人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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残業上がりなので、感想返信は明日行います!


じゃんぬ「リリスが言ってたわね…。『割と真に迫るから聞いてもらいなさい』って。アバウトか」

「…まぁ、聞いてもらうくらいならいいわよ。えっと、扉を開けて…」

「─────は?何ここ…?」


怨嗟ではなく、運命として

『よく来てくれたね。私がこの相談所の元締め『國造(くにつ) 薙(なぎ)』という。出身は出雲方面だが、夏草の気風が気に入っていてね。こうして住み着いているというわけだ。今日はよろしく頼もう』

 

じゃんぬが店の扉をくぐった先にあったのは、滝と清らかな水辺、無数の鳥居が存在する神秘が満ち満ちた空間。その中心に立つ、薙と名乗る者。

 

見た目は少年から青年。腰にまで伸びる長い髪をひとまとめにし、神衣を模した服を纏う神秘的な意匠の祭祀。静かに煌めく碧眼が、静かにじゃんぬを見やる。

 

「えっ、あ、その…人生相談…」

 

ジャンヌ・ダルクの力を有しながらメンタルはフランスの娘故、真なる神域の雰囲気に圧倒されるじゃんぬ。ふむ、と薙は頷き彼女を導く。

 

『復讐者の末。エクストラクラスの宿命について悩んでいるようだね』

 

「!」

 

『復讐者は、やがて星の旅には離別が待つ。大方そんなところだろうか』

 

薙と名乗る少年、或いは青年。その者の言葉の響きは、カルデアの神々らとなんら遜色ない。

 

ただ、そこには生真面目で硬質な響きがある。厳格さと落ち着きが重なるような、しかしそこに騒がしさと温かさは少ないような、まさに神威の響き。

 

『確かに、復讐は終わり、やがて新たなる人生を歩む際に復讐の炎は不要となるかもしれない。人は必ず区切りをつけるもの。復讐は、敵を討てば終わるものだ』

 

「…………」

 

じゃんぬは話せなかった。

 

薙の言葉には満ち溢れんばかりの力…言霊が宿っていたからだ。

 

『そう考えれば、君の不安は杞憂と片付けるには乱暴だな』

 

薙は語る。

 

復讐の炎は、人の旅にはいっそ不要であると。

 

『だが、それはあくまで『奪われた者の旅』である場合だ』

 

「!」

 

薙はその意見に反証をもたらす

 

『奪われた者が、奪い返す時。例えば未来を取り戻す戦いをしていたならば復讐の炎は捨てねばならない。その炎を持てば、取り戻す戦いは【やり返す】戦いとなってしまうからだ』

 

全てを奪われたものが、再び戦いに挑んだ時。

 

その者は、炎を捨てねばならない。その炎は、やがて旅路を恩讐の炎に包むからだ。

 

『君達の戦いは『束ね重ねる』戦いだ。人々、世界、あらゆる全てを束ね、この世全てを【被造物】と見下し傲る者へと叩きつける戦い。それならば、恩讐の炎すら旅路に不可欠な篝火となるだろう』

 

「!」

 

『何故か?その旅路を征くものは『正しい怒り』を糧にその炎を燃やすからだ。奪われた者たちの嘆きと悲しみ。力なき者の声なき叫び。それを背負い、火種として噴き出す炎。それこそが君であり、君のマスターの力なのではないのかね』

 

薙は告げる。

 

束ね重ねる旅における復讐とは、人が理不尽に奪われし無垢なる祈りを救うために燃え上がる『義憤』であると。

 

『君のマスターは果たして、何のために戦っただろうか?藤丸立香の名から外れ、しかしその善性と背負った悪性の果てに、人理を焼き払った獣を何故下したのか?』

 

「リッカが…」

 

じゃんぬは思い出す。

 

ゲーティアと戦った、彼女の想いを。

 

 

グドーシは死んだ!お前が殺したんだ!

 

私からグドーシの死まで奪う気か!

 

私はお前の御託を聞きに来たんじゃない!

 

私はお前を、ぶっ殺しに来たんだ!

 

お前が偉業の為に焼き払った今日は!

