人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
フォウ(今ボクの人生のバイブルの話した?)
ギル『まぁよいわ。エアがクラフト中な今、万が一にも我等の出番はなかろうが…もしオルガマリーらが下手を打てば』
『ニャルラトホテプ、並びにBBは運営担当を解任!即座に春の花見席取り役に降格してくれるわ!』
フォウ(ボクは天条院沙姫が大好きだ!)
「オルガマリー所長!状況はどうなっている!?」
夢、精神世界において漸く禁断の侵略…支配から脱した攻略チーム。安心したのも束の間、ハワイに起きてはならない『異常気象』の報が告げられていた。
早朝4時半。休む間もなくアダムは叩き起こされオルガマリーらとブリーフィングに向かう。今度の一日は、大規模戦の可能性があると。
「お疲れのところ、申し訳ありません。こちらがニャルラトホテプとBBが観測した映像となります」
予断を許さないため、余計な会話はない。ただ事実のみが表される。
「これは…」
そこには、あまりにも巨大な『台風』が観測されていた。それは人類が観測したとされる台風と同等、或いはそれ以上か。
「この台風はつい先ほどまで観測されていなかった。類を見ないスピードで発達し、類を見ない速度でこちら…ハワイに向かってきている」
ロマニが神妙な事からも、事態は深刻と言っていい。というのもそれが、その台風が『神威』『魔力』『神秘』を宿した超抜権能を示しているからである。
「疑うべくもない。これは紛れもなく『神罰』クラスの大権能…メソポタミアにおけるグガランナのような、神の裁きに値する神話の現象だ」
「随分と神に縁のあるハワイだ。いや、元々もそういったものだったか」
『呑気なこと言っている場合じゃありませんよ!今回のはゲキヤバ、マジヤバ案件なんですー!』
CGのBB、バーチャルBBが泣き顔を浮かべ会話に参加する。それらは本来、管理されていればあり得ないものだと。
「この台風はですね、なんと土地の心臓を狙って来ているんです!わかりますか?ニャルラトホテプの神体が安置されているキラウエア火山に!真っ直ぐ!」
【意志を持ってハワイを吹き飛ばさんとする神の嵐。ティアマト神が行った土地殺しの再演だな。ハワイに到達すれば、私の神格が吹き飛びハワイはおしまいだ】
それほどまでに、此度の嵐は凄まじいとされる。一同は静かに息を呑むしか他無かった。
『今回の台風、その中心における映像を感知しました。皆様、ご確認ください』
プレシャス・カルデアスが示したその映像、嵐の中心にそれはいた。
『あれは……っ!!』
シッテムの内部にあるユメが息を呑む。
『あ、アダム先生!!あれですっ!あれがアビドスにやってきた『嵐の神』ですっ!!』
半狂乱になりながら指し示す。嵐の中心にて吠え猛る、剥き出しの神格。
『然り!!あれはエジプトの戦い、嵐の神たるセト!!…の、荒御魂と言ってよかろう。日本の礼儀に沿えばな!』
そして通信に割り込みしは至高のファラオ、オジマンディアス。同じ故郷の身として、物申すことがあるのだろう。
『神代閉じて久しく、神は虚ろなるこの世において完全なる神性顕る余地なし!しかしあるのだろう、縁を辿る法の呼び水が!』
「…連鎖召喚!まさかセトは『オシリスの縁』に必ず呼び寄せられるのですか!?」
『うむ、そうとしか言えまい。セトはオシリスを殺し座を簒奪せし神。故に何度でも、幾度たりとも迫り来るのだろう!怨敵オシリスある限り!』
オシリスの縁を辿り、何度でも嵐を齎す破壊と戦いの神。それこそがセト。
『私の、せいです…』
その心当たりがあるユメは、呆然と口にする。
『私が、オシリスの力を目覚めさせて使ってしまったから…セトは私を殺すために、また…』
相打ちであるならばよい。
死ぬならばよい。
しかし生き返り、生還などは認めない。
何度でも、何度でも貴様を殺す。
何度でも。なんとしても。
簒奪してやるぞ、オシリス。
