人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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ルシファー『…ニケには、脳に制御ユニットとして機能する装置『NYMPH』がある。それは言うなら固形化された心、感情、魂のようなものだ』

シンデレラ『王子様…』

『それにアクセスしたのは、つまり形となった心に触れるということ。僕は今、君の心に触れたんだ』

シンデレラ『……ごめんなさい。あまり、楽しいものでは無かった筈よ』

ルシファー『ううん。触れたからこそ分かったんだ。…大切な友達に教えてもらった事を、もっともっと鮮明に』

シンデレラ『教えてもらった、事?』

『全て話すよ。僕が…』

『僕がどのような存在であるのかを…』


傲慢の終わり、明星の昇り

『王子様が…神様に造られた天使…そして、叛逆の大魔王…』

 

浜辺にて、ルシファーは再会したシンデレラに自身の来歴を明かした。

 

自身が人間ではなく、大天使にして大魔王ルシファーであること。シンデレラの世界に、初めはアンドロイドやサイボーグの技術を求めて現れた事。

 

自身より美しいもの以外には、何の価値も見出だせなかった事。

 

自身が助けられた時、自身も勝利の女神となりたいと決意したシンデレラを美しいと感じた事。

 

指揮官として、人類の側として、シンデレラ達がハッピーエンドを迎えられるように手を尽くしていた事。

 

シンデレラと共にクイーンを倒した事で、自身の役目は終わったと感じた事。

 

自身は異物だったから、きっと皆で素敵なハッピーエンドを迎えられていたと思っていたこと。

 

それが、間違いだった事。

 

『僕の力や、僕の能力は文字通り何もかも神から与えられたものなんだ。研鑽も、努力も、来歴も、由来も無い。神であるものに、ただ与えられただけ。ただそう造られただけのもの』

 

懸命に今日より進化していく人間や、理想の自分が姿となるニケとは違う。全てが完成しているプリセット。

 

『だから、少なくとも君達と居る間は…自身の事を素晴らしいだなんて、美しいだなんて感じていなかった。だって何もかも、与えられただけ。口を開けて餌を待つ雛鳥を美しいとは思わないだろう?』

 

だから、美しいのは当たり前。素晴らしいのは当たり前。

 

だってそう作られたのだから。当たり前の事を喜びと感じる者はいない。

 

ただ持たされて、押し付けられたものを誇るほど自身は愚かになれなかった。

 

『だから僕は好きなんだ。自分より美しいもの、自分より素晴らしいものを見ると夢中になってしまう。シンデレラや、異世界の歌姫。そして至尊の姫とかね』

 

自身にはない『手にした美しさ』。それには夢中になってしまう。

 

自身とは違う、身につけた美しさ。それこそがルシファーの見つけた宝物だった。

 

『…王子様より美しいものだなんて、無茶を言うわね』

 

シンデレラは笑う。

 

『あなたに出会えた私は、貴方より美しい男の人に出会えないと確信しているくらいなのに』

 

『それは…』

 

『造られたとか、与えられたなんて関係ないわ。あなたは天使だからとか、魔王だからとか…そういうのではないの』

 

二人で並んで座っていた場から、ルシファーに身体を預ける。

 

『あなたは、自身が美しいと感じたものに何よりも真摯に接してくれた。私にも、エイブにも、皆にも。ニケの皆にも、そう接してくれた。どうして?』

 

『それは…美しいと感じたからだよ』

 

『そうよ。美しいものを、まっすぐ心から美しいと思い、尊重し、誠実に触れてくれる。…王子様が美しく輝いて見えるのは、神様があなたをそう作ったからじゃない』

 

まっすぐ、ルシファーの曙色の瞳を見つめる。

 

『王子様。あなたが王子様だから…あなたの魂が美しいから、私は美しいと思ったの。そう感じたのよ』

 

『僕が──僕の魂が、美しい…』

 

