探索者が逝くSAN値直葬の地獄巡り   作:遊心喜一

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0章【暗い森】
EP0-1 「目が覚めたらバトル開始ってマジですか?」


 あなたが意識を取り戻した時、最初に感じたのは圧迫感と息苦しさだった。

 暗闇の中、全身が粘つく糸に巻かれ、身動き一つ取れない。微かな揺れと頭に血が上っていく感覚から、自分が繭のように吊るされているのだと悟った。

 そうこうしているうちに、繭の外からギチギチと、不快な音が幾重にも響いてくる。

 それがあなたが遭遇した蜘蛛の怪物のものだと思い至った時には、もう、何もかもが手遅れだった。

 遠くの方で、肉を裂く音とくぐもった悲鳴が聞こえ──突如、耐え難い苦痛があなたの全身を襲う。

 牙や爪が無数にあなたの肉へと突き立てられ、激痛が走るたび、あなたを構成する大事なものが、じわじわと剥ぎ取られ、貪られていく。

 肉を咀嚼し、骨を砕いて中の骨髄を啜り、削げ落ちた肉に群がって、奪い合う。

 手足はもはや骨ばかりになり、身体の内側まで入り込んだ蜘蛛が臓物を掻き回す。

視界がぶれる。最後には、繭の中身は跡形もなく食い尽くされて、何一つ残ることはないだろう。

──そうして、あなたの意識は、沈むように落ちていった。


 

 「……っ、うぁ…………?」……っ、うぁ…………?
 「……っ、うぁ…………?」…………

 

 顔面に鋭い衝撃が走り、頭がガクンと跳ね、視界がぶれる。口内を噛んだのか、喉の奥に血の味が広がった。

 い、痛い……。

 何だ?何で私は唐突に、しかも容赦なくぶたれたんだ……。

 

 『……ようやく目を覚ましたか、囚人14番。随分と気持ちよさそうに眠っていたようだが』

 


 

 ジワジワと続く鈍い痛みに顔を顰めながら、(あなた)は声がした方へ顔を向けた。

 気味の悪い静けさが満ちる、薄暗い車内。

 窓の外から差し込む仄白ほのじろい光が、(あなた)の傍らに立っていたを照らし出す。

 ──それは、生者とは思えない程不気味な男だった。

 痩せこけた頬に、血の気のない肌。

 そして、何より目を引くのはその眼窩に宿った──異様な瞳。

 まるで夜の底から這い上がってきた吸血鬼のように、深い闇を背景にしてなお際立つ、禍々しい赤。

 ただ一瞥されただけで、得体の知れない威圧感を感じ怖気おぞけが走る。それはさながら、人の形を成した神話生物(怪物)がそこに立っているようだった。

 そのゾッとするような視線と(あなた)の視線が──

 

 交わった。まじわった
 交わった。…………


 SANサンチェック0/オア1d6


 【正気度ロール】33>成功


 

 何だこのおじさん……目々めめピカピカで草。

 ──いや、そんなくだらないことを考えている場合じゃない、此処ここは何処?車の中?……なんで私はこの車に乗ってるんだ?

 身体からだはだるいし、何故だか分からないけど、目覚める前の記憶が一切合切思い出せない……。

 

 『起きたなら、さっさと動け。他の連中はとっくに降りている』

 

 そっちの思惑など知ったこっちゃないと言わんばかりに、その男は、何事か冷たく言い捨てると、心底めんどくさそうにため息を吐いて、バスの扉の先を指差した。

 あぁもう……何がどうなってるのかもわかんない状況で、こっちも混乱してるってのに……。

 ていうか、テメェに殴られた頬がまだジンジンてぇんだよ、チクショー……ッ!容赦なくぶん殴りやがって、加減しろよバカ……ッ!

 あと、さっきから何言ってんのか分かんねぇんだよ、何語だよこの野郎……ッ。あと、さっきからなにいってんのかわかんねぇんだよ、なにごだよこのやろお……ッ。
 あと、さっきから何言ってんのか分かんねぇんだよ、何語だよこの野郎……ッ。…………

 すると、いつまでも動かない私に業を煮やしたのか、男の視線が更に鋭くなった。

 男の苛立ちが鉛のような重苦しい重圧感をはらんで、じっとりと私の肌にまとわりつく。その唇が苛立ちをはらんで歪み、氷のように冷たい声が私の鼓膜を叩いた。

 

 『降りろ。()()()()

 

 ──直後、脳の奥でダムが決壊したように、記憶が容赦なく流れ込んでくる。

 

