人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
「( ゚д゚)ハッ!私、そう言えば水着の選定を済ませていませんでした!」
(これは由々しき事態です!ナイアさんからスクール水着を借りましょうか…いえ!サイズが合いませんね!)
「むむ?……そう言えば!」
〜
じゃんぬ「夏かぁ……」
(夏のイベントが目白押しなんでしょうけど…、参ったわね、アヴェンジャー霊基しか持ってないわ私…)
「リッカの隣でこのクソ暑苦しい格好じゃあね……どうしたものかし」
マシュ「じゃんぬさん!!」
じゃんぬ「うわびっくりした!?な、なに?マシュ?」
マシュ「行きましょう!!」
じゃんぬ「何処に…!?」
マシュ「夏草です!!」
じゃんぬ「なんで!?」
マシュ「水着です!!」
じゃんぬ「水着が何!?」
マシュ「GO!!」
じゃんぬ「あっちょ、なんなのよ〜〜〜〜〜!!?」
「夏のイベントに備え、私とじゃんぬさんには水着が必要と判断しました!そんな訳で、私は先輩の故郷夏草へと来るべきと判断した次第です!理解できましたでしょうか!」
そんな破天荒な理由で南極から遥々日本の千葉、夏草へとやってきた我等がなすびマシュ・キリエライト、そしてリッカの運命が一人じゃんぬ。今日も夏草ら突き抜けるように快晴であり平穏だ。
「せめて連れてくる前に説明しなさいよ…」
じゃんぬは当然説明もろくにされず里帰り(強制)されたので疲労困憊である。楽園のマシュは非常にパワフルである。のびのびなすびなのだ。
「先輩の故郷には上質なショッピングモールが備わっています!ここで私とじゃんぬさんの水着を見繕いましょう!」
「は?ちょっと、あんたも水着まだ見繕ってないわけ!?」
「はい!無菌室育ちの私は四季も資料でしか知らなかったので!」
「そういう事は早く言いなさいよ!時間無いわ、さっさとやるわよ!ほら、はぐれない!」
「おー!」
生来の世話焼き気質が生まれたじゃんぬは、手間のかかりすぎる妹分を引きずり夏草の雑踏へと殴り込む。
夏草とは有り体に言えば『Fate/staynight』の冬木市の対となる名を冠する都市である。ガス爆発も集団催眠も起こらない平和な市であり、様々な要因が重なり千葉県丸々と言っていいほどの規模を誇る場所だ。詳しくは序章の『龍の里帰り』を参照されたし。
「マイティモールは確かこっちね!ちゃきちゃき行くわよ!」
「はいっ!」
サーヴァント達も気軽に遊びに来る、万能都市なのであった。
〜
「こういうのはどうでしょう!」
そして辿り着くブティック。女性ものの水着を試着吟味したマシュが自慢げに試着室から現れる。
「へぇ…。あんた、愛くるしい顔のわりに身体はしっかりグラマーよね」
「えへへへ。いつか先輩のように腹筋もバッキバキになるのが夢です!」
ふん、と胸を張るマシュに夢見てんじゃないわよとじゃれつき腹パンをかますじゃんぬ。
マシュの水着は、白地に赤の装飾を加えたシンプルなもの。だがそれだけに、彼女本来の魅力を損なわないストレートなチョイスだ。
「いいと思うわ。リッカのボディガードは任せたわよ」
「お任せください!先輩に声を掛けるチャラ男さんはその慧眼を褒めた後にロード・シャングリラしたいと思います!」
「チリも残らないじゃない!?やめなさいよ!こう、首の骨をぐきり、くらいでいいのよ」
「了解です!それではじゃんぬさん!交代しましょう!」
じゃんぬを更衣室に招き、マシュが手当たり次第に水着を彼女に渡す。
「ちょ、ちょっと!いつの間にこんなに持ってきたのよ!」
「入った時からじゃんぬさんに似合いそうなものを見繕ったんです!さぁどんどん着てみてください!」
「弾けた言動の割に手際いいわよね、あんた…」
確かに、選ばれた水着の数々はどれもセンスを感じるものだ。
可愛らしいもの、かっこいいもの、刺激的なもの、優雅なもの…どれらも確かな選抜を受けた事が伺える。
「じゃんぬさんなら何でも似合いますよ!さぁ、是非とも着てみてください!」
「まぁ、馬子にも衣装っていうし…フランスの田舎娘の背伸びくらい夏は許してくれるわよね」
自身を納得させつつ、じゃんぬは自らを水着で着飾っていく。
「こういうのどう?ちょっとイメージ違わないかしら」
「清楚な水着は、じゃんぬさんの荒っぽさとギャップがあっていいと思います!」
「じゃあ、こういうビキニは…攻め過ぎかしら?」
「ちょっと地味かもです!マイクロビキニはどうでしょうか!」
「着るかッ!痴女になってたまるかっての!じゃあ、このパレオ付きなんてのはどう?」
「はい!凄く水着に着られていますね!」