『私をあなたに会わせてくれた、美しいアスモデウスさんもそう。あなたが美しく造られたからあなたを慕うんじゃない。あなたの魂が輝いているから、あなたを慕うんだと思うわ』

 

彼女の青い瞳が、ルシファーを映す。

 

『────』

 

初めて。

 

初めて、自身の顔が、彼女が見つめた自身の姿が…

 

『───そう、か』

 

美しいと、思えた。

 

美しいのは当たり前だった。素晴らしいのは当然だった。

 

全部が、そう造られたから。誰もが自分を崇めるのは当たり前。誰もが自分を愛するのは当たり前。

 

だってそう造られた。それが明けの明星の存在意義。

 

しかし──彼は今気付いた。

 

美しいものと自身が共にあった時、自身の与えられた『傲慢』は消え去り『矜持』『自尊』という光を相手に与えられる。

 

自身の光は、美しいものを更に輝かせる事が出来る。

 

自身の光は、当たり前ではなくなる。

 

存在意義を越えた光を齎すことができる。

 

美しいものを、もっともっと輝かせられる。

 

エアにウタが教えてくれた事が、シンデレラの言葉で更に結びつく。

 

だからこそ───。

 

『ああ…僕はなんて傲慢だったのだろう』

 

故にこそ、理解する。

 

『美しいものを見いだして、輝かせておきながら。気が済んだら勝手に消えてしまうだなんて』

 

物語の読者でありながら、物語の中に介入し。

 

自身の望むように書き換えながら、登場人物達のその後を省みなかった。

 

自身の光に価値を見いだせなかったから、照らされたものがその光を失えばどうなるかを微塵も考えなかった。

 

自身の存在で他者を照らしながら、他者の物語を変えることに責任を持たなかった。

 

それこそが、自身の傲慢。大魔王として掲げる罪であったのだと、彼は理解した。

 

NYMPHを通じたシンデレラの心に触れ、それを魂で理解した。

 

それは皮肉にも、ニケという人造アンドロイドの体を取り、NYMPHという心や思考をカタチとした形態に触れたことにより確信できたこと。

 

彼の心に、悲しみと涙の結末が流れ込んだ事により決意する。

 

『シンデレラ』

 

『王子様?』

 

故にルシファーは決意する。決心する。

 

『ありがとう。大切な事を教えてくれて』

 

明けの明星は理解する。

 

『好きな時に照らし、好きな時に消える。僕はそう在り、そうするべきだと考えていた。星とは、僕とは所詮神の飾り物という諦観があったから』

 

『………』

 

『そんな無責任な在り方は、もう辞める。──僕は、輝き続けるよ』

 

ルシファーは、空を見上げる。

 

『僕の光に照らされたみんなが、僕という星を見上げる皆が二度と迷わず、悲しまない様に。ずっと沈まず、美しい全てを照らし続ける。ずっとずっと、哀しみや悲劇に嘆く事のないように』

 

彼女の胸が張り裂けるような哀しみと嘆き。愛しい人に会えない絶望と慟哭。

 

それを、自分という星が齎してはならない。僕が照らす全ては美しい。

 

彼女が尊び、彼女が歌うこの世界の全てが美しいように、世界の全ては美しい。

 

『僕は星になるよ。世界に満ちる全ての美しきものを、輝かせる星になる』

 

明けの明星は、大魔王は知った。

 

『ああ、今なら解る。僕に備わった美しさは、僕の為にあるんじゃない』

 

シンデレラの、刻まれた涙の跡を拭い──

 

『美しい世界と、そこに生きる全ての美しい者達を輝かせる為にあるんだって──』

『王子様───んっ───』

 

シンデレラの心と魂を癒すように、唇を重ねた。

 

『んん、んっ…ん──』

 

寄せては返す波の音。

 

遠くに響く人の喧騒。

 

何もかもが、遥か遠くに。

 

シンデレラは、ずっと夢見たその瞬間に身を委ねる。

 

『ん、ちゅ…おうじ、ひゃま…』

 

