人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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エイブ「人理保障機関、カルデア…平行次元に、異世界に天使に魔王…。童話をモチーフにしたフェアリーテールモデルのニケ部隊に相応しい訳だ。お前自身も、神とやらの肝煎りのフラグシップだったのだから」

ルシファー『まぁね。シンデレラのお陰で、空虚な傲慢を振り回す事をやっとやめられそうだけれど』

エイブ「……想定していなかった訳ではなかった。お前が死んだのではなく、異次元へ消え去ったであろう事はな」

ルシファー『えっ…』

エイブ「付いてこい。…お前に振り回された私の一年で、創り上げたものの成果を見せてやる」

『それ…大丈夫なやつ?』

エイブ『さてな…。知られれば私の地位は追われ、一転して人類の戦犯かもしれん』

『結果的にとはいえ…人類を旧時代にするものかもしれんものを手掛けてしまったかもな』

ルシファー『……───』


ニケブース・エピローグ〜一万年先を行く頭脳〜

ニケ企業、フェアリーテール。シンデレラ達を手掛けたエイブの功績を称え作られたニケ技術の統括にして総本山と化した製作会社。

 

『地下エレベーター…もう階層が地下数百階層を示してるんだけど』

 

「このエレベーターがある事は知らせていない。政府には勿論、シンデレラ達にもな」

 

エイブに連れられたルシファーは、十数分もエレベーターの中にて運ばれている。彼女が言う『人類を旧時代の遺産にする』とされる発明の在処へと導く為に。

 

『お前を失った娘達…特にシンデレラの憔悴は酷いものだった。思考転換を起こしかねないほどにな』

 

思考転換とは、ニケが精神的ショックやストレスにより攻撃的な性質へ不可逆的な変貌をする現象。

 

思考転換をおこしたニケはNIMPHにより禁止されている人間への危害も可能になるためイレギュラーと呼ばれ即処分される。

不死性をもつニケが侵食と並んで恐れるもの。

 

『空を見上げ、嘆くばかりだったシンデレラが、ある日突然お前を探すと言い出した。その時は最悪の可能性が過ったが…』

 

懐から、彼女は取り出した。

 

『王子様は生きている。私が会いに行く。必ず見つけてみせる…これを見つけた彼女は、再び歩き出したわけだ』

 

『それは…』

 

『羽だ。今なら解るぞ、これはお前の羽…超越性の根幹なのだろう?』

 

ルシファーの羽。あの時解き放たれた力、その根源だとエイブは予測、そして把握したのだと。

 

『お前を探しに行く。そうシンデレラが決意した瞬間から、私はシンデレラに何をしてやれるか考えた。同時に、お前が死んだのではなく『異次元』へと消えた…転移したと推測を立てた。お前は、何処ぞの時空転移へと巻き込まれたのだとな』

 

『エイブ…』

 

『人類の為に戦う義理は果たした。なら私が出来ることは、涙する娘に対し贈り物を贈ってやることだと考えたわけだ。…そら、着くぞ』

 

地下1000階。

 

地下の奥底、深き果てにルシファーは辿り着く。ルシファーが根城としている地獄と遜色ない深さへ。

 

『この羽根、そして世界中に満ちたお前の残り香…つまるところ新発見、新種の物質。セイレーン達に転用し、新たなボディを作ったのは見たな?』

 

『うん。ちょっと天才すぎて引いたけどね』

 

『アレは人類へのカムフラージュ、ついでに言えば体系化し量産したものに過ぎん。…この向こうにあるもののな』

 

エイブは自身の生体データを提示、何重にもロックされた扉のセキュリティを解除していく。

 

『そこに手を置け。網膜データもだ』

 

『僕がいないのに、ロックを僕の生体データにしたのかい?』

 

『言っただろう。お前が死んだなどとは思っていなかったとな』

 

言われるまま、ルシファーとエイブのデータを提示された扉が解除される様相を見やる。

 

