人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
『台風接近により、一時サバフェスの開催は見合わせます。詳しい情報は運営公式の発表をお待ちください』
クー・フーリン・オルタ【おい。避難勧告はあらかた済ませたぞ。地下シェルターの誘導もコンラがやっておいた】
メイヴ「そう。ありがとう、クーちゃん」
【テメェはどうするつもりだ。リッカのヤツは今日限定でマスターとして参加するらしい。テメェも行くのか】
メイヴ「まさか。リッカが動くなら万に一つもないわ。私は解決を待つだけよ、女王として」
【そうかよ】
「…ただ」
【あ?】
「運命というものは忌々しいわね。華形といえば聞こえはいいけれど」
「結局リッカと、世界を救うという事象はどうあっても切り離せない。私の全てを、以てしても」
【…】
「彼女には楽しいだけの想い出を残してほしかった。それが我儘でもね。だからただ…」
「私にとっては…寂しいことだわ」
【……そうかよ】
「詳しい作戦内容は以上だ。リッカ、何か質問はあるか?」
アダムの帰還と共に、リッカは作戦内容を聞き及ぶ。まず、セトの憤怒が齎す極大の嵐は台風そのものの脅威を誇る。それらは間違いなく神の権能であるため、ハワイに到着すれば必ずや致命的な大破壊を引き起こす。
そうさせない為、数多の神や魔術、魔王達の力を借りた防衛戦…並びにセト本体を打倒する電撃戦の二面作戦が展開されるのだ。
防衛戦は、文字通りセトの破壊を食い止める為の幾重もの防壁。未だ楽園最大最強の危機であったビーストⅡティアマトのウルク侵攻のノウハウを用い、いくつもの仕掛けを要する。
まず、セトの到来を物理的に阻むはレヴィアタン。嫉妬の魔王の神体をペレの認可の下解放。マリアナ海溝を満たして余りある程の驚愕の神体でハワイを囲い、セトの神体へのガードとする。
そして、ロマニ…ソロモンの魔術と銘打たれてはいるが、実質はロア、ゲーティアの魔神柱達がこれらを補強する。レヴィアタンは【私だけでいいのに…】とぼやいていたが、最終的には同意した(ルシファーの頭ナデナデが決め手)
そしてゼウスが天を制御し、レヴィアタンを境にハワイの台風の影響を最小限とする。風速が測定不能であり、人や幻獣が容易く宙を舞う程の規模の台風の影響を最小限にする。
アルセウスに代わり担当するルゥが言うには『クシャナより向いてるゲストがいるよぉ』とされる味方がいるらしいが詳細は不明。
これらを主軸とし、土地の心臓たるキラウエア火山を防御する。破られれば特異点ごとハワイは崩壊し、サバフェスは中止となる。
「凄い豪華なメンバーだね…!」
「ギルガメッシュ王提供、即席の地下シェルターも提供はされているが…それはあくまで避難用。神性が果てれば気休めにしかなるまい」
「頑張らなくちゃ…!それじゃお父さん、電撃戦は?」
アダムは頷き、作戦を説明する。
「電撃戦は、台風の目にいるセトに突っ込み神体を討ち果たす事だ。リッカを主軸に、中心点のセトを討つため戦力を集中させる」
「シンプルだね!わかりやすくて腕がなるぅ!」
リッカが評すように、作戦は極めて単純かつシンプルなもの。迅速に近付き、迅速に討つ。それこそが電撃戦の肝要。
「しかし、嵐の神たる神威の台風…それは全ての領域が神域だ。生半可な乗り物やサーヴァントの魔術は容易く弾く」
【なら私たちは関係ねぇな。嵐の神だかなんだか知らねぇが年季が違うぜ】
【真っ直ぐ行って、ブッ潰す】
ここで頼もしいのが、アンリマユとアジ・ダハーカたるセーヴァー、並びにアジーカ。最古の宗教とすら呼べるゾロアスターの神格は、マルドゥーク神と格式においては遜色ない。あらゆる神話において彼女らは阻まれないのだ。
「その力はある。だが、突破の際には更なる入念な手筈を取らなくてはならない」
【ほー?パパンとカルデアの意見を聞きましょうかね】
「テュフォン・ブランク…再現された太祖竜、ギリシャ最大最強の魔獣の王が干渉する懸念があるのだ」
テュフォン。ゼウスを討ち果たしたとされる最大の魔獣王。サーヴァントユニヴァースでは生身であるが、ゼウスが言うにはオリュンポス艦隊の対抗馬だった艦の一部が流れ着き起動したもの。
「プレシャス、マリス。トリスメギストスの観測で計算された、アジ・ダハーカ・アンリマユとテュフォン、セトを同時に相手取った時の勝率は、60%程」
「60%!?」
そんなに勝ち目あるの!?とリッカは瞠目するが、セーヴァーは口を噤む。
【…ちっ。こりゃ一策打たねぇとな】
「アンリ…?」
