人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
ラスティ『あぁ。皆──準備はいいかい』
追跡者「勿論だ」
レディ「ハワイ全域をカバーしてみせるわ」
鉄の目「悪魔か…。撃ち抜き甲斐がある」
守護者「街の守りは任せるがいい」
執行者「────」
無頼漢「とりあえず、片っ端からブチのめしゃいいんだな?」
復習者「ふん。さっさと始めろ」
ラスティ『よし。始めよう』
『ハワイの───夜渡りだ!』
「えっと…ここ、でしょうか」
日が沈み、ハワイに夜が来た。
夜は昼とは異なり、旧神たる『ノーデンス』の侵攻が行われ、それの対処として夜闇の狩人、ナイアが人知れずその勢力を倒し、狩っていた。
しかし、その勢力は少しずつ規模を増していく事が危惧され、それによりニャルラトホテプは【対処】の為の戦力の招集を行った。
即ち、単独ではない、多数による防衛ミッション。父たるニャルラトホテプの号令と指示により、味方が増えることをナイアは知らされており、合流の指示を受けランデブーポイントへと足を運ぶ。
「協力者…一体、誰なのでしょう…」
ヒロインXXか、とナイアは考えたが、彼女は朝から夕方、寝静まるまでハワイのバカンスを満足し規則正しい生活リズムにより寝こけている。
ならば誰が、と思慮するナイア。彼女が狩るのはニャルラトホテプの同業、同類。即ち邪神たち。
あまりに特異な相手のため、協力するパートナーはいなかった。クトゥグアやインスマスの影、ティンダロスやショゴスといったものらももっぱら自身で狩ってきた。
(ちゃんと協力、足並みを揃え仲良くできたらよいのですが…)
環境に似合わず、彼女は極めて協調性が高い。ただシャイ気味なため、緊張に胸をざわつかせている様子はコミュ障に見えかねない様子ではあるが…
『そんなに心配しなくともいい。少なくとも、私達は君の味方だ』
「!」
夜闇を切り裂く凛々しい声。振り向けば、そこにいたのは仮面の男。
『こんばんは、ナイアさん。我が名はマルコシアス=ゼロ。指揮官のポジションとして…』
「その体格に振る舞い…あなたは、縷々さんですか…!?」
速攻で正体を見破られ、盛大にずっこけるマルコシアス。
『さ、流石ですね…まさか体格で見抜かれるとは…』
観念した彼は、仮面を外す。その気安さは、信頼と平和の証である。
「ご察しの通り、俺です。夏草昇陽学園を代表し、夜の戦いに参加しようと思いまして」
「よ、よろしいのですか…!?」
「勿論。それに、俺だけじゃありませんよ」
縷々が頷き、マントを翻す。
「うむ!しっかりと話すは初めてだな、ナイア殿。昇陽学園委員長、黒神愛生!あなたの戦いに手を貸そう!」
凛と構える青髪の女傑。サーヴァント・ヘラでもある特機戦力の愛生が、縷々と共にナイアへと合流したのだ。
「御二方も!?その、御助力は大変嬉しいのですが…!」
ナイアは驚愕を露わにする。彼らは光の住人。闇との戦いにわざわざ何故という疑問は無理からぬものだ。
「何故わざわざ俺達が手助けを、ですか?そりゃあ、邪神との対決なんてノウハウは俺達にはありません。足手まといになる懸念は大いにあります」
「い、いえ!足手まといだなんてそんな…!」
「ははっ、解ってますよ。ただ──俺達昇陽学園は、他学校や学園との交流にも余念がないってことです」
縷々がおどけたように告げ、愛生も補足する。
「我等夏草の生徒達の結束は一枚岩だ。しかしそれは決して排他的という意味ではない。我々は異なる学園、異なる学生、異なる学舎の生徒とも積極的に交流し絆を結ぶ事も出来るのだ!」
「ナイアさん、あなたは学生生活には潜入という体でしか行ったことが無いとあなたの父上からお聞きしました。なら尚更、侵略者如きに休みを費やすのは勿体ない」
縷々と愛生、二人の夏草の学園リーダーは告げる。
「せっかくなら、今回の騒動も、ある程度は楽しむイベントにするべきと考えたんです。俺達は、あなたのそんな時間を保証するために来ました」
