なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第105話:サレンちゃん始動する

 公爵家に訪れた次の日。

 

「お久しぶりです。スフィーリアさん」

「お待たせしてすみません。話はライラさんから聞いていますが、無事で何よりです」

 

 スフィーリアと連絡が取れたとの事で、東冒険者ギルドで待ち合わせをした。

 

 数日ぶりのスフィーリアは別れた時と変わらず、俺に対してとても礼儀正しい。

 

 初めて会った時はツンケンしていたのに、人は変わるものだな。

 

 今日は昨日と同じくフルメンバーであり、そこにスフィーリアが加わった形となる。

 

 他の連中には、話が纏まってから話せばいい。

 

 どうせ断る事など出来ないのだからな。

 

 何せ、全員俺に借金をしているのだから。

 

「それではネグロさんも待っているでしょうから、行くとしましょう」

「分かりました」

 

 ギルドに入って二階に行き、第三副ギルド長と書かれている扉を、シラキリが叩いてから開ける。

 

 取り次ぎなどをせずに、直接来てしまっているが、話はライラがしてくれているので問題ない。

 

「来たか。先ずは座ってくれ。シラキリ。悪いが茶の準備を頼む」

「分かりました」

 

 昨日もそうだが、普通にシラキリがお茶の準備をしているのがなぁ……。

 

 まあ色々と教えてもらっているので、何も言うまい。

 

「昨日ぶりだが、その子が例の子か」

「スフィーリアと申します」

「ふむ……先ずは概要をもう一度説明しよう」

 

 シラキリが用意してくれたお茶に口を付けた後、ネグロさんは昨日と同じ説明をスフィーリアに聞かせる。

 

 教国関連の宗教が幅を利かせているので、落ち着くまで代わりにギルドで頑張って欲しい。

 

 そんな感じだ。

 

「主にやって欲しいのは懺悔室の使用と、暫くギルド専属で治療をやって欲しいのだが……どれ程の奇跡が使えるのかね?」

 

 加護をスフィーリアに与えてから、一度としてその力を見ていないので、どれだけの力が有るのか俺には分からない。

 

 先日下賜した能力一覧を見せて貰ったが、あんな小とか中ではどれだけの事が出来るのかなんて理解出来ん。

 

 もっとこう、骨折が治せるとか、岩を撃ち抜けるとか分かりやすい感じにしてほしい。

 

「怪我ならば骨折まで、毒などはC級までなら間違いなく解毒可能です。呪いの類も恐らく同程度までは問題ありません」

「ほう、随分と優秀だね。その程度まで出来るならば此方としてはありがたい。続いて報酬について話させてもらおう」

 

 報酬か……昨日は上と掛け合うと言っていたが、どれだけの物を用意してくれたのだろうか?

 

 最低でも教国と敵対するに相応しい報酬でなければ、断った方が身のためとなる。

 

 何せこの後は王国に行った後、教国に行く予定だからな。

 

 此処で敵対関係となれば、今以上に情報が流れてしまう。

 

「先ずは金銭について話そう、日当として一万ダリア。ギルド内で治療した場合、相場の八割を支給する。また、何かしら他の宗教から圧力を掛けられた場合、ギルドが全面的に対応しよう。それと、東冒険者ギルドでの布教を無期限で許可しよう」

「あくまでも今回の件は東冒険者ギルドの範囲内で納める……って事か?」

 

 話をきいていたライラが、疑問点を聞く。

 

「ああ。他の支部は支部で頑張るだろうからな。それと此方が望む結果となった場合、百万ダリア。もしも途中で依頼を破棄する事になったとしても、五十万ダリアの報酬を出そう。期間は最長で二ヶ月から三ヶ月くらいを見ている。どうだろうか?」

 

 日当とは別に報酬金があるのは良いが、割りと長期の依頼だな。

 

 万年金欠のイノセンス教にとっては、荒稼ぎするチャンスである。

 

 布教しても良いって事は、依頼中に喜捨を貰っても良いって事だ。

 

 それに今ならば、立ち回り次第で信者を増やすことも出来そうだ。

 

 やるのは俺ではなく、スフィーリアだけど。

 

「スフィーリアさんが宜しければ受けたいと思うのですが、どうでしょうか?」

「それがサレン様のためになるのでしたら、喜んで協力させて頂きます」

「ありがたい。詳しい流れや、やる事は明日以降にマチルダから聞いてほしい。それと、サレンさえ宜しければ、この後懺悔室を使ってもらえないか? ここ最近は空室のせいで、クレームが来ているんだ」

 

 あの懺悔室って需要あるんだな……一回しかまだやっていないが、その一回でイノセンス教の良い噂が流れたので、効果はかなりのものだ。

 

 やっておいて損は無いだろう。

 

 それに、ギルド内なら安心だしな。

 

「今日の予定は無いので、やらせて頂きます」

「助かる。今日の分は規定通りの金額を払わせてもらおう。それと、件の冒険者達を使うならば一声掛けてくれ。護衛依頼という体で報酬を出そう」

「分かりました」

「出来ればなるべく大きく動いてくれ。ギルドは独自にやっていけると宣伝できれば、向こうもおとなしくなるだろうからね」

「考えておきます」

 

