EP1-1「特に理由のある暴力がヒースクリフを襲う──!!」
数時間前のあれやこれやといった出来事の後、バスに戻った私は座席に深くもたれ掛かりながら、頬杖をついて窓の外の光景をじっと見つめていた。
特段他にする事もないし、する気も起きないので眠ってしまいたい所だが。
ダンテと合流する前に寝てたり、その後も気絶したせいで全然眠たくないのだ。
そうして暫くの間過ごしていると、バスが停車した。
「ヴェル、前に障害物あり。ぶるんぶるん、してもいい?」
幼い運転手は何の気なしに、可否を問う。
その言葉に、少し前の発言が脳裏をかすめた。
嫌な予感がして、思わず前方へと視線をやると、予感通り──それは裏路地のネズミであろう人間だった。
あぁ、予感的中──降りるのかと思ったが、ヴェルギリウスは少しの間思案した後、そのまま直進することを選んだようだ。
この後に何が起こるのかは簡単に想像できるし、見ていて気分のいいものでもないので、私はすぐに視線を逸らした。
う る さ っ ! ?
何が琴線に触れたのか、ドンキホーテが唐突に大きな声を上げたかと思うと、黄緑の乙女という人物について熱く語り出した。
あぁ、そういえばフィクサーが好きなんだっけ……。
色付きってことは特色なんだろうけど……。うーん……ぜんぜんわからん!
「さっきからゴチャゴチャうっせぇな……。口閉じて静かに行けねぇのか?」
不満や苛立ちを露わにするヒースクリフに、ドンキホーテはさっきまでは静かだったじゃないかと威勢よく言い放つと、にべもなく口答えするなと怒鳴り声を返される。
そこに呆れた様子で苦言を呈するイシュメールが参戦し、あっという間にバス内部は一触即発の空気へ陥った。
どうして、こんなに直ぐに険悪な雰囲気になってしまうんです?あ〜……私、涙が出そうだよ……。
このまま放っておく訳にもいかないので、仲裁しようと二人の元へと向かう。
「あー……、二人共?喧嘩はよくな──「あ?/はい?」いや、こっわ……」
やばい。2人とも目が決まっちゃってる。
ヒースクリフは今すぐにでも手に持ったバットで襲いかかりそうだし、イシュメールも臨戦態勢をとって、いつでもヒースクリフにメイスを叩き込めるようにしている。
……マズイ、こいつら本気だ。本気で殺し合い始める気だ。
すると、管理人である自分が何かした方がいいんじゃないかと思ったのか、たじたじとしながら、ダンテが何とか二人の間を取り持とうと言葉を並べ立てようとしていた。
その時──おもむろに立ち上がった人物、その動きに目が留まった。
「──ッ!?ヒース!イシュ!後ろに反れて!」
私の叫びに二人が反応するよりも前に──良秀の太刀が、二人の首を切り裂いていた。
いくら都市の人間とはいえ、ここまで躊躇いの欠片もなくシームレスに人を殺す人が……私の同僚?
てか……嘘でしょ?この人、抜刀してない。人の首を何の変哲もなさそうな鞘で易々と切り裂いた……?
いやいや……絶対、会社とかに入るような人じゃないって。どっちかというと組織とか指にいるタイプの人でしょ、この人。
そして、良秀が口を開く。
「く・へ・し・ぶ」
……???な、何?今、何て言った?
「首をへし折らないと静かにならないのか、ブタ野郎共が」
……あ、なるほど?言葉を短縮したんだ。
そうして剣呑な空気の中、良秀は事も無げに自身の席に戻ろうとした。──その直後、背後から突き出された、ドンキホーテの一撃に頭部を貫かれた。
飛び散った血液が私の顔にかかり、頬を伝い落ちる。
事の顛末は、あまりにも呆気なく幕を閉じた。
「…………」
「<おい……嘘だろ……>」
……いや、いやいやいや、復活出来るからって、いくら何でもこれは……。
死んで復活しても処刑者が来ないから、禁忌に抵触するものではないことは分かるよ?だからって、こんな軽率に……しかもしょうもない内ゲバで?
何度復活出来るかも分からないし、そもそも復活した私達に何の問題もない保証なんて、どこにもないのに……いや、一度死んでる時点で、もう遅いんだけどさ……。
ヴェルギリウスが戒めてくれたりするのかなと思ったけど、この惨状自体にはけほども興味はないようで、淡々と当事者4人に処罰を下して、ダンテの方へ向かっていった。
……頭ゆるゆるバスツアー……ははは……やっていけるのか、これ。
突如響いた悲鳴に、思わずビクッと肩が跳ねた。
何事かと首を動かせば、死んだ3人が復活していくのと、苦しそうに膝をついて呻いているダンテが見えた。
どうやら私達の蘇生には痛みが伴うようで、それも尋常ではないダンテの様子から窺い知るに、相当な苦痛を伴うものであるということは容易に推察出来た。
頭と首に思わず手を置いていることから恐らくは痛覚の共有であり──痛覚の共有?
