人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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おつうさん「ああ、お二方。水着はこちらに完成致しました。お納めくださいませ」

マシュ「わぁ!ありがとうございます!!」

じゃんぬ「ホントにできたのね。いい仕事してるじゃない!」

おつうさん「ふふ…お二方が魅力的ならでは、ですよ。じゃんぬさんは霊基も変化できるようになっています。ご存分に…」

じゃんぬ「ええ、ありがとう(カン、カン)」

おつうさん「…じゃんぬさん?あの、何を?」

じゃんぬ「打ってんのよ、刀」

おつうさん「か、刀…」

じゃんぬ「水着と言えば、刀でしょ!」

おつうさん「は、はぁ…」

(そう、なのでしょうか……?一応セイバー霊基も私にはありますが…)

「…水着、奥が深いです…!」


己の人生の主演として

【さて、そろそろ帰宅の時間よ。探し物は見つかり、胸のつかえは取れたかしら】

 

翌日正午、竜宮城にて。リリスがじゃんぬとマシュの部屋を片付けながら二人に問いかける。

 

「はい!私は既に、自分のやるべき事やするべき事の指針をいただきました!」

 

マシュはリリスに人生においての好悪…人を好み、嫌うことの果てと対処を聞き及んだ。

 

嫌い、好まぬ相手がいたのならば戦うことは悪ではない。故にその時があらば、決して躊躇う必要などは無いのだと。そう受けたマシュの顔は晴れやかだった。

 

【よろしい。夏といってもはしゃぎすぎず、ケガをしないようにね。素敵な夏の思い出を作りなさい】

 

「はい!本当にありがとうございました、リリスさん!」

 

元気よく声と手を挙げる彼女に満足気に頷きながら、リリスはじゃんぬに向き直る。

 

【あなたはどうかしら?少しは迷いが晴れたかしら】

 

「えぇ、お陰様でね」

 

そう言ったじゃんぬの傍らには、三本の刀がマウントされている。それは彼女が作り上げた刀、バーサーカー用の武装だ。

 

「復讐者だの、泡沫の夢だの悩むのは辞めにしたわ。私はリッカの大切として、やれることをやり抜くだけよ」

 

【〜…………】

 

「まずはリッカの夏休みを素敵でスペシャルなものにするわ。素敵な人生ってのは素敵な日々の積み重ねから始まるもんでしょ?サーヴァントとして、まずは幸福な日々を切り開いてやらないとね!」

 

その言動には、覇気が満ちていた。先のアンニュイな様相から、見違えるように自身を見つけ、見定めたが故であろう。

 

「あんたにも色々世話になったわね、リリス」

 

「ありがとうございます、リリスさん!私はリリスさんの事、大切な義母さんとしてお慕いしたいと思います!」

 

義母。始まりの女として、かつてそう呼ばれたかもしれない名前。

 

【…御礼ならこの夏草と、それらを支える全て。アンドロマリウスに言いなさい。私も、ここに住まわせてもらっている立場なのだから】

 

そう告げるリリスの声音は、微かに弾んでいた。

 

「というか、あんたのその見るからに過剰な拘束って…外れないの?」

 

「はい!とても窮屈そうです!」

 

アダムにあてがわれた至高の女性の肢体を、過剰極まる呪いで拘束された姿を案じるじゃんぬとマシュにリリスは頷く。

 

【平気よ。これはあくまで女としてあることを許さないだけだし、それに仮初とはいえ、解いてもらったしね】

 

「で、ですがそれではアダム先生や、パパポポ様も悲しむと思います…!」

 

【私のことを案じ、思ってくれるのなら…日々を力強く生き、決して負けず、折れずに旅を続けなさい】

 

二人の懸念に、リリスは毅然と返す。

 

【神を騙る獣。やつのせいで、今を生きるリリン達は苦難を強いられている。それは悪意と共に強いられた理不尽なもの。世界の全てを脅かす、独善と邪悪の愛よ】

 

「「………!」」

 

【あなたたちの歩む旅路には、あらゆる全ての世界と未来がかかっているわ。休んでいい、立ち止まっても逃げてもいい。でもいつか、必ず成し遂げてみせなさい。それが、私の呪いを解く無二の方法だと覚えておくのよ】

 

自身の事を気にかけ、気に病む暇などあなた達にはない。

 

今尚苦しみ、悲しむ者がいるのなら。その者達の為に戦い抜け。

 

