なんちゃってシスターは神を騙る   作:ココア@レネ

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第108話:答え合わせ

「いてて……まさか落とし穴があるなんて思わなかったよ」

「すみません。外の女神像を運ぼうとしたら穴が……」

「ああ、うん。この教会もボロいから、そうなるか」

 

 穴からミリーさんを引っ張り出し、服の汚れを軽く落とす。

 

 しかし、ミリーさんと会うのも久々……と言うか、これまでほぼ毎日会っていたのがおかしいんだよな。

 

「いやー、酷い目に遭ったよ……あれ? ライラちゃんも居たんだけど……」

 

 あれれとミリーさんは首を傾げ、一緒に外へ出ると、ライラが女神像を見上げていた。

 

 満足気にライラは幾度か頷き、それから出て来た俺達の方を見る。

 

「そんな気はしていたが、やはり穴が開いていたか」

「分かっていたなら言いなよ!」

「勝手に先行したのはそちらだろう。中ではなく、外に像がある時点で気付け」

 

 教会がボロいのはミリーさんも知っており、俺が中にある欠けた女神像の代わりに外の女神像を発注したのも知っている。

 

 それなのに外に女神像があれば、中に運ぶことが出来なかった理由があると考えられる……ってところか。

 

 しかしライラとミリーさんとは、また珍しい組み合わせだな。

 

 静のライラに動のミリーと言った感じで、正反対の二人だ。

 

 正直、あまり仲が良いとは思えない。

 

「まったく、ライラちゃんは生意気だねー……っで、もうそろそろ本題に入って良い?」

「好きにしろ。どうせ本当の事は話さないのだろう?」 

 

 何やら不穏な空気だが、一体どうしたのだろうか?

 

 今の時期に一緒に居るって事は王国関連だろうとは思うが、そうなるとミリーさんの身分が大体割れてくる。

 

 とは言っても、ぶっちゃけ八割方騎士関係の者だと思っているがな。

 

 騎士団で酒瓶を持っている時点で、可笑しかったのだ。

 

「どうだろうね。とりあえず中で座って話そうか。少し長くなるかもしれないからね」

「よくわかりませんが、二人が私に話がある……と言う事ですか?」

「ああ。我としてはこやつを消してしまいたいが、メリットとの天秤に掛けた結果、話だけは聞いてやることにしたのだ」

 

 物凄く嫌そうな顔をしているが、ミリーさんが有能なのは俺も知っている。

 

 それにしても、俺が知らない所で何やら物語があったようだな。

 

 やはりライラは、主人公タイプではないだろうか?

 

 とりあえず教会の中に戻り、少し前アーサーに買ってきてもらった椅子に座る。

 

 どうせこの教会は取り壊すので、必要最低限の椅子だが、無いよりはマシだ。

 

「さて、折角なので改めて自己紹介をさせてもらうね」

「いいから早くしろ。叩き出すぞ?」

 

 相変わらずなミリーさんに対して、ライラがいつも以上に辛辣な言葉を放つ。

 

 それとミリーさんを警戒してなのか、俺の近くに座り、グランソラスをしっかりと装備している。

 

「ノリが悪いねー。おほん。私の名はミリー。しがないCランクの冒険者だよ。しかし、それは仮の姿。本当は――黒翼騎士団が一人。ミリー・トレスさ」

 

 どやーっとした感じに自己紹介をするが……黒翼?

 

 俺が読んだ本には出てこなかった単語だが、軽く考察してみよう。

 

 俺が知っているのは赤翼青翼黄翼緑翼白翼の系五種類だ。

 

 各翼毎に決められた役割があるのだが、一般に売られている本には大まかな事しか書かれていなかった。

 

 だが、一応とは言え別の世界の記憶がある俺からすれば、その情報から大体の答えを導く事が出来る。

 

 ミリーさんのこれまでの行動と、その騎士団が俺の思う通りなら、黒翼は帝国の裏の存在なのだろう。

 

 もしくは汚れ役って言葉が、一番当て嵌まる。

 

 そうなるとおそらくあのマフィア達も、黒翼騎士団なのだろう。

 

 ミリーさんが現れたタイミングや、ライラを含めた俺達三人を気にしている理由も頷ける。

 

 ライラは王国からの亡命者だし、シラキリはおそらく違法奴隷関連の被害者。

 

 俺はこの都市に居ないはずの幽霊だ。

 

 シラキリも当初は普通だったが、今は普通とはかけ離れた能力になっているし、死に掛けていたアーサーなんてのも居る。

 

 つまり、俺達四人共目を付けられる理由があるのだ。

 

「その黒翼騎士団と言うのは?」

「ざっくり言えば、この国の裏方だね。一応所属してることは守秘義務となっているけど、二人に隠し立てするのも、もうそろそろ意味が無いかと思ってさ」

「ふん。その悪名高き騎士団は祖父から聞いている。帝国()には 厭らしい 猟犬が居るとな」

 

 帝国ではなく、帝国内……か。

 

 確か今の帝国は専守防衛を掲げているんだったかな。

 

 帝国内で何か企てれば、猟犬が襲ってくるって事か。

 

「厭らしいとは酷いね。これでも色々と助けてあげてきたと言うのに」 

「確かにギルドランクは上がり、用意は思いの外上手く進んだ。それに、後顧の憂いも断つ事が出来たが――我は貴様が嫌いだ」

「そう怒らないでよ。私は結構ライラちゃんの事好きだよ。案外年相応に可愛いし」

 

 何やらかなりの遺恨があるようだが、ライラも本当に嫌っているわけではないのだろう。

 

 ライラの様な人間が本当に嫌いならば、完全に無視をする筈だ。

 

 まあ、二人の仲については勝手にどうにかしてもらうとして、いつになったら本題へ入るんですかね?

