人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
イザナミ「あなやルゥちゃん、風邪ですか?暖めて寝ましょう!健康第一!」
ルゥ「そっちの変化も風邪みたいなものだと思うけどなぁ」
?『ご無沙汰しております、アンセス様?』
ルゥ「あ、来た!」
?『よう呼んでくれはって。うち、頑張っちゃうわぁ!』
ルゥ「よろしくね!さぁ、ごーごー!『アマちゃん』!」
アマテラス『ワフ?(呼びましたか?)』
暗雲…否、積乱雲が満たし尽くすハワイの上空。怒れる嵐の神が荒れ狂う神域に向けて、驚異的な速度で疾走する二機の機体が全てを振り切る軌跡を描く。
『どうですか!テュフォン・エフェメロスにテュフォン・ネオス!ギリシャの神々、艦隊連中を恐怖のズンドコに叩き落とした純血竜とその姉妹機!その勇姿、楽園カルデアにも大いに刻み込んでくださいね!』
興奮気味にアナウンスをコクピットに響かせしは、白と青の機体を駆るイプシロン。自慢げに航空し、自身のアピールを果敢に懸命に行っている。
【ふん。あまりはしゃぎ過ぎて対応が遅れるなんて無様を晒さないようにね。サバフェスの進退は私達にかかっているんだから】
そしてそれを牽制し諌めるは赤いテュフォン。テュフォン・エフェメロスと呼ばれし側の機体も、疾走し追従する。
【テュフォン・ブランクだなんて紛い物、決して認めないわ。中身のないハリボテに純血竜を使用されるなんて屈辱を越えた屈辱よ…!】
『そうだよね、お姉ちゃん!ルゥちゃんさまも見てるだろうし、カッコいいとこ見せちゃおうよ!』
おー!と互いのコクピットにて語り合う姉妹のような二人に、一同は顔を見合わせる。
「スペーステュポーンは、まさに偉大なヤンパパ王って感じだったけど…」
「汎人類史のテュフォンさんは女性であった、という事でしょうか!」
『いやぁ、それなら良かったんだけど。私も負けた言い訳が存分に立つからね』
『げっ!』
【貴様…!】
リッカとマシュの言葉に割り込む通信。それは、キリシュタリアの声を借りた軽快かつ威厳溢れる異なるもの。
『そいつらはテュフォン…が食べた『無常の果実』という存在がどういう訳かテュフォンと重なっている愉快なサーヴァントだ。いや妹もいるとか聞いてないんだけど何があったの?』
ゼウス。天空がハワイを砕かぬよう制御している我等が天空神。功罪数多なゼウスが、イプシロンやエフェメロスに問いかける
『べーっだ!!変態天空親父に教えることなんか何もありません!』
【ゼウス…!気安く我等の回線に割り込むとはいい度胸だ。再び健を切り落とし、幽閉してやってもよいのだぞ!】
『おや、随分と嫌われているな。私何かしたかな?エトナ火山に叩き落としたくらいじゃ反省しなかったかな?』
【しかと覚えているではないか!!】
まぁそんなのはいいや、と娘二人の殺気と威嚇をさらりとかわしゼウスは補足する。
『テュフォン。テュポーンとも呼ばれる最大最強の魔獣王。エキドナを妻とする私が知る中でセファールに並ぶ最悪の敵だった者だ』
「知っている。確か台風、タイフーンの語源とすらされるギリシャ神話における無敵の怪物であり、サーヴァントユニヴァースではニャルラトホテプの妻であるエキドナの夫でもある存在だな」
アダムが補足し、満足げにゼウスが頷く。
神話に伝わるテュポーンは上半身が人間で、下半身がヘビ。肩から無数のヘビが生えている。古代の壺絵では翼を持った姿で描かれていることもある。
頭が天を擦り、両腕は世界の端から端まで届く巨体(少なくとも身長20000Km,両腕の長さ15000Kmにはなると思われる)に凄まじい怪力、決して疲れる事がない脚、耀く目玉、発声するだけで山々を揺らし、全種類の声を介し、天地を焼き尽くす火炎を目や口から出す。台風 【Typhoon】の語源でもある。
『こいつが強くて強くてね。私も真っ向から挑んで一度はボロ負けした訳。足の健も切られて幽閉されちゃったりされて』
『やーいやーい!』
【フン。男根を切り落としてやるべきだったな】
当然ながらゼウスに対する反応は芳しくない。剣呑な罵倒がエキサイトしていく有様だ。
『まぁ復活した後は退けて、悪あがきにテュポーンはモイライ三姉妹を脅してみっともなく希望の果実を狙ったわけ。でも食べたのはあらゆる願いが叶わなくなるカスみたいな【無常の果実】。めでたく弱体化したテュポーンはエトナ火山の下敷きになりましたとさ』
【貴様ァ…!!その減らず口、今度こそ無に還してやろうか!】
「まぁまぁ、まぁまぁまぁ!…じゃあ、あくまでテュフォンの人格じゃなくて、無常の果実がサーヴァントとしてテュフォンを操っている、みたいな感じの二人なの?」
