人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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竜宮城

マシュ「うーみーは、ひろいーな、でっかーいーな〜♪」


じゃんぬ「はぁ…。温泉やプールに入ったあとに飲むコーラは最高ね…」

(リッカの護った世界……綺麗ね、ホント…)

マシュ「さてじゃんぬさん。そろそろ布団に入って始めましょうか」

じゃんぬ「何をよ」

マシュ「百怪談です!!」

じゃんぬ「いやよ…。なんで二人きりで怖い話しなきゃなんないのよ…」

マシュ「ではカルデアで気になる男子を語り合うとか!」

じゃんぬ「気になる男子…。やっぱグドーシかしら。あいつ、またリッカの前から消えたら許さな…」

コンコン

じゃんぬ「ん?」

マシュ「デリバリーでしょうか?」

赤髪の女性「もし。失礼いたします…」

じゃんぬ「…誰?」

「私、ミス・ク……いえ、カルデア、ロマニ・アーキマン様より使命を預かりました。おつうさんとお呼びください」

じゃんぬ「お痛さん?…いたそうね」

マシュ「よろしくお願いします!おつうさん!!」

おつうさん「はい!では、お寛ぎの際に失礼して…」


あなたのための晴れ水着を

「実は私、カルデアの秘匿エリアにてひっそりと居を構え、霊衣や礼装のデザインや採寸、その他諸々を請け負っているサーヴァントにてございます。このたび、ロマニ様より御二方を見守り、アドバイスなどもしてあげてほしいと仰せつかり馳せ参じました」

 

美しく、上品な身なりの赤髪の女性。おつうさんと名乗る彼女はカルデアから差し向けられた者と語った。じゃんぬとマシュは顔を見合わせる。ちなみに浴衣であり、マシュはきっちりと着こなし、じゃんぬは奔放に着崩している。

 

「いや、アドバイスっていうならブティックの時にいなさいよ。もう選び終わっちゃったわよ」

 

「いえ全くその通りでございます…実のところ、早期に御二方のアドバイザーとしてお声がけをしようとしたところ……」

 

 

「はっ、ほぁっ!フヒッ、マシュじゃん、て、てぇてぇ!てぇてぇ…!これが、これがプレシャス…プレシャスほこたて……!」

 

(あまりにも違う二人が、大切な人の為に仲良くなっていく姿!あまりに、あまりにもエモエモのエモ……!こ、これは介入など無粋にすぎます!いやでも私は、私はアドバイザーにて…!)

 

と、道の脇で悶えていたら……

 

【おい】

 

「!?」

 

【道端で不審な挙動をしている美人がいるとの通報があった。署まで同行願おうか】

 

「は、はひっ……」

 

 

「閻魔大王もかくやのお巡りさんに、みっちりと職質を受けておりました……」

 

「何無慙さんに迷惑かけてるのよ……」

 

つまるところ出歯亀していたところを無慙にしょっぴかれていたという事であった。

 

ちょくちょく話題に出てくる警官は伊藤無慙。警官であり、邪悪を憎み善を守護する苛烈なるお巡りさんである。彼に滅ぼされた反社会勢力や破壊された犯罪者、グループは数知れず。剣が如き正義の番人のため、誰にも制御できない悪の敵である。

 

「ふふ…【お前も分別のある大人なら、自身の振る舞いが他人にどう映るかを念頭に入れて行動しろ】などと誠実かつ真理な諭しをされては顔から火が出るほどに恥ずかしく…今の今まで反省していた次第でございます…」

 

「私、将来は無慙さんと警官をやってみるのもいいかもしれません…!」

 

「あんなストイックに生きられないわよアンタは多分。…で?犯罪者予備軍のあんたが何の用?」

 

はっとおつうさんは姿勢を正し、向き直る。何も無慙の仕事を増やす為に来たのではないのだ。多分。

 

「マシュ様。そしてじゃんぬ様。たくさんの水着を購入した手前大変心苦しいのですが……私、御二方と、リッカ様の水着を御手掛したく思います」

 

「おてかけ?ですか?」

 

「オーダーメイドってこと?出来るの?してくれるの…っていうか、マジで今更ねそれ」

 

こんなに買ったのよ?と、山盛りの袋を指さすじゃんぬ。おつうさんは神妙に頷いた。

 

「それはもう心より存じております。ですので、私は御二方の想いが詰まったその水着達を使い、御二方の霊基にピッタリと合う一着を手掛けたい所存にてございます」

 

「こいつらを使って、私達の水着をオーダーメイド……できるわけ?そんなこと」

 

「はい。トトロット様をご存知でしょうか?あの祭神の祝福を受けし妖精のお力もお借りし、この世に二つとない衣装を、霊基ごと手掛ける事も可能なのでございます」

 

霊基ごと。それは即ち、アヴェンジャーから別のクラスに変化することができるという事に他ならない。

 

「うっそ、マジで!?」

 

それはじゃんぬからしても願ってもない申し出だった。アヴェンジャーという恩讐の暑苦しい霊基では、リッカの隣にいることも憚れると懸念していたからだ。

 

