人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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クトゥルフ【今日はこのくらいでいいだろう。よくやったぞ、クトゥーラ!】

クトゥーラ「はい、お父様!」

クトゥルフ【フフ…この力はやがてこの世界を統べる力となる!力が復活した暁には、まずはカルデアを…!】

【カルデアを、何かの?】

クトゥルフ【ひっ…!】
クトゥーラ「!!」

ハスター【散歩しとったら、馴染みある声から馴染みある言葉が聞こえたのぅ】

クトゥルフ【は、ハスター…!黄衣の王、風の覇者…!】

ハスター【よもや謀叛の段取りかの?余計な手間をかけたくはないが…】

クトゥルフは戦慄する。

ニャルラトホテプ、クトゥグアに並ぶ最高格の邪神。

人間に転生したニャルラトホテプとは違う。
善なる篝火に新生したクトゥグアとは違う。

圧倒的なまでの神威と、全ての風を支配するグレート・オールド・ワン。

その力は、なんら減衰しておらぬ神威そのもの。

彼がその気になれば…

『太陽系など、瞬く間に灰燼と化すであろう』

ハスター【ほれ、もう一度言うてみぃ】

クトゥルフ【ひぃい…!】
クトゥーラ「ああっ…」

銀髪褐色の青年たるハスターが、凄む。

ハスター【カルデアが、なんじゃと?】

その、絶対的な神威に…

クトゥルフ【娘よ!父を護れ────!!】

クトゥルフは、全霊で退散を選択した。

クトゥーラ「は、はひっ…!」

娘を矢面に…

最強の風邪神、ハスターの前に。

ハスター【…………】

クトゥーラがへたりこむ。

「あ、あぁ……」

歯はかちかちと鳴り、小動物のように震え、涙を浮かべる。

ハスター【……ふん。娘を差し出し遁走とはの。下衆めが】

ハスターは黄衣のローブを外し…

クトゥルフ「あ…はひっ…?」

ハスター【そう、じじいを怖がるでないわい】

にっかりと笑い。

クトゥーラに被せたのであった。


傲岸なる慈悲

『正義の魔人、マルコシアスが告げる!我が志を共にする者に勝利と力を!!』

 

マルコシアス───縷々が扮する魔神の力を解放し、彼が選択した者達の魔力や筋力といった能力を飛躍的に増大させる。

 

「行くぞ、ヘラ!」

『うむ。妾に任せろ』

 

とん、とん、とステップを踏む愛生。同時に、ヘラが有するオリュンポスの神性王権が発動し、周囲の悪魔にヘラの権能が作用する。

 

『下賤の者らよ。我が権の前に平復するがよい───』

 

権力を司るゼウスの妻、ヘラの権限により、絶対的な重圧が周囲に伝播し、強制的に悪魔達は膝を折られ、頭を垂れ平伏する様相を晒す。

 

「黒神─────ファントムッッッ!!!」

 

瞬間、黒神愛生は自身のみの力で『音速』を越え、巻き起こるソニックブームで有象無象を一瞬で叩き伏せ、吹き飛ばす。

 

黒神ファントム。己をヘラとした黒神が、一時的に自身の肉体をヘラの本体たる権能ユニットへと同期。それにより人外の強度をもたらした肉体にて無理矢理音速を越えソニックブームを撒き散らす超人の技。

 

ヘラの全てを総べる権力は、物理法則すらも支配する。ヘラの疑似サーヴァントと化した黒神は、その肉体を超人…。

 

否、異常なる領域にまでに昇華させた『疑似神霊』とも言うべき領域にまで到達していた。

 

【ほう。リッカのダチも中々やるじゃねぇか】

 

こちらはアダムの肉体を借り受けたウルトラマンベリアル。ギガバトルナイザーは目立つので使わず、もっぱら自らの肉体のみで悪魔を八つ裂きにしていた。その様相は、キヴォトスの生徒達には見せられぬ…

 

否、逆に危険な妖しさを擁し、暴力と破壊の頂点にして具現の芸術にまで到達していたが故、見るものはそれに心を奪われるであろう。

 

『流石ですね、ウルトラマンベリアル。アダム先生の肉体には傷一つない…』

【誰かの肉体を借りたのは一度あったが、これはいい。ゼロに負けず劣らずの最強の肉体だ!】

 

自身で組んだ、フルスクラッチ・アッガイにて悪魔をマウントポジションで殴打する榊原と共に、ベリアルは悪魔達を薙ぎ倒していた。

 

「皆様、お見事です!これは私も負けていられません!」

 

ナイアも頼もしい仲間達に奮起し、その剣閃は時空と次元を越える。あまりにも鮮烈なるそれは回避を許さぬ多重屈折現象を巻き起こし、悪魔達を退け寄せ付けない。

 

【やるじゃねぇか。神の娘というだけはあるな】

 

「ありがとうございます!」

 

【しかし、チッ…気に食わねぇな】

 

戦況は絶対優勢でありながら、忌々しげにベリアルがうめき呟く。

 

「すみませんベリアル様!何かご粗相を…!?」

 

【いや、お前の事じゃねぇ。こいつの事だ】

 

ベリアルが告げるは、周囲に満ちる光達。悪魔を退け、立ち上る光。

 

『これらは悪魔達から、このハワイに還元されているようです。我等にも得がある、というのには些か気がかりですが…』

 

【それだ。オレ様はこの光、この仕組みこそが気に食わん】

 

ベリアルは自らの手に舞い降りた光を、強く握り潰す。

 

【こいつからはいけすかねぇ、上から降り注ぐ傲慢さを感じる。超越者気取りでオレ様らを見下す類のものだ】

 

