俺たちの住む商店街は治安が悪い   作:有苑

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前回は闘いまくってたので休憩です。

登場ライバー

??? 風間いろは 尾丸ポルカ


明白な過去と不明瞭な今

気付くと、俺は授業を受けていた。木々に囲まれ少し開けた場所に、椅子用の切り株と黒板が掛かっているのは可笑しいぐらいに不自然な風景だ。黒板の前には長い銀髪を持つ少女が立っていた。彼女が俺たちの先生だ。

 

「はい!じゃあここで問題!」

 

彼女は元気な声で言う。すると彼女の声に合わせてチョークがひとりでに動き、黒板に文字を書いていく。

 

「魔法や魔術には【回復魔法】や【治癒魔術】が存在するけど多くの魔法使いや魔術師はこれが使えない!それはどうしてでしょう?……はい!じゃあそこの生徒ッ!」

 

彼女はそう言って俺の右隣にいるいろはを指さす。『そこの生徒』なんて勢いに任せた名称を使ってるがこの教室にいる生徒は俺といろはの2人だけ。生徒が2人だけの教室に『そこの生徒』なんて指名の仕方をするのは何とも奇妙な光景である。

 

「はい!回復してる暇があったら相手を倒すべきだからでござる!」

 

そんな事には目もくれず、いろはは立ち上がりはきはきとした声で答える。

 

「ぶっぶー、そんないろはみたいな戦闘狂じゃありませーん。……じゃあ今度は絨邨(じゅうそん)!分かるかなー?」

 

悔しがりながらいろはが切り株に腰を下ろしたとほぼ同時に、俺は立ち上がり答える。

 

「多くの魔法使いや魔術師は人間とは異なる種族なので基本的に再生能力があり、多くの魔法使いや魔術師は【回復魔法】や【治癒魔術】が使えないのではなく使う必要がないからです。」

 

「ちぇ、はいはい正解正解。すごいですねー。」

 

普通に模範解答を叩き出した俺を見て彼女は明らかに不機嫌になる。どこからどう見ても抑揚の無い声で正解を祝福した。

 

「先生は正解して欲しいのか間違って欲しいのかどっちですか?」

 

「もちろん間違って欲しいに決まってるじゃん!バカにしたいから。」

 

嫌味ったらしく言った俺の質問に彼女は開き直った回答を示した。

 

「……この先生最低でござる。」

 

「コホン、気を取り直して授業の続きをするぞー。まずは前回のおさらいから。」

 

何の気を取り直したのかは定かでは無いが、彼女は何事もなかったかのように授業を進める。

 

「魔法と魔術は似ているが実際は全く違う。それは発動の糧となる物と発動の仕方の違いなんだけど、それは2人とも知ってるよね?」

 

「はいはい!確か魔術の方が強かったでござる!」

 

いろはは若干論点がズレているような発言をする。

 

「その通り!けど、それが何でか分かるかな〜?」

 

いろはの発言から彼女は、答えられないことを見越した割と趣味の悪い質問を嘲笑うようにする。

 

「……分かんないでござる。」

 

「前の授業で言ったぞー、ちゃんと復習するように。………じゃあ今度は…やっぱやめた。」

 

おそらく俺にしようとしたであろう質問を彼女はなぜか中断した。

 

「何でですか?」

 

「えー、だって絨邨に聞いたらどうせ正解するし…正解されたら詰まんないじゃん。ということで理由を教えるよー。まずは魔法!これは空気中にある魔素を自身の身体に取り込み呪文の詠唱と一緒に放出することで発動ができるんだよねー。難しい言葉を使うと集約率と還元率、この2つが重要になってくる。さらに深堀するとさっき言った2つはどちらとも個人差があるんだけどー、集約率が高ければ高いほどたくさんの魔法を放てるし、還元率が大きければ大きいほど強い魔法を放てるってわけ。」

 

生徒にものを教える立場としてどうなのかという発言を彼女は易々と言ってのける。その後に続く解説にいろはは『へ~~。』と声を上げる。

 

「次に魔術!やり方は魔力を魔法と同じように呪文の詠唱と一緒に放出することなんだけど、魔素と大きく違って魔力は自身の生命力そのもの。それを消費して魔力を作り出す。だから魔法よりも強い技を放つことができるんだけどー、それにも個人差があるし強すぎる魔術を放って魔力を使いすぎちゃうと命に関わるっていうかぶっちゃけ死んじゃうから、絨邨は気を付けてねー。」

 

凡そ生徒に言うべきではない事を彼女は言う。そろそろ黒板がいっぱいになってきたからか、黒板消しも一緒に動き始めた。

 

「それは先生もでしょう?」

 

「そうだけど、そんな魔術師では珍しい【治癒魔術】を教えてあげてるんだよー、2人は感謝して崇めながら授業を聞きなさい。」

 

