人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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リッカ「なんかすっごく涼しい風吹いてるよね!」

グドーシ「とても過ごしやすいですなぁ。ありがたい事です」

リッカ「空調…ってわけじゃない…のかなぁ?」

〜上部

ハスター【わしの風は、クーラーよりエコロジーで涼しいんじゃ。かっかっか】


過去とはどう向き合うべきか

「お母様ー!いきますよーっ!」

 

【あいよ!いつでも来な!】

 

ハワイ・白金の砂浜。サバフェス会場露店が立ち並んだ風景にて、宇宙の慈悲、アンゴル・モアと魔獣の母エキドナ…ニャルラトホテプの妻と娘たちが思い思いに遊び、バカンスを楽しんでいた。

 

ニャルラトホテプの家族とは言うものの、血は繋がっていない。娘達は皆、運命のみを依り代にして築かれた者達だ。

 

【………………】

 

笑顔のみが満ちるバカンスのさなか、ニャルラトホテプはトロピカルソーダを啜りながら、バカンスらしからぬ神妙な表情を浮かべていた。

 

『にゃ、ニャルおじさん。エイボンの知恵が、あの聖痕の出処を導いたわ』

 

それはラヴィニア・ウェイトリー・エイボンが導き出した仮説の可能性。そして推論。

 

『あ、あれは…旧神『ノーデンス』のもの。外宇宙…この世界にはない、彼の刻印が合致したの。間違い、ないわ』

 

ノーデンス。旧神にして邪神の敵対者。

 

ニャルラトホテプ、ハスター、クトゥグアといった有名かつ最強神格から、下位の存在まで。邪神とそれらにまつわるすべてを敵とするもの。

 

【まさか、ノーデンスとはな…】

 

ニャルラトホテプからしてみても、それは知らない名前ではない。自身の嘲弄や玩弄、嘲笑うゲーム感覚の滅亡に何度も水を差された経験がある。

 

それはいい。邪神である以上敵はいる。自身を目の敵にする勢力など星の数ほどいる。

 

だが、ノーデンスの言葉を聞き憂慮している理由。それはノーデンスがあまりにも苛烈かつ、無慈悲で無頓着であるからだ。

 

ノーデンスは邪神の敵対者であり、人を助けることはままある存在だ。実際のところ、『救われた』存在は数多いる。

 

だが、そこには人の情や観点など微塵もない。助けたから助かった。結果的に助かったと言ったほうが正しいかもしれない。

 

ウルトラマンのような無償の愛でなく、仮面ライダーのような孤高の正義でもない。そこにあるのは『邪神を許さない』という強烈な善の感情のみ。

 

故に───『奴の正義は、必ずや邪神のみならずその他全てに向けられる。

 

いや、実際に向けられているのだ。サタンとその軍勢をはじめとした存在に既に被害は向けられている。

 

何故、クローニングのような真似をするのかは未知数だが…それは間違いなく、自身という存在が招いた禍根の渦だ。

 

【───何故、悪い事をしてはならないのか…か】

 

悪い事をしてはいけない。悪い事をしてはならない。人は誰しもそう言い聞かせる。

 

何故か?それは【自身以外の沢山の人に迷惑がかかる】からだ。

 

現に今、こうしてノーデンスに目をつけられ不穏な気配が漂っている。

 

今はナイアとニャルラトホテプで対処しているが…。

 

いずれ、限界は来るだろう。

 

【イジメをした人間は、いくら幸せになろうとイジメをした過去で簡単に人生を破滅させる】

 

似たようなものだと彼は嗤う。

 

神格を切り離しても、神の御業の功罪はずっとずっとついて回る。

 

神のままでいたのなら、そんな罪悪感や功罪などは歯牙にもかけなかったろう。

 

【人が一々虫螻の顔色を伺うか?私にとって、お前たち人間がその虫螻だよ】

 

と一笑に付しただろう。

 

だが、今は違う。

 

【なぁ──頼むよ、邪悪なる神よ】

 

ニャルラトホテプは、独りごちる。

 

【私の過去は私のものだ。リッカちゃんやカルデアの皆を巻き込まないでくれ】

 

そんな甘い懇願が、許されないとしても。

 

【リッカちゃんはやっと笑えたんだ。モアもナイアもないあるも、ディーヴァもピアやシアやメシアも皆、エキドナも…やっと迎えた平穏なんだ】

 

そう告げずにはいられなかった。

 

【彼女達を苦しめないでくれ…。罰を受けるのは私だけにしてくれよ…】

 

どこまでも、どこまでも邪神は人を嘲笑い、弄ぶ。

 

ニャルラトホテプが今、最も苦しめ嘲笑っている人間。

 

