「──やはり、赤い視線様の手下だけあって、侮れない実力ですね」
ホプキンスが私達の背中を見つめ、値踏みするように呟いた。
その鼻につく物言いが癪に触ったのか、良秀は不機嫌にホプキンスへと目を向ける。
「……手下だって?」
「あらら、うちのホプキンスが失言しちゃて……私が代わりに謝りますね〜えへへ。ところで何でそんなにクネクネしてるの、ホプキンス?痔でも再発した?」
「な、何言ってるんだ?俺がいつ……」
アヤちゃんが、その場で奇妙に腰を引いて、何やらモゾモゾとしているホプキンスを見て、これ幸いとばかりに茶化して言った。
ホプキンスは物言いたげな顔をしたが、揶揄されたことを否定するより、何か別のことへ意識を集中させているようだった。
「あらら〜、お尻がお辛いんですか〜?ホプキンスさ〜ん。痔は下半身を温めると良いらしいですし……カイロでも入ります?」
私はその様子に確信に近い直感を抱き、自身の予測を確かめるためにホプキンスを揶揄いながら歩み寄った。
「やめろ!何でもないから……っ、気味の悪い顔で近寄ろうとするな!」
ホプキンスは何かを隠すようにポケットを庇いながら必死に後ずさった。
だが、一瞬ではあったが私には彼が隠した物が見えた。
「……ふ〜ん?」
……私達の目もあるってのに、よくもまあこんなに堂々と……盗人猛々しいな、こいつ。
とりま、ダンテには伝えて……あれ?こっち見てる。
「──ねぇねぇ、ダンテ。もしかして気づいてる?」
「<あっ、うん。ホプキンスが……何か取ったことは分かるんだけど>」
「一瞬見えたけど、取ったのはエンケファリンだった。……どうする?」
「<……一先ず、見逃していいと思う。私達の目的はあくまで黄金の枝な訳だし……>」
私達は密やかに言葉を交わし、他のメンバーにはこの事実を伏せることにした。若干の不安はあったが、深追いして足を止められるよりは、先を急ぐ方が賢明だろうから。
「──まぁ、これくらいなら十分でしょう」
程なくして、先へと進む扉を開けるとファウストがぽつりと呟いて、ダンテの前へ立った。
ファウストの言葉に沿って、ダンテが意識を集中させる。
何をどうしたのかは分からないが、一連の流れでダンテの巻き戻しの力が再び使えるようになったらしい。
「じゃあ、早く時計戻してください。肩の骨がさっきから脱臼してるみたいなんですよ」
「……戻るんですか?その時計で、本当に戻せるんですか?」
「戻るだけじゃないぞ?めっちゃ不思議な能力を持ってるんだよ。ユーリさんもちょっと見てきな」
んな、見世物みたいに……。
……ダンテの能力の代償がなかったら良いのに……毎回怪我する度にあの痛そうな姿を見ると罪悪感で胸が痛い。
けど、ある程度の相手だと無傷で勝つとか絶対に無理なんだよな……。
「<……誰も、私の苦痛を気遣ってくれないのかい?>」
その後、ロボトミー支部のとある一室で、チクタクと激しい時計の音が鳴り響いた。
「──あ〜スッキリした」
ロージャはぐるぐると肩を回し、先ほどまで骨が軋んでいた感触が嘘のように消えたことを確かめて、晴れやかな声を上げた。
その傍らで、ダンテはだるそうに歩きながら、頭部の時計からは苦悶を訴えるようなチクタクという音を漏らした。
「ほんと、ありがとね。ダンテ……」
「<……どういたしまして>」
ダンテはチクタクと弱々しい音で返事をした。
「その時計、本当に不思議ですね〜。見たことも聞いたことも無い技術ですよ」
「と、特異点レベルだよ、こんなの……。一体どんな翼が裏に……」
様子を見ていた、アヤちゃんとホプキンスが驚愕した表情でこちらを見ている。
その中で、ホプキンスは驚愕しながらも、その内に隠しきれない欲望を表した目をしていた。
ダンテはその様子を感じ取ったのか、少し身震いして頭を抱えた。
「やっぱり心配?ダンテ」
「<正直……あの目を見ると、放っておいて良いのかなって思い始めてきた……>」
「何があっても、守るつもりではいるけど……やっぱり、糾弾する?」
「<うーん……>」
ダンテは答えを出しかねて、針を揺らした。
「ファウスト嬢、管理人の持給う時計は彼の命を助けられぬか?」
その時、ふと疑問に思ったのかイサンがファウストに尋ねた。
「いえ、時計は囚人にのみ作動します」
ファウストの問いを聞いていたアヤちゃんがどこかホッとしたように笑った。
「あぁ〜むしろそれで良かったよ。お腹に穴がポッカリ空いたのに、死ねずに生き返ったらそっちの方がもっと怖いでしょ?いや、お腹なら運が良いか。数秒で死ぬから……」
「そんな不安になるような──」
私の視線がアヤちゃんの方へ向いた──その時だった。
足元でボコリと地面が割れて、その中で蔓が蠢めく。
その蔓は、あと数秒で