「でもそれって先生が痛いのが嫌だからじゃないんでござるか?」

 

彼女はいろはのカウンターを諸に食らい『ぐっ…』という声を漏らす。

 

「はっ、はい!この話終わり!じゃあ今度は【魔道解脱】と【魔術解放】について…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あっ、朝か。」

 

どうやら随分と懐かしい夢を見ていたようだった。目線を天井の照明から扉がある左側に移すと、そこには人影が立っていた。

 

「いろは……どうした?」

 

「朝作って欲しいでござる。」

 

「…分かった、居間で待ってろ。」

 

いろはは俺の寝室を出て行く。俺もベッドから降り台所へ向かう。いつも通りの朝食を2人分作り机に配膳する。

 

「「いただきます。」」

 

合掌をして無言で食べ始める。昔の頃の夢を見て気になった事を聞いてみることにした。

 

「お前って……変わったよな。」

 

いろはは汁物を途中まで飲んだあたりで手を止める。

 

「何の話でござるか?」

 

「いや…昔のお前ってもっとこう…素直な元気っ娘って感じだったから……。」

 

俺の言葉にいろはは『はあ……。』と溜息を吐きながら答える。

 

「……800年も生きてれば変わるでござる。それに天葛(あまかつ)の方がよっぽど変わったでござるよ。」

 

「……そうか?」

 

「はあ…自覚がないなら良いでござる……そもそも何でそんなことを聞いたでござるか?」

 

俺は少し黙り話始める。

 

「懐かしい夢を見たんだよ、俺たちが先生にいろいろ教わった時の夢をな。」

 

「先生って誰でござるか……。」

 

「俺たちの先生ってほとんどいないだろ。ほら、銀髪で俺たちよりも背丈が低いあの人。」

 

「あー、あの人でござるか。」

 

「何でそんなテンション低いんだよ……。」

 

「私は天葛と違って教えてもらった事が殆ど役に立たなかったでござるからな。」

 

確かにそうだ。俺は魔法と魔術両方の才能があった。魔術を選んだのは先生も使っていたのと単純に魔法よりも火力が高いから。それに対していろははどちらにも秀でていなかった。魔法とも魔術とも違う別のナニカ、使えるのが自分しかいない以上仕方のないことだ。

 

「あの人今元気にしてるかな。」

 

「どうでござるかな。」

 

どれだけ話題を広げようとしてもいろはは素っ気ない返答ばかりをする。俺たちの生き方を僅かにも示してくれた恩師なんだからもう少し心配してやっても良いとは思うのだが、いろはの言う通りこいつは変わってしまったのだろう。

 

「…話変わるけどお前今何やってんの?」

 

朝ご飯を食べ終えお茶を飲み一息ついた後、いろはは答える。

 

「とある秘密結社の用心棒。」

 

「相変わらずだなおい…まだやってたのか。」

 

「みんな寿命が長いんでござるよ……1人だけ人間がいるでござるが。」

 

いろはは『ごちそうさま』といった後席を立ちあがり裏口から帰って行った。

 

「1人だけか……心配だな。」

 

俺も朝ご飯を食べ終え食器を台所へ持って行き洗う。時計の針は7時を示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本屋

 

AM10:20

 

「店長さん、お会計お願いします。」

 

よくこの本屋に来てくれている常連のような金を主として赤や青などの様々な髪色が混じった獣人がカウンターにやって来る。

『王宮の砂時計』が1点、『異界と魔人』が1点、「私の鼓動と流れ星』が1点………。

 

「計3点で3420円ですね。」

 

そう言いながら本を紙袋に入れていく。

 

「えーと……これでお願いします。」

 

「3500円で、こちらお釣りの80円とレシートです。いつもありがとうございます。」

 

紙袋に入れた本を差し出す。しかし、受け取った後も俺を見つめ続ける。

 

「……ん?どうか致しましたか?」

 

「前から思ってましたけど、店長…というか(らい)さんってそんなキャラじゃないですよね?」

 

予想外の回答が返ってきた。

 

「……会ったことありましたっけ?」

 

「ひどい⁉︎ポルカ頼さんの後輩なのに……。」

 

ポルカ?やばいマジで思い出せねえ。

 

「後輩って高校時代のか?」

 

「そうですよ!同じ図書委員だった……。」

 

「あー、居た気がする……ような?」

 

「居ましたって!っていうかフェネックの獣人なんてポルカぐらいしか居ませんよ!」

 

「そうか……悪いな気付いてなくて……にしても本好きだよな。」

 

「………まあ、はい。」

 

ぶっちゃけ滅茶苦茶有り難い。こいつ…確か尾丸ポルカは週に1度は本を買いに来てくれる。今までここで買ってくれた人の中じゃ冊数はダントツだろう。

 

