人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
ルゥ「モロコシあるよ〜寄ってってぇ」
?「いないわね…どこにいるのかしら…」
『あ!あっちから気配がするよお姉ちゃん!』
?「行ってみましょうか」
ルゥ「?あれ…」
(あの子…竜?)
「あ!いたいた!いましたいました!おーい!」
「むむ?」
グドーシと共にサーヴァントエリアを歩いていたところ、リッカを見つけたとばかりに手を振り、走り寄る者がある。
「あなたですよね!?世界を救いし龍、アジ・ダハーカ!」
「へっ?そ、そうだけど?」
「わぁ!やっぱり!やったぁ!お会いできました!サバフェスならもしかしたらと思ったけど…!大感激ですっ!」
握手してください!そう告げるは、青髪で片目が隠れた快活な雰囲気の少女。
「知己ですかな?リッカ殿」
「う、ううん?楽園にもいなかったような…?」
両手で片手をブンブンする少女に首を捻る二人、はっとした少女が補足する。
「す、すみません!逸ってしまって!まずは自己紹介ですよね!私はイプシロン!イプシロンと言います!」
「イプシロン。益々もって聞き慣れない名ですな」
「はい!何せ私は………あ、ちょっと!お姉ちゃん!?」
自己紹介を挙げたその時、イプシロンたる少女が輝き光りだす。まるで、内側から変化するように。
「──全く。イベントだからってはしゃぎすぎるなと言ったのに。仕方ないんだから」
快活なる青は鳴りを潜め、現れしは荘厳なる赤。
片目はリッカと同じ、覇者たる金。
「お前がアジ・ダハーカ。世界を救いし二元たる悪龍。そうで間違いないわね?」
「変わった!?」
「何度も情報共有は賢くないけど、サービスでしてあげる。私は───エフェメロス。太祖竜テュフォンにして、それと一つになったエフェメロスよ」
「無常の実という事ですかな?」
「!」
「へぇ。鋭いじゃない、こんな僅かに私の真実を見抜くなんて。ま、名乗ってあげたのだから当然だけど」
テュフォン。太祖竜テュフォン。
テュポーンとも呼ばれ、ガイアの怒りから生まれし魔獣の王。
ギリシャ神話最強の怪物であり、ゼウスすらも下し勝利したとされる存在、それはもはや現象とも呼ばれる。
無敵の存在であったが、神々の計略によりあらゆる願いが叶わぬ『無常の実』を喰らい弱体化。
敗走を重ね、最後にはエトナ火山に叩き込まれ敗北を喫したとされる。
「テュフォンってテュポーンって事だよね!?」
リッカはその名前に覚えがあった。そう。テュポーンの妻たる…
「エキドナさんの旦那さんだよね!?」
スペース・テュポーン。サーヴァント・ユニヴァースにて知り合った、宇宙太祖竜。あちらはヤンパパともいうべき圧倒的怪物であったが…
目の前の可憐な少女は、そのイメージとは全く似つかわしくない存在。リッカの驚愕も無理からぬ話であろう。
「そう!それよ!」
そして赤の荘厳なる少女の目的も合致したと告げる。
「仮にもテュポーン、テュフォンの妻であるエキドナ…その存在がいると聞いて一翼羽ばたかせてやってきたのよ!わざわざ!」
「あぁ、成る程、テュフォンを名乗るなら外せない邂逅ですなぁ」
『えー!私は目の前のリッカさんの方も気になるよお姉ちゃん!』
「黙ってなさい、これは外せない人探しのうちの一つなんだから!…その口ぶりじゃ、知ってるみたいね」
エフェメロスを名乗る少女は語り、告げる。
「このイベントを利用して、私は私の知らない運命線の見聞をしているの。テュポーン…私の知らないテュフォンの運命線の妻たるエキドナもそう。おまえと、エキドナ。そしてもう一人」
「もう一人…」
「知っていることがあるなら教えなさい。エキドナという存在がどこにいるか、何をしているか。どんな存在なのか。洗いざらいね」
少女はどうやら、自身の知らない出会いを求めている。リッカは、そう判断した。
「うん、いいよ!じゃあ───」
リッカらは頷き、彼女の願いに応える。
「私達の知るエキドナさんでよかったら!」
そして語り始める。
サーヴァントユニヴァースで出会った、邪神と太祖竜の妻の概要を。
〜
「……じゃあ何?今は二人目の旦那と一緒に、血の繋がらない子供たちの親をやってるの?百魔獣エキドナが?」
ベンチに腰を落ち着け、語ったエキドナの来歴。色々意外に満ちていたらしく、目を白黒して驚いているエフェメロス。
「うん!邪神ニャルラトホテプに助けてもらって、そのままこっちに一緒にいてくれてるよ!」
「獲得した心を、尊重されたのです」
『なにそれー!すっごくロマンチックだね!お姉ちゃん!』
