人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
ノーデンス『そりゃそうじゃろ。魂は抜けても身体は禁断にどっぷりじゃ』
ドギラゴン『こいつは聖杯と食い込んでる。カルデアに聖杯を取り返してもらわなくちゃ無理か…』
ノーデンス『そうじゃのう。というかお前さんもそれに協力するんじゃよ』
ドギラゴン『そりゃ勿論望むとこだが。何すりゃ良いんだ?』
ルゥ『むふふぅ』
ドギラゴン『!?アンセス様!?』
ルゥ『あなたもモロコシの魅力にどっぷりするんだぁ!』
ドギラゴン『モロコシ!?』
悪夢は、終わった。
ドギラゴンの精神を蝕んでいた禁断は振り払われ、夜における禁断勢力の来襲は阻止される事となった。
それに更に禁断の対策として配布されていたモロコシ、流行っていたカレーパンなどに含まれていたプレシャスパワーから、禁断の干渉を受けることはなくなった。
二日目のオペレーションは、完全な成功を収めたといっていいだろう。それぞれの戦いは完全なる勝利に終わったのだ。
だが、夢から覚めればそれぞれの現実が待っている。日常のバカンスこそが、本懐であるのだから。
『───────!』
インペリアルドラモンパラディンモードは、再び高次元の最中へと還る。彼もまた、真化の使徒として宇宙のあらゆる厄災と戦わなければならない立場である。今回はオメガモン、ロイヤルナイツ達の決死行に力を貸してくれたまでなのだ。彼もまた、デジタルワールドを救う為の戦場が待っている。
『ありがとうございました、インペリアルドラモン。我々も我々の成すべき事を果たしましょう』
アルセウスの言葉に、静かに頷く。彼もまた、道交われば共に轡を並べる事となるだろう。
「カッコよかったよ!ばいばい、インペリアルドラモン!」
『今は欠けた三大天使の一角として…この御恩は忘れません』
手を振るキラナ、テイルモンを見たインペリアルドラモンは静かに膝をつく。
「わっ…!」
それは騎士の礼節。世界を救う善たるものへの忠節であった。
「…えへへっ」
そっとキラナがインペリアルドラモンを撫でる。少女のその眼差しは優しく、穏やかである。
『───────!!』
それを皮切りに、インペリアルドラモンは天高く舞い、消え去る。オメガブレードが入れ替わりに浜辺に突き刺さり、姿を変える。
「いたっ!?」
「なんでオレたちの扱いは雑なんだよ!」
アグモン、ガブモンが抗議混じりに帰還する。彼らの不屈の闘志が、デジタルワールドの奇跡を起こした。
【やるじゃない。今回は認めてあげるわ、騎士の皆様?】
インプモンは呆れながらもロイヤルナイツ達を労った。
「ありがとう!それにしても、皆はダウン中かぁ…」
「多分今回はもう戦えないかもな。あーあ、早く来てくれないかなぁ他の皆!」
「…………………………」
『おや、レッド?何か気がかりな事が?』
アルセウスの言葉に…
レッドは静かに空を見つめていた。
〜
「…………………」
ちいかわは、海を見ていた。
あの時、自分達を救ってくれた赤いでかつよ。
悪い人には、見えなかったのだ。
「考えてるんだ。あの人の事ッ」
「ワッ!」
その時、歩み寄るは友達のうさぎ、ハチワレ。ちいかわは夜の海のさざなみを共に聞く。
「苦しそうだったね、あの人」
ハチワレの言葉は、皆の所感であった。
敵でありながら、何度も助けてくれた。
あの人には、きっと何かがある。
「ゥン…」
「プルッ」
「このままじゃなくて、また…お話、できたらいいね」
「ゥン」
「友達…なれるかな?」
「ハァ?」
「ェッ!?」
ハチワレの言葉に、二人が思わず言葉を上げる。
「え、えっとッ。僕たちの話、聞いてくれたからッ。もしかしたらって、思ってッ…」
三人は顔を合わせる。
確かに相手は禁断で、侵略者だった。そんな相手と仲良くなりたいというのは、おかしいことなのかもしれない。
それでも、ただ倒すべき相手ではないと思ってしまったから。
心に、嘘はつけないから。
『良いんじゃねぇか。友達になってもよ』
「ワァッ!?」
その時、声をかけたのは巨大なでかつよの皆。ボルシャック達であった。
『気のいいやつとは例え敵でも通じ合えるもんだ。オレたちはずっとそうやってきたからな』
ボルシャックは笑い、ボルメテウスは頷く。
『先のヤツは、行動に迷いを感じた。心なき存在には無い迷いが』
『次は剣でなく、対話を重ねてみるのもいいかもしれませんね』
『どちらにせよ、妥協などという下らん真似はしてくれるなよ。戦いとは!一矢貫徹なのだ!!ぐははははははァ!!』