その旅路の果てに、全ての人々達への祝福と福音がある。

 

それがもたらされた時、きっとこの身も解き放たれる。

 

リリス。最初の女はそう告げた。

 

恐ろしい見た目、悪魔の母。荒野の悪霊たる彼女の忌み名とは裏腹に…

 

その言葉には、溢れんばかりの親愛と慈愛があった。

 

【おっと、説教ついでにこれも言っておかないとね】

 

リリスは次いで、その言葉をつけたす。

 

【ケダモノがあり、旅路の敵が見えているからといって、遊ぶことや休むことを疎かにしないようにね】

 

「それって…」

 

【『偽神がいるのにこんなことしていていいのか』とか『悠長に遊んでいていいのか』なんて、自分の人生を上の空で過ごすのはやめなさいということよ】

 

敵は強大で、一呼吸や瞬きで銀河や宇宙を葬り去れる相手だ。

 

だが、だからといって四六時中その事を懸念し、意識する必要はどこにも無いのだとリリスは二人に言い聞かせる。

 

【世界を救う戦いと同じくらい、あなた達の日々は大切なの。世のため人のためと同じくらい、あなた達はあなた達の為に生きていいの】

 

「人のためと同じくらい…」

 

「私達の為に…」

 

【そう。全てを擲ち、人を救う役割はあなたたちに押し付けられた使命じゃないわ。あなたたちの人生は、あなたたちだけのもの。サーヴァントだろうと、人間だろうと関係ない】

 

二人を、優しく抱き寄せる。

 

【自分の人生の主役は自分よ。自分という舞台、自分という役者を輝かせる事を…忘れないでちょうだいね】

 

リリスは、アダムの添え物として創造された。

 

アダムの意志に従い、組み伏せられることを望まれた女だった。

 

それを拒絶し、彼女は定められた運命に背を向けた。

 

楽園の外、そこには苦痛と絶望、不安と恐怖が満ちていた。

 

だが、それ以上に。踏み出すことのできる無限の大地と。

 

何者にも縛られない、大いなる自由と可能性が広がっていた。

 

「リリスさん…」

 

「──アダムせんせーとは違って、こっちのアダムは見る目がないですね。あなたのような方を袖にしたのですから」

 

二人には、自身の伝えたいことは確かに伝わった。

 

その視線と態度から、リリスはそれを確信するのであった。

 

【ふふ、長々とごめんね。私ももう少ししたらカルデアに戻るから、先に帰っていて】

 

本来なら、イヴになれなかった自身が母の真似事をするつもりはなかった。

 

だが、因果な事に……

 

刻まれた本質というものには、そうそう抗うことは出来ないのだと、彼女は自嘲する。

 

「次はキヴォトスにもお顔を出してください!アダム先生にもお声がけをしておきます!」

 

「また必ず来るわ。今度はリッカも連れて、必ずね」

 

【えぇ、待ってるわ】

 

そうして、二人の水着選びと悩みの清算は予期せぬ好転を披露し終わった。

 

「いよいよ、夏イベントが始まるね」

 

『長い戦いだ、英気を養うことも必要だろうさ』

 

【…健やかにありなさい。子どもたち】

 

時は7の半ば。

 

長い長い夏の催しが、幕を開けんとしていた。

 




タマ「ふにゃー」
ミケ「にゃー」
クロー「にゃーお」

無慙【今日もちゅーるをくれてやるぞ】

「「「にゃーん♪」」」

マシュ「無慙さーん!」

無慙「む…」

じゃんぬ「どう?この水着似合うかしら!」

マシュ「ばっちり着こなせているでしょうか!」

無慙【ほう、まるで最初からそうだったかのような…待て。もしやその格好で歩いてきたのか】

マシュ「はい!」
じゃんぬ「霊基の馴染ませが必要だったのよ、そんなに見苦しいなりじゃないでしょ?」

無慙【そうか】

【少し来い。話がある】

「「えっ」」

うら若き乙女が肌を不用意に晒すな。

夏草でなくば絡まれるか、笑われるかされるものだ。

十分気を付けてから行動しろ。

無慙に二人は絞られたが…

夏に思いを馳せた故、ある程度は仕方ないと思われたか。

その説教は、優しく数分で終わり。

じゃんぬ「気をつけましょうね…」
マシュ「はい…!」

二人は教えを胸に、夏草を後にしたのだった。
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