「というか、何で大学行かなかったんですか?」

 

「ここの営業があったからな…お前は大学行ったのか?」

 

「はい。正爾(まさちか)さんが行くって聞いて、頼さんもいると思ったから……。」

 

そういうこと?残念ながら高校時代に祖父が亡くなって本屋の管理を押し付けられた人間には大学に行く暇なんて無かったんだよ。

 

「祖父が死んでそれどころじゃなかったんだよ、悪かったな。」

 

「えっ………両親は?」

 

「母親は俺を産んだ時に死んだ。 心肺虚脱型羊水塞栓症で呼吸不全が起こった、俺は帝王切開でギリギリ助かったらしい。父親は病院に来る途中に交通事故で死んだ。俺の母親の容体が急変したと聞いて焦ったんだろう、十字路を曲がり切れず雑貨店に突っ込んだそうだ。」

 

「そう…なん……ですか………ごめんなさい、こんなこと聞いて……ポルカ…何にも知らなくて……ごめんなさい。」

 

尾丸は俯き途切れ途切れになりながらも言葉を発する。

 

「別にいい。物心ついた時から居ない両親なんて他人と変わらないし、居ないのが当たり前だからどうとも思わない……けどこれが、そこに居るのが当たり前の人に起こるとかなりキツイんだよ…葬式の時とか今にも目開けてくれそうな顔してさ………あっ、悪い。暗い話しに来たわけじゃないよな、本当に悪い。」

 

そう言った直後、俺はふと気になって壁掛け時計を見る。

 

「10時半か……10時半!?やっべ!準備しねえと……!」

 

俺はカウンターテーブルに『ご用のある方は呼び鈴を鳴らしてください』と書かれた看板を置き、2階へ向かおうとする。

 

「準備ってカフェのですか?」

 

「そうだけど…どうかしたか?」

 

「いや、あの、もしかして全部1人でやってるんですか!?」

 

「だな…言っただろ、祖父が死んだって。それ以来この本屋は俺1人で回してんだよ。」

 

「人手足りてますか?」

 

「まあ何とか……いい加減バイト募集するかあ。」

 

「だったらポルカやりますよ!」

 

「良いのか?」

 

確かに尾丸はここの本屋のことを俺を除いて誰よりも知っているだろうし…割と適任かもな。

 

「はい……ちなみに時給っていくらですか?」

 

「…………800円とかか?」

 

「ちょっと低くないですか?」

 

でもこれ以上上げるのもなあ……あっ、賄いを用意すればいいんだ。

 

「じゃあ毎週好きな本1冊持って行っていいぞ。」

 

「マジで!?喜んでやります!」

 

素が出てるなこいつ。

 

「あと尾丸ってどれぐらいの頻度でバイトに来れる?」

 

「大学4年生なんで…週3ぐらいですかねえ。」

 

「大学4年か……何でこんな普通に出歩いてんだ?」

 

「今空きコマなんですよ。」

 

あー、なるほど。というかバイトとして雇うんだったら連絡先とか聞いとくか。そう考えた俺はスマホを起動しメールアプリを開く。

 

「そういうこと……後バイトするにあたって連絡先だけ交換しとくか。」

 

「それもそうですね。」

 

尾丸もスマホを起動しメールアプリを開き連絡先を交換する。尾丸はトーク欄を開き俺に適当なスタンプを送った後、俺のアイコンをタップして俺のプロフィール欄に飛ぶ。

 

「へー、頼さんのアイコンって正爾さんとのツーショットなんですね。」

 

「あっ……いや、違うそれスリーショットだぞ。」

 

「えっ?いやでも頼さんと正爾さんしか……後背景が…神社?」

 

「……元の画像見てみろ。」

 

そう言われると尾丸は俺のプロフィール欄のアイコンをタップして元画像に飛ぶ。その写真には正爾を中心として右隣に俺、左隣に少し背の低い人影が見える。

 

「本当だ…誰かいる。でも何でこんなぼやけてるんですか?」

 

「時間がなかったんだよ、それしか撮れなかった。後あいつ写真嫌いだし。」

 

「ふーん、でも白髪って珍しいですね。」

 

「金髪以外にもいろいろ混じってるお前が言うか。」

 

「それもそうですね。」

 

再び壁掛け時計に目をやると10時50分を示していた。あー、そろそろ準備しないとマジでやばいな。取り敢えず明後日ぐらいに来てもらうか。

 

「じゃあ、明後日ぐらいで良いか?俺もう2階行くから。」

 

「はい。分かりました。」

 

そう言って尾丸は左腕で本が入った紙袋を抱えながら右手で本屋の扉を開け去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この事を正爾に報告した後日、何故か水宮が乗り込んできたのはまた別のお話である。




やばい…筆がめちゃ進む……もう片方の小説に集中できねえよお。
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