ドラゴン達が笑う中、てくてくと歩み寄る者がある。
「だいじょうぶ?」
ないある。夢の外で溢れ出ようとしていたイドムを人知れず始末していた元トップランカー。
「ワァッ!ゥン!」
頼もしい憧れの存在に、頷くちいかわ。
「ありがとうございますッ!次は、次はきっと…!」
「プルルルルャ!!」
決意を新たに、一同はハワイの波をそっと見つめる。
いつか、禁断や侵略者ともお話できる未来が来るのかもしれない。
そんな未来に、想いを馳せながら。
…そして、帰る家があるものもまた然り。想いを馳せる相手がいる。
『セリカは眠り続けている。どうやらまともな睡眠すらも摂らず活動を続けてきたんだろう』
『治るんでしょうか、パパポポ様!?』
『勿論だとも。今は…』
パパポポとアロナに治療を任せ、アダムは静かにモモトークを飛ばしていた。
『先生。私…とても怖い夢を見たわ』
『先生、ちっといいか?寝覚めが悪くてよ…』
『くきぃいぃいぁあっ!!きぇえぇえぇえっ!!』
地下生活者に操られし三人。当然ながらメンタルケア案件だ。大立ち回りした後であろうと、先生の業務に終わりはない。
『大丈夫だ、ヒナ。君が眠れるまでずっと付き合うとも』
『勿論だ、ネル。長い夜の話し相手に喜んで立候補しよう』
『慟哭するほど衝撃的な悪夢だったのだな。だが、私はここにいる。落ち着くんだ』
そのまま三人が再び安心して眠れるように力を尽くし、終わった頃には時刻は二時を回っていた。
「二度とこのような狼藉を許すわけにはいかんな」
『先生、本当にお疲れでした…!』
一息ついた時、そっとシッテムから声が響く。それはユメ…梔子ユメからの言葉だった。
「君の方こそだ。復活した最中、大変だっただろう。よく頑張ってくれた」
思えばセリカとドギラゴン、両方を大立ち回りで頑張り抜いたアビドス屈指の継戦能力を見せつけたユメ、その奮闘は特筆に値するものだ。
『い、いえ!私はアダム先生がいてくれればこそ頑張れたんです!お礼を言うのはこちらの方です!』
「謙虚だな。流石アビドス生徒会長だ」
『えへへ…って!照れてる場合じゃありません!…その、アダム先生。少しお願いをよろしいですか?』
ユメの改まった声のお願いに、アダムはベッドから身体を起こす。
「聞こう」
『あ!すみません楽にしてくださって構いません!これは個人的なお願いというか…その、わがままなので…』
わがまま。彼女には存分に言う権利がある。
「勿論だ。何でも言ってくれ。私が何でも叶えよう」
『あ、ありがとうございます!えっと、そのですね。まずは、一つ』
ふぅっ、とユメは息を吐く。
『ホシノちゃんには…私のこと、内緒にしておいてほしいんてます』
「!」
それは意外な申し出だった。すぐにでも会いたい、というかとも思ったたのだが。
『ホシノちゃん、リアリストだから。私が生き返った〜!なんて、きっと喜ぶよりまずアダム先生を疑っちゃうはずです』
「それは…」
『どういうつもり。死んだ人間は生き返らない。冗談がすぎる。…なんて、混乱させちゃうかもしれませんから』
それは、ユメのみが許されたオシリスの特異性。
しかし世界が死人を容認すれば、必ず世界は滅びる。
神の理は、もう人には遠いものだ。
『それに…ホシノちゃん、必ずどこかで暴走しちゃうはずです。その時は、私がドッキリも含めて止めてみせます』
「とびきりのタイミングで、生存を明かすのだな」
『はい!…よろしい、でしょうか?』
それが生徒の意志ならば。アダムは静かに頷いた。
「だが約束だ。必ず…」
必ず、ホシノ達の下へ戻ること。それが、条件だと。
「いいな?新しい人生を、必ず送るんだ。仲間や友達と一緒に」
『…はい!!』
ユメは力強く頷き、そして照れながら告げる。
『二つ目は、その…私も、シャーレに…』
その願いを告げようとした時。
『っ──────!!』
ユメが、弾かれたように顔をあげる。
「…感じたか、ユメ」
『はい、アダム先生…!』
ユメは、確信した。
『嵐が、来ます…!!』
──ハワイの海洋、遠くの地点にて一つの台風が観測された。
台風20号 / チップ (1979年) 。世界史上最強・最大の台風と同じ、 870 hPa 時速 305 km 気圧の低さと強風域の広さで世界1位に君臨する台風と同じものが、
それらが真っ直ぐに、意志持つように迫りくる。
それらがハワイに直撃すれば…
ハワイ諸共サバフェスは終焉を迎える。
夢は終わり。
現実による大破壊が迫り来ていた。