宿敵の喧嘩を仲裁しながらリッカは二人に問う。ともすれば変則的に極まるサーヴァントのありようと言うべき、不思議な姉妹だ。
【お前たちに詳しい来歴を話してやる気はない。それはいずれ分かり、判明する事柄だ。私達がどういうもので、どのような意味を持つのかはその時おまえたちが判断するがいい】
『私達は伝説の『祖龍』様にお会いしたくてサバフェスにやってきました!竜や龍の全ての起源たるあの御方!太祖竜として是非お会いしたかったんです!』
『ルゥちゃんか…』
「ゼウス殿、ルゥ様に思い出がお有りでしょうか?」
頼光の言葉に、ゼウスはふむと一息おいて話す。
『忘れもしない、セファール来訪の折だ。降臨した巨人に、我々を含めたあらゆる神々は、人々は手も足も出なかった。勇気ある妖精達の魂の聖剣、ただそれを振るうためだけに生きた剣の青年の二つが、なんとか世界を押し留めたギリギリの瀬戸際…』
【貴様、何がいいたい?】
『正直、我々では間に合わなかったか…或いは袋小路しか持っていなかったんだよ。それほどに、セファールは強すぎた。あまりにも圧倒的に世界は収穫されていったんだ。』
蹂躙されていく神々。滅びゆく世界。何も残らぬ収穫。
唯一真正面から討ち果たせるマルドゥークは自ら勇退し、残す手段はゼウス艦隊らの合体のみ。だが、ゼウスは他の神々、艦隊を踏み躙る合体にどうしても踏み切れなかった。
ゾロアスターの二柱が倒れ、あわや世界は完全に収穫されるかの瀬戸際に…
かの龍は現れたという。
『ルゥちゃんからしてみれば、ヴェルバーなんてまんま外からの侵略者だからね。介入する理由には十分だった。だが…』
ルゥには解っていたのだ。『ここでこの巨人を倒すのは自分じゃない』と。
誰かが倒せば、誰かが必ず世界の覇を取る。
或いは、希望を信じて逃げ果せた神々もある。
なら自分は、せめて時間を稼ごう。
星が希望を、鍛えるまで。
『私の雷霆のモチーフになった雷槌を使うこともなく、滅びゆく世界の中で彼女は懸命に時間を稼いでくれた。無の海になるはずだった世界の希望を護った。決してセファールを討ち果たし覇者になることを選ばなかった』
その時にセファールからルゥは多少の損害を負い、自身の存在をややスケールダウンさせたのだという。
勝てる相手に、後進を育てるために盾となり続けた旧き龍。それにより、聖剣は間に合った。
『ルゥちゃんの介入が無ければどうなっていたことか。我々の不甲斐なさで負け戦をさせてしまったことが心残りだよ』
「あんなぽんこつ風味で人理の守護者すぎるよねルゥちゃん様…」
「正確には、生きとし生けるもの全ての調和の化身なのだろう」
【流石は噂に名高い祖龍…!純血竜が敬意を払うに充分だ!】
『カッコいい〜!早く実際の龍のお姿、見たいなぁ〜!』
『…ルゥちゃん様には返しきれない恩義がある。それに憧れる果実二つが本気出すなら…』
私も頑張っちゃおうかな。ゼウスは静かに、決意を新たとする。
「うん!ゼウスのカッコいいとこ、見てみたい!」
「はい!ゼウス様は功罪数多な素晴らしい神様です!MVPの活躍を期待させてください!」
『そう?そうかぁー。しょうがないなぁー。美女に言われちゃったらなぁ…』
そんな和やかな雰囲気は、すぐさま終わる。
『ッ!お姉ちゃん!前方に巨大な熱源反応!』
【来たか…!】
『反応!テュフォン・ブランクだよ!』
空虚な空洞たる…
三体目の太祖竜の来訪によって。
テュフォン・ブランク『ルォアァアァアァァァァァァァァァァァァ!!!』
テュフォン【来たな、粗悪なイミテーションめ…!】
テュフォン・ネオス『今度こそ確実に…!』
『えっ!!』
テュフォン・ブランク『ルォアァアァアァァァ!!』
テュフォン・ブランクはチャージしていた。
エネルギーを臨界寸前まで。
テュフォン【まさか、貴様───!】
テュフォン・ネオス『回避ーーーーーーッ!!』
そしてそれは────
『ルォアァアァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』
雷霆として、ハワイに放たれ。
〜
レヴィアタン【──────!!】
渾身の勢いを以て…
(雷霆…!避けたらハワイが吹き飛ぶわね、仕方ないわ…)
【────受けましょう。あぁ、妬ましい…!こうしてまで守りたいサバフェスの魔力が…!】
────ハワイを護る、レヴィアタンへと直撃した。
レヴィアタン【────────────ッッッッッッ…!!!!】
その威力は凄まじく。
守護していたレヴィアタンの神体を一割焼き払うほどの…
ギリシャ最悪の、主砲兵器であった。