人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
よろしくお願いします!
「ふふっ、やってきましたねリッカさん、グドーシさん。待ちわびていましたよ…!」
リッカとグドーシがサーヴァントエリアを回り、日が沈むほど歩き回った最後。辿り着いた場所はカーマが展開するブース。
「絶賛愛の神が運行する我が自慢のブース…。二人のために用意した空間。是非ともご堪能なさってください。さぁさぁ、こちらですよ♪」
ぐいぐいとカーマに押され入り込んだワープホールの向こう。そこには彼女ならではの特別な空間が広がる。
「わぁ…!」
「これはこれは…」
そう、そこは宇宙。かつてカーマが何度も見せてくれた空間にして、更に彼女全てを司るもの。
「カーマといえば宇宙。宇宙といえばカーマ。私渾身のカーマ・プラネタリウムへようこそ、御二方♪」
宇宙に浮かぶ菩提樹の小島。そこがカーマのブースであり、二人に用意された空間であった。
「何度訪れても、輝かしく美しい場所ですな」
「うん!カーマといえば、宇宙だよね!」
「ありがとうございます♪さぁ、お品書きはこちらですよ〜♪」
そしてカーマは彼女たちに示す。
「私が愛の神として作り上げたアクセサリー、護符、アミュレットやタリスマン。愛をたっぷり込めたこの品々をどうぞお買い求めくださいね♪」
蒼き炎のハートやネックレス、ペンダントやアミュレットは彼女の愛が籠もり、如何なる時にもカーマの祝福と抱擁を受けるだろう。
「じゃあお揃いの買おうよ、グドーシ!」
「えぇ、カーマ殿の手製でございます。買わない手はないかと」
リッカとグドーシは笑顔で買い求めていく。カーマの用意したものはいいものだと確信をもって。
「……………」
カーマはそんな、二人が幸福のうちに買い物をする様子を満ち足りた様子で眺めていた。
二人はずっと、愛の神として倦んでいた頃のカーマが見つめていた。
あらゆる救いがない、悪に堕とされた少女。
あらゆる救いがない、悪戯に作られた少年。
その二人が出会い、互いに互いを慈しみ、愛する光景。
何の混じり気のない、小さくとも確かな愛の満ちる空間に、カーマは心から魅せられていた。
やがて彼には早すぎる寿命が訪れ、カーマはそれを深く嘆いた。
誇り高き彼は救済を不要とし、延命を拒否し、不当に短い寿命を良しとして逝った。
最後までグドーシは彼女を導いた。カルデアへの道をリッカに示した。
しかし、遺されたリッカは嘆き、哀しみ、あまりに早い離別に涙を流し泣き続けた。
やがて、彼女はそれでも前を向き立ち上がったが、彼女と同等以上に嘆き悲しむ者があった。
それがカーマ。彼女たちを見ていた彼女自身。
彼女はグドーシに乞うた。あなたに助力をさせてほしいと。
あなたを作った全てにあなたを愛させる。だからあなたは長生きできる。
まだ生きてほしい。まだ死んではいけない。
このままでは、愛が消えてしまう。あなたたちが懐いた、間違いなく真実の愛が。
どうか死なないで。
そんな嘆願を、グドーシは柔らかく断ったのだ。
流れ行く生命の摂理を、否定し捻じ曲げてはいけない。
自分は限られた生命を悔いなく生きた。故に、これ以上生き永らえる必要はない。
あなたの愛に感謝を。その慈悲を、決して忘れません。
そう言い残し、グドーシは容赦のない天寿を全うした。
それが、カーマの永遠の瑕疵になった。
やっと見つけた、真実の愛。
混じり気のない、かけがえのない愛。
自身が護り、満たすべき愛。
それらは全て、愛の神たる自身が護らなくてはならないものだったのに。
自身は見ているだけで、何もできなかった。
真実の愛を持った二人に、何もしてあげられなかった。
それが、その事実が彼女の満ちる愛を否定した。
どれだけ満ちようと、満たすべき相手を満たすこと叶わなかった。
魔王は仏陀に倒され、愛の神は真実の愛を取りこぼした。
彼女は二人に再会するその日まで、ずっとずっと哀しみに沈んでいたのだ。