『先に言ったが、私はお前の残り香…新発見の粒子をこの一年間で集め続けた。世界中を周り、それこそ死に物狂いでな』

 

二人は広い廊下を、重苦しい空気の中歩く。

 

『何故か?シンデレラの探し物に応えるための、彼女のボディを作るためだ』

 

『!』

 

『異世界、異次元の存在は理論としてある。お前のようなデタラメを知った以上、既存の観点は何の意味もないと思っていたからな。…その為のボディを創り上げる為に、私はお前の痕跡を集め回った。この一年間、延々とな』

 

『……まさか』

 

『あぁ。察しの通り…私の計画と目論見は完成した』

 

最後のセーフティ。その重い扉をエイブは開いた。

 

『あらゆる次元、あらゆる時空。その永い旅路に堪えきれるシンデレラの最高にして究極のボディ…『オーバースペック』をな』

 

そこに待っていた存在に、ルシファーは息を呑む。

 

『──これは…大聖杯…!?』

 

そこにあったのは、本来のニケの世界にはあろうはずもないもの。アインツベルン家が創り上げた大聖杯たる器。

 

『お前の羽、そして新発見の物質は粒子でありながらまるで液体でな。集めたはいいが、流れるように所在化が安定しなかった。そこで私は『器』を制作したんだ。世界中に散らばっていた、数cm程度のお前の羽を集め、中核にしてな』

 

手間を掛けさせおって。そうエイブは笑った。

 

『器に、新発見の物質…ええい、面倒だからエーテルと呼ぶ。エーテルを注ぐ形で生成、生産体制を整えた後、その物質は持たされた指向性を実現する為に活動するという性質を私は見つけた。要するに、筋道立てたプランを提出すれば、それを叶えるという事だ』

 

『………』

 

『先にお前は聖杯と言ったな。言い得て妙だ。……それに気付いた時、私は願った』

 

遥かな旅を決めたシンデレラに、彼女の探し物を見つけるための手助けを。

 

既存のニケのような、メンテナンスも必要がない身体。怪我も、病も、侵食も何もかもを超越したボディを作りたいと。

 

『企業のツテで、最初のニケ『リリーバイス』のデータも入手した私は、その設計図を下に、各地で集め回ったお前の羽を使って『新たなるコア』を制作し、三大理論を兼ね備えた細胞でシンデレラのボディを製作する事にした。そして──』

 

それは、完成したと。エイブは見上げる。

 

『──────────』

『シン、デレラ……』

 

大聖杯の中央部。そこに眠るように佇んでいるのはシンデレラ。

 

『製作は…成功した。この世界に存在しない物質。この世界に存在しない概念。聖杯、お前の羽根で作ったコア。培養された有機細胞で作られた、再現不可能なオーパーツにして究極のボディだ』

 

その肉体は、人類と完全に同じもの。機械部品は使用されていない有機体ボディ。

 

『自己進化、自己増殖、自己再生。三大理論で構築された細胞の100%で製作されたボディは決して破損することはない。即座に修復され、老化も、劣化もすることは無く、即座に自身の望んだ形態を再現する』

 

『それはまるで…』

 

『あぁ。…お前達が戦ってきたラプチャー、それを越えるもの…クイーンにも匹敵するだろうな』

 

エイブは創り上げた。涙する娘の為に。

 

大聖杯と、大天使のコア、そして、有機体の究極にあるボディを。

 

『平行次元を旅するかもしれん娘の為、懸命に創り上げた後…私は気付いてしまったよ。このボディは…ニケどころか人類すらも越えたボディだとな』

 

壊れることもなく、老いることもなく、朽ちることもなく。それでいて完全なる姿を保つ──。

 

『私もまた…一科学者の領域を逸脱したものを手がけた、とな』

 

人類が全て滅び、消え去ったとして。このボディは不滅と完成を保ち、星にたった一人在り続けるだろう。

 