『上から降り注ぐ、傲慢さ…?』

 

【永遠にそこにいろ。永劫、安寧を貪るがいい。その為の力はこうしてくれてやる。精々楽しみ、永劫微睡んでいるがいい。……そんな、鼻持ちならない救済の押し売りがコレだ】

 

忌々しげに、憎らしげにベリアルは空を睨む。

 

【誰だか知らんが、これをやっている奴らはオレ様らを見下し、侮り、このハワイに縛り付けようとしているわけだ。この光は、そこに囚われしオレ様らにくれてやっている慈悲とでも言うのだろう。全くもって気に食わねぇ】

 

超越者の、上からの慈悲。自らの野望を滾らせる野心家のベリアルには、さぞ神経を逆なでするものであろう。

 

『相手の個体はノーデンスと聞いています。邪神の敵対者であり、ニャルラトホテプさんを敵対視しているのは分かりますが…』

「ふむ、些か手段が迂遠にすぎはしないだろうか?奴らの狙いは何だというのだ?」

 

【さぁな。ただ一つ言えることは…どのみちこいつらを倒さねぇと、サバフェスどころじゃねぇってことだ】

 

アッガイに扮した榊原が、その情報を整理する。

 

『倒しても、倒さずとも。私達にとっては都合が悪い。そして齎されるは一方的で、傲岸なる慈悲と施し…』

 

【おい、ナイア。ノーデンスとお前の親父は敵対関係なんだろう?ノーデンスとは会ったことがあるのか?】

 

ベリアルの問いに、ナイアは応える。

 

「ノーデンスはお父さんのみならず、様々な邪神全ての敵対者です。ハスターお祖父様、クトゥグア、クトゥルフや更に様々な神話生物に至るまで、それらに類する全てを敵視し滅さんとする苛烈な神格…」

 

【大分弾けた野郎のようだな。結局倒せたのか?】

 

「いえ、むしろ私が狩りをした際には協力したこともあります。邪神にまつわるもの、ならば私も…そう思ったのですが」

 

意外にも、ノーデンスは協力的だった。そうナイアは告げる。

 

『ならば解ってもらえるのか?話し合いの余地があるなら…』

 

「いえ、それは難しいと思われます。かつてノーデンスは、グールに乗っ取られた文明社会を、洪水で洗い流し一掃するといった凶行にも及んだ事がありますから…」

 

かつて星そのものがグールの手に落ちた際、ノーデンスは容赦しなかった。

 

抵抗していた人類共々、ノーデンスは自らの神威を以て洪水を起こし文明を一掃。

 

そこには区別なく、一切の容赦なく生命の全てを薙ぎ払い、吹き飛ばした。人間とグールの区別なく。

 

「邪神の縁が結ばれたものもまた邪悪。私が協力と呼んでいるものも、ただの利害の一致に過ぎなかったのかもしれません。そして彼が最も敵視していたもの…それは、お父さんです」

 

ニャルラトホテプの遊びを、何度もノーデンスは阻んだ。

 

ニャルラトホテプの悪辣な企みをノーデンスは阻み、しかしノーデンスが守護せんとした全てをニャルラトホテプが打ち砕く。

 

そうした痛み分けが無限永劫に続いたのが、ニャルラトホテプとノーデンスの確執。互いが互いの首を取れずに、徒に被害ばかりが増えていったと彼女は父より伝え聞いた。

 

『であるならば、今回は逆…という事でしょうか』

 

「今度は、ニャルラトホテプさんの大切な全てを台無しにするために動く…?」

 

【……………どういったものかはよく分からんが、小賢しい企みと狙いをしているのは確かだ】

 

見ると、空が白み始めていた。

 

【まずは一日の夜が明ける、か】

 

『まるでカルデアの記録にあった、セイレムのようですね』

 

縷々が告げたのは、カルデアの経験した、ニャルラトホテプがナイアとラヴィニア、アビゲイルをカルデアに託すための喜劇。

 

『……あれが、大切な人を送り出す為の戦いであるのなら。今回は…』

 

榊原が思案する。

 

【………!】

 

ベリアルはふと、空にそれを見た。

 

輝ける羽根、雄々しき翼。

 

それらが白み始めた空にて、何度も何度も激突する様を。

 

【─────】

 

それらは、魔王と天使の激突。

 

一夜を締めくくる、死闘と激戦の様相であった。

 

 




アスモデウス【何のつもりですの!イシューリエル、ゼポン!】

イシューリエル『──────』

ゼポン『───────』

アスモデウス【エデンの警邏であった貴方達が何故、外宇宙神格に手を貸すのです!?神は唯一!それが天使の絶対的な信仰でしょう!】

ぶつかり合い、向かい合う。

アスモデウス【この場にケルビムが振るうべき炎の剣に焼かれる罪人はいません。大人しく天の園へ帰りなさい!】

イシューリエル『─────』
ゼポン『───────』

二人の天使は沈黙している。

アスモデウス【これだから、天使というものは…】

二人を相手にしながら、互角以上に振る舞うアスモデウス。

イシューリエル『いる』

【!】

しかし、沈黙は破られた。

『永劫の安寧に沈むべきものが』
『永遠の安楽に耽るべきものが』

【……!】

『『アダムとイヴの子孫』』

【!!】

『『永遠に、楽園にいるべきものだ』』

アスモデウスは……

その存在に、なによりも心当たりがあった。

アスモデウス【───藤丸、龍華…?】

『『…………』』

アスモデウス【答えなさい!あなたは、彼女たちに何をしようとしているのです───!】
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