人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
オルガマリー「………」
(どんな夢を見てるのかしら…)
マシュ「気になりませんかオルガマリー所長…」
じゃんぬ「なんでいるのよあなたたち…」
オルガマリー「珍しいのよ。カルデアにいるリッカはこんなに近くにいて寝てることなんてあんまりないから…」
じゃんぬ「それは…」
リッカ「すぅ………」
じゃんぬ「……ふふっ、そうよね」
(ゆっくり眠りなさい、リッカ)
マシュ(明日もきっと、いい日ですよ!)
リッカ「すぅ…………えへへ………」
夜。悪魔が湧き、敵が満ちる暗き夜。
月のみが照らすその戦場、悪魔が満ちるその地において駆け抜ける影が各地に数多。
「──────!!」
悪魔達に、腕部に搭載したクローショットを突き刺し、人智を越えた俊敏さで大剣を叩きつける影。
「はあっ!」
悪魔達の武具刀剣の乱撃をまるで舞うようにかわし、華麗なる短剣の連撃を叩き込む影。
荒々しく、流麗に、夜を渡る影達は互いをカバーしながら奮迅し、辺りを取り囲む悪魔や敵たちを退け、共に背を合わせる。
「キリが無いな」
羽根の意匠の兜を付けた鎧の男が大剣を構え、独りごちる。
「当然ね。クローンとはそういうものよ」
背中合わせに、仮面を付けた淑女が返す。
「バカンスと聞いていたが、カルデアは毎度こんなにも危険に隣り合わせなのか?」
片刃が修復不可能な程に砕けた大剣を構え直す。
「世界を救う組織だもの。道中は苛烈で激しいものなのでしょうね」
瀟洒なる短剣を向けなおし、淑女が返す。
「だけど、彼女らはまだ学生よ」
「戦いに明け暮れるには早すぎるな」
頷き合い、二人は比翼の如くに迎え撃つ。
「守ってあげましょう。彼女らの平和を」
「復讐より、ずっとやりがいがあるな」
まるで草原を駆ける馬のように。
二人は死地へと、駆け抜ける。
〜
「30匹目」
無機質なる声と共に、悪魔の亡骸から矢を抜き取る。
「…また消えたな」
それと同時に、討ち果たした悪魔が光となり消え去っていく。ハワイの地に、還元されるように。
「霧を払ってるみてぇだな。まぁ、血生臭くないのはいいんだがよ」
弓矢を構える冷徹な男に、筋骨隆々の男が語りかける。彼の背には、光となり消え去る数多の死体があった。
「…………」
「どういう理屈か知らんが、光になって消えるってのはどういう事なのかね?ハワイにも幽霊やお伽噺ってのはあるもんなのか?」
陽気な男に、寡黙な男は声を返す。
「リムベルドでは見なかった敵だ。やはり、目測は間違っていなかったな」
「あん?目測?」
「カルデアにいれば、倒す敵には事欠かない」
同時、弓を持つ男は筋骨隆々の男に弓を向け、放つ。
「うおっと!」
だが、その弓矢は彼ではなく生み出された悪魔を撃ち貫いていた。
「倒すべき敵にあふれた毎日…望むところだ」
「おいおい…」
「さぁ行こう。もっともっと、歯応えのある戦いが欲しい」
冷徹の中に、滾る戦いの渇望を震わせながら敵地へと歩んでいく男を、大柄な男は肩を竦める。
「まともな休暇より戦いかよ。らしいっちゃあらしいがな…」
おーい、待てよ!そう叫びながら、冷徹な男を追う。
夜において、弓矢に穿たれた悪魔達は月に届かんばかりに積み上げられていった。
〜
「─────!!」
徒党を成す悪魔の殺到を、大盾を構え受け止める者がいた。
その者の見目は鳥人。人ならざる翼の戦士。守護の構えにて、進軍を阻む。
「先生!今です!」
合図を飛ばすと同時、彼の後ろに構えていた魔女の出で立ちの女性が魔力を練る。
【【【【【!!】】】】】
次の瞬間、宇宙の輝きを凝縮した爆発が巻き起こり、犇めいていた悪魔達は即座に吹き飛び消え去った。
混成魔術。様々な属性を重ね、新たなる魔術とする秘奥を振るうは、隠者と呼ばれる女性。
「お見事です、先生。悪魔なる者らにもその叡智は通用すると信じておりました」
片羽根の折れた守護者が恭しく礼をするが、隠者たる女性は消えゆく光を見ていた。
「…先生?」
「光が、ハワイに還っていく…」
光はやがて浮き上がり、沈み、消え去っていく。
「光がたくさん、ハワイに溶けていく」
「光が…?」
「倒すしかない、けれど…気をつけないと、かも」
守護者がその真意を理解する前に、悪魔達は更に闇より這い出る。