 執務室を出て、ロビーへと向かう。

 

 だがシラキリだけ勉強をするとの事で、執務室に残った。

 

 教会が信徒を増やしたくて起きている騒動だが、都市としては問題ないと判断しているため、放置されている。

 

 だが、冒険者ギルド側では問題となっている。

 

 神官が治療の一翼を担っている以上、どうしても人が必要だが、足元を見られて信徒にならなければ治さないだの協力しかねるなどと言われれば、下手な事を言えない。

 

 ポーションだけでは限界があるし、人の心を癒すのは専門家でなければならない。

 

 それに奇跡なんて魔法がある以上、特定の宗教は必ず必要となってくる。

 

 だが……。

 

(ルシデルシアが下賜出来る加護だが、もしかして選択できるのか?)

 

『うむ。我が昔倒した神の加護と、ディアナが持っていたものに限るがな』

 

 何か不穏な事を前に言っていた気がしたので、改めて確認してみたが、案の定であった。

 

(因みに倒した神ってどれくらいいるんだ?)

 

『百から先は数えておらん。あの時代は天と地が繋がって居たため、馬鹿みたいに攻めて来ていたからな』

 

 つまり、選べる加護はより取り見取りって事だ。

 

 そうほいほい加護を与えるなんて事は出来ないだろうが、ほとんどの神の代替となる加護を、与えようとすれば与えることが出来る。

 

 まあこの世界には多種多様な神が居なければいけないみたいなので、無理矢理幅を利かせる気は無いが、脅し文句としては最上だろう。

 

 それはさておき、やることをやっておこう。

 

「この後アーサーはエルガスさんの所に行って、作業の確認をお願いします。その後はスフィーリアさんと布教活動をお願いします。ライラは……」

「少し用事があるので、終わり次第ギルドで待機しておこう。滅多な事は起きないと思うがな」

「分かりました」 

 

 それだけ言い残し、ライラは先に行ってしまった。

 

 先ずはこんな所か。後は……ああ、スフィーリアに加護について聞いておかないとな。

 

 ルシデルシアのあれだけでは分からないし、一応口止めをしておかなければ。

 

「スフィーリアさん。個人的に話があるので、少し宜しいでしょうか? アーサーは少し離れていて下さい」

「はい」

 

 アーサーを遠ざけて、スフィーリアと二人きりになる。

 

 二階は一階と違いほとんど人が居ないので、通路で話しても問題ない。

 

「何でしょうか?」

「加護についてですが、問題ないか確認をしておこうと思いまして。何分初めての事なので」

「分かりました」

 

 スフィーリアに対して幾つかの質問と確認をするが…………スフィーリア以外の普通を知らないので、結局判断に困る事となった。

 

 ――なんか一々心配するのが少し馬鹿らしくなってきたな。

 

 営業の仕事をしていたせいか、あまり和を乱す行為なんてしたくはないのだが、もうすっぱりと諦めた方が良いかもしれん。

 

 ……いや、この思いも精神の乱れなのだろうな…………後で酒を飲もう。

 

 とりあえずスフィーリアには加護の詳細を、他人に話さないようにとお願いしておくに留めた。

 

「何かありましたら、調整をしますので言ってくださいね」

「お心遣いありがとうございます。サレン様の為に、今日も頑張らせて頂きます」

「はい。アーサーもよろしくお願いします」

「承知しました」

 

 一階に降りた後、アーサーとスフィーリアを見送る。

 

 珍しく一人きりとなるが、どうせギルドから出ないので問題ない。

 

 さてと、公爵家からの報酬を貰ったら、また懺悔室に籠るとするかな。

 

「あっ。サレンさん。先方から報酬を預かっていますので、どうぞお受け取り下さい」

「ありがとうございます。ネグロさんから懺悔室を使うように言われているのですが、話を聞いていますか?」

 

 大きい袋をマチルダさんから受け取り、ついでに懺悔室の事を聞く。

 

 袋を受け取った時に液体の揺れる音がしたので、しっかりとワインも用意してくれたようだ。

 

「ああ、例の依頼を受けてくれたって事ですか?」

「はい。ギルドが少々大変だという事で、微力ながら協力させて頂こうと思いまして」

 

 マチルダさんもネグロさんから、色々と聞いているのだろう。

 

 昨日来た時もそうだが、ギルド員側の空気が重い気がする。

 

 苦労しているのだろうな……。

 

 いつの時代も苦労するのは下っ端なのだ。

 

「ありがとうございます。直ぐに用意しますので、しばらくお待ちください」

 

 後ろに下がったマチルダさんは通り掛かったギルド員を捕まえ、あれこれ指示を出してから、書類を取り出して何やら書き込む。

 

 お役所仕事だなー。

 

「お待たせしました。前回と同じ部屋にお願いします。時間は何時まででも大丈夫ですが、終わりましたら表の札を受付までお持ちください」

「分かりました」

 

 それじゃあ頑張るとするか。

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