「─────」
そしてその慚愧と悔恨は、今拭われている。
数多の奇跡が起こり、無数の奇跡が備わり、今こうして彼女にとっての真実の愛は再び巡り合った。
「ん?どうしたの?カーマ」
「ぼうっとしているとは、珍しいですな」
見れば二人が、心配そうにカーマを見つめている。
「!あ、あぁすみません!ちょっと呆然としてましたね!」
買い物を続ける二人。そんな行為すら尊く映ったカーマは慌てて目を拭い、笑顔を見せる。
「お二人とも、お買い上げありがとうございます♪二人にはいつでも、夏草の愛の女神がついていますからね♡」
夏草の愛の女神。夏草は心のインドとする彼女が、二人に太鼓判を押す。
「うん!いつもありがとう、カーマ!」
「共に見守りましょう、世界のうねりを」
二人は大満足とばかりに買い物を済ませる。
「…あ、二人とも!」
そんな折、カーマは二人の背中に声をかけた。
「あの、ですね。これは二人だけに向けた特典と言いますか。個人的に制作したものなのですが…」
たった一部しか刷っていない限定品。そう告げ、カーマは二人にそれを渡す。
「良かったら…受け取ってもらえますか?あ、勿論お代は結構ですので!」
それは、一冊のスケッチブック。何の変哲もない、市販のもの。
「いいの?それじゃあどれどれ…!」
それを受け取り、開いたリッカが硬直する。
「─────」
「おや、リッカ殿?」
それを見たグドーシも、そっとスケッチブックを覗き込む。
「………これは」
そこに描いてあったのは、在りし日の二人。
小さくとも、確かにあった真実の愛の日々。
2人が寄り添っていた、僅かながらも確かな愛の日々。
「その…加筆修正は、加わっているのですが…」
違う点が一つ。
グドーシの姿は、かつての醜き姿ではない。
今手にした、美しき美丈夫の姿だ。
そこにはカーマの愛と、この日の為に積み上げた努力があった。
懸命に懸命に、あの日に見ていた景色を形にした。
神の力は介在せず、純粋に自身のスケッチで形にした。
あの日の美しい愛の日々を、自身の見つめたかけがえのない日々を。
今に繋がったあの日々を…。
愛の神が見つけた真実の愛を、伝える為のもの。
「その…お代は結構ですので…」
それは真実のものではない。彼女が見たものを、彼女の主観で更に美しいものに仕上げたものだ。
だが、それは真実ではないがゆえに…
何よりも眩しく、二人の胸と心に刻まれた。
「カーマ」
「!」
それは自身の推しに、自身の願望と理想を見せる行為。
ともすれば大火傷まったなしの案件であったが…
「ありがとう」
リッカ達の反応はそうではなく。
「あの頃の事、思い出したよ」
「はい。僕達だけの僅かな、しかし確かな時間…こうして、永遠となりました」
「あの日々を私達以上に、大切にしてくれたんだね。本当に…ありがとう」
二人は心からカーマの想いに、頭を下げ感謝する。
「あ、いえいえ!そんな、顔を上げてください!あくまでこれはナマモノですから、受け入れてくださるだけで…」
「でも足りないよ!」
「えっ!?」
リッカは声を上げ、ペンを取る。
「もう、ここにいるのは私達だけじゃないって解ったからね!」
そしてリッカは、空白のページに猛烈な勢いで描き上げていく。
「これで、完成!」
カーマとグドーシに、それを見せる。
そこには───。
「────!」
リッカとグドーシを包み込む、愛の女神たるカーマ。共に、笑顔を浮かべるイラスト。
「自分を仲間外れにしちゃだめだよ、カーマ!」
「はい。あなたの愛あればこそ、僕達は今こうしているのですから」
「───お二人とも…!」
本来、推しのカップリングに挟まるは禁忌。
しかし、推しが太鼓判を押したのならば。
「あ、ありが…」
「?」
「ありがとうございますぅうぅ〜〜〜!!」
カップリングと共に…
カーマは今、推したちと一つになったのであった。
そして、膨大なるサバフェスを全て回ることは1日にしてならず。
こうして、サバフェス1日目の陽はゆっくりと沈んでいった───。