人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
マイノグーラ【土地自体も活性化してるってデータもある。何が目的なんだろうね?】
ニャルラトホテプ【……神格がメインのハワイに、光の力を…か】
マイノグーラ【相反作用ってやつ?】
ニャルラトホテプ【こちら自体にもメリットがあるものは、拒否は難しい。目先の利益を中々無碍にはできないものだ】
(メッセージは土曜に行います!)
マイノグーラ【そうよねぇ。マナが増えて龍脈が活性化するのなら、こっちも運営が容易くなるし?】
ニャルラトホテプ【どちらにせよ、侵略者は退ける他ない。…アビゲイルとラヴィニアに地質調査を頼みつつ…】
【手近な輩で様子を見るか…】
「はぁあぁあっ!!!」
悪魔の軍勢、ハワイの攻防。ハワイのメイン区画から離れた位置にて、気迫を以て悪魔と戦う可憐な影がある。
【さぁ行け我が娘クトゥーラ、或いはクティーラよ!我等が復権の為に!】
檄を飛ばす、小さきタコのような絶妙なシルエットを庇いながら、手にした不死殺しのナイフを振り回す、銀灰のツインテールと靭やかなヒョウが如き肉体の少女が悪魔達を狩っていたのだ。
「はい、お父様!このクティーラにお任せください!」
同時に迫りくる悪魔達に、呪詛を込めた黒曜石のナイフを構え──
「せやぁあぁあぁぁっ!!!」
首を切り落とし、血の噴水が巻き起こったのち…悪魔達は全て沈黙する。
「はぁ、はぁ…!やりました、お父様!」
クティーラ、クトゥーラ。神格【クトゥルフ】との血縁を有するもう一人の邪神の娘。
かつてセイレムにてニャルラトホテプに誑かされ、討ち果たされ封印されしもの、クトゥルフ。紆余曲折あって、彼女たちはカルデアに身を寄せている。
【よくぞやった、我が娘よ!さぁ、その輝きを我に集めるのだ!】
喜色満面の小さいクトゥルフが彼女を急かし、クトゥーラが頷く。
「どうかお納めください、お父様!『神なる力』を…!」
悪魔として討たれた光を収縮させ、一つにかき集め、やがてクトゥルフへと差し出すクトゥーラ。
【おぉ、おぉ……!力が満ちる、満ちていくぞ…!】
差し出された悪魔の力が、クトゥルフの力へと還元されていく。悪魔達の光は、神たるその身に吸収され力となっているのだ。
【我が失われし神格…これは善き供物となる!蓄え、肥大化し、確かに我が血肉となっていくのだ!ふふ、はははははは…!】
クトゥルフはニャルラトホテプに、世界を意のままにできると甘言を受け汎人類史へとやってきた。
だが、その甘言は自身の娘をカルデアに招くための喜劇。彼はまんまと永久追放を受けたのだ。
しかし、彼は決して諦めていない。カルデアで娘共々雑用を行いながら、虎視眈々と復活の機会を狙っているのだ。
この活動もその一環。クトゥルフは再び、再起の時を待っている。
「………あ、あの。お父様…」
少なくとも、クトゥルフにとっては。しかし、その娘…クトゥーラには異なる趣があった。
「お父様。どうでしょう?復活の時合はもうすぐだと思うのです」
【はははは…!うむ、そうだな!我が娘たるお前の奮闘の賜物ゆえな!】
「は、はい!で、ですから、その……」
彼女は、見ていた。朝の頃合いだ。
楽しそうに語り合う、邪神の家族を。
海の家で、ライフセーバーで、楽しげに過ごす邪神の娘を。
「この夜を越えた頃合いに、共にご飯やショッピングにでも…」
それが決して羨ましいわけではない。
娘は親にへと尽くすもの。そう確信している。
それに喜びも、やりがいも、使命感も感じている。
……だが、少しだけ。
「共に、楽しむことはどうでしょうか?」
少しだけ、自分も。あの邪神の家族のように。
家族としての振る舞いと触れ合いを、気が付けば提言がくちからついて出ていた。
【?何を言っているのだ、我が娘よ】