「──だ、大丈夫、ダンテ!?あぁいや大丈夫じゃないよね、ごめん!」
咄嗟にかけた言葉は、どうにも間抜けな言い方になってしまった。
どう声を掛ければいいんだ、こういう時。
いっその事黙っていた方が良かったか?どうにもしてやれないってのに、苦しんでる人の近くで騒いだのは不味かったか?
そうして、3人の傷が完全に修復された瞬間、ワナワナと震えていたダンテは全身から一気に力が抜けたようにへたり込んだ。
取り敢えず、山場は乗り切ったらしい……はぁ……良かった……。
かと思えば、復活した三人が息を吹き返した直後、またも険悪な雰囲気のヒースクリフが、その敵意を隠す事なく良秀へと近づいて行く。
ダンテが制止の声を上げるが、振り返ったヒースクリフは完全にイカれてしまっているようで、今の彼は自分の怒りを相手にぶつけることしか考えにないといった状態だった。
「どうせ生き返らせるのがおたくの仕事だろ?やることやったんなら、そのくっだらねぇ時計ヅラごとぶっ壊す前にあっち失せな」
吐き捨てるように言い放ったヒースクリフ。私がぷっつんしそうになるのを堪え、注意しようとするよりも先に、慌てて前へ出たシンクレアが、穏便に【言いくるめ】ようとする。
「ま、待ってください!ダンテさんが苦しんでるみたいだし、このあたりでや──」
しかし、シンクレアの言葉が言い終わる前に、ヒースクリフは鉄バットをシンクレアの頭部へと振り下ろした。
私はシンクレアを庇うように飛び込み──衝撃と共に床に叩きつけられた。
……止められない。
彼等を止めようと間に入ってくれたシンクレアは攻撃されて、それを庇ったランディは倒れ伏して、ピクリとも動かない。
止めに入っただけで容易に殺しにかかってくる相手をどうやって止めろっていうんだ?
どうして一度死んだってのに懲りずに、また同じ事を繰り返そうとするんだ?
そうやって頭を抱えていると、底冷えするような重圧感がバスの中を一瞬で支配した。
「──これは、どうにかまともに矯正しておかないとな」
重い腰を上げたヴェルギリウスの一声が、囚人達の動きを止めた。
赤い視線が、問題となっている囚人二人に向けられると、彼は冷徹な口調で告げた。
「一つ目の規則。バスの中では武器のぶつかる音が聞こえてはならない」
「この瞬間以降、この規則が破られれば……お前達は、俺にどうか殺してくれと哀願することになるだろう。俺は十分そうできる人間だ。──知ってるよな?」
重苦しい空気が車内に立ち込める。
ヒースクリフは精一杯ヴェルギリウスを睨みつけるが、結局、何も言えずに沈黙した。
やがてヴェルギリウスは私の方へと向き直る。
「ダンテ、申し訳ないことになりました。時計をもう一度だけ回してください」
「<……あれをまたやれって……?>」
脳裏に蘇る、耐え難い苦痛。
"殺してくれと願う方がマシ"──そう本気で思える痛みをもう一度味わえと?私は反射的に首を横に振る。
すると、ヴェルギリウスの顔色が変わる。うっすらと残っていた微笑すら霧散し、代わりに冷たく威圧的な影が落ちる。
「……俺がまだ、謝罪とお願いをしている内に扉を開ける方がいいと思うんだが、管理人ダンテ……」
「あぁ、ただ苦痛を恐れて首を横に振ったのなら、喜んで手伝い──」
突如、耳をつんざく怒号がバスに響き。
「ひぇっ……!」
「あなやっ……」
「おぉうっ……」
それに続いて、誰かが悶絶する声が聞こえて、思わず振り返る。
そこにあった光景は、血を頭から垂れ流しながらも、愉快そうに笑う一人の囚人の姿。
「──その必要はないよ?ヴェルギリウスさん。なんせ、この通り──元気、ピンピンだからねェッ!!!」
ケタケタと笑うランディの足元には、冷や汗を滝のように流し、床に崩れ落ちているヒースクリフがいた。
あんなに凶暴だったヒースクリフが、苦悶に歪んだ顔で息も絶え絶えになっている。一体……何をしたんだ?