【幸運】 (1D100<=80/2) > 28 > 成功
【幸運】にも気づくことができた。
しかし、幻想体の蔓の動きは素早い。
咄嗟に助けようと伸ばした、その手は──。
【DEX対抗ロール】 (1D100<=30) > 5 > 決定的成功
瞬時にアヤの手を掴み、
「──え?」
「……あぶな。間に合ってよかった」
驚いた表情で目をぱちくりとしているアヤが呆然とした声を漏らす。しかし、次の瞬間にはその顔は真っ青に変わった。
彼女の視線の先、つい数秒前まで自分が立っていた石畳からは、鋭利な蔓が槍のように突き出していた。もしあの時、誰も気づくことなくあの場所にいれば、その腹部には今頃、風穴が開いていたはずだ。
「アヤさん!あぁ、良かった……」
駆け寄ってきたユーリちゃんにアヤちゃんを預け、廊下の暗闇の先にいるものを見据える。
「一般的な攻撃の形態を取っておりませんね。幻想体である可能性が高いです」
「……ユーリちゃん、あの幻想体についての情報はある?知ってたら教えて」
鋭い視線を前方に向けたまま問う。アヤちゃんの肩を支えながら、ユーリちゃんは口を開いた。
「……あの幻想体は周囲の地面や壁に蔓を張って職員の動きを阻害していました。弱点は確か──あの頭の林檎です!」
「よし……全員、戦闘準備!ご命令をお願いします、管理人様」
ウーティスの言葉とともに、囚人たちがそれぞれの武器を抜き放つ。
「<……ユーリ、ホプキンス、アヤ。あの三人を私が蘇生することはできない。被害を出したくないなら今すぐ戦う準備をしないと駄目だ>」
ダンテが決意を込めた様子でチクタクという音を鳴らす。
「懸命な判断でございます」
「あのチクタクって音が意味を成してはいるのか……?」
ウーティスは刺すような目つきでホプキンスを一瞬睨み付けたが、すぐに視線を戻して叫んだ。
「……管理人様の命令だ、手下ども!包囲陣形を構築する。目標は、前方の挙不者!」
「ところで……
廊下の奥から近づいてきた巨大な影。
明るみとなったその幻想体は、紫色のドレスとマントを身に纏い、仰々しく立つ姿はまるで高慢な女王のようであった。
異様なのはその頭部と身体だ。
枯れ葉のようなメディチ・カラー、燻んだ紫色の宝石を飾ったブローチ、林檎の断面のように真っ白な林檎の顔に剥き出しになった歯。
そして、女王のドレスの裾……下半身の根から、触手のように無数の蔓を伸ばし、廊下の壁や床を瞬く間に侵食していく。
刺々しい蔓が、私達の足をもつらせる。 逃げ場のない狭い廊下。移動を阻害する蔓。 正面に佇む悍ましい女王は、ただ静かに白い顔を傾け、こちらを見つめている。
──まるで、自らの庭園に迷い込んだ獲物が、恐怖で動けなくなるのを愉しんでいるかのように。
SANチェック0/1d6
【正気度ロール】1 > 成功
「……一応、都市に平然と存在できてる訳だし「者」なんだろうね、
何にせよ、私のやることは変わらない。
─縦横無尽に戦場を駆け巡り、豊富にある影の中へと身を潜ませる。
しかして、地に張り巡らされた根の網、これが厄介極まりない。
常に気を張って移動しないと足がもつれて、致命的な隙を晒すはめになるだろうから。
「隙は作ったぞ!シ協会の姉さん!」
「感謝します──そこです」
ツヴァイのフィクサーであるグレゴールの呼び掛けと同時に飛び出し、腕を斬りつける。
動く時は着実に。他の仲間が作った隙を見逃さないように、闇に紛れて好機を狙う。
「<……だけど、相手に有利な状況であることは変わらない。誰かが、この根を掘り返さないと駄目だ>」
囚人達が顔を見合わせる。地面にある根は棘だらけで、突き刺さるような苦痛を余すことなく味わうのは遠慮したかったからであろう。
「──では、私がやり遂げて見せましょう。管理人様」
素手で根を掴んで、引き摺り出す。
しかし、棘だらけの根を掴んでも感じたものは痛みではなかった。
それは──他人に対する猜疑心。誰をも疑い、誰をも近付けぬ心の有り様。
心に根付いてしまったそれは、簡単に拭うことはできず永遠に深く刺さり続けたのだろう。
「……空虚ですね。誰も信じられなかった人生なんて」
手を開いてみれば傷はなかった。裾を使って埃を払う。
地面に張り巡らされていた根も全てが取り払われた。
あとはただ、殺すのみ。
「人に仇なす畜生たるお前達に、安寧の死など不要でしょう?──死ね、塵芥。何時迄も現世にへばり付く膿が」
「なんだよ。もう終わりか?」
「幻想体は簡単には制圧できないくらい強力だって聞いたんですけど……」
ヒースクリフが呆気ないと肩にバットを乗せ、イシュメールも拍子抜けしたような顔で言葉を漏らした。あれほど仰々しい見た目の癖してそれほど対処しづらい訳でもなく、あっさりと倒れたことが疑問のようだ。