アルファにしてオメガ。女神が産み出した、星の新たなる種族の資格すら持つボディ。

 

『十年以上探し、見つからなければ。このボディをシンデレラに託すつもりだった。数多の時空や次元を越え、お前を探すであろうシンデレラの願いを叶えさせる為にな』

 

だが、エイブは困ったように頭をかく。

 

『しかし、お前が案外早く見つかってしまったな、もっと七次元先程度離れていれば良かったものを』

 

『このボディなら、それでも見つけられるだろうね…』

 

『あぁ。単独の時空跳躍理論も搭載したからな。だが、お前が見つかったとなると…このボディの存在はあまりにも危険すぎる。極論、このボディを維持するのに人類など不要なのだから』

 

オンリーワンにして、アーキタイプ・ニケとも言うべきもの。

 

人類もラプチャーも超えた、この世界の新人類たる資格を有するボディ

 

『…お前に…このボディを託そうと思う』

 

『!』

 

エイブの提案は、この世界の人類を救うものであった。

 

『人の手には余るものだ。いや、きっとこれを人間が手にしてはならない。恐らく、霊長の座をシンデレラに明け渡すことになる。シンデレラは、新人類の女王などという座を望みはしないだろう』

 

肩の荷が下りたように、エイブは目を閉じる。

 

『だが、お前が敵対している神は許せん。何度シンデレラが祈ったと思う?何度、お前に会いたいと願ったと思う?その願いを無視し、あまつさえ嘲笑っていたのだとしたら』

 

私は、神とやらを決して許さん。そう、告げる。

 

『このボディをシンデレラがいつか使う日が来るのだとしたら──その日こそシンデレラを玩び、お前を自分の映し鏡として作った偽りの神を討ち果たす日だ』

 

『エイブ…』

 

『解っていたさ。お前の傲慢が、空虚さや諦観を孕んでいた事を。何故かと思っていたが…合点がいったよ』

 

エイブはルシファーの胸に拳をぶつける。

 

『私達を弄んだ神に、一撃をくれてやれ。そしてその果てに──神とやらを討て。それが、オールドテイルズの新たなる使命だ』

 

『──あぁ、ありがとう。このシンデレラの姿…決して悪用しないことを誓う』

 

そしていつか──

 

最高の晴れ舞台に、シンデレラを導くことを。

 

『なら、このボディを預けるに相応しい相手を知ってるんだ。すぐにでも手続きしよう』

 

『?お前がそこまで言うとは…誰だ?』

 

ルシファーは笑顔で答える。

 

『英雄王ギルガメッシュ。世界の全てを手にした王。大丈夫。彼女は彼が擁するに相応しい宝物だからね!』

 

───明けの明星は、王に託す事となる。

 

勝利の女神が産み出した、新しき人類の資格を有する宝を。

 

 

 




エレベーター内部

エイブ『ちなみに、あのボディには生殖機能も付いている。いや、付けた』

ルシファー『ホント!?』

エイブ『あいつの…シンデレラの事だ。追加する機能は、お前との美しい赤ちゃんを育てる子宮とでも言うだろうからな』

ルシファー『あははっ、シンデレラは乙女だもんね!それにしても…赤ちゃんかぁ…!』

エイブ『…神を討つのがいつになるかはしらんが、私が思考転換しない内に孫を抱かせろ。いいな』

ルシファー『勿論!ふふっ──いつか僕もお父さんになる日がくるかもしれないだなんて…!よーし!!偽神殺すぞーっ!!』

エイブ『エレベーター内で暴れるな!!』

偽りの神を討ち果たす。

それがオールドテイルズの新たなる物語となった。


…そして、同時刻。

ナイア「……………………………」
クトゥーラ「……………………」

リッカ「……にらめっこ…?」

リッカ達は…

重苦しくにらめっこしているナイア達のもとにいた。
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