に』
「「…………」」
キラナはそれでも、心から笑った。
『でも、私は幸せなんだよ!最高の、えっと。『すぱだり』がいてくれて!本当に本当に嬉しくて、幸せだった!』
『馬鹿な…』
ドギラゴンは驚愕する。彼もまた真化の眷属。目の前の存在がいかな扱いを受けていたかなど察しがつく。
発狂し、狂乱して当然の筈だ。心が耐えられる筈がない。精神も肉体も魂も、他者に奪われた人身御供。
そんな彼女が、幸せだなどと。
『ご飯を食べて、一緒に眠って、一緒に過ごせた。私は本当は許されない事だったのに、彼と世界は全部を私にくれた!だから、だから毎日私はお祈りしていたの!』
キラナはセーヴァーと出会った時から、毎日欠かさず祈りを捧げた。
私にこんな幸せをくれてありがとう。
私をこの世界に誕生させてくれてありがとう。
私は本当に、本当に幸せもの。
幸せを、幸せを感じることが出来る事にありがとう。
私に、心をくれてありがとう。
『!!!』
ドギラゴンは、今度こそ本当に自らの愚行を心から恥じた。
この少女は、年端もいかぬ幼女は。自らの全てを奪われながら幾許の救いを受け止め心を宿したというのに。
自身は、たった一度の絶望で全てを無くさんとしたのだ。
『心ってね、空なんだよ。晴れたり曇ったり、雨も降っちゃう。でもね、でもね!雨は絶対止むよ!そしたらね、また晴れて空が広がるの!』
だから、と。キラナは懸命に自らの想いを伝える。
『だから、辛い事は私達と背負おう!今は世界が土砂降りだけれど、私達が力を合わせればきっと晴れにできる!』
作戦前、リッカにつたえたいことを集中して伝える方法を学んだ。
だから今、キラナの言葉は全身全霊だ。
『だからドギラゴンさん…!涙を拭いて!私達と一緒に行こうよ!』
その時、アダムとパパポポ、アロナが協力関係してクラフトを行い、キラナに託す。
それは、カレーパン。彼の心のルーツであった。
『…あぁ、そうだ。そうだった。そうだったよな…』
ドギラゴンは、静かに何度も何度も差し出されたカレーパンを目の前にし頷いた。
『オレは君やあんたたちみたいな素敵な人達を護りたいと、そう思える自分を、心を。誇りに思ってたんだった…』
自身のルーツ、オリジンに辿り着いたドギラゴンはカレーパンを受け取る。
そして、静かに一口、噛み締めた。
『あぁ…美味い…これが…この味がそうだった…』
それこそが、ノーデンスから教わった味。
まさに美しき『平和』の味、そのものであった。
『お前達。すまなかった。無様を晒し迷惑をかけた』
『本当ですね』
『アルセウス様!しーっ、しーっ!』
そしてドギラゴンは、今度こそ迷いを祓う。
『生まれた心を捨てたいなど、心宿した全ての侮辱であった。その愚行、全身全霊をかけて贖おう!』
ドギラゴンの身体が巨大に、そして雄々しく煌めいていく。
『わぁ…!』
それこそが、宇宙が生んだ尊重の龍が一体。
『さぁ始めよう!!最高の革命…プレシャス革命を!!』
ドギラゴン
ノーデンスと共に宇宙を救う、究極の革命龍の復活にして顕現であった。
【【【【【オオオ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオ…!!】】】】】
イドムが、苦しみ出す。無限に溢れ出る宇宙の善なる意志が満ちるが故に。
『ぐははははははははははははははははははァ!!奇遇にも後押しが来ようとは幸運よなァ!!』
レッドメガゾーン『!!』
そこに顕れしは、殿堂の王。
そしてバクテラスやネオ、バザガジールの力を合わせし『真化融合』を果たせし究極のビクトリー・クリーチャー。
『刹那なれど、真化は果たせり!!さぁ侵略者よ、我等が挑戦をしかと受けるがいい!!』
キング・ボルバルザーク。真化クリーチャーの顕現が成された。
そして、ドギラゴン逆の場面においても。
【グゴァアァァァァァァァァァァァァァァァ!?】
ドギラゴン逆が吹き飛ぶ。
【あれは…!』
浮かび上がるは『オメガブレード』。デジタルワールド究極の聖剣。
次元が裂け、それを掴む者が現れる。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』
マスティモン【伝説の…ロイヤルナイツの始祖…!!』
インペリアルドラモン・パラディンモード。
それが今。
アルセウスとドギラゴンにより増したプレシャスパワーを触媒に顕現したのだ。
今───
心の闇が、祓われる時が来た。