それになんだか、周りの囚人達の様子が……特にシンクレアやイサン、グレゴールが青ざめた顔で内股になってるんだけど……。
「<ラ、ランディ……?>」
ヒースクリフが悪態を吐こうとした瞬間、ランディの右足が、ヒースクリフの股間の方へ向かっていき──容赦なく蹴り上げた。
男なら誰しもが本能的に震え上がるであろう一撃。
全身に鳥肌が立って、縮こまる感覚がした。
「何……?何ってそりゃ……肉体言語んだよ。変に言葉を並べるより、【こぶし】の方がいいんだろ……?」
こめかみに青筋を立てて、わなわなと拳を震わせるランディ。
「さぁほら、立てよ。散々オラついてた癖に、もうギブか?情けねぇなぁ……!」
「ッ……!ぐ……あぁ!舐めんじゃねぇ!」
ヒースクリフが立ち上がりざまにバットを振りあげる、ランディはそれを易々と躱し、勢いのまま足を振り上げ、そのままヒースクリフの
「あぁ……そうそう。私、男と喧嘩する時は玉金しか狙わねぇから。どんな男も基本そこが弱点だし狙わない手はないよねェ……!」
ヒースクリフは苦しそうに息を漏らし、背中を弓なりに反らせて倒れた。最初の頃の怒りで真っ赤だった顔色は今や士気色に変わり、呼吸を荒くして、それでもランディを睨みつけている。
ここまでやられても、折れたりしないのは最早尊敬の念すら抱きそうになる。
「はっ……!いいよ?それで気が晴れるなら、何処でも何遍でも相手してやる。──だから、これ以上碌でもない理由で仲間を殺そうとするな」
「はっ……あ゛ぁ……?」
今まで怒り心頭でヒースクリフをこてんぱんにしたランディは、突如落ち着いた声色でヒースクリフに語りかけた。
「鬱憤ばらしぐらいなら、次はちゃんと【こぶし】で付き合ってやるよ。それができないなら……次喧嘩する時もこうなるから、なッ!」
……どうやら、これで事態は終結らしい、私達はただ呆然と事の終わりを眺めることしかできなかった。
浅く息を吐くランディと、顔から色々な液体を垂れ流して崩れ落ちたヒースクリフ。
ヒースクリフの事は、争い始めたり、こっちの言うことを聞いてくれなかったりでムカついてはいたけど……これは酷い。
「悲鳴と苦悶の表情は中々に良かったが、や・す*1」
良秀が微妙な表情でそんな言葉を呟いたのと、床に転がるヒースクリフが、時折呻く声だけが聞こえてくる。
──その時、混沌としていた空気が再び収束していくのを感じた。
「…………随分と、楽しそうだったな?ランディ……」
とても冷たい声だった。ランディの顔が、一瞬にして固まるのが見えた。
ヴェルギリウスはゆっくりとランディを見据えたまま歩み寄る。
「……暴れたことは謝るよ、ヴェルギリウスさん。でもこれは──」
「あぁ……言いたい事は分かる。だが、それは必要ではなく、余計な事だった」
「よ、余計な事ってことはないでしょ……。あれは──「既に事は済んでいた」……え?」
「……お前が怒りで我を忘れて、要らぬお節介を焼く前に話は終わっていた」
煩わしいことをしてくれたなとでも言いたげな顔でランディを見るヴェルギリウス。
ランディは顔を強張らせて、固まってしまった。
「……そ、そんな……私。話蒸し返して、ややこしくさせただけ……ってこと?」
「……そうだ。わかっているじゃないか、ランディ」
その一言で、完全に正気に戻ったであろうランディの肩がガクリと落ちた。先ほどまでの気迫は綺麗さっぱり消え去って、今は小さな子供みたいにしょんぼりと縮こまっている。ヴェルギリウスは深くため息をつく。
「はぁ、ランディ──他の四人と同じく、今月の掃除当番に加える。異論はないな?」
ランディは小さく「はい」と答えるとヴェルギリウスは踵を返し、私の方へ向き直る。
「ダンテ、時計を回していただけますか?」
「<……え。……あ、うん>」
あのヒースクリフを見て時計を回すのは、嫌だったけど。ヴェルギリウスの有無を言わさぬ眼光に、私はすぐに根負けした。
ランディから本当に申し訳なさそうな顔で「ごめんなさい……」と蚊の鳴くような声で謝られながら、私は時計を回した。
一々苦痛を描写することはもうやめよう。
ただ一つ、それでも言えることがあるとすれば──今後、囚人達が
戦慄──!それは金的──!
ヒースクリフ好きの管理人の皆様とキャサリンにまずはお詫びを、本当にごめんなさい。
今回の内容ずっと考えてたシーンでしてね。ダイス結果関係なくやろうかな〜とか考えてたんですけど、ダイス振ってみたら「あ。行けるわ、これ」ってなりまして。
蛇足かなとも思ったんですけど、我慢できずに書いちゃいました。
まぁ、色々書きましたが……二次創作のオリキャラとはいえど都市の人間ですからね。
多少イカれてる部分書かないとそれっぽくならんかなと思ったんですよ。
p.s.【検閲済】-気味の悪い文は削除してください。
p.p.s.活動報告の場で書いたんですが、現在のアンケ結果を見て、一番最初に出す人格はシ教会に決めました。
アンケートはまだ続きますので、今後ともよろしくお願いします。
1月18日時点で施した修正
ランディのどんな人格がみたいですか?「恒常〜S1」(投票が多い人格が優先)
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ツヴァイ協会
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シ教会
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センク協会
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リウ教会
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セブン教会
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ヂェーヴィチ協会
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ディエーチ協会
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W社
-
R社
-
G社
-
剣契
-
LCCB
-
アヤ