 

グドーシが死ぬほど生きたかった明日なんだ───!!!

 

 

「─────そう、だったわ」

 

そう。リッカはゲーティアに何を掲げて戦っていたか。

 

正義感じゃない。

 

義務感や使命感でもない。

 

ただ、煮え滾るような怒り。

 

理不尽に、他者の人生を踏み躙った事への憎しみ。

 

自身の大切なものを奪い去ったことへの、強い怨嗟。

 

それらを、自身の力に変えて世界を救った。

 

恩讐の炎が旅路を焼き払うなど、呑み込まれるなど杞憂でしか無い。

 

彼女を動かすもの。

 

彼女を奮い立たされるもの。

 

それこそが、恩讐の炎そのものだったのだから。

 

故に彼女は【この世全ての悪】なのだから。

 

『更に言えば、彼女にとって君は【モンテ・クリスト】なのだろうか?』

 

突如薙が、じゃんぬにむけて疑問を呈した。

 

「ど、どういう意味?」

 

『君は恩讐の炎を焚き付け、身を滅ぼす復讐にエドモン・ダンテスを突き動かすモンテ・クリストなのかということだ。それしかなく、それのみにて動くものなのかということだ。私には、そう見えない』

 

薙は告げる。

 

『君はそのマスターにとってのエデ…。置いていかれる復讐者ではなく、彼女が願った『運命』なのではないだろうか』

 

「運命?────私が……?」

 

動揺するじゃんぬに、薙は滝に映像を見せる。

 

『君の終わりに、果たして彼女は何を思ったか。今一度思い出し給え』

 

そこには───。

 

 

……いつか、またあのジャンヌとも会いたいな。

 

彼女だって、産まれてきた存在なんだから。

 

 

「──────だった」

 

じゃんぬは、俯いた。

 

「そうだった…そうだったわ。ジルの他に、リッカが。リッカだけが…」

 

彼女だけが。

 

泡沫の夢を、もう一度と願ってくれた。

 

彼女こそが。

 

リッカこそが、自身の運命だった。

 

それはリッカも同じく。

 

互いが互いの運命であり、復讐者の形ですら無かった以前に求め合ったもの。

 

『運命とは森羅万象、全てを取り巻く因果事象である。人も魔も、神すらも運命からは逃れられず、離れられない。故に……』

 

薙は、結論を語る。

 

『君が離別することはあり得ない。君が大切な誰かの運命である限り。君が大切な誰かの大切である限り。君は心で燃え滾る火として、ずっと共にあるだろう』

 

自信を持ち給えと、薙はそこで表情を緩めた。

 

『それに今、宇宙や次元は危機を迎えている。アラヤやガイアもナガノも関係ない。そんな折に選り好みしていたら即座に宇宙の戦犯だ。───分かりやすく言おう』

 

この旅路、この道筋のみにおいて。

 

『君達の答えの次第により、いくらでも共存の道はある。旅の果て、旅の行く末において君達復讐者がどう在るべきか、エクストラクラスはどう在るべきか。よく考え行くがいい。輝かしき星の道を』

 

朗らかに語った後、彼が設置していたアラームが鳴る。

 

『時間か。どうする?延長するかな?』

 

「───いいわ。もう結構よ」

 

じゃんぬが目に潤んだ涙を拭い、立ち上がる。

 

「ためになる話、聞かせてもらったわ。夏草、ホント何でもあるわね」

 

『そうだろう。私もお気に入りの場所だ』

 

「ありがとう。私も…頑張ってみるわ。あの子の…その、運命として、ね」

 

一礼し、じゃんぬは走り去る。

 

『フフ……』

 

薙は静かに背中を見送り…

 

『お代貰うの忘れたな…』

 

静かに、呟くのであった。

 




猫「大盤振る舞いだね。神託をタダで渡すとは」

薙『これくらいが、外様に出来る支援だからね』

猫「よく言うよ。謙遜が過ぎるんじゃないか?『天津神』の薙様さん」

薙『────そうでもない』

彼は静かに…

『神は人と在るべき。いちいち畏まらせる事は無いのだからね』

彼女たちの道行きを、見つめていた
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