「私は霊基チェンジは結構です!英雄王から賜ったグランドシールダーの名を一生涯背負っていくつもりですので!」

 

「勿論存じ上げております。カルデアが誇る至高の盾、マシュ・キリエライト嬢はそのままに…。この提案は、じゃんぬ様にロマニ様が持ちかけたものでございます」

 

「アイツが?私に?」

 

「はい。『リッカ君と一緒にいたいなら、いろんな可能性を試したほうがいいよ。恩讐の炎って、どこまで一緒にいられるか分からないしさ』…と」

 

おつうさんの告げるロマニの言葉にマシュは首を傾げるが、じゃんぬには思い当たるフシがある。

 

「……ふん。どいつもこいつも、復讐者の身を案じる物好きが多いことね」

 

怨嗟と憎悪を糧に、復讐者は燃え上がる。

 

ならばそれを有する、擁するものは果たして炎で焼かれずに済むものなのか。

 

いつか、大切な人と己を焼き尽くすならば。

 

その炎を、いつか───。

 

「………」

 

更に、じゃんぬの霊基は泡沫の夢のようなもの。

 

ふとした拍子に、朝露のように消え去るものかもしれぬのならば。

 

霊基や姿が違おうと、少しでも可能性を試してみればよいと。ロマニはそう懸念しおつうさんを派遣したのだろうとじゃんぬは思い耽る。

 

「じゃんぬさん…?」

 

「!」

 

ふと気がつけば、マシュが不安げにじゃんぬの顔を覗き込んでいた。

 

意外な、或いは妥当か。彼女は案ずる者が不安げな事を素早く見抜いているらしい。普段の明るさはあくまで元気な場合のみ。

 

デリカシーのない無粋さは、彼女には備わっていないのだ。

 

「……大丈夫だっての、子犬かあんたは」

 

心配そうなマシュの頭を撫で、おつうさんに向き直る。

 

「いいわ、やってみなさい。私とこいつ、あとリッカの水着をオーダーメイドで」

 

「!」

 

「あと、私は別霊基もよろしく。そうね……バーサーカーでいいわ。浮かれポンチは大体バーサーカーみたいなもんでしょ?」 

 

拝命を受け、おつうさんはすぐさまに立ち上がる。

 

「お任せください!素晴らしい織物にて、相応しい様相を手がけてみせましょう!ありがとうございます、マシュ様にじゃんぬ様!」

 

「よくわかりませんがまとまったようですね!ならばよし!です!」

 

「お手並み拝見といこうじゃない。私はアレね。水着霊基に似合う武器なんか作るわ。三刀流とか」

 

「それは果たして水着なのでしょうか!?」

 

「いいのよ、ハワイに降り立つ水着剣豪…!……いや、コンセプトが迷子ね。でも譲れないわ!刀よ刀!じゃあほら、さっさと眠る!消灯時間よ消灯時間!」

 

じゃんぬはマシュとおつうさんを立たせ、寝る準備を推し進める。そこには懸念を払拭しようとする健気さを強引さでカムフラージュする意図があった。

 

「それでは、明日には仕上げてみせましょう。ですが、一つだけ」

 

「?」

 

「…作業部屋は、決して覗かないでくださいね?」

 

その文言、聞いたことがある語り文句。

 

なんだったかしら…。そう、じゃんぬは頭を捻るのであった。

 

 

そしてその後は、すぐに寝るはずもなく。

 

「はいどーん!!」

 

「がふっ───!?」

 

「甘いですねじゃんぬさん!枕投げは始まっているのです!マシュ・キリエライトは攻撃もなかなかなんですよ!」

 

「──やってくれるじゃない。売られたケンカは買うのがオルレアン流よオッラァアァァァァァ!!!」

 

全力で枕投げに勤しみ──

 

「お酒は美味しいものなのでしょうか…?」

 

「知らないわよ…基本的にジュースだし…」

 

備え付けの日本酒やワインに思いを馳せ…

 

「すぅ、すぅ……」

 

「こいつ、ホント本能のままに生きてるわね…」

 

一足早く眠りについたマシュに呆れながらも…

 

「……今日は楽しかった。御礼を言っとくわ」

 

本人に聞こえぬよう、礼を告げ。

 

じゃんぬもまた、布団の中で微睡みを始めるのであった。

 




「……解ってるわよ、ヤブ医者。あんたの言わんとしてることは。あのクハハマンもそうだったし」

復讐は、いつか終わる。

エドモン・ダンテスは、モンテ・クリストを捨て去るのだ。

それと、理屈は同じ。

復讐者に待つのは、離別であると。

「………でも」

そう、でも。

「もしかしたらを期待するくらい。許されるでしょう…?」

だからこそ…

彼女は信じている。

復讐の炎も、きっといつか。

篝火になれると。

…だが

「あーあ……」

「ずっと一緒にいたいなぁ……」

その微かな呟きは。

寝息とともに、消えていった。

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