 

「ああ、シスターサレン。伝え忘れていたが、シラキリの事で進展があった。どうやらシラキリは違法奴隷商が、孤児を攫っている場面に出くわして殺され掛けていたようだ。その奴隷商は今し方我とこいつで壊滅させた」

「そうだったのですね。これでシラキリも安心して暮らせる事でしょう」

 

 違法奴隷商を壊滅させるとは流石だが、ライラだけでは後々問題になるので、ミリーさんが力を貸したと。

 

 或いは、ミリーさんから俺達の事を思い、ライラに声を掛けたのだろう。

 

「前置きはこの辺にしておくとして、私の事を軽く説明しておこうか。その方が危機感を持ってもらえるだろうからね」

「お手柔らかにお願いします」

 

 人の良さそうな笑みを浮かべた後、真面目な顔となり、雰囲気が変わる。

 

 ――ピリッとした、張り詰めた空気が肌を刺す。

 

「私達黒翼は、帝国の敵となる存在を秘密裏に調査したり、始末したりしているんだ。んで、それに伴って結構な自由裁量を持っているんだ。相手が悪人であれば、それだけの理由で殺す事が出来るし、罪に問われることもない。勿論事後処理は必要だけどね。それと、相手が人であるならば大体の事は調べることが出来る程度の、情報網は持っているんだ。ルシデルシアとかね」

  

 ああ、公爵に情報をリークしてたのはミリーさんって事か。

 

 公爵がミリーさんに情報を流すのはおかしいが、逆ならば普通にあり得る。

 

 情報網と言ったが、俺が調べた限りこの都市で、直接的にサレンディアナやルシデルシアの名前が出るモノは一つとしてみつからなかった。

 

 それにルシデルシアが言っていた戦争も、誰も知らなかった。

 

 態々隠ぺいしている情報を探れる程度には、広いのだろう。

 

 まあ、白を切らせてもらうがな。

 

 一応記憶が無い体だし。

 

 とは考えてみたものの、妥協点は必要だろう。

 

 今回はミリーさんからアプローチを掛けてきて、手札を晒してくれたのだ。

 

 どこまでの確信を持っているか分からないが、流石に俺が異世界の人間だと思うまい。

 

「確か魔王でしたか?」

「遥か昔に世界を破滅の一歩手前まで追い込み、サレンディアナと勇者によって滅ぼされた魔王だよ。さて、一体サレンちゃんは誰なんだい? 言っておくけど、私を殺すって事は、帝国を相手にすると思ってね」

「誰……と聞かれても、私自身が誰なのか分からないのです。ですが、一つだけミリーさんやライラに隠してあることがあります」

 

 ミリーさんが話せば話すだけライラの殺気が濃くなり、今にも剣を抜きそうなほど、張り詰めた空気になる。

 

 なので、ここが頃合いだろう。

 

 おそらく、悪い結果にはならないと思う。

 

 頭巾(ウィンプル)を頭から取り、髪の側頭部をかき分ける。

 

 そこには、角の断面が見えている。

 

「角……随分と綺麗な断面だね。」

「自分が何者かは分かりませんが、これが隠していた事となります」

「……正直今更だがな。あれだけの怪力を見せておいて、人間のはずがない」

「因みに記憶が無いってのは本当?」

「はい。此処で目覚めた後の事以外は何も……何の種族なのかすら分かりません」

「なるほどねー」

 

 ミリーさんは座ったまま身体を左右に振り、何やら考え事をする。

 

 ここまでの流れは問題ない。

 

 出された手札に対し、サレンダーをする事で手札その物を見せないようにする。

 

 とにかく相手を納得さえさせれば良いのだ。

 

「確認だけど、サレンちゃんはサレンディアナとルシデルシアを本当に知らないんだね?」

「はい。記憶を失う前に何かしら関係があったかもしれませんが、今は何も……」

「そうかー…………出来れば拷問でも掛けたいけど、本気で抵抗されると厳しいし、個人的にサレンちゃんの事は好きだから、お仕事はここまでにしておこうかな」

 

 さらっと拷問とか言っているが、ミリーさんは人を殺すことを、躊躇するような人間ではないのだろう。

 

 仕事となれば、昨日まで酒場で一緒に酒を飲んでいた人間でも、一瞬の躊躇いもなく殺せる。

 

 それが当たり前の生活をしているのだろうな。

 

「たとえ貴様が……帝国がシスターサレンを敵と見なすのならば、我は抗わせてもらうぞ。たとえ死ぬ事となってもな」

 

 相変わらずライラは、カッコイイことを言ってくれる。

 

 これで俺が男だったら、普通に惚れていただろう。

 

 今は精神が不安定なせいでこれと言った感情も湧いてこないが、ライラを拾うことが出来て良かった。

 

「端から敵対する気は無いさ。一撃で殺せなかった時点で私達は負けるからね。さて、これから何をしようとしているのか、ちょっと話し合いをしようか」

 

 少しだけミリーさんは笑みを浮かべ、ライラを煽る様な行動を取る。

 

 やれやれ、本当にこの話し合いは長くなりそうだな。

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