荒ぶる神格そのものたるセトは、神威と神話に突き動かされているのだ。
「ならば話は早い。今度こそ引導を渡すまでだ」
『!』
しかし、今更アダムにとって迫る神格などは物の数ではない。
「今回は大規模作戦かつ現実だ。サーヴァント・レイド戦とも言うだろう。サバフェスは一時休息し、皆で嵐を払い後半戦に挑むべきだ」
「勿論そのつもりです。ここまで来たら蚊帳の外には出来ないわね。リッカとマシュに連絡を!グランドマスターズはそれぞれバカンス中だからこちらだけで片付けるわよ!」
『『『『『了解!!』』』』』
「オルガ、ボクは…ロアに声をかけてくるよ。魔神柱は防波堤に使えそうだしね」
「力を貸してくれるとは思わないけれどね…」
「なぁに、いざとなったらエア姫に言いつけるぞで解決さ!」
【妬ましいカルデアの皆さん…】
「レヴィアタン!?」
『『『『『7大魔王の一角の陰キャから!?』』』』』
【軽口は余裕の証、羨ましいわ…。今回は私達も協力してあげる…私が、ハワイをぐるりと覆うの…】
「物理的にハワイを遮断するっていうのかい!?いやまさか、ハワイの海溝エリアを埋め尽くしている質量物体は…!」
【私の神体…。本気出せば、こんなチンケな島、十巡りくらいはしてあげる…】
『やれやれ、天空のアレコレならまたまた私が大活躍のターンかな?』
「キリシュタリア…!」
『やぁオルガ!今はレース整備の片手間だが、それでいいならゼウスを存分に使ってくれ!』
『たまにはゼウスが天空神であることも思い出してほしいからね。少なくとも雷の権能は封じてられるよ』
『はいはーい!通りすがりのメキシコの風でーす!サバフェスを護るなら私、力を貸しちゃいますね!』
『通りすがりの太祖竜の妹イプシロンです!必ず出てくるティフォン・ブランクならお任せを!』
『通りすがりの太祖竜の姉、エフェメロスよ。運営へのクレームは後で山程送るわ。今は協力するわよ!』
『ほーい。アルセウスに交代してルゥだよぉ。嵐の龍には友達がいるから、お手伝いしてもらうねえ』
あれよあれよと言う間に、神に等しい者たちが挙手し態勢が整っていく。
「ユメ、まさかとは思うが君は君がいるから皆がピンチになると思ったのか?」
『っ!』
「それも事実ではあるのだろう。だが覚えていてほしい」
アダムはさも当然とばかりに告げる。
「ピンチとは、皆で越えるがお約束だ」
『!!』
「…思えば、君とホシノが苦しい時に私はいてあげられなかった。それは拭えぬ、私の不徳だ」
僅かに沈痛を齎し、アダムはそれでも前をむく。
「ここからは私やユメのような一人だけで何とかするタイプの活躍は終わりだ。これからは、全員の力を合わせるんだ」
『アダム先生…』
「結局のところ、一人で出来ることはたかが知れる。今日は学びとしよう」
忙しなく働くカルデアの皆を見ながら、アダムは静かに頷く。
「誰かに頼ることの、大切さを」
『…!』
『オシリスの小娘!!』
『ひぃん!?』
その時、至高のファラオからユメへと激が飛ぶ。背筋が爆発したように伸びるユメ。
『オシリスが復活せしは神話的に極めて自然の流れ!貴様が気に病み悩むはオシリスへの侮辱と知れ!!』
『は、はひっ!?』
『オシリスは身体が欠け完全な復活は成らなかった!貴様が神話を超えるとするならばそこだ!精々足掻き、考え、新たなるオシリスのあり様を模索するがよい!!』
『あ、え、ぇう…?』
『胸を張って生きるがよい!!メリアメンが貴様を許す!!』
『は、はひぃいぃっ!?』
『あ、アダム先生…!激励、なんでしょうか!?』
間違いなくな。
アダムは静かに、笑みを零し。
『ひ、ひぃん…』
へなへなと力無くへたり込むユメを、優しくなだめ、慰めるのであった。
そして──
アダム「リッカ。朝だ。おはよう」
リッカ「ん、ん〜…ん〜…!」
アダム「───バカンスの途中だが…」
リッカ「うん、解ってる」
「───バカンスの途中だが、スクランブルだ!でしょ!」
一日だけ。
黒き龍が目覚める。