【お前さんは四割で喪っていい人材じゃねぇのよ。オシリスのストーカーと心中なんて御免だしな】
【うんうん】
アダムは頷く。切り札にしてエースのリッカを投入して、勝率が6割。
それがどれだけ分が悪いかを、リッカ以外の全員が理解していた。リッカは恥じ入るように縮こまり閉口する。
「故に、ナビゲーターとガイドを頼む。ハワイの地における有用性を確保している女神ペレ。そしてククルカンを名乗る規格外のゲストサーヴァントが、主導でセトの神体へと導く者たちだ」
それらが、リッカ達を導くのだとアダムは言う。
【ほー。私らも神体でかっ飛ぶわけか?】
「いや、生身の台風突撃などは作戦とは言わん。リッカとマシュ、並びに私は乗り込むことになる」
【乗り込む?】
【何に】
「テュフォンだ」
あっけらかんと言ってのけるアダムに噴き出すリッカ。
「『テュフォンのパチモン許すまじ』【アジ・ダハーカにリスペクトを兼ねて特別に】との2体のサーヴァントが快く力を貸してくれたのだ。我々はテュフォンのコクピットに保護されセトへ向かう」
そしてサーヴァント戦を展開し、セトの神体を撃破介入してくるであろうテュフォン・ブランクを2体のテュフォンが迎撃。共に討伐するのが想定される流れだとされる。
「作戦の規模に対して、一瞬で決着は付くだろう。今の時点でハワイ全域の台風被害はかなりのものだ。復興に半日をかけ、明日には再開しないとならぬとの達しだからな」
【一大事なのかサブクエストなのかようわからん規模だなオイ。まぁ構いやしねぇさ】
リッカと同じ見た目で、身体中に呪詛の紋様が刻まれし禍々しい少女は嗤う。
【絶対悪なんぞハワイ支部だろうと誰も崇めやしねぇからな。精々人柱として最前線で身体を張るとしますかね。たった一人の神子の為に意地を通すも悪くねぇや】
【リッカとキラナの為に、奮戦を約束】
「頼むぞ、三人共。いざとなれば私もサーヴァントとしてリッカの指揮下に入ろう。頼光と共に後詰めは任せておけ」
頼もしい家族達の言葉に、リッカは力強く頷く。
「ありがとう、皆!藤丸ファミリー、総力戦だね!」
「あぁ。そして私が前線に沿う理由だが、とある生徒が君を強く推していてな」
「ふぁ?」
アダムは、シッテムを展開する。するとモニターには、半壊し水没した教室に緑髪の生徒がリッカに手を振っていた。
『は、はじめまして!私、梔子ユメと申します〜!アダム先生のお子さん、リッカさんです、よね…?』
「おっっっっっっっっ!?」
特大のストレートを魂に受けたリッカは即座にノックダウンするも食いしばりで体力を残す。
『だ、大丈夫ですか!?』
「問題ありません!ユメさん、私が藤丸リッカです!身長体重スリーサイズは後で教えます好きなものはアニメ全般とコミュニケーション嫌いなものは先入観!」
微笑ましい自己紹介の後、ユメは自身の来歴を話す。
「オシリスさんで死んだはずのホシノちゃんの先輩っ!?」
【成る程、チ〇ポ食われて生き返れなかったあのオシリスか】
【やめないか】
『ひぃん…あ、あのっ。リッカさん。お願いがあるんです。リッカさんは、人と仲良くなるのがとてもお上手だとか』
「仲良くあろうとしている結果、ですけどね!…もしかして、セトについて…?」
『ひぃん!?わ、わかっちゃいましたかぁ!?』
ユメは頷き、神妙に話す。
『…セトは破壊と嵐の神。オシリスとは不倶戴天と聞き及びました。私がいるから、セトは連鎖召喚するのだと』
【トムとジェリーかよ】
【アンリ、お口チャック】
『で、ですが私は、オジマンディアス様というすっごいファラオ様に言われました。『神話を超えろ』と。だから、えっと…その』
「…………」
真意を察し、リッカは微笑み分かりきった答えを待つ。
『ですから、その…!私は…!』
「ユメ、大丈夫だ」
そして後押しされ、ユメは口にする。
『セトと呼ばれる神様と仲良くなって!『アビドス神話』を、一から始めたいと思うんです!力を、貸してくださいませんか!』
「いいですともっ!!」
リッカは把握していた。
好きの反対は無関心。ならばセトはオシリスに猛烈に執着している事実がある。
つまりセトには…
心と、意志があるのだ。
マシュ「スクランブルですね所長!お任せください!私マシュ・キリエライト、天変地異を受け止めるグランドシールダーとなります!」
オルガマリー『いや受け止めなくていいのよ…いつも通り、カルデア最高の盾であればいいの。信じているわ』
マシュ「はい!!」
『最高の盾か…。かの王の戴冠とはいえ、自称グランドでよくもやる』
マシュ「あなたは!?」
ロア『通りすがりの英雄姫だ』
『復興スタッフとして…七十二人分、働いてやるとも』