「忌憚ない意見ありがとうぶっ飛ばすわよなすびぃ!」
この後、存分に試着を繰り返した後…
「毎日違う水着を着ればいいと思います!!」
というマシュのアドバイスに従い、マシュのクレジット決済(使用可能額日本エリア十億超)により沢山の水着を買ったのであった。
〜
「買い込んだわね〜。皆のお土産も含めて、ちょっとした旅行になってるわこれ。はしゃいだはしゃいだ」
「はい!私も大変満足です!特に無慙さんのねこねこ派出所のタマミケクロさんとの触れ合いが…」
公園のベンチに座り、暮れゆく夕日を眺めるマシュとじゃんぬ。最高級旅館、竜宮城に一泊しカルデアに帰る予定を組んでいた。
「始まりは強引だったけど…礼を言うわ。中々…かなり…」
「中々?かなり…?」
「とっても楽しかったわよ!悪い!?」
ニッコリするマシュ。本音をすぐに見抜けるようになった成長なすびの圧にため息を吐く。
「…あ、そう言えば…なんでよ」
その時、ふとじゃんぬはマシュに疑問を投げかける。
「?何がですか?」
不思議そうに首を傾げるマシュに、じゃんぬは問う。
「あんた、リッカに見せる水着を選ぶつもりだったんでしょ?言わば勝負水着。そんなチョイスに私を連れてきてよかったの?」
「???じゃんぬさんと勝負水着を選ぶのがおかしいことなのでしょうか?」
「いや、おかしくはないんだけど…」
マシュは自己主張が激しくなっていることをじゃんぬは心得ている。彼女がリッカのオンリーワンサーヴァントを自負していることも。
「あんた、私をライバルとして目の敵にしているかと思ってたから」
ナンバーワンサーヴァント、或いはオンリーワンサーヴァントとして、自身を意識している。じゃんぬはそんな自分との触れ合いをマシュが望んでいたのかと不思議であったのだ。
「はい!ライバルなのは間違いないです!じゃんぬさんとはいずれ、先輩を懸けて浜辺で殴り合いをするつもりですから!」
「嫌よ…。なんでそんな固有結界に取り込むみたいな真似されなくちゃなんないのよ…」
「ですがそれ以上に、じゃんぬさんはリッカ先輩のかけがえのない大切な人だということも解っています」
マシュは、じゃんぬの隣で夕日を見つめる。
「リッカ先輩は、大切な人との絆を大切にする方です。先輩の事を幸せにする、守護するというのなら。じゃんぬさんの事をないがしろにだなんてできるわけありません」
「マシュ…」
「私にはじゃんぬさんにない魅力があります。でもじゃんぬさんには、私にはない素敵な魅力があるんです。そんな私達が仲良くなっていったなら、もっともっと先輩の心を豊かにできると思いませんか?」
その時、じゃんぬはマシュをどこか侮っていた事を恥じた。
彼女は、リッカを守護する盾だ。
守護は肉体や物理だけでなく、彼女の人生、心を護ることをこそ重んじていた。
ならばこそ、彼女は自信ではない大切な存在であるじゃんぬをリスペクトし、一緒に過ごさんとしていたのだ。
大切な人は、たくさんいていい。
その大切な人は、先輩に大切な縁や絆をもたらしてくれる。
それら全てを、守り抜くために。
彼女は、思考と在り方がすでに偉大なる盾兵であったのだ。
「……そう。そうだったわね」
「?」
「あんたは無垢じゃなくなった。でも【汚れた】わけじゃ決してなかったんだわね」
ともすれば、自分より大切な存在として選ばれるかもしれない。
そうなったとしても、彼女は心から笑顔で祝福するのだろう。
彼女は『無垢』…課せられた白であることではなく、『清廉』であることを選んだのだと。
「??ええと、私は今褒められたんでしょうか」
「そーよ、褒めたのよ」
「嬉しいです!!ありがとうございます!!」
「うるさっ、声でかいわよもう」
じゃんぬは、だからこそ告げた。
「マシュ」
「はい?」
「リッカを……護り抜きなさいよ」
「─────はい!!」
リッカを、マスターを。
運命を、守り抜けと。
力強く頷くマシュの頭上には…
きらめく一番星が、輝いていた。
無慙「見つけたぞ、お前たち」
じゃんぬ「あ、お疲れ様です」
マシュ「こんばんは!」
無慙「もう日暮れだ。竜宮城まで送っていこう」
マシュ「ありがとうございます!!」
無慙「明日、カルデアから迎えが来る。寝坊するなよ」
じゃんぬ「解ってるわ。どうも」
無慙「時に、リッカはどうしている?」
マシュ「はい!空条承太郎さんに浮気が発覚したジョセフ・ジョースターさんとスージー・Qさんの仲裁を頼まれていました!」
無慙「…大変そうだな」
じゃんぬ「地獄じゃないそれ…」
そんな3人のやりとりを…
謎の赤髪の美女「………ふふふ…」
遠巻きに、謎の美女が見つめていた。