それは───

 

【……頼むよ、お願いだ……】

 

人間となった【ニャルラトホテプ】そのものであった。

 

そんな時────

 

「大切な者を護るは、時には祈りではない」

 

【!】

 

力強き、太陽の如き声が降りかかる。

 

【アダム、先生…】

 

「立ち上がれ。立ち向かうのだ、ニャルラトホテプ」

 

アダム・カドモン。サバフェスに参加したリッカを見守り、ビーチにて海の家にやってきていた。

 

「神たる者が人となり、神として成した業に焼かれ苦しむ。それは、堕天使や悪魔と同じ…それ以上の苦しみなのかもしれない。あ、メロンソーダを一つ」

 

【………】

 

「だが、貴方は見てきた筈だ。困難に直面した人が何をしてきたかを。苦難に差し向かった人間がどんな姿を示したかを」

 

アダムは向かいに座り、彼に説く。

 

【それは…】

 

ニャルラトホテプは何度も見てきた。

 

虫螻と侮っていた人間が、輝ける光と力で邪神を退けるのを。

 

邪神たる己が、何度も何度も討ち果たされた事実を。

 

愛、絆、勇気、希望、愛。それらで自らを貫き、打ち払って来たことを。

 

「邪神という座から降り、確かに力は無くなったかやもしれない。しかし刮目して見るがいい、ニャルラトホテプ」

 

【!】

 

「今こそ人たる貴方なら分かるはずだ。人が無限の力を生み出す源泉たるものを」

 

彼は指差す。

 

【……!】

 

「お母様ー!おーい!」

 

「ワァー!」

 

「砂のお城ならお任せください。ディーヴァと共に作ってみせます」

 

家族たち。かけがえのない、宝物たち。

 

「高みから見下ろすばかりでは決して手に入らぬ、地上の星達を」

 

【はいよ!今行くから待ってなー!】

 

家族たち。そして、仲間たち。

 

「人間は弱く、しかしその身に無限の可能性と奇跡を宿す生き物だ。そしてその奇跡は…」

 

【───愛から、生まれる】

 

「そうだ。人が持つ宇宙にて絶対の権能。それを…」

 

今、あなたも宿している。アダムはそう告げたのだ。

 

「過去はいつまでも追いかけてくるやもしれん。逃げ切ることはできないかも知れん。ならばどうするか?人はどうすべきか?」

 

知れたことだと、アダムは頷く。

 

「認め、受け入れ、立ち向かい、乗り越える事だ。過去はどうしようと消えない。過去はどう在ろうと変わらない」

 

ならばこそ、アダムは告げる。

 

「ならば背を見せる必要はない。苦しくとも、痛みを感じようとも。迫る過去を真正面から見据え、その全てを懸けて打ち砕くのだ」

 

【アダム先生…】

 

「過去は消える事が無い」

 

だが、と拳を握る。

 

「だが、打ち砕き未来の糧とすることは出来るのだ。ニャルラトホテプ。今迫る過去の名は『ノーデンス』」

 

そして、手を開き差し出す。

 

「共に乗り越えよう。何を企んでいるのは分からない。だが、その企みは全て、この夏にあなたが乗り越えるべき『宿題』なのだ」

 

【宿題…ですか】

 

「あぁ。邪神ニャルラトホテプが出した宿題は山とある。やり残した課題もな」

 

アダムは『先生』として告げる。

 

「8月31日に地獄を見たくは無いだろう?夏期講習がてら、私達と共に消化しようではないか」

 

ニャルラトホテプはしばらく、差し出された手とアダムを交互に見やり。

 

【───ははっ】

 

やがて、破顔し一笑する。

 

 

【生徒、という年では無いのですがね?】

 

「人間なのだろう?なら、私にとってはもう後輩であり…」

 

彼は頷く。

 

「共に、パパ友だろう?」

 

【───えぇ、その通りですね】

 

そして…

 

二人の父は、固く手を取り合った。

 

 

 

 

 

 




ニャルラトホテプ【マイノグーラ、聞こえるか?】

マイノグーラ【はいよー、何何ー?】

ニャルラトホテプ【方針を変える】

マイノグーラ【どんな風に?】

ニャルラトホテプ【夜間アトラクションを、開始する】

マイノグーラ【へぇ?】

ニャルラトホテプ【夜間バイトも含め…】

【───私に力を貸してくれるよう、お願いしてみることにするよ】

アダム(うんうん)

ニャルラトホテプ【ありがとうございました。ところで…何故ここに?】

アダム先生「デスクワークだ」
アロナ『キヴォトスからは離れられません!』

ニャルラトホテプ【あぁ──ふふっ、成る程…】
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