「懸念は後回しに致しましょう。今は!」
「うん。やっつけなきゃね」
再び、守護者と隠者は陣形を組む。
新たなる群れを護るため──
救世の翼は、雄々しく広げられていた。
〜
『──────』
【!】
無数の剣戟が振るわれ、金属音が鳴り響く。
小隊長クラスの大柄な悪魔の振るうナタの力任せの一撃を、赤き黄金の鎧の剣士…
その抜き放たれた妖刀が、無数の斬撃を捌き、弾いていた。
【!!】
その剣戟が十を超え始めた頃、その衝撃にてナタが弾かれ悪魔膝をつく。
『!』
瞬間、剣士が素早く身を翻し光り輝く妖刀を、夜闇ごと一閃。
【────】
切り裂かれた悪魔が断裂し、血飛沫を上げながら光へと還っていく。
『…………』
剣から血を払い、禍々しい妖刀を納刀する寡黙なる剣士…執行者。
「おい」
そこに声を掛けるは、丁寧に飾られた装飾の衣服を着る小柄の少女。
「呑気に剣戟を繰り広げている暇があるなら、多く敵を倒せ。全く」
『…………』
「お前が一人倒す間に私がどれだけの敵を退けているか、指折り数えて教えてやってもいいんだぞ」
復讐者。夜に全てを奪われし者たる彼女は苛烈な物言いで執行者たる剣士を詰る。
『……………』
「ふん。分かればいい。しかし…」
しかしだな、と復讐者は咳払いする。
「指揮官をお前が引きつけ討ったお陰でやりやすくはあった。そこはまぁ…」
感謝する。消え入りそうな声でそう告げる復讐者。
「………おい?」
しかし、顔を上げてみれば執行者はそこにはおらず。
『─────』
次に現れる敵に向けて、即座に疾走を開始していた。
「おい!人が話しているときには聞けと教えて貰わなかったのか!私は教えて貰ったぞ!おい!」
一転し怒りを表しながら、彼女は駆け抜ける執行者を追い掛ける。
その疾走は寡黙であれど…。
背を預ける、信頼を帯びていた。
〜
『夜渡り共は上手くやっているようだ。仮にも円卓に選ばれし者たち、そうでなくては』
夜の神、ラニがその伴侶、夜の王にへと柔らかく語りかける。
「クローンというものはこれ程に際限のないものなのか。ある意味では恐ろしい技術だね」
夜の王、ラスティには夜闇すら消え失せる程の光が満ちていた。それらは天に昇り、そしてやがて地へと還る。
それらは全て、彼が討ち果たした悪魔達の成れの果てである。それらは、火山エリアにおける悪魔の全て。
それは即ち、彼の手により悪魔達の軍団は全て討ち果たされ退けられた事の証左であった。
『悪魔と言うには随分と幻想的な消え方をするものだ。ノーデンスとやら、何を考えている?』
彼女は神として…ラスティの懐の小さな人形になり語り掛けていた。
「このハワイに、聖なる力が還る…。それは良いことなのかもしれない」
そう、討ち果たされた悪魔はやがて光と化し、天に昇り地に還る。
「だが、このハワイはニャルラトホテプさんが仕入れたものと聞く。果たしてそれは、良いことに繋がる事象なのだろうか?」
邪神の仕立てた地に、聖なるものが還る。
その事象が起こすものは果たしてどのようなものであるのかと彼は危惧する。
『そうだな。だが…』
ラニがそっと、彼に口づけする。
『その真理への考察は、若者達に任せてやろう』
若者。即ち今を生きる、カルデアやサバフェスに参加する者たち。
『私達のするべき事は、彼らの健やかな今を守ってやる事だ』
「あぁ、その通りだよ、ラニ」
夜の王は再び見やる。
星の輝きから、再び数多の悪魔達が降り注ぐ光景を。
「俺達がするべきは───夜明けを皆に託す事だ!」
夜の王は、高々と暗月の輝きを宿す大剣を掲げ──
「リッカ、皆。君達に暁の夜明けあれ───!!」
空に向けて、雄々しき一閃を放つ。
その誓いと共に放たれし、夜の王たる一撃は───
音もなく、無限に湧き出る聖痕を刻まれし悪魔達を薙ぎ払い。
ハワイを照らす満天の星空を。
星辰ごと、叩き斬ったのだった。
縷々「これは…?」
榊原「どうしたの、縷々?」
縷々「榊原先生、このデータを見てください」
榊原「これは…」
縷々「少しずつなのですが、ハワイ全域のマナが濃くなっています。消滅した悪魔達が光になり、還元された影響かと」
榊原「それに伴い、龍脈も活性化している…?」
縷々「はい。これは一体何を意味しているのか…すぐに解析に移ります」
榊原「────」