しかし。彼はなんらバグを起こしていない真っ当なる邪神。
【そのような人間らしい振る舞いに何がある?我等が目的を忘れたか?】
「!」
そんな娘の機微に、報いるような真似はしない。
【我々の目的はニャルラトホテプを出し抜き、この世界とこの歴史を我等の手に収めこの星の支配者となることだ。そのような下らんお遊戯などに費やす時間などない!】
当然のように、クトゥーラの要望を跳ね除ける。
【大方、ニャルラトホテプとその娘にあてられたか?全く嘆かわしい。あのような気の迷いに何の意味と効果があるというのだ?】
クトゥルフは、俯くクトゥーラの肩を叩く。
【我は今は雌伏の時を過ごしてはいるが、支配者たるもの。そしてお前は、その支配者たる娘だ。解るな?】
「は、はい!」
【下らぬ下賤の触れ合いなどに憧憬をもたらす必要などない。この父の言葉に従っていれば、やがて全てがお前と私のものとなるのだ】
クトゥルフは間違いなく、彼女を愛している。
しかし、そこに暖かさや情はない。あるのはただ使命感。
故に、最優先の目的は自身の、父の復活。
それ以外の全ては些事に過ぎない。省みる価値もない。
故にこそ、彼女が夢見た…或いは、無機質な復活への活動に合間見た家族の触れ合いは。
「…はい!」
彼女にとっての初経験なる光景は、二人にとっては無用の長物であったのだ。
【いい子だ。流石はこのクトゥルフの娘よ。見るがいい!我が身に満ちるこの力を!】
小さなクトゥルフは、光を吸収していた。その様相は、光を自らの神体に馴染ませ力と変えているもの。
【思った通りだ…!ノーデンスという小賢しい敵対者が関与していると聞いた時はやはりと思ったが…!】
霊基に力が満ちる。感嘆と共に、クトゥルフは吠えた。
【この光は邪神に類する力をもたらす!カルデアの者達は気付いておらず無碍にしているという訳だが…!我等は違うぞ!】
力に酔いしれ、復権の夢を見るクトゥルフ。
【この力は邪神たるものの力を活性化させ、やがて大いなる躍進をもたらす!敵対者でありながら、我々に力を施すとは愚かなり!】
「はい!我等が復権はもうすぐですね!」
【これからも頼むぞ、我が娘よ。我が復活には、お前の助力が必要不可欠なのだから】
「はい、お父様!このクトゥーラ、どこまでもお供いたします!」
そう誓い、クトゥーラは背を正す。
父のために、親のために全てを懸けて戦うこと。
親の為に、自らの力を尽くす事。
それこそが、娘と子たる自身の使命にして喜びなのだと。
「─────…………」
…それが、自身らを擁するカルデアへの裏切りであったのだとしても。
自身が見た、家族の在り方とは懸け離れたものであったのだとしても。
【見ていろ、ニャルラトホテプよ…!全ての報いを、やがて受けさせてやるぞ…はははは!わっはははははは───!】
父の幸福以上に、大切なものなどあるはずがない。
自身には、それしかない。
「はい…!どこまでも、お供いたします!」
たった一人の家族。
大切な肉親。
それ以上に大切なものなど、何もないのだから。
彼女は自身にそう言い聞かせるように、歓喜に酔いしれるクトゥルフの後に続く。
【【【【【───────】】】】】
「!」
再び、悪魔達が来やる。
【来たぞ、クトゥーラ!】
「はい、お父様!」
【戦え!私という偉大なる父のために!】
「はいっ!」
クトゥーラはナイフを構え、疾走する。
全ては父のために。
父が目指す世界のために。
もう一人の邪神の娘は駆ける。
ただ、ひたすらに。
大切な家族の為に。
大切な父の為に───。
「はあああぁぁぁっ────!!」
クトゥーラは夜に駆ける。
悪魔を狩り。
冒涜なる世界を夢見る親子は人知れず…
戦いを、続けるのだった。
ハスター【……………ん〜】
【よくないのぅ、ああいうのは。どれ…】
【少しばかり、気にかけてやるかのぅ……】