都市  26の区域と26社の企業        裏路地  外郭  特異点  禁忌  フィクサー

特色  12教会  事務所  工房  五本指  掃除屋  調律者  L社  幻想体  エンケファリン

Limbus Companyリンバス・カンパニー  ファウスト  ヴェルギリウス  赤い視線  カロンちゃん  メフィストフェレス  管理人  自身を含めた13人の囚人

 

 「……っ」

 

 痛む頭を押さえ、ふらつきながらも立ち上がり、武器ナイフを持ってバスを降りる。

 外は真っ暗な森の中で、既に外に降りていた()()達と、時計頭──多分、管理人であろう人物?が、警戒する3人の男女を余所に会話をしている。

 それを尻目に私は天を仰いだ。

 

 ──わぁ〜、前世よりも治安クソな癖に、化け物共が身近で跋扈してる世界よ〜!おハーブ生えますわ〜!...

 


 

 「<──あなたが教えてくれた通りにすれば、初対面のあの人達が私の代わりに戦ってくれるということ?>」

 

 「そうです。あなたが正しい命令を下すのなら、ですが」

 

 悲報、目覚めて早々にバトルな件について。

 ……少し情報を整理しよう。

 蒸気機関車の形をした、奇抜なバスの内部で眠りこけていた私は、赤い視線という目玉光らせおじさんの容赦のない【こぶし】によって、前世の記憶が目覚めた。

 その時、一時的に蘇った記憶が脳を圧迫して、逆に今までの記憶を忘れてしまうというハプニングが起こる。

 だが、私の記憶は知り合って間もない目玉ピカピカおじさんに名前を呼ばれただけで元に戻ってしまう。

 そんなロマンのかけらも無い切っ掛けによって今世の記憶と前世の記憶が統合され、今に至ると……。

 

 驚いた事にこの世界……というか、今私がいる都市という場所はドチャクソのディストピアであることを除けば、所々で前世の世界と似通っている部分がある。

 例えば主な言語が【韓国語】であることや、"巣"の中の一部の文化が私の知っている国と酷似している点である。……並行世界という奴だろうか?

 ……前世の私は日本人で【日本語】しか喋れないし理解できなかったから、この都市で過ごした今世の記憶のお陰で【韓国語】で話せるようになったのは僥倖だったな。ハハハ……。

 

 ──ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!クソがァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!クソがァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!
 ──ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!クソがァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!…………

 思い出す記憶がどれもこれも碌でもないことばっかり!!!!この世界もヤヴァイ奴ばっかじゃねぇか、私が何したってんだ、クソ!!!!言葉が話せるゥ!?だから何だってんだ!!!!

 

 こんなッ!!!!

 

 世界にッ!!!!

 

 産まれた時点でッ!!!!

 

 超マイナススタートなんだよォッ!!!!てかもう目の前で殺し合い始まりそうだしねー!!!!笑うしかねぇや、ハッハー!!!!

 

 はぁ……。

 

 「──命令なんて要るか?個別戦しかなくないか?」

 

 状況整理をしている内にどうやら交戦状態に入ったようで眼鏡のおじさんの言葉を皮切りに好戦的な奴らが突っ込んでいく。

 あ〜あ…始まっちゃった……。

 …………。

 

 やってやろうじゃねぇかよ、この野郎!!!やってやろうじゃねぇかよ、このやろう!!!
 やってやろうじゃねぇかよ、この野郎!!!…………




※なお、ダンテを見た時も、SANチェックは発生していたが成功したので何ともなかった。

見返したら、夜のテンションかなんかでヘラって変な文章書き綴ってました。戒めとして書いた文は残しておきます。愧死しそう。

(初めての小説ですが、面白いものになっているでしょうか……。文章を書くのは苦手で、特殊タグを使えば面白くなるのではと思い、乱用してしまった……。読みづらくなってはいないでしょうか?
不安だ……けれどこの作品を楽しんでいただけたと思うと……心が躍ります。)

1月13日時点で施した修正
















・よみあげ機能でおかしくなる単語に、透明ルビ追加。
・ヴェルギリウスの台詞の修正&SANチェックの描写の修正。
・細々とした文の修正。
・「悲報、目覚めて早々に──」以降に地の文の修正と追加。
・特殊タグでおかしくなってた部分を、文を変えたり特殊タグを減らすことで修正。
・三点リーダーを幾つか一つにしてみたんですが元に戻しました。
・スマホで見た時、ここの折りたたみギミックが上手く作動してなかったので修正。
・冒頭の描写にも透明ルビを追加。
・「震える」や「揺れ動く」タグが永遠と動き続けないようにしました。

ランディのどんな人格がみたいですか?「恒常〜S1」(投票が多い人格が優先)

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