「狩人ではなく、学生として。同じ学び生きるものとして。この夜を共に乗り越えようではないか!私達があなたを、全力で手助けしよう!」
夏草の学生たちが、自分達だけの排他的な生徒ではないことを知ってもらうために。
学生たちが力を合わせた、夏の思い出にて血なまぐさい狩りを忘れられるように。
そういった、ナイアを大切な仲間として迎え入れるために。
二人は、夜の戦いに名乗りをあげたのだ。
「御二方……」
「───本当はね。子供がなんでもかんでも背負う必要なんてないんだよ」
そこに更に現れたのは、夏草における『先生』。
「いつか大人になったら、必ず責任を背負わなくちゃいけない。だったら…子供のうちは、無理に背伸びしたり抱え込みすぎなくてもいいんだよ」
榊原先生。彼女が、縷々と黒神の願いを受けニャルラトホテプへと協力を申請したのだ。
「誰かの為に、自分を犠牲にする。それは尊いことだけど…正解じゃない」
「正解じゃ、ない…」
「欲張っていいの。我儘だっていいんだよ。誰かを護ることも、自分が楽しむことも。どっちも諦めなくたっていい。あなたは、あなたたちはどっちもできるんだから」
彼女はナイアの肩に手を置き、頷く。
「護るべきものは、皆で護ればいい。私や、あなたのお父さん。大人がちゃんと見てるから。あなたはもうちょっと、我儘でもいいんだよ」
「我儘に…?」
「そう。誰かに助けを求めてもいい。今日は辛いからって休んでもいい。誰かに、何かを任せちゃってもいい」
アダムの様に力強く、雄々しく背中を見せる教育論ではなく。
「あなたは一人じゃない。沢山の友達や仲間がいるんだよってことを伝えたくて…私達は此処に来たんだから」
優しく、柔らかい抱擁の教育論にて、ナイアを諭す。
「どうしても譲れない課題なら、一緒にやりましょう。誰かの未来と平和を護るための戦いだってそう。あなたは、誰かを頼ってもいいの。ナイアちゃん」
「誰かを、頼る…」
「あぁ。友達としてでも、仲間としてでも。なんでもOKさ」
「我々は完全ではない。助けを求める相手にしかこの手を伸ばせない」
だからこそ、と愛生は手を差し出す。
「背負う重荷を、私達にも分けてくれ。リッカの平穏、そして君自身の一時。共に大切なことには決して変わりないのだから」
差し出された手と、顔を交互に見渡すナイア。
「よ、よろしいのですか…?と、友達として、お頼りしても…?」
「勿論だとも。リッカの友なら我が友と同じ!」
「いや、その理屈はどうかと…。個人的に、シスターに悪い娘はいないと信じていますからね」
その言葉を受け、戸惑いはやがて喜色へと変わり。
「───はいっ!どうかナイアと共に、闇の輩をブチ殺して参りましょう!」
心より歓喜し、ナイアは愛生と握手を交わし、縷々に深く頭を下げたのだった。
「うむ!ヘラの力、存分に当てにしてもらおう!」
「榊原先生、ありがとうございます」
「いいのいいの。引率は必要だし、ハワイ来たかったし」
月が照らす和やかな会話の中…
「───!」
弾かれるように、ナイアが顔を上げる。
「───来ました」
「!」
「ノーデンス…その尖兵が、来ます」
聖痕を刻まれし尖兵、そしてクローンとして作られた悪魔たち。
「各エリアにも、仲間たちが配属してる。あなたたちはこの海岸エリアで頑張ってもらうわ」
榊原の声に応え、ナイア達が戦闘態勢に移る。
「縷々、あまり無理をするなよ」
「勿論です。戦術面でサポートしますよ!」
「皆様の生命、光輝く人生──必ずや守り抜きます」
そしてまた、夜の月が照らす中で戦いが始まる。
「さぁ行きましょう!友達の皆様───!」
ナイアは戦いに挑む。
昨日と違う点は……。
新しくできた、友達がそこにいた事であった。
アダム?【始まったか】
【【【【【【【────────】】】】】】】
アダム?【俺様たちの娘が眠っているんだ】
【うめき声一つあげず──死んでもらおう】