重ねた唇を開き、舌を絡め合う。

 

それは皮肉にも、ルシファーの象徴たる蛇のように。

 

淫らな水音と共に睦み合い、貪り合う。

 

(あぁ…夢みたいよ。ずっとずっと夢見ていたの)

 

王子様と結ばれる。情熱的に抱き合い、心と身体を絡め合う。

 

(私はこの為に。王子様と出会った時からこの為に──)

 

一瞬か、それとも数分か。

 

『んは、ぁ───』

 

互いの混じり合った唾液が名残惜しげなアーチを描くほど、濃厚なヴェーゼの後に、紅潮した表情でシンデレラが告げる。

 

『王子様、お願いを聞いてもらえる…?』

 

『──なんだい、シンデレラ?』

 

『私を…『あの称号』で呼んでくれる?』

 

あの称号。

 

『あなたは神様に造られた。でも私は、あなたの上に立ちたいんじゃないわ。横で、傍で共に在りたいの』

 

『…!』

 

『だから、どうか呼んでほしいわ。あなたを見下す神とは違う。そう──あなたを愛する者として…』

 

ずっと共に、在ると誓う。

 

故に──あの称号を。

 

『……うん、ありがとう』

 

ルシファーは告げる。

 

神の反逆者。大魔王ではなく。彼女の指揮官、ルイ・サイファーとして。

 

『シンデレラ。──僕の、勝利の女神よ』

 

彼女に、心からそう告げた。

 

『………あぁ、あぁ……!』

 

漸く、漸く物語が書き換えられた。

 

魔法が解けた。王子様は来なかった。

 

だから、自分で。

 

ガラスの靴がなくても。裸足でも。

 

『─────王子様……王子様っ……!!』

 

王子様を求め、見つけだした。

 

もう、離さない。離れない。

 

私の王子様。星の王子様を。

 

『わっ、ちょっ…!んむっ!?』

『んっ…!んちゅ、んっ、ん…!』

 

ずっとずっと、離さないと。

 

勝利の女神は浜辺にて…。

 

明けの明星を、抱き続けた。

 

 

 




レヴィアタン『ルシファー様が貪られてる…凄い事が起きている…』

アスモデウス『ううっ……!うっ、ううっ…!!』

レヴィアタン『…脳破壊?』

アスモデウス『シンデレラちゃん…!良かったね、本当に本当に良かったね…!!』

レヴィアタン『あのさぁ…(魔王の)自覚ある?言葉通り唾付けられてるけど…』

アスモデウス『何を言うのレヴィアタン!私が愛する男性の魅力を知る女性があんなにいい娘で喜び以外の何がありますか!』

レヴィアタン『えぇ…』

アスモデウス『ルシファー様が誰を愛そうと、誰に愛されようと大いに結構大歓迎!いつか私が、あの御方に抱かれる日を迎えたならばそれでよいのです!!』

レヴィアタン『………(唖然)』

アスモデウス『今日は存分にルシファー様を愛して、シンデレラちゃん…!ああっ、そんな!ルシファー様を押し倒してそんな、貪るようにキスを…!なんて情熱的な…ああっ…!!』

レヴィアタン『……ルシファー様、酸欠気味だけど大丈夫かな…』

バアル(レヴィアタン、ルシファー様とアスモデウスはどうだ)

『ルシファー様が浜で食べられて、アスモデウスがヲチ中』

バアル(は……??)

アスモデウス『私も…私もいつか!ルシファー様とあんな風に…ああっ…!』

レヴィアタン『……何処までも、嫉妬とは無縁な奴』

『───妬ましい。その心のピュアピュアさ』

ルシファー『〜〜〜〜…………!!────────(パタッ)』
シンデレラ『んはぁ、っ…。…王子様?』

アスモデウス&レヴィアタン『『死んだーーーーーー!?』』

ルシファーは浜で死にました。

灰被り姫を泣かせた為に。
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