呪術師なんてセイロス教と相性悪そうですけど、地下の住人として案外平和的に過ごしてます。 作:こももなっつ
――記録。
22:10 東京メトロ明治神宮前―渋谷間線路
冥冥班、夏油傑と対峙。
「冥さん、お久しぶりです。」
「刺客を放っておいてよく言うよ、“夏油君”」
旧い知り合いとの再会を喜ぶかのように、親し気に接する目の前の男。それはかつて、新宿と京都にそれぞれ千体もの呪霊を放った未曽有の呪術テロ……百鬼夜行の首謀者、夏油傑だった。
だが彼は、乙骨憂太に撃退され、その後は五条によって粛清された。……つまり、ここに居る筈が、生きているハズがない人間だ。だというのに、五体満足で、今、目の前に立っている。―― でも、私の目は誤魔化せない。夏油の時と“糸”が違う。どれだけ寄せようとしても、決定的に“中身が違っていた”。
「……さて、久遠さんの目にはどう映ってるかな?」
「以前見た夏油さ……夏油の“糸”ではありませんね。ご遺体をどう持ち出したのか知りませんけど、中に入ってるのは、違うひとだと断言できます。」
外側……肉体に関して言えば、夏油傑そのものに見える。とはいえその肉体だって、乙骨によって酷い損傷を受けていた筈で……反転術式で治した?となれば相当な術師だ。
一際目を引くといえば、額の縫い目だ。それは夏油には無かった明らかな違い、違和感。これ見よがしに見せつけているように思える。
「――やはり、渾融操術使いはとても厄介だね。」
わざとらしく大仰にため息を吐いて「やれやれ」と肩を竦める偽夏油。その口ぶりからして、私の見立てに間違いはないという証左だろう。そして、“渾融操術”についても何か知っているようだが……。
「君には特別何か感慨を頂いている訳ではないんだけど……申し訳ないね。恨むなら、“魂に刻む”という縛りを作った、渾融操術使いの始祖を恨んでくれ。まぁ~千年も飽きずに私に執着し続けるのは見上げた根性だよね。」
何のことを、と偽夏油の話に気を取られたのがいけなかった。次の瞬間には、私は宙に浮いた。――違う。肉体は地面に足をついている。肉体はそこにある。私が、“私だけが”宙に浮いている!
「渾融操術使いは、魂に直接術式が刻まれている厄介な存在でね。肉体を破壊すると、その魂は瞬時に別の肉体へと移動してしまうんだ。だから、肉体はそのままにして、魂だけ、隔離することにした。こうすれば渾融操術使いが顕れることはないだろう。」
声が遠くなる。意識が何かとてつもない巨大なものに、吸い込まれていく。
「さようなら。次に会うことがあったら、その時は全てを終えたときにしてくれよ。」