「クリフォト抑止力によるものです」
二人の疑問に答えるようにファウストが淡々と告げた。
「は?コーヒーポットよく拾う?」
「ク・リ・フォ・ト・よ・く・し・りょ・く……縮めてクリ
「いや、その場合はクリ
「あっはい。えぇっと……それで確か、幻想体を鎮静・弱体化させる力だって記憶にあるんだけど、ファウスト?」
良秀の訂正を受け流してファウストに確認をとる。
「はい、その通りです。隔離室にて、より安全に幻想体を管理するために使われています。しかし、黄金の枝を回収するほど、その抑止力も段々と弱まっていくでしょう。今はこの程度で終わりましたが……」
「はぁ……後の方になってくると、100回くらい死んで目覚めてもきついこともあるってことですね」
心底勘弁してほしいという様子で、イシュメールが気が遠くなるようなことを口にする。
「……ところで、幻想体の死体はどこへ行った?さっき死んだ気がするけど……」
「恐らく息の根は止まっています。管理人様の卓越した指揮のおかげです」
「<ユーリとランディが言うには……卵になるんだよね?>」
「はい……あっ、あそこを見てください。あの幻想体……黒檀女王の林檎の卵があそこにあります」
そう言ってユーリちゃんの指差した方向には、幾数の蔓が絡まるようにして卵状の形を模したものに幻想体が着けていたブローチが埋め込まれたものがあった。
「あれが……あの幻想体なの?」
「幻想体の核ですね。適切に制圧した場合、このような核の形態で還元されます」
「……そして時間を経て孵化するんです」
「は?そんなクソみてぇなことが……」
「まかり通るんだ。こいつらは実質的に不死身なんだよ」
……何度あの忌々しいクソッタレの卵を叩き潰せたらって考えたことか。
「うーん……卵が孵化する前に私達がやるべきことって何ですか?」
「リンバス・カンパニーにはこのような幻想体を担当する部署が別途で存在します。彼らが回収していくはずです」
「その……アフターチームですか?案内された時に聞きました」
「じゃあ早く呼んだほうが良いんじゃ……?」
「連絡は……メフィストフェレスから可能です」
不安げなシンクレアの問いに対し、返ってきたのはあまり芳しくない答えだった。
「……それはそうだろうなぁ」
「そこまで心配する必要はありません。黄金の枝さえ見つかれば嫌でも帰ることになりますから」
ファウストがそう締めくくると、一行は迷いのない足取りで廊下のさらに奥へと歩み出した。
今回、アヤちゃん生存ルートとして【幸運】/2で根の存在に気付いた上で【DEX】対抗ロールに成功すればアヤちゃんを救い出せる事にしました。ソンキホーテソンキホーテ
黒檀女王の【DEX】はちょっと適当なんですけど、通常通り3D6を振ってランディのDEXより高い数字を選んだ結果16でした。16と12の対抗ロールで30でした。ソンキホーテソンキホーテソンキホーテ
そしたらこれっすよ。ソンキホーテソンキホーテソンキホーテソンキホーテ
続くSANチェックでも無駄に1出すし、何やこいつ?かつて無い出目の良さやで?俺っち怖いわ。ソンキソンキソンキソンキソンキ
ダイスと割とその場のノリで書いてるから、内容考えんのが……。
ホプキンスはアヤちゃん生きてるし、変な企みしてても封殺できそうかな……。ソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキ
なんで作者の俺っちが一番困ってんねん。1章最後どないすんねん。
希望見せんなって、怖いんだよ。こっから先の展開書くのとダイス振るの。ソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキソンキ
だから一応生き残りはしたけど、まだ先分かんないから一章終了するまでは原作キャラ生存のタグは付けません。
ご理解ください。ソンキ……ソラちゃ……うっうっ……
小話:実は今回の話、アヤちゃんではなくホプキンスを襲わ、それを救い出して光堕ちさせようという考案がありました。理由としては、アヤちゃん生存ルートは割と書かれてるし味変みたいな感じで他の小説には無い形でお出しすると面白いんじゃないかなと思ったからですね。
やめた理由ですが、やっぱりホプキンスは都市のドブカスな面として皆の心の中で立ち続けていて欲しかったからです。
ホプキンスは今回の章を生き残ることが出来ても何一つとして変わることがなくそのままでいて欲しいのです。
ランディのどんな人格がみたいですか?「恒常〜S1」(投票が多い人格が優先)
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