「…。エキドナとして、産まない状態はどうなのかとは思うけれど。それがこちらの世界のエキドナ…」
運命線にも予測できないエキドナの来歴に、エフェメロスは意外げに息を吐く。
「というかサーヴァントユニヴァースって何!?」
「あ、そこからですかな」
「サーヴァントユニヴァースっていうのは蒼銀銀河の事で…」
「待って!やめて!テュフォンに変な運命線を組み込まないで!」
『えー、でも面白そうだよお姉ちゃん!』
「やめなさい!絶対ろくな世界じゃないわ!…こほん。成る程ね。解ったわ。エキドナがどんなもので、どんな存在なのかをね」
困惑していた調子を取り戻し、エフェメロスは告げる。
「なら次はお前よ。救世の悪龍。アジ・ダハーカにして人類最悪のマスターたるおまえ」
「私?」
「おまえの願いを聞かせなさい。テュフォン・エフェメロスたる私に告げる願いを。その願いで、おまえを測るわ」
願いを告げる。テュフォン・エフェメロスに問われしリッカ。
「───、リッカ殿」
グドーシは既に見抜いていた。
彼女が、何であるかを。
「グドーシ、大丈夫。…願い、かぁ…」
ふむ、とリッカは思案する。
『お、お姉ちゃん。本気でやるの…?』
「黙ってなさい」
僅かな沈黙の中、リッカは告げる。
「うん!私の告げられる願いはないよ!」
「………は?」
願いがない?リッカの答えに、エフェメロスは首を傾げる。
「どういうこと?願いもなくおまえは戦い、生きているの?」
「ううん。そうじゃなくて…」
リッカは改めて、告げる。
「私にとっての願いは、告げて叶えてもらうものじゃない。懐いて、叶えるものだから!」
「───!」
「誰かに叶えてもらえたい願いはないんだ。だから告げられる願いはないってこと!ごめんね!」
それは、エフェメロスの…
「───ふふ、リッカ殿らしい」
無常の実を打ち払う、返答だった。
「っ……」
『カッコいい〜〜〜!噂通りの人だ〜〜〜!』
「黙りなさい!……ふん、そう。人でありながら龍を名乗るだけの事はある、そういう事ね」
不愉快そうに、しかし確かに彼女は頷いた。
「いいわ、中々よ。おまえには、一端に竜の誇りを宿している。認めてあげるわ、藤丸龍華」
「え、本当に!?やったぁ!なんか認められたぁ!」
「ふふっ、良かったですなぁ。リッカ殿」
『あー我慢できない!お姉ちゃんどいて!』
「あ、ちょっと!?」
迷子対策なのか、霊基同一を果たしている様子にて、赤髪から再び青髪のイプシロンへと変わる。
『リッカさん!あなたの事はネオス運命線とテュフォン運命線で知ってからリスペクトしていました!』
「そうなの!?」
『はい!もし良かったら、これを受け取ってください!』
そして差し出されたのは、実の形をしたチョコ。
『南国式、無常の実型マンゴーです!運命線をアレコレして作りました!是非食べて見てください!』
「いやそれは食べても大丈夫ですかな?」
「いただきまーす!」
「リッカ殿…!?」
プレゼントは疑わない。そんなリッカは躊躇いなく口に運ぶ。
「───うっ!?」
その時、ぐらりとリッカが揺れる。
「───喰らったな?」
その時、エフェメロスが静かに笑う。
「リッカ殿!?よもや効能まで…」
無常の実の効能が再現されたものか。そう危惧するグドーシだが。
「────うまいっ!!」
『やったぁ〜!』
「(ずっこけ仏陀)」
「ふん。早々再現できないわよ反願望機だなんて。でも…」
『二人で作った甲斐があったよね!お姉ちゃん!』
「…それは御近付きの印よ。有り難く食らいなさい。そして…」
エフェメロスは語る。
「龍に恥じないあなたでいなさい。いいわね」
「────うん!」
それは、その贈り物は。
───太祖竜からの、祝福だと。
「素直ではありませんなぁ」
新たなる出会いに…
静かに笑う、グドーシであった。
グドーシ「時に、あと一人の探し人とは?」
エフェメロス「あぁ…この会場の何処かに『祖龍』という創世から生きる伝説の龍がいると聞いたの」
リッカ「ファッ」
イプシロン『テュフォンすら越える原初の龍!ぜひともお会いしたいと探してるんですよ!』
テュフォン「テュフォンを越えるなんて言ってないでしょ!?…まぁ、太祖竜としては決して無視できない相手なわけ。何か知らない?」
リッカ「ルゥちゃん様なら…」
グドーシ「モロコシ屋さんで働いていますぞ」
エフェメロス「モロコシ屋さん……???」
イプシロン『何かの暗号!?隠語ですか!?』
〜
ルゥ「へくしっ」
カナメ「風邪ですか?ルゥちゃん様」
ルゥ「むむー、祖龍って風邪ひくんだねぇ。知らなかったなぁ」
太祖竜の探せし創世